この記事では、化成肥料の基本と効果的な使い方、メリット・デメリット、種類を解説します。
化成肥料とは
化成肥料は、化学肥料の一種であり、主要な三大栄養素とされる窒素・りん酸・カリウム(加里)のうち2つ以上を含むものを指します。(「複合肥料」とは、窒素・りん酸・カリウムを2つ以上含む肥料の総称です)。
定義としては、「数種類の肥料に何らかの化学的工程を加えて製造された肥料」が化成肥料です。化成肥料は粒状や固形(ペレット、ブリケット)になっているものが多いです。
「化成肥料」は「化学肥料」とは違うもの?
結論から話すと、「化成肥料」と「化学肥料」は定義が全く異なります。「化成肥料」は、「化学肥料」に含まれるものとなります。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料)」の2つに分けることができます。
化学肥料とは、化学的に合成、あるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。有機肥料(有機質肥料)は動植物質を原料とした肥料(堆肥や米ぬか、骨粉など)です。
化学肥料は大きく2つに分けることができます。
- 「単肥(たんぴ)」:無機養分一つのみを保証する肥料
- 「複合肥料」:窒素、りん酸、カリウム(加里)のうち二つ以上の成分を保証する肥料
住友化学園芸株式会社がとてもわかりやすく、肥料の分類をまとめています。
化成肥料のメリット・デメリット
化成肥料のメリット
化成肥料のメリットとして主に次にような点が挙げられます。
- 粒状となっていて、粒の形や大きさが均一になっているため、散布しやすい。
- 三大要素がバランス良く含まれており、初心者でも施肥設計をせずに施肥ができる。
- 高度化成肥料の場合、散布量を少なくでき作業時間を減らすことができる。
- 原料の形態の組み合わせや粒の大小、硬軟などで肥効(肥料の効き目)が調節できる(緩効性・速効性)。
- 施肥の作業がしやすく労力が軽減できる。
- 貯蔵期間における吸湿、固結防止に効果的である。
化成肥料のデメリット
化成肥料のデメリットとして主に次にような点が挙げられます。
- 有機質肥料に比べて、土壌改良効果がない。
- 有機質肥料に比べて、過剰施用による根の傷み(肥料やけ)が起こりやすい。
- しっかりと施肥、土壌管理をしなければ、土壌・環境汚染に繋がる。
- 高度化成肥料の場合、均一に撒くのが難しく、取り扱いに注意が必要である。
化成肥料の効果的な選び方・使い方
化成肥料の購入場所
化成肥料は、ホームセンター(コメリ、DCM、カインズなど)や園芸専門店からダイソーなどの100円ショップまで、幅広く取り扱われています。最近ではインターネットでも購入が可能です。
化成肥料の選び方
先に説明したとおり化成肥料には様々な種類があるため、用途によって組み合わせて使用することが重要です。特に、肥料の効き方が異なる緩効性化成肥料と速効性化成肥料はうまく組み合わせることによって植物に栄養を適切に与え続けることができ、より良い作物を栽培することにつながります。
元肥でも追肥でも使える
元肥の場合は、施肥したときから効き始め、少しずつ溶け出して長期間効果が持続する緩行性化成肥料や有機入り化成肥料をおすすめします。堆肥(牛糞、鶏糞、豚糞など)を土作りに施用する場合には、それらの成分含有量も考慮して元肥の量を決めるとさらに良いでしょう。
追肥の場合は、すぐに植物に吸収される速効性化成肥料がおすすめです。特に窒素、カリウム(加里)は植物に消費されるのが早いので適切な時期に速効性の化成肥料を施肥しましょう。速効性化成肥料は肥効が一週間ほどしかもたないため、追肥は一度ではなく作物に合わせて継続的に行いましょう。
化成肥料の種類
化成肥料は、肥効(肥料の効き目)の速さ・持続性や組成、含有量によって分類されます。
緩効性肥料と速効性肥料
緩効性化成肥料は、施肥したときから効き始め、少しずつ溶け出して長期間効果が持続する肥料のことを指します。元肥、追肥、どちらにも使用することができます。緩効性化成肥料は、水や微生物による分解によって効果が出る尿素系の窒素肥料(IB化成やCDU化成、GU化成)や粒の表面を樹脂でコーティングした被覆配合肥料などがあります。
速効性化成肥料とは、施肥後すぐに根から吸収される水溶性の肥料のことを指します。水溶性のため、潅水や雨水によって流されやすいため肥料の持続期間は1週間ほどとなります。代表的なものとして水に溶かして与える液体肥料(ハイポネックスやハイポニカなど)があります。
普通化成肥料と高度化成肥料
化成肥料は窒素、リン酸、カリウム(加里)の三大要素の保証成分の合計量によって、以下の2つに分類されます。
家庭菜園や園芸用の肥料は普通化成肥料が多く、農家の方が使う肥料は高度化成肥料であることが多いです。また、家庭菜園や園芸用の肥料は栽培する作物の種類によってあらかじめ配合を調整しているものもあります。例えば、トマト・ナス・キュウリ用の肥料として「トマト・なす・きゅうりの肥料(N-P-K:5-9-4など)」や花木用の肥料として「果樹・花木の肥料(N-P-K:4-9-1など)」などがあります。
NK化成、PK化成、NP化成とは
化成肥料には、NK化成、PK化成、NP化成と呼ばれるものもあります。これらは「二成分複合化成肥料」と呼ばれ、追肥や土壌の整備に使用されます。
NK化成
窒素とカリウム(加里)を含んだものであり、水稲や野菜の追肥用として広く使われています。硫安系、尿素入り、塩安系、硝安入りの4種類がありますが、塩安系が主体となっています。
PK化成
主にリン酸(P)とカリウム(K)を含んだ肥料です。基盤整備後の水田や造成後の草地、牧野によく使われています。
NP化成
主に窒素(N)とリン酸(P)を含んだ肥料です。実質的に原料の大部分がリン酸アンモニウム(燐安)であり、単独で使われることはほどんどありません。
有機入り化成肥料とは
有機入り化成肥料(有機配合肥料、有機質配合肥料)とは、油かす(油粕)、魚かす(魚粕)等の動植物性の有機物と速効性の化成肥料を組み合わせた肥料となっています。有機物は、微生物などによる分解によって、植物が吸収できる栄養素が生成されます。そのため、緩効性肥料となります。
化成肥料の速効性と有機物の緩効性をうまく組み合わせることによって、効き目が速く長続きする肥料となっています。また、有機物が含有されていることで土壌の物理性の改良にもつなげることができます。