ひょうたんのような形をしたバターナッツかぼちゃは、空中(立体)栽培でなら、プランターでも栽培が可能です。ここではバターナッツかぼちゃのプランター栽培について、種や苗から始める手順や育て方、支柱の立て方について、初めて育てる方にもわかりやすく説明します。
バターナッツかぼちゃのプランター栽培の手順(苗の定植)
バターナッツかぼちゃの苗は、植え付け時期になるとホームセンターなどでも販売されることもあります。少量なら市販のポット苗も便利です。葉がきれいで、新芽がしっかりしている徒長(ひょろひょと間延び)していないものを選びましょう。
準備するもの
手順
- 手順1プランターの準備
プランターに、底が隠れる程度に鉢底石を入れます。
その上から、野菜専用培養土をプランターの上部2〜3cm程度のところまで敷き詰めます。側面を軽くたたいて土を落ち着かせます。 - 手順2苗の植えつけ
プランターの中央に、根鉢よりも大きめの植穴を掘って水を注ぎ入れる。
ポットから根鉢をこわさないように苗を抜き、穴に苗を植えつけます。
株元を軽く押さえ、たっぷり水やりをします。 - 手順3支柱立て
苗が生長してきたら、支柱を立てます。あんどん式支柱を立て、伸びた親つる(主枝)を、支柱に誘引して紐で結びます。
- 手順4整枝・摘心
親づるが本葉4枚~5枚になったら、先端を摘心すると、子づるが伸びてきます。元気な子づるを2本~3本残して支柱やネットに誘引しながら育てます。孫づるは子づるの8節までについた孫づるは、すべて切り落とします。
- 手順5人工授粉
雌花が咲いたら、その日の朝早くできれば9時頃までに人工授粉をします。
雄花を摘みとり、花びらを取り除いて雌花の中にある雌しべの柱頭に雄しべの花粉をこすりつけます。 - 手順6
- 手順7収穫
開花から1か月程度で収穫の時期を迎えます。皮が緑色から濃いベージュになったら収穫のタイミングです。ヘタをハサミで切って収穫します。
空中栽培について(支柱立て)
かぼちゃ(南瓜)は、地面につるを這わせる「地這い栽培」が一般的ですが、プランター栽培では、支柱を立てて、立体栽培で育てると小スペースで栽培が可能です。果実が空中に浮いているように見えることから空中栽培とも呼ばれます。
プランター栽培では、朝顔などの鉢植えでよくみられる「あんどん式」や、畑などにみられる「合掌式」に網を張った方法がよいでしょう。ベランダなどでは、緑のカーテンとしても使えます。
かぼちゃは、キュウリと同様にツルを伸ばして伸びるのでキュウリ用の支柱などをつかってもよいでしょう。支柱については詳しく説明して記事がありますので、こちらも参考にしてください
あんどん式支柱
リング式支柱は、あんどん式に使う支柱で、主にプランター栽培や鉢植え栽培用の方法で、3~4本程度の園芸支柱を土壌に垂直に挿し、それらの支柱をリングで固定する方法です。狭いスペースでも、誘引するための紐やクリップを固定する場所を多く確保できるため、ガーデニング・ベランダ栽培に特におすすめです。
プランターでは、四方の角に支柱を挿す(もしくは固定する)場所が用意されているので、それらに園芸支柱を立てて、ビニール紐で一周まわりを結ぶとあんどん式の組み方になります。ベランダなどの狭い場所でも十分に誘引することができます。もし、プランターに支柱を挿す場所がない場合は、用土に直接挿し込んで問題ありません。
バターナッツかぼちゃの場合、支柱は150cm~180cm程度のものを選びましょう。
プランターの縁にそって、支柱をたて、支柱と支柱を紐で結んで、プランター周囲を囲んでいきます。20cm~30㎝間隔で数本の紐をはります。
親づるが伸びてきたら、支柱につるを誘引して紐で結びます。誘引は、つるの生長に合わせてこまめに誘引してください。
合掌式支柱
合掌式支柱は、支柱を斜めに交差させて、横に1本渡して固定する方法です。バターナッツかぼちゃでは、合掌式に組んだ後、片面にネットを張り、つるを誘引していきます。支柱は、手の届く高さのもので構いません。ネットはキュウリネットや園芸用ネットをつかうとよいでしょう。
バターナッツかぼちゃのプランター栽培 育て方
バターナッツかぼちゃの育苗(種まき)
