ブルーベル―は全国各地で栽培が可能な人気の果樹です。ここでは苗木から育てる、ブルーベリーの鉢植え・プランター栽培について、植え付けから収穫までの育て方の基本から、年間の栽培管理までわかりやすく説明します。
ブルーベリーのプランター栽培の手順(苗の植え付け)
それではここからは、苗の植えつけ方について説明してきます。
植え付け時期
植え付けや植え替えは、厳寒期を避けた11月~3月頃に行います。冬の寒さが厳しくない関東より西では11月~12月中旬、寒さが厳しい地域では植え痛みの少ない3月の春植えが適期です。
準備するもの
- ブルーベリーの苗木
- プランター・鉢(直径21cm、7号鉢程度)
- ブルーベリーの培養土
- 鉢底石
苗木の選び方
ホームセンターやインターネットなどでは、植え付け時期になるとブルーベリーの苗木が販売されます。市販の苗には、樹高30cm~50cmほどの2年生苗がポット苗として多く販売されています。
インターネットなどでは実績のある信頼できる販売店で購入し、ホームセンターなどで買う場合のポイントは下記の4点です。
- 品種名のラベルがきちんとついているもの
- 株元から数本、旺盛な枝が伸びている
- 病気、害虫などに侵された跡がないもの
苗木は一年中購入できますが、できれば秋ごろから出回る苗で挿し木して、2年以上たっているものが初心者の方にはおすすめです。すぐに実をとることも可能ですが、苗木が弱り枯れてしまうこともあります。できれば5年以上たってから収穫するのがおすすめです。春から夏頃に見かける花芽、実つき苗は、植え替えはすぐ行わず11月頃までそのまま育ててから植え替えします。
容器と土
2年生のポット苗を植えつける場合は一回り大きな深鉢、7号~8号(直径21cm~24cm)のナセリーポットやプラスチックの果樹専用のポットなどがよいでしょう。素焼き鉢に比べて通水性などが劣りますが、鉢底石をいれることで改善でき軽量なので持ち運びが楽です。スリット鉢は水はけが良くなります。
ブルーベリーは、土壌ph4.3~5.3の強酸性の土を好む植物です。土壌が酸性でないと健全に育ちません。鉢植えやプランターでは、ブルーベリー用の培養土を使って育てましょう。自分で配合する場合は、酸度未調整のピートモス7・鹿沼土3で配合して、水を含ませてよく混ぜてから使いましょう。
植え付けの手順
- 手順1植え付け準備
植え付けの前日に、水やりを十分に行っておきます。
- 手順2苗木の切り詰め
翌日、ポットや鉢から苗を取り出し、根の底から10分の2ほどを軽くほぐし、中心部の土を掻きだします。
- 手順3植え付け
容器に、鉢底石を2㎝ほど入れその上に培養土を、容器の3分の1程度の高さまで入れます。中央を少し高くしておきます。
苗木の根を放射線状に広げ、中心部に置き培養土を入れ植えつけます。培養土は鉢の上部から2.5cmのところまでいれ、ウォータースペースを空けておきます。最後に鉢底から水がでるまでたっぷり水を与えます。
ブルーベリーのプランター栽培 年間スケジュール
- 1月~2月休眠期
12月に剪定をしていない場合は、剪定を行い不要な枝を整理します。
- 3月
- 4月開花期
4月上旬から開花が始まります。毎年実つけが悪い場合は人工受粉を行いましょう。
- 5月果実成長期
果実が大きくなる時期で水や養分を必要とする時期です。追肥(芽出し肥)をし、果実の生長を促しましょう。水切れにも注意が必要です。
- 6月~9月果実過大・収穫時期
果実が大きくなる時期なので、水やりは欠かさず、朝晩に行います。
果実が完熟したら収穫しましょう。収穫が終わったらお礼肥として追肥をします。樹勢が強いラビットアイ種は剪定の時期です。
- 10月~12月休眠期
10月になると紅葉が始まり、落葉して休眠期に入ります。
水やりは少しづつ控えて、冬には7日~10日に1度程度にします。休眠期は、植えつけや植え替え、剪定を行い翌期に備えます。
ブルーベリーのプランター栽培の基本情報
ブルーベリーの基礎知識
ブルーベリー樹はツツジ科の落葉低木で、樹高は成木でも1m~2.5mの小果樹で場所もとらないので鉢植えでも十分育てることができます。白い釣鐘型の小さな花や、小粒な実もかわいらしく観葉植物としても人気があります。
品種により耐寒性や耐暑性が異なるので、品種を選べば全国どこでも栽培が可能です。1~2年目の苗木でも花や実がつきます。ブルーベリーは、自家結実性が劣るため、実を収穫したい場合には、同じタイプの2品種以上の品種を育てる必要があります。
