支柱は、トマトやナス、キュウリなど大きな実のなる果菜類の野菜の栽培には欠かせない資材です。支柱を立てる理由は、主に2つあります。
- 植物自体を支える
- 果実を支える
支柱を立てることによって、作物を健全で長期的に栽培することができます。また、日本の場合は台風や季節の変わり目の暴風や梅雨などの長雨もありますので、植物をいかに人間の手で生長しやすくするかが重要となってきます。
この記事では、果菜類の代表格の野菜であるキュウリの支柱立てについて、支柱の種類から立て方まで解説します。
支柱を立てる理由は?
そもそも支柱を立てる必要があるのは、なぜでしょうか?先述したとおり、支柱を立てる理由は、主に2点あります。
- 植物自体を支える
- 果実を支える
植物自体を支える
キュウリなど果菜類の野菜は、生長に合わせてどんどん節が増えて、背丈が伸びていきます。そうすると、支えられなくなった主技(親づる)や側枝(子づる)が折れて植物を傷めることに繋がり、生長が悪くなったり、収穫量が下がります。
また、キュウリなど多くの果菜類は光合成のために多くの光を必要とします。そのため、受光(太陽からの光を受ける)しやすい体勢に支えてあげる役割も支柱が担っています。
果実を支える
キュウリなどの果菜類の野菜は、大きな果実を付けます。どのくらい重いのか、あらためて確認してみましょう。下記は、主な果菜類の野菜の重量目安です。
上記の重量の果実を複数個付けながら、植物は生長していくので支えがないと、果実もろとも倒れることが想定できると思います。特に大玉トマトは、果実が大きく重く、収穫までの日数がかかるため、しっかりと支えてあげる必要があります。
また、果実を付ける柄(果柄)は他の枝部分に比べて弱いため、支柱を立てて誘引することで、落果を防ぐことにも繋がります。
キュウリの場合はネットも使用すると良い
キュウリの場合は、支柱と合わせてネットも使用すると良いです。キュウリは、つるを伸ばすことによってキュウリの果実がなる節を増やしていく作物です。立体栽培の場合、親づるのほかにも子づる、孫づるを支えなければなりません。
子づる、孫づるは、親づるのように直立に伸ばしていくのではなく、横や斜めに伸ばしていくことになります。支柱のみだと、子づる、孫づるを誘引する場所がなくなってしまうので、ネットや支柱間を紐で結ぶなど、誘引する場所を用意してあげる必要が出てきます。
支柱の種類と特長
一言に支柱と言っても、様々な種類があります。下記は、支柱の種類の一部です。
今回は、キュウリに合う支柱の種類とその特長について、簡単に説明します。
普通の園芸支柱(イボ付き園芸支柱・イボ竹支柱・鋼管竹)
最も一般的な園芸支柱として、イボ付き園芸支柱(イボ竹支柱・鋼管竹)があります。長さはさまざまで、90cm〜240cmくらいのものが主流です。イボの突起があることで、誘引作業で引っ掛ける場所ができ、安定した誘引が実現できます。土中に挿すときには、尖っているほうを挿すようにしましょう。
リング支柱(サークル支柱)
リング支柱は、数本の真っ直ぐな園芸支柱と数本の円形の支柱を組み合わせた資材です。鉢植えやプランターなどで採用するあんどん式の支柱の立て方をする際に使用します。
アーチ支柱
アーチ支柱は、雨よけのためにビニール被覆したり、ネットを張るなど、植物の上に天井をつくるときに使用します。イボ付きの園芸支柱などを立てて、それに連結して使用したりします。あらかじめ高さのあるアーチ支柱も存在するため、直立のための園芸支柱がいらない場合もあります。
スライド支柱
スライド支柱は、一見、普通の園芸支柱と同じですが、長さを自由に伸縮することができる支柱となっています。プランターや鉢植えのベランダ栽培をする場合に、長さを自由に変えられることで栽培しやすい環境を作りやすくなります。
栽培初期の仮支柱として使用することもおすすめです。
各支柱の特長
キュウリ栽培におすすめの支柱を紹介しましたが、ここで各支柱の特長をまとめておきます。これを参考に、ご自身の栽培方法に合った支柱を選んでいただけると幸いです。
支柱の種類 | 普通の園芸支柱 | リング支柱 | アーチ支柱 | スライド支柱 |
---|---|---|---|---|
適している栽培方法 | 地植え栽培(雨よけ栽培含む)・プランター栽培・鉢植え栽培など | プランター栽培・鉢植え栽培・袋栽培 | 雨よけ栽培 | プランター栽培・鉢植え栽培 |
特長 | どのような栽培方法にも使える。長さや太さなど種類も豊富。 | 栽培スペースが小さい場所でも誘引ができ、植物の生長を促すことができる。 | 普通の園芸支柱と組み合わせることで、雨よけを作ることができ、病気の予防や裂果の防止につながる。 | 伸縮できるため、栽培スペースに合わせた支柱の高さに設定できる。 |
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支柱はいつ立てるのか?
おすすめとしては、定植(植え付け)前、もしくは定植(植え付け)のタイミングです。キュウリは、苗のときは小さいのでそのままでも大丈夫なように感じますが、つるがどんどん伸びますので、適宜、支柱やネットに誘引しないと手のつけようがなくなる場合があります。園芸支柱、ネットは早めに設置し、誘引できる状態にしておきましょう。
キュウリの場合、支柱やネットに誘引をしないで、つるを地に這わせるように伸ばす「地這い栽培」というやり方もあります。立体栽培よりも支柱の準備や誘引などの手間がなくなりますが、大きなスペースが必要だったり、つるの整理が大変だったりします。栽培スペースが限られることが多いと思うので、通常は立体栽培がおすすめです。
興味のある方は「キュウリの地這い栽培」で検索してみてください。
支柱の立て方
次は、キュウリ支柱の立て方について解説します。
支柱の立て方は、栽培方法と植物の仕立て方を考慮して決める
支柱をどのように立てるかは、「植物をどのように仕立てるか」によって変わってきます。キュウリの場合は、一般的に親づる1本仕立て、もしくは親づる・子づる複数本仕立てのどちらかを選択することになります。「節成り性品種」と「飛び節成り性品種」の違いによっても仕立て方を変えたりしますが、今回は最も基本的な親づる1本仕立ての方法について解説します。
また、もう一つ重要なこととして、栽培方法の違いも支柱の立て方に大きく影響します。プランター栽培と普通露地栽培(地植え栽培)では、支柱の立て方は全く異なります。
まずは、ご自身がどのような栽培方法で、どのように植物を仕立てるかを決めておきましょう。そのうえで仕立て方を決めていただけると、理解が早まると思います。下記にそれぞれの栽培方法・植物の仕立て方に対するおすすめの支柱の立て方を記載しておきますので、参考にしてください。
栽培方法 | 普通露地栽培(地植え栽培)・1本仕立て | プランター栽培・鉢植え栽培・袋栽培・1本仕立て | ハウス栽培 |
---|---|---|---|
使用する支柱の種類 | 普通の園芸支柱・らせん支柱 | 普通の園芸支柱・リング支柱 | 普通の園芸支柱・らせん支柱・リング支柱 |
おすすめの支柱の立て方 | 直立式・合掌式・アーチ型(雨よけ) | 直立式・やぐら組み(ピラミッド式)・リング式(あんどん式) | 直立式・アーチ型(雨よけ) |
支柱を立てるときに、土壌が硬かったり、力がなかったりする場合には、穴掘り器や支柱を挿すための治具(補助用具)を使用すると良いでしょう。
直立式
直立式は、最も基本的な支柱の立て方です。誘引用の支柱を地面に対して、垂直に挿します(直立)。
普通の園芸支柱のみで組み上げることができますので、資材もかき集める必要がありません。また、斜めに筋交いを入れることによって、強度を高めることができます。
畝が長い場合には、下記の画像のように横の支えを増やしたり、斜めの筋交いを両端に入れるなどの工夫をすると倒れにくくなります。キュウリの場合は、ネットを張ることによって支柱のない場所でもつるの誘引をすることができます。合掌式に比べると強度が落ちますので、基本的には合掌式で組むことをおすすめします。
合掌式
合掌式は、直立式に並んで一般的な支柱の立て方です。土壌が柔らかすぎる、支柱が深く挿さらないなど、直立式では不安な場合に選択されます。また、1畝に2条(2列)植えたりするなど、複数の列で栽培する場合に、支柱の強度を上げつつ誘引用の支柱を確保することができるため便利です。
キュウリの場合は、側面にネットを張ることによって、子づるなどの誘引がしやすくなるのでおすすめです。
ネットがない場合には、ビニール紐などを上記画像のようにそれぞれの園芸支柱にくくりつけながら設置することによって、誘引箇所を増やすことができます。但し、そこまでの強度はないのでやはりキュウリネットを使用していただくほうが良いと思います。
キュウリの場合は、プランター栽培でも合掌式に園芸支柱を組んで誘引することができます。上記画像のように、合掌式に組んだ後、片面にネットを張り、つるを誘引していきます。支柱は、手の届く高さのもので構いません。
リング式(あんどん式)
リング式は、主にプランター栽培や鉢植え栽培用の方法で、3本程度の園芸支柱を土壌に垂直に挿し、それらの支柱をリングで固定する方法です。狭いスペースでも、誘引するための紐やクリップを固定する場所を多く確保できるため、ガーデニング・ベランダ栽培に特におすすめです。
また、リングではなく、三角形のものなどもあります。
プランターでは、四方の角に支柱を挿す(もしくは固定する)場所が用意されているので、それらに園芸支柱を立てて、ビニール紐で一周まわりを結ぶとあんどん式の組み方になります。ベランダなどの狭い場所でも十分に誘引することができます。もし、プランターに支柱を挿す場所がない場合は、用土に直接挿し込んで問題ありません。
ベランダ栽培の場合は、すぐ近くで植物を観察できるので、アブラムシなどの病害虫の駆除もすぐにできますし、何より果実をギリギリまで付けて収穫することができます。