かぼちゃの種まきは直まきでも可能ですが、高温を好むので、幼苗期の温度管理がしやすいポリポットでの育苗について説明します。
用意するもの
- バターナッツかぼちゃの種
- ポリポット(4号 12cm)
- 培養土(元肥入りの野菜の培養土)
手順
- ポットに培養土をいれ、2か所、深さ1cmほどの穴を空けます。
- ひとつの穴に1粒づつ種を入れ、土をかぶせて手でかるく押さえます。
- タネをまいたら、たっぷり水やりをします。
- 双葉が開いたら、生育の良い方を残し、1本をハサミで切って間引きます
- 本葉が4枚~5枚になったら、植えつけます。
育苗のポイント
- バターナッツカボチャの発芽温度は高め、25℃~28℃が目標温度です。最低15℃以下にはならないように保温マットや寒冷紗、ホットキャップなどをつかって、低温から守ります。
- 発芽までは、タネが乾燥しないように気をつけましょう。水やりは午前中の暖かくなってきてからあげるとよいでしょう。
- 芽がでたら、すぐに日に当てて徒長しないように育てましょう。
- 種まきから発芽まで3日~7日、育苗期間は約1か月程度です。
容器・用土
容器は、深さ30cm以上の大型プランターがよいでしょう。できれば横幅55cm程度の大型プランターがおすすめですが、スペースがない場合には直径30cm程度、12号の鉢でも育てることができます。株間が必要なので、基本は1つのプランターに1株がおすすめです。
用土は市販の元肥入りの野菜の培養土がよいでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土6腐葉土3、バーミキュライト1の割合に苦土石灰を1ℓあたり1g、緩効性肥料を10g程度配合します。
栽培環境・水やり
バターナッツかぼちゃは日当たりが良く、風通しの良い場所を好みます。発芽温度・生育温度ともに高めなので育苗時や植え付け直後は、ホットポットや苗カバーなどをすると発芽率や生育がよくなります。
育苗時期の水やりは、発芽までは、タネが乾燥しないように気をつけましょう。水やりは午前中の暖かくなってきてからあげます。植えつけ直後はたっぷり水を与え、その後は土の表面が乾いたら鉢底から水がでるまでたっぷり与えます。
肥料
プランター栽培の場合肥料は、元肥と追肥を行います。元肥とは植え付け時に施す肥料で、プランターなどでは、元肥入りの野菜の培養土などが便利です。肥料がはいっていない土や、自分で配合した場合は、緩効性肥料を土に混ぜて使います。
バターナッツカボチャは、つる性のため生育初期に肥料が効きすぎると、ツルや葉がのびすぎて花や実がつきにくくなる「つるボケ」がおきやすくなります。吸肥力が強いので、元肥は控えめにして実がついてからの追肥で実を大きく育てます。追肥は実が付いたら、2週間に1度追肥をします。化成肥料10g程度を株の周りにばらまいておきます。葉色を見て緑色が濃いようなら肥料は控えましょう。
肥料は化成肥料や、有機肥料、液肥も使えます。窒素分が多くなくリン酸が多いものがおすすめ。ハイポネックスの「花と野菜と果実の肥料」や住友化学園芸「マイガーデンベジフル」なども使えます。カボチャ用の肥料もあります。
かぼちゃの肥料については、おすすめの肥料の記事がありますのでそちらも参考にしてください。
整枝・摘心
バターナッツカボチャは、畑では放任栽培も可能なため摘心は不要ですが、プランターでは、株の混みあいを防ぐために摘心をしましょう。親づるが本葉4枚~5枚になったら、先端を摘心すると、葉のわきから子づるが伸びてきます。元気な子づるを2本~3本残して支柱やネットに誘引しながら育てます。
孫づるは、子づるの8節目までのものは、すべて切ります。
人工受粉
受粉はハチなどの虫が自然に行いますが、確実に受粉させたいのであれば人工受粉させます。ツルが伸びると、先に雌花が咲きます。雌花と雄花の違いは、蕾の下がふくらんでいるかいないか。蕾の下がふくらんでいるほうが雌花です。ただし、最初に子づるについた雄花は、うまく育たないため人工授粉させず摘みとりましょう。2番目以降に咲いた10節~15節ほどについた雌花に授粉させます。