学名 | Vaccinium sp |
---|---|
属名 | ツツジ科スノキ属 |
原産地 | 北アメリカ |
樹高・草丈 | 1m~2.5m(品種による) |
耐寒性等 | 耐寒性 品種による 耐暑性 品種による |
花言葉 | 「実りある人生」「思いやり」 |
品種について
ブルーベリーには多くの品種があります。栽培品種は大きくわけて、染色体の数の違いがらハイブッシュとラビットアイの2つのタイプに大別され、さらにハイブッシュはノーザンハイブッシュ、サザンハイブッシュ、ハーフハイブッシュの3つの系統にわけられます。
栽培には品種選びが非常に重要です。品種により耐寒性や樹高も異なるため地域にあった系統やタイプを選び、同じタイプの異なる品種を2種以上育てると実よくなります。ハイブッシュ種を1種、ラビット品種を1種選んで育てると、実つきが悪くなる恐れがあるので注意しましょう。
ハイブッシュ種
ハイブッシュ種は品種改良された品種で、ノーザンハイブッシュの品種の歴史が最も古く世界各地で栽培されています。寒さに強く、夏は冷涼な気候を好みます。サザンハイブッシュは、寒さに弱く暑さに比較的強いため、温暖な地域でも栽培が可能。ハーブブッシュは、低木で紅葉等が美しいものが多く、食べられる鑑賞果樹の位置づけです。
系統 | ノーザンハイブッシュ | サザンハイブッシュ | ハーフハイブッシュ |
---|---|---|---|
耐寒性 | 強い(マイナス20℃) | 普通(マイナス10℃) | 強い(マイナス20℃) |
耐暑性 | 普通 | 強い | 普通 |
樹高 | 1.0m~2.0m | 1.0m~1.5m | 1.0m前後 |
特徴 | 世界の栽培中心品種 寒さに強いため、北海道 でも栽培可能 | 関東から沖縄で栽培 土壌の乾燥や、過湿にも 比較的強い | 北海道・東北の一部で 栽培されている。 樹高が低く、鑑賞性の高い 品種が多い |
主な品種 | ブルーレイ アーリーブルー スパルタン(スパータン) チャンドラー ウェイマウス | マグノリア サミット ケープフェア ブラッデン | ノースランド トップハット ノースカントリー |
ラビットアイ種
ラビットアイ種は、アメリカ南部に自生している原種を改良種で、耐寒性はノーザンハイブッシュとサザンハイブッシュの中間ぐらいの性質をもちます。日本では東北から九州と幅広い地域で栽培され、土壌適応力が高く、乾燥や過湿にも強い育てやすいタイプです。
系統 | ラビットアイ |
---|---|
耐寒性 | 普通(マイナス10℃) |
耐暑性 | 強い |
樹高 | 1.5m~3.0m |
特徴 | 晩生種が多く、多収 土壌対応力が高く育てやすい |
主な品種 | ティフブルー オースティン ブライトウェル ヤドキン |
ブルーベリーの鉢植え・プランターの育て方
栽培環境・水やり
ブルーベリーは、日当たりのよい屋外で栽培しましょう。できれば雨のあたらない軒下で管理すると病気が少なくすみます。冬は品種によりますがマイナス10℃~20℃まで耐えられるので、地域に合った品種を選べば屋外で冬越しが可能です。
水やりは、鉢の表面が乾いたら鉢底から水が出るまでたっぷり与えます。水やりの回数の目安は、春と秋は朝に1回、夏は朝と夕方の2回、冬は1週間に1度程度。収穫期間中は、収穫前に水やりをすると果実が水っぽくなるため、収穫後に与えるとよいでしょう。
ブルーベリーは根の乾燥に弱いので、水切れには特に注意が必要です。
肥料
ブルーベリーは、酸性土壌でよく育ちます。また、他の作物よりアンモニア態窒素を好んで吸収しますので、硝酸態窒素のみを与え続けている場合には生育が落ちると言われています。そのため、アンモニア態窒素を含む化成肥料を与えると良いでしょう。
肥料は、春肥(元肥)、芽出し肥(追肥)、礼肥(追肥)の年3回を標準とするとよいでしょう。春肥(元肥)とは、葉芽の芽生え(新芽)前の春に肥料を施すことで、3月下旬が適期です。芽出し肥(追肥)は、春肥が吸収され土中の養分が不足したタイミング、具体的には5月上旬~中旬が適期です。礼肥(追肥)とは、果実の収穫が済んだ後に肥料を施すことで、9~10月頃が目安になります。
鉢植えの場合、植え付けや植え替えを11月~12月に行った場合は、春肥を与えましょう。3月に植え付け、植え替えをした場合は、ブルーベリーの培養土に肥料が入っている場合は不要です。肥料がはいっていないものは緩効性肥料を与えましょう。
メーカーから発売されているブルーベリー専用の肥料は、既にブルーベリーの栽培に特化した配合となっているためおすすめです。多くの種類が販売されているのでパッケージに記載の量を与えましょう。錠剤タイプは追肥として便利です。
また、ブルーベリーを甘くするには果実をできるだけ樹につけ完熟させることが重要ですが、その手助けをする肥料成分としてカルシウムも重要です。しかし、石灰や炭酸カルシウムなどの普通のカルシウム肥料は土壌酸度をアルカリ性に傾けてしまい、ブルーベリーには施用しづらいです。そんなときに使えるカルシウム肥料が硫酸カルシウムです。「ブルーベリー用のカルシウム肥料」としても販売されている場合があるので探してみてください。
ブルーベリーの肥料については、詳しい記事がありますのでこちらも参考にしてください。
整枝・剪定
ブルーベリーを多年にわたって鉢植え・プランターで育てるには毎年剪定・整枝をしましょう。適期は休眠にはいった12月~2月の冬の間に行います。樹勢の勢いが強いラビットアイ種は夏にも徒長した枝などを整理するとよいでしょう。剪定は樹勢に合わせて下記の方法を組み合わせて行います。
ひこばえを間引く
ブルーベリーはひこばえ(株元からでる勢いのある枝)が多く発生します。ひょろひょろと徒長しているひこばえや、他の枝と当たって混みあっているひこばえは、つけ根から間引いて剪定しましょう。
不要な枝を切る
ひこばえ以外でも、枯れた枝、徒長した枝、混みあった枝、花芽がついても結実しない枝などはつけ根で切り取りましょう。徒長した枝には、実はつきがつきにくく、樹姿が崩れるので迷わず切り落としましょう
枝の先端を切り詰める
ひこばえや不要な枝の整理が終わったら、残った枝のうち30cm以上の枝は、先端を4分の1切り詰めます。先端に大きな芽がついているものは、翌年に実がなる枝なので切りすぎに注意します。
人工授粉
異なる品種を2種以上育てている場合は基本的には不要ですが、毎年実つきが悪いようなら人工授粉をしてみましょう。開花が始まったら行います。
雄しべを摘みとり、花びらを引っ張って取り除いて、他の品種の雌しべにこすりつけます。
植え替え
ブルーベリーは、根詰まりを防ぐために2年~3年に1度は植え替えが必要です。厳寒期を避けた11月~3月頃に行います。冬の寒さが厳しくない関東より西では11月~12月中旬、寒さが厳しい地域では植え痛みの少ない3月の春植えが適期です。
一回り大きな鉢に、新しい用土で植えつけます。植えつけるときには根鉢が根で固まっているようなら中心部の土を軽くほぐして掻きだしてから、植えつけるとよいでしょう。
収穫時期
品種によりますが6月~10月が収穫のタイミングです。収穫は、果皮の全体がブルーになってから4~5日後、ブルーベリーは追熟しないので樹木の上で完熟させてから収穫しましょう。手で軽くねじって収穫しましょう。果肉が柔らかいので底の浅い容器に摘み取りましょう。
病害虫
ブルーベリーは、他の果樹に比べて病害虫の被害は少ないですが病気では、灰色カビ病や枝枯れ病などが発生します。病気の予防としては、剪定や枯れた枝や葉を取り除き風通しよくすることです。発生した場合には、すぐに切り取って取り除きましょう。
害虫は、アブラムシ、カイガラムシ、コガネムシなどが発生します。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
また果実はムクドリやスズメ、カラスなどの鳥害に合いやすいので、防鳥ネットなどで囲むのが効果的です。被害にあった果実は、見つけ次第取り除きましょう。
増やした方
ブルーベリーは、さし木、とり木、株分けで増やすことができます。挿し木で増やすのが簡単で、冬に剪定した枝を使って増やすこともできます
まとめ
ブルーベリーは果樹の中でも、管理もあまりいらず栽培が容易です。病害虫の被害も少ないので無農薬栽培もできるので、家庭での鉢植え栽培に向いています。
果実はそのまま食べても、ジャムなどにしてもおいしく、目に良いアントシアニンが多く含まれています。観葉植物としても、花や青紫色の果実が実る様子はかわいらしく紅葉まで楽しめるので、ぜひ鉢植え・プランターでのブルーベリー栽培にチャレンジしてみてください。
この他にも、農家webにはプランター栽培の記事がたくさんあります。
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