この記事では、堆肥と有機質肥料・ぼかし肥料などの肥料との違い、堆肥の概要・効果から作り方・使い方まで、詳しく解説します。
堆肥とは
堆肥とは、稲わらや落ち葉、家畜ふん尿(牛糞、豚糞、鶏糞など)、食品残渣などの様々な有機物を微生物の力を使って分解させ、成分的に安定化するまで腐熟させたものです。その過程を「堆肥化」と呼びます。
堆肥化の過程で有機物が分解するときに発生する発酵熱によって、堆肥の温度が上昇し、水分の蒸発が
促進され、堆肥の水分が低下します。また、このときの高温によって病原菌や雑草の種子などを死滅することで、衛生的な堆肥が製造されます。
堆肥と肥料の違い
堆肥は、いわゆる一般的な肥料とは異なります。
「肥料」をどのように定義するかにもよりますが、いわゆる一般的に販売されている化成肥料や有機質肥料とは、少し性質が異なるということだけ覚えてください。
堆肥は、肥料の分類上としては特殊肥料に含まれます。
確かに堆肥は、肥料成分が含まれます。特に牛ふん堆肥、豚糞堆肥、鶏糞堆肥などの動物由来のものは、窒素やリン酸、カリウムも豊富に含まれています。
しかし、堆肥はその肥料成分としての効能というよりは、土壌の改良(土壌改良材)としての効果を期待して施用されます。
堆肥にも肥料成分が含まれているので、施肥設計(どのくらい肥料をやるか)を考えるときには堆肥を含めて考慮する必要があります。「肥料ではない」というわけではありません。
堆肥による土壌物理性、生物性の改良
先述したとおり、堆肥は栄養分を補うと同時に、土壌改良としての効果が期待できます。
堆肥は、下記の2つのポイントに対して、土壌の改良効果を発揮します。
- 土壌物理性(保水性や排水性、通気性、硬さ、ふかふか具合など)
- 土壌生物性(土中の有機物や微生物・小動物の量と活動の活発さ)
堆肥を土作りのときに施用することで、下記のような豊かな圃場(肥沃な圃場)にすることができるのです。
- 微生物の活動が活発になり、有機物の分解が進み、植物に対して持続的に栄養分を補給することができる。また、病害による被害を軽減できる。
- 土壌がふかふかになり、新しい酸素が供給されやすくなるので、作物の根が育ちやすくなる。
- 土壌の水分量がちょうど良い状態を保ちやすくなり、根腐れなども起きづらくなったり、植物の水不足も起きづらくなる。
堆肥の作り方
牛糞や豚糞、鶏糞など動物由来の堆肥を個人で作るのはかなり難しいです。そのような堆肥を手に入れたい場合は、近くの販売店や畜産農家から手に入れるほうが良いでしょう。
しかし、落ち葉や生ゴミ、野菜くずなど家庭から出る身の回りのものを使っても、堆肥を作ることはできます。
一番、手軽にできるのは牛乳パックを使って、生ゴミを堆肥化する方法です。
もっと多くの堆肥を作りたい場合には、ダンボールやコンポストを使用して堆肥化することをおすすめします。
身の回りのゴミなどをリサイクルできるので、SDGs にも繋がります。
堆肥の使い方と注意点
堆肥は、腐熟の度合いによって、その効果や現れ方が異なってきます。基本的には「完熟」させた状態の堆肥(完熟堆肥)を使用することが原則です。しかし、入手した堆肥の中には、分解・発酵が不十分な「未熟堆肥」もありますので注意してください。
未熟堆肥を施用した場合、土壌内で急激に分解・発酵され、植え付けしたあとの植物の根を痛めてしまうこともあります。
基本的には、悪臭がなく、しっかりと水分が抜けているものであれば、完熟していると言えるでしょう。
ホームセンターなどでパッケージとして販売されているものは、しっかりと完熟発酵させてから包装されているので少しは安心感があります。しかし、農家などの製造者から直接仕入れるときにはその状態をしっかりと確認することが必要です。
堆肥は、基本的には土作りのときに施用します。植え付けの2〜3週間前には散布し、土としっかり混ぜ合わせておくと安全です。プランターの場合は、堆肥が植物の根に直接触れないよう、プランターの下部に堆肥を入れ、その上から培養土をかぶせると安心でしょう。
腐葉土は肥料なのか?土壌改良材なのか?
堆肥と同じような資材として、腐葉土が思い浮かぶかもしれません。腐葉土は、土壌改良材となります。堆肥のように多くの肥料成分は含んでいません。
堆肥同様、土壌に混ぜると排水性や保水性、通気性を高める他、土の中の微生物を活発に働かせるなど、土壌環境を良くする働きがあります。