授粉は朝8時~9時に行いましょう。雄花を摘みとり花弁を取り除きます。雄しべ(葯)を当日咲いた雌花の柱頭に花粉を軽くなすりつけましょう。下記の写真はかぼちゃの花ですが、バターナッツかぼちゃも同様に行います。
収穫
かぼちゃの場合は、ヘタがコルク状になったら収穫のタイミングですが、バターナッツかぼちゃは、果実の色をみて、収穫しましょう。目安は開花日から30日~40日程度です。
果実の色が緑色から、果実表面のツヤがなくなり、濃いベージュになったら収穫のタイミングです。ハサミで切って収穫しましょう。かぼちゃは、収穫した後数週間ほど、日陰で置いておくと追熟して甘くなります。2週間ほど風通しの良い場所で乾かしてから冷暗所で貯蔵しましょう。
病害虫
比較的病害虫に強い植物ですが、病気はうどんこ病、疫病、炭疽病(たんそびょう)、つる枯病、つる割病などの病気にかかりやすいです。葉に斑点がでたり、茶色く枯れたりしてきたら病気を疑いましょう。対策としては梅雨に高温多湿によるカビの被害が多いので、梅雨は軒下で雨があたらないようにし、風通しがよく日当たりの良い場所で育てましょう。
葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。カボチャ類はアブラムシ、ハダニ、ウリハムシ、ハモグリバエなどの害虫がつきやすいです。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
バターナッツかぼちゃ栽培の基本情報
バターナッツかぼちゃの基礎知識
かぼちゃ、日本では西洋カボチャ、日本カボチャ、ペポカボチャの3種類が栽培されています。南アフリカが原産のバターナッツかぼちゃですが、品種としては日本カボチャ(モスカータ種)の仲間です。
味は、その名の通りナッツのようなコクのある甘みと、バターのようなねっとりとした食感があります。ポタージュなどのスープ料理によくつかわれます。
元々熱帯地域で育つかぼちゃですので、暑さに強く西洋カボチャに比べて寒さには弱いので、早まき、早植えしないことが成功のポイントです。西洋かぼちゃより、丈夫で病害虫にも強いので無農薬でも育てることができるため、家庭菜園に向いている野菜です。バターナッツかぼちゃは、日本で流通しているものは果重が800g~1kg程度の小型種がほとんどです。大型種もあるので、プランターでは小型タイプを選びましょう。
作物名 | バターナッツカボチャ |
---|---|
科目 | ウリ科カボチャ属 |
原産地 | 南アメリカ大陸 |
発芽適温(地温) | 25℃~28℃ |
生育適温 | 20℃~25℃ |
土壌酸度(pH) | 6.0~6.5 |
育てやすさ | 普通 |
栽培時期
バターナッツかぼちゃ栽培時期は、春にタネをまいて夏に収穫します。プランター栽培では比較的長い期間、種まきや定植(植えつけ)ができます。種から育てた場合、植え付けまで20日~1か月程度です。
地域 | 播種(タネまき)時期 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
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寒冷地 | 4月下旬~6月 | 5月中旬~7月 | 7月中旬~10月上旬 |
中間地 | 4月~7月 | 5月~8月 | 7月~10月 |
暖地 | 3月下旬~7月 | 4月中旬~9月 | 6月中旬~11月 |
まとめ
一般的な西洋かぼちゃに比べ、日本かぼちゃのバターナッツかぼちゃは、強健で、土壌もあまり選ばす育てやすく、収穫量が多いのでプランターでも十分楽しめます。
西洋かぼちゃのようにホクホクした食感はなく、ねっとりした食感のかぼちゃなので、スープやプリンなどに使うのがおすすめです。あまりスーパーなどでは見かけないかぼちゃですので、ぜひ家庭菜園で育ててみてください。
カボチャのプランター栽培の記事もあります。一般的なかぼちゃ(西洋かぼちゃ)を育てたい方はこちらの記事を参考にしてください。
この他にも、農家webには野菜のプランター栽培の記事がたくさんあります。
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