キュウリなど、蔓性(つる性)の植物で立体栽培を行う場合、支柱のほかにネットを張って誘引することが一般的です。ネットを張ることによって、親づるだけではなく横に伸びる子づるも自由に誘引することが可能となります。
この記事では、果菜類の代表格の野菜であるキュウリのネット張りについて、ネットの種類から張り方まで解説します。
ネットを張る理由は?
そもそも、なぜネットを張る必要があるのでしょうか?先述したとおり、ネットを張る理由は「子づるや孫づるなど側枝を誘引するため」です。子づるや孫づるを誘引することによって受光体勢が良くなったり(光が葉に当たりやすくなったり)、子づるなどに着いた果実を支えることができます。
親づる1本での栽培やつる下ろし栽培の場合は、ネットを使わないこともあります。
ネットを張る前に園芸支柱を立てる
露地の地植え栽培やプランター栽培など、栽培方法に限らず、まずは園芸支柱を立てる必要があります。キュウリにおいては、直立式や合掌式、アーチ式の支柱の組み方が一般的です。キュウリ栽培における園芸支柱の立て方は、下記の記事に詳細な解説がありますので参考にしてください。
ネットの種類と特長
一言にネットと言っても、様々な種類があります。今回は、キュウリ栽培によく使われる2種類のネットについて詳しく解説します。
- きゅうりネット
- 園芸ネット
園芸ネットは、ダイソーなどの100円ショップ(100均)でも売っています。気軽に試してみたい方は、それらを購入しても良いでしょう。
きゅうりネット
きゅうりネットは、きゅうりやゴーヤなど蔓性(つる性)の作物によく利用されるネットです。一般的な園芸ネットよりも安価で大きなものが手に入るので、露地の地植え栽培などある程度規模のある圃場に向いています。
一般的に販売されている大きさは、1.8m(高さ)×6m〜100m程度です。家庭菜園など小規模な栽培では「きゅうりネットミニ(1.8m×6m)」の大きさで十分かと思います。
また、きゅうりネットは菱目が採用されていることが多いですが、その網目の大きさも主に2種類あります。特にどちらが良いというわけではありませんので、品種(節成り性なのか、飛び節成り性なのか)や栽培方法に合わせて購入すると良いでしょう。
ネット自体がほつれやすかったり、長さがあって片付けにくいこともあって、基本的には使い捨てで利用されます。ウイルス病などの病害予防の観点からも、使い回しはしないほうが良いでしょう。
園芸ネット
園芸ネットは、主に家庭菜園などの小規模圃場で利用されることが多いネットです。蔓性(つる性)の植物向けに販売されていることも多いですが、アサガオやエンドウなどの作物にも使用できる万能タイプのネットです。プランターなどベランダ栽培でも活躍します。
園芸ネットは、頑丈でほつれにくい使用なので、くり返し使用できます。家庭菜園など、季節に合わせて様々な作物の栽培に使用することができます。
きゅうりネットとは異なり、角目のものが多いです。大きさ(高さ、長さ)、目合いなどを確認してご自身にあったものを選んでください。
ネットの選び方
地植え栽培や施設栽培(ハウス栽培)などある程度の規模であればきゅうりネット
地植え栽培や施設栽培(ハウス栽培)など、ある程度の大きさの圃場でキュウリを栽培するのであれば、きゅうりネットが良いでしょう。家庭菜園においても、1畝5m以上で栽培するのであればきゅうりネットが良いと思います。理由は以下のとおりです。
- きゅうりネットは園芸ネットに比べて安価
- (安価のため)栽培終了後にネットからつる外しをせずに、そのまま処分できる
プランターや鉢でベランダ栽培するのであれば園芸ネット
プランターや鉢でのベランダ栽培や1株程度の小規模栽培であれば、園芸ネットをおすすめします。園芸ネットは、頑丈であるため使い回しができますし、1株〜3株程度であれば、栽培終了後のつる外しも楽に実施できると思います。
各ネットの特長一覧
キュウリ栽培におすすめのネットを紹介しましたが、ここで各ネットの特長をまとめておきます。これを参考に、ご自身の栽培方法に合った支柱を選んでいただけると幸いです。
支柱の種類 | きゅうりネット | 園芸ネット |
---|---|---|
適している栽培方法 | 地植え栽培・プランター栽培・鉢植え栽培・施設栽培(ハウス栽培)など | プランター栽培・鉢植え栽培・袋栽培・ベランダ栽培 |
