そうか病はみかんなどの柑橘(かんきつ)類やじゃがいもでよく発生する病気です。ここでは柑橘類のそうか病とは何なのか、またそうか病を防ぐために使える農薬やその他の方法もあわせて解説していきます。
そうか病はどんな病気?
そうか病とは?
そうか病(瘡痂病、瘡加病)は、柑橘(かんきつ)類やじゃがいも(馬鈴薯)でよく発生する、「かさぶた」や「いぼ」のような病斑が出る病気です。原因は糸状菌によりますが、柑橘とじゃがいもでは実は原因となる菌は異なります。(ジャガイモは「ストレプトマイセス属菌」という放線菌(細菌の一種)、柑橘系はElsinoë fawcettii Bitancourt et Jenkins(糸状菌 子のう菌類))
柑橘の場合は、葉や果実、枝に病斑を作ります。はじめに小さな水浸状の斑点だったものがいぼ状になったり、かさぶた(瘡蓋)上の病斑(そうか型)になります。
そうか病にかかった果実はそれ以上大きくならず小型のままで、皮が厚くなり糖度も上がりません。このため、商品価値が非常に低くなってしまいます。
柑橘系のそうか病は、よくかいよう病と間違われます。かいよう病との違いは、病斑がかいよう病の方がやや大きく、またかいよう病の方が少し褐色がかっていて、黄緑色の縁取りが見られること、で見分けるようにします。
ジャガイモのそうか病については、下記を参照ください。
そうか病の伝染方法
そうか病は病班の上に胞子を作り、雨によって運ばれて発病します。葉が水滴に濡れることが条件です。新芽に病班ができると次々に若葉に二次感染を繰り返します。4、5月頃に雨が降り続くと、葉が若く軟弱な時期なので、一気に病原菌が広がります。
かかりやすい品種
柑橘類でも、そうか病がかかりやすい品種とかかりにくい品種があります。例えば、温州みかん、レモン、ラフレモン、晩白柚は特にかかりやすく、注意が必要です。逆に、ハッサク(八朔)、夏みかん、伊予柑、ポンカン、タンカン、不知火(デコポン)、はるみ、せとかなどは比較的そうか病にかかりにくい品種と言えるでしょう。
そうか病の防除のポイント
柑橘の場合、そうか病の病原菌は葉や枝の病班にいる状態で越冬します。このため、剪定等を行い、発症した枝をできるだけ取り除いたりすることは大事になってきます。
そうか病は比較的薬剤による防除が効果的です。が、薬剤による科学的防除だけではなく、IPMを念頭に防除計画を立てることが重要です。農薬以外の防除についても記載しますので、是非栽培に役立ててください。
そうか病に効果がある農薬
ボルドー、ICボルドー(銅水和剤)
有効成分の銅剤(ドイツボルドーA)は古くから幅広い野菜や果樹の病害防除に効果を発揮する汎用性殺菌剤です。幅広い病害に効果を発揮します。
ストロビードライフロアブル
ストロビーの有効成分クレソキムメチルは、マツカサシメジの産生するストロビルリン類縁化合物で、灰色かび病にも効果が高く、黒点病にも効くので、そうか病とあわせて三病害の同時予防ができる、果樹の各主要病害に幅広く効く殺菌剤です。
ベルクートフロアブル
フロアブル剤のため粉立ちが少なく、収穫物への汚れも少ないです。幅広い殺菌スペクトラムがあり、多くの病害に対して優れた効果を示します。登録作物が多いため、多品目栽培にも適しています。性状は、類白色水和性粘稠懸濁液体です。
ファンタジスタ顆粒水和剤
新規系統ベンジルカーバメート系の有効成分ピリベンカルブを含有しており、広い範囲の病害に対して高い防除効果を示します。病害の予防効果だけでなく、病斑進展阻止効果もあります。浸達性と浸透移行性の両方があります。性状は、淡褐色水和性細粒です。
アフェットフロアブル
アフェットフロアブルは、性状が類白色水和性粘稠懸濁液体で、ピラゾール系の殺菌剤ペンチオピラドを主成分とするアニライド系の殺菌剤です。 幅広い病害スペクトラムで、多くの対象作物の収穫前日まで使え、幅広い期間で使用することが可能です。
この他、マネージDF、カナメフロアブル、ダイマジン、デランフロアブル、フロンサイドSC、ナリアWDG、パレード15フロアブル、ポリベリン水和剤などがあります。
薬害等を出さないように製品ラベルをよく読んで使用しましょう。上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
殺虫剤はコナジラミだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、オオタバコガ、チャドクガ、アオムシ、毛虫など幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。
耐雨性を高めるための展着剤
そうか病は前述の通り、降雨時に伝染することから、雨の日にしっかり薬剤の効果を効かせれるか、が大事になってきます。農家の方の中には、ミカンハダニ防除に使っているマシン油乳剤を展着剤として混用し、耐雨性(雨が降っても流れにくくする)を高めることで、しっかり効果を持続させて防除されている方もいらっしゃいます。例えば、ジマンダイセンに展着剤アビオンを組み合わせている方もいらっしゃいます。展着剤については、是非下記を参考にしてみてください。
農薬を散布する時期
農薬を散布する時期はそうか病の発生程度に応じて決めますが、多く発生している圃場では発芽初期、落花直後、まだ果実が小さい時期、の3回が目安になります。
雨によって伝染するため、長期間雨が続く時期、梅雨などでは散布回数を増やす必要もあります。
かいよう病の防除に、発芽前にボルドーや銅水和剤を散布した場合は、発芽初期の散布を省略することもできます。他の病気の防除等も検討しながら、効率的な薬剤の散布を行えるとベストです。
耕種的防除
多肥にならないようにする
そうか病は、窒素肥料が多い圃場だと新梢が遅伸びして、発生しやすくなります。このため、土壌調査をして肥料の度合いを把握するなどし、窒素量を適切にコントロールすることが大事です。
剪定をしっかり行い、樹木に日がたくさん当たるようにする
そうか病の病原菌は葉や枝の病班にいる状態で越冬します。このため、病班がある枝の剪定を行い、発症した枝をできるだけ取り除きましょう。
また、枝と枝が密集していて、日が当たりにくい圃場では、そうか病は発生しやすくなります。しっかり剪定を行い、樹木、枝に日光が当たるようにすることで、そうか病の発生を減らすことができます。
雨量を把握し、効果的な化学的防除を
そうか病は雨を介して伝染するため、降雨時にしっかり薬剤の効果を効かせられるか、がポイントです。アメダス、雨量計等を利用し、雨が少ない場合は薬剤散布を遅らせたり、雨が多い時は前倒しで散布する等、雨の量を考慮しながらうまく防除するとよいでしょう。
まとめ
そうか病はみかんなどでは非常によく発生する病気です。多発してしまうと果実の収穫に大ダメージを受けてしまうので、多発する前に防除したい病気です。早期防除が大事です。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。また草花、観葉植物などの家庭園芸用の農薬として、フマキラーが販売するカダンK(有効成分はマシン油、アレスリン(ピレスロイド系))、住友化学園芸のボルン(有効成分はマシン油)、カイガラムシエアゾールなどもあります。手に取ってみて、確認してみてください。
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