リング支柱としてセットで売られていることがほとんどです。セリアなどの100円ショップでも購入することができます。
アーチ型
アーチ型は、主にキュウリ2畝の誘引のために組まれます。トマトなどでは雨よけのとして使用されることが多いアーチ支柱ですが、キュウリの場合は雨よけはしません。イメージとしては、合掌式と同じように使用されます。合掌式の場合は、組んだ支柱の中からの作業は難しいですが、アーチ支柱の場合は大きさにもよりますが中に入っての作業が可能となるため、作業性が上がります。
合掌式よりもアーチ型のほうが強度もあり、作業性も上がるため、家庭菜園だけではなくプロ農家でも採用されることが多いです。
支柱同士の固定方法
先述した支柱の立て方を実践する場合、支柱同士の固定も重要となってきます。支柱同士を固定するときに使用する部材は、主に以下の4つです。
- 紐(ビニールひも、麻ひも)
- 専用止め具(クリップ)
- クロスバンド
- 結束バンド(園芸用タイ、ケーブルタイ、インシュロック、タイラップ)
紐(ビニールひも、麻ひも)
最もリーズナブルで強固に固定できるのは、固定箇所を紐で縛ることです。ビニールひもや麻ひもで固く縛っておくと、基本的には解けませんし、ぐらついたりすることはありません(少なくとも一作は問題なくやり過ごせます)。
また、麻ひもなどは、誘引にも使用することができますので、一つあると便利でしょう。
専用止め具(クリップ)
園芸支柱同士を固定するための専用の止め具もあります。園芸支柱同士を十字で固定するものや、合掌式のように斜めで固定するものなど、さまざまな種類があるので、紐などの固定は面倒と思われる方は、一度検討してみると良いでしょう。セキスイの「ニューガーデンクリップ」が種類も豊富でおすすめです。
クリップなどを購入する際には、「対応する支柱の太さ」に注意してください。
クロスバンド
クロスバンドは、園芸支柱を十字に固定する道具です。しっかりと十字で固定できるため、直立式の場合はクロスバンドを使用しても良いかもしれません。
結束バンド(園芸用タイ、ケーブルタイ、インシュロック、タイラップ)
身近にあるもので園芸支柱同士を固定する方法として、結束バンドを使う方法です。結束バンドは、楽な力で締め付けることができるうえに、ほどけにくいという性質を持っています。しっかりと締め付けることができるため、簡単には外れません。
園芸用のタイなどもありますが、ホームセンターにある結束バンドで問題ありません。但し、結束バンドを使用する場合は、屋外で使用することになるため、耐候性のものをおすすめします。
ネットの固定・張り方
きゅうりネットを使用する場合には支柱同様、固定が必要となります。ネットを張る際には、少しコツが要りますので簡単に張り方を紹介します。
まず、ネットに「張りひも」を通す
きゅうりネットの用意ができたら、まずは張りひもをネットに通します。張りひもとは、ネットがたるまないよう、しっかりと固定するために通すひもです。ネットの上段、中段、低段の3本通すと良いでしょう。
ネットを張る
張りひもを通したら、組んだ支柱にネットを張っていきます。ネットは複数箇所固定すると良いでしょう。また、張りひもも同様に固定してください。固定の方法は何でも良いです。ビニール紐でも麻ひもでも、しっかりと固定できるものであれば何を使用してもかまいません。
誘引の方法
植物を支柱に誘引するときに使用する資材は、主に以下の3つあります。
- 紐(麻ひも、ビニール紐)
- 支柱誘引クリップ(くきキャッチなど)
- 誘引テープ・テープナー
紐(麻ひも、ビニールひも)
麻ひもやビニールひもを使って、支柱に誘引します。最も基本的な誘引方法です。
誘引は、植物が倒れたり茎が折れなければ良いので、ある程度間隔を空けて行います。具体的には、2節〜3節に1回、誘引してあげれば問題ありません。実をつけ始めたら、果房が付いた下の節を誘引すると、果実の重さにも耐えられるようになります。
支柱誘引クリップ(くきキャッチなど)
支柱を使って誘引するときに、最も簡単にできる方法が支柱誘引クリップを使う方法です。支柱誘引クリップは、クリップ一つで支柱と茎を固定することができる資材です。「誘引が大変」と思われる方は、導入してみることをおすすめします。
誘引テープ・テープナー
コストが低く、作業量も少なくできる誘引方法として、誘引テープ・テープナーを使用する方法があります。プロ農家は、誘引テープ・テープナーを使用した誘引方法を採用している方も多いです。
他にも、トマトクリップ(誘引紐にクリップを挟み込んで、茎を固定する)なども使用したりします。
キュウリの場合は、ネットに子づるを固定したりするため、誘引テープや麻ひもでの固定が良いかと思います。
キュウリの栽培記事一覧
元肥・追肥のやり方、摘芯(摘心)・誘引・摘葉のやり方、病気・害虫の気をつけるポイント、連作障害など、きゅうり栽培の基本に関しては下記の記事を参考にしてください。