特長 | 長さなど種類も豊富。また、園芸ネットよりも安価。 | 長さや網目の大きさなど種類も豊富。頑丈でほつれにくい。栽培スペースが小さい場所でも誘引ができ、植物の生長を促すことができる。 |
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ネットの固定・張り方
各ネットの固定、張り方を解説します。支柱の立て方については、下記の記事で栽培方法別(プランター栽培、地植え栽培など)に詳しく解説していますので参考にしてください。
きゅうりネットの張り方
ネットを張る際には、少しコツが要りますので簡単に張り方を紹介します。以下では合掌式をベースに説明しますが、直立式でも同じようにネットを張ってください。
まず、ネットに「張りひも」を通す
きゅうりネットの用意ができたら、まずは張りひもをネットに通します。張りひもとは、ネットがたるまないよう、しっかりと固定するために通すひもです。ネットの上段、中段、低段の3本通すと良いでしょう。
ネットを張る
張りひもを通したら、組んだ支柱にネットを張っていきます。ネットは複数箇所固定すると良いでしょう。また、張りひもも同様に固定してください。固定の方法は何でも良いです。ビニール紐でも麻ひもでも、しっかりと固定できるものであれば何を使用してもかまいません。
きゅうりネットを簡単に張ることができる DAIM の棚支柱セットなどもおすすめです。
園芸ネットの張り方
園芸ネットは、角目であり丈夫な材質でできているため、張りひもを通さずに固定してもダレてくることは少ないです。しっかりと張った状態にして、ビニール紐などで固定しましょう。
ネットの固定方法
ネットを支柱に固定するときに使用できる部材は、主に以下の4つです。
- 紐(ビニールひも、麻ひも)
- 専用止め具(クリップ)
- クロスバンド
- 結束バンド(園芸用タイ、ケーブルタイ、インシュロック、タイラップ)
紐(ビニールひも、麻ひも)
最もリーズナブルで強固に固定できるのは、固定箇所を紐で縛ることです。ビニールひもや麻ひもで固く縛っておくと、基本的には解けませんし、ぐらついたりすることはありません(少なくとも一作は問題なくやり過ごせます)。
また、麻ひもなどは、誘引にも使用することができますので、一つあると便利でしょう。
結束バンド(園芸用タイ、ケーブルタイ、インシュロック、タイラップ)
身近にあるもので園芸支柱同士を固定する方法として、結束バンドを使う方法です。結束バンドは、楽な力で締め付けることができるうえに、ほどけにくいという性質を持っています。しっかりと締め付けることができるため、簡単には外れません。
園芸用のタイなどもありますが、ホームセンターにある結束バンドで問題ありません。但し、結束バンドを使用する場合は、屋外で使用することになるため、耐候性のものをおすすめします。
誘引の方法
キュウリをネットに誘引するときに使用する資材は、主に以下の2つあります。
- 紐(麻ひも、ビニール紐)
- 誘引テープ・テープナー
紐(麻ひも、ビニールひも)
麻ひもやビニールひもを使って、支柱やネットに誘引します。最も基本的な誘引方法です(画像はトマトの例です)。
誘引は、植物が倒れたり茎が折れなければ良いので、ある程度間隔を空けて行います。実をつけ始めたら、果房が付いた下の節を誘引すると、果実の重さにも耐えられるようになります。
誘引テープ・テープナー
コストが低く、作業量も少なくできる誘引方法として、誘引テープ・テープナーを使用する方法があります。プロ農家は、誘引テープ・テープナーを使用した誘引方法を採用している方も多いです。
家庭菜園用には、簡単に粘着できる誘引紙テープなどもあります。
その他の誘引方法
その他にも施設栽培では誘引ひもを使用した誘引など、様々な誘引方法があります。誘引ひもを使用する場合はトマトクリップや誘引クリップ(くきタッチ)を使用して誘引することが多いです。
私も大規模農場でパプリカを栽培していたときには誘引ひもとトマトクリップを使っていました。
また、棚線クリップと言って、横に張ったビニール紐(棚線)に誘引するクリップもあります。
キュウリの栽培記事一覧
元肥・追肥のやり方、摘芯(摘心)・誘引・摘葉のやり方、病気・害虫の気をつけるポイント、連作障害など、きゅうり栽培の基本に関しては下記の記事を参考にしてください。