オリヅルラン(折鶴蘭)は、丈夫で日陰でも育つので水栽培(水耕栽培)でも育てやすい観葉植物です。ここでは子株や株分けしたオリヅルランから始める水栽培の手順や、ハイドロカルチャ―への植え替え、水耕栽培の育て方をわかりやすく説明します。
オリヅルランの基礎知識と水栽培を始める時期
オリヅルランの特徴
植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると枯れずに育つのかわかってきます。
熱帯に自生するオリヅルランは、暑さに強く日を好みますが直射日光が苦手です。日陰でも育つ耐陰性にもすぐれているので室内での栽培も可能です。品種にもよりますが寒さにも比較的強く、東京より西の暖地であれば屋外でも育てることができます。また根が多肉質なため乾燥にも強い初心者の人でも育てやすