クリスマスローズは、キンポウゲ科ヘレボルス属の常緑の多年草であり宿根草です。欧米では、この属を「ヘレボルス」と総称していますが、日本では原種の1つであるニゲルの英名「クリスマスローズ」が一般化しています。
花のように見える部分は、植物学上では「花」ではなく「萼片(がくへん)」という部分であるため、普通の花よりも観賞期間が比較的長いです。また、耐寒性もあるため、冬から早春にかけて楽しめます。常緑で美しい葉を持つ品種が多く、ガーデニングの素材として欠かせないばかりか、切り花、茶花としても人気があります。
クリスマスローズは、個体の変異性が高く、花色、形、姿などが株ごとに異なり、交配によって世界に1つしかない花を作ることができるのも魅力です。この記事では、そもそも肥料は植物、草花にどんな影響を及ぼすのか、基本的な知識をもとに、クリスマスローズを美しく咲かし、長く生長させるためにはどんな栄養素が必要なのか、またどんな時にどんな肥料が有効なのか、初心者の方でもわかりやすく説明します。
クリスマスローズの種類について
クリスマスローズ(ヘレボルス)は大別すると「原種」と「交配種」に分類されます。
原種は、さらに「有茎種」と「無茎種」に区分されます。
- 有茎種:一般に有茎種は花茎から葉が展開し、その頂部に花がつき咲く
- 無茎種:地面から直接、花柄(かへい)や葉柄(ようへい)が出る
交配種は、有茎種間の交配育種と無茎種間の交配育種に区分され、特に無茎種間の交配育種は多種多様な交配がなされていることから、ガーデン・ハイブリッドあるいはヘレボルス・ヒブリドゥスと呼ばれることが多くなりました。花色が豊富となり、ガーデンづくりの一役を担っています。
そもそも植物に必要な養分って?植物が必要な養分に関するおさらい
植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウム(加里)の三要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(中量要素)」、さらに鉄、マンガン、ホウ素をはじめとした「微量要素」が必要です。
チッソ(窒素)は、葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
リンサン(リン酸)は、開花・結実を促し、花色、葉色、蕾や実に関係するため、実肥(みごえ)と言われます。
カリウム(加里)は、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、抵抗力を高めるため、根肥(ねごえ)と呼ばれています。不足すると根・植物が弱ります。
肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)を指しています。その他、肥料についてより詳しいことは、下の記事を参考にしてみてください。
クリスマスローズに使える肥料は、どんな種類があるの?
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
大きな植木鉢で用土を使う場合は、植え付け時や植え替え時に緩効性の化学肥料や臭いの少ない有機肥料を元肥として十分に施し、その後生育を見ながら液体もしくは固形の化成肥料を追肥として施していくと良いでしょう。
植物の種類によっては、肥料をそこまで必要としないものもありますので注意しましょう。
クリスマスローズに肥料をやる時期、頻度
それでは、クリスマスローズの肥料はいつ、どれくらいあげればいいのでしょうか?ここでは、一般的なクリスマスローズの肥料を与える頻度と種類を説明します。
- 春
新芽が出始めるこの時期は、肥料を与えましょう。目安としては、緩効性肥料を一度、鉢植えの場合は用土1L当たり約5g、庭植えの場合は用土1L当たり5g、用土の上にばらまいてください。散布する場所は根元ではなく、鉢の縁側など根元から少し離れた場所がおすすめです。
- 夏
休眠期に入るため、肥料は与えないでください。与えると肥料焼けを起こして弱々しくなり、最悪枯れてしまいます。
- 秋
春と並ぶほどに旺盛に生育を始めるので、この時期にしっかり肥料を施して、花芽を充実させ、新葉を作る必要があります。目安として鉢植えの場合は、液体肥料を製品の説明書の希釈率でうすめて、1〜2週間に一度与えてください。露地植えの場合は、固形の緩効性肥料を秋に1度、春と同量ばらまけばそれで十分です。
- 冬
秋までしっかりと肥料を与えていた場合、この時期は追肥はする必要はありません。あまりにも株や葉っぱが弱っているときは、少量追肥するか、活性剤を与えるなどして様子を見てください。
元肥は、植え付けや植え替えのときに行います。根に優しい肥料であれば、用土に混ぜ込んだり、埋め込んだりしても良いですし、固形肥料の場合は植え付け後に置き肥として錠剤肥料を置いておくのも良いでしょう。
クリスマスローズ肥料 使いやすい固形肥料は?
上記の通り、元肥・寒肥には固形の緩効性肥料、遅効性肥料がおすすめです。また、春秋の追肥としても緩効性の固形肥料は有効です。固形肥料の中で、初心者の方でも扱いやすい肥料をご紹介します。
花ごころ まくだけ!花と野菜の肥料
非常にメジャーな、どんな草花・野菜にも使える緩効性の肥料です。 天然腐植に吸着された肥料成分が、少しずつ溶け出すため、根を傷めません。チッソ・リンサン・カリの三大要素を均一にバランスよく配合しています。腐植が土壌の団粒化を促すので、土壌改良にも役立ちます。
マイガーデン植物全般用
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができます。
栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得しており、植物が肥料を吸収しやすくする働きや、土壌の保水性、通気性を高めるなど、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしています。
また、肥料成分は樹脂コーディングし、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶けだす量が調節され、効き目が持続するリリースコントロールテクノロジーを採用しており、樹脂コーディングのため、肥料が直接根に触れても肥料やけしないのが特長です。元肥、追肥両方に使用可能です。こちらは粒状の製品ですが、液体タイプ(液肥)のマイガーデンもあります。
マイガーデンの肥料は他にも種類がありますよ!
ハイポネックス マグァンプK
ハイポネックスジャパンが販売する元肥用の定番の粒状肥料です。「チッソ・リンサン・カリ」植物の生育に必要な三要素は勿論、マグネシウムやアンモニウムなどの二次要素・微量要素もしっかりと配合されていて、元肥に申し分ありません。土にしっかり混ぜて、大粒で約2年、中粒で約1年、生長効果が持続します。マグァンプK 小粒は追肥に有効です。
また、追肥としては肥効が約2ヶ月続く、マグァンプK 小粒がおすすめです。
クリスマスローズ肥料 追肥に使いやすい液体肥料は?
上記のように、追肥は元肥と異なり、速効性がある肥料がおすすめです。特に、花をきれいに咲かせるためには、リン酸の栄養素が重要です。下記で紹介する肥料は、リン酸がしっかりと配合されていて、手に入りやすく扱いやすいものです。
ハイポネックス 原液
液体肥料(液肥)国内トップシェアを誇るハイポネックスの定番液体肥料です。ハイポネックス原液は、「三大要素(窒素、リン酸、 カリ)」の他、マグネシウムやカルシウムなどの「二次要素(多量要素)」、さらに鉄をはじめとした「微量要素」を含む15種類の栄養素を最適のバランスで配合された液体肥料(液肥)で、水で薄めて使います。
マイガーデン 液体肥料
当製品は、先ほど紹介したマイガーデン植物全般用の効果に加えて、モイスト成分と呼ばれる土の潤い・活力が増す作用があり、保水力と保肥力が高まります。このため、用土に取り入れることで肥料が効果的に染み渡るとともに、暑い夏の水管理に効果を発揮します。液体肥料(液肥)なので速効性が期待でき、追肥用としておすすめの商品です。
バイオゴールドオリジナル
こちらは有機肥料でありながら、即効性があり追肥に向いている珍しいタイプの肥料です。生育に必要な三要素(チッソ・リンサン・カリ)はもちろんカルシウム・マグネシウムをはじめ豊富な天然のミネラル類がたっぷりと、バランス良く含まれています。
有機肥料は臭いが伴うものが多いですが、こちらの商品は施肥後の臭いも気にならず、粒状ですが、ばらまいて使用する他に、水に溶かして液肥として使うこともできますし、肥料焼けも起こりにくいという利点もあります。初めて有機肥料を使用してみたいと思われる方には、試していただきたい商品です。
合わせて使いたい活力剤(栄養剤)
植物の栄養剤として肥料の他に「活力剤」と呼ばれる製品があります。活力剤は、植物の活性を高める目的で使われ「窒素(チッソ)・リン酸(リンサン)・カリウム(加里)」の三要素以外の養分やアミノ酸、フルボ酸などの有機酸が含まれています。
活力剤は、単体で施用するのではなく、あくまで肥料にプラスして施用するものです。肥料はしっかりと適期に施しつつ、植物が弱ってきたり、より綺麗に花を咲かせたい、葉緑素(光合成に影響があります)を増やして葉を青くイキイキさせたいときに有効です。
種類としては液体やアンプルのものがあります。
リキダス
リキダスは、3種類の有効成分コリン、フルボ酸、アミノ酸を配合し、3つの相乗効果で植物本来が持っている力を引き出し、元気な植物を育てる活力液です。また、カルシウムをはじめ、不足しがちな各種ミネラル(鉄・銅・亜鉛・モリブデンなど)が、植物に活力を与え、美しい花を咲かせると共に、葉面散布液としても使用できるおすすめの活力液です。
土壌に挿してそのまま使えるアンプルタイプのものもあります。
植物活力素 メネデール
植物の生長に欠かせない鉄を、根から吸収されやすいイオンの形で含む植物活力素で、発根を促し、元気な植物に育てます。肥料でも農薬でもないので気軽に使用できます。
(補足)水はどれくらい与えればいいの?
露地植えの場合
露地植えの場合は、基本的に水やりを気にする必要はありません。夏の晴天が続いて土が乾燥しているときに水やりをすると良いでしょう。土の温度を気化熱で下げるために夕方にたっぷりと与えると良いでしょう。
鉢植えの場合
鉢植えの場合は、表土が完全に乾燥したらたっぷり水やりを行ってください。水やりの時間帯は、暑くない日は午前に、暑い日は夕方に行ってください。鉢底の皿に水が溜まる場合は、根腐れの元になるため水を捨てるようにしてください。梅雨時期や雨の時期は過湿状態のため、水やりする必要はありません。
(補足)クリスマスローズの植え替え・増やし方について
クリスマスローズの植え替えについて
発芽から6年以上経ち、最初の開花から4年以上経った大株で花つきや生長が鈍ったものは、株分けを行います。別の鉢に「赤玉土3割・腐葉土3割・パーライト ・ゼオライト2割・川砂や軽石1割」を目安に配合した水はけの良い用土を混ぜ入れて、植え替えします。
株分けは、鉢から株を取り出して痛んだ根を切り取って取り除き、株をすっぱりと2つに分割してください。植え替え・株分けの適期は10月頃です。作業は花芽を傷めないように慎重に行い、株分け後は若干の遮光をして養生してください。
クリスマスローズ の増やし方
クリスマスローズは、種子をつけやすく、種子の発芽率が高い草花なので、挿し木ではなく種子を採取して播種(種まき)をすると良いでしょう。基本的なやり方としては、ポットに培養土を入れ、種まきを行い、発芽させて育苗し3年かけて開花させます。
ただし、原種の場合は、株分けに不向きな有茎種のフェチダス、アウグチフォリウス、リビダス、無茎種のヴェシカリウス以外は、原則株分けで増殖させます。
(補足)その他クリスマスローズ 管理の注意点
日当たりについて
クリスマスローズは、日陰の植物というイメージが先行していますが、他の植物と同様に適度な日光を必要とします。置き場所は、直射日光が当たらない落葉樹の下などが最適で、合わせて、水はけ、風通しの良い場所を選びましょう。
冬は寒風、霜よけができる軒下などに移動させると花を長く楽しむことができます。
病気、病害虫について
クリスマスローズで気をつけたい病害虫は、糸状菌(カビ)による病気として、葉や根茎の灰色かび病、ウィルスによる病気として、ブラックデス、モザイク病、害虫は、アブラムシ、ヨトウムシ などに注意が必要です。
カビ系、特に灰色かび病を防ぐには、マルチングを避け、風通しの良さと過湿に注意して予防しましょう。追加の対策として、ダコニールなどの薬剤を2ヶ月に1度程度、年間を通して定期的に散布して防除するのも有効です。
ウィルス、害虫系を防ぐには、咲き終わった花をこまめに取り除く、またべニカのような殺虫剤やオルトランやアドマイヤーを交互に2ヶ月に1度、年間を通して定期的に散布し、害虫駆除や防除、殺菌を徹底してください。
植物別のおすすめ肥料
農家webには、植物別におすすめの肥料をまとめている記事がたくさんあります。
ガーデニング植物におすすめの肥料
観葉植物におすすめの肥料
多肉植物におすすめの肥料
サボテンにおすすめの肥料
バラにおすすめの肥料
バラ向けの肥料は数多くあります。しっかり根や茎を丈夫にしたい、花を美しく咲かせたい、等用途によって上手く使い分けたいですね。バラの肥料については、下記をご参考ください。
紫陽花(アジサイ)におすすめの肥料
紫陽花(アジサイ)は、樹高1~2mの落葉低木です。基本的には上記でおすすめした肥料であれば間違いはありません。しっかりと元肥を土中に施肥し、花が咲く開花期の6~7月に肥料を切らさないように、追肥を行ってください。
洋ランにおすすめの肥料
胡蝶蘭におすすめの肥料
胡蝶蘭は、特に肥料の与える時期は要注意で、「生育期」といわれる春から秋ごろ(気温でいうと15°C以上が目安)に与えるようにしてください。
沈丁花(ジンチョウゲ)におすすめの肥料
沈丁花(ジンチョウゲ)は3月前後に花を咲かす、日本古来から愛されている花で庭によく植えられます。特に肥料を与えなくても毎年花は咲かせることはできますが、花を咲かした後、また株が生長する9月、また冬の時期に、元肥に使う緩効性肥料を少量与えることで、花を毎年しっかりと咲かせることができます。
睡蓮(スイレン)におすすめの肥料
その他
その他にも植物ごとにおすすめの肥料を掲載した記事がありますので、検索欄に植物名を入れて検索してみてください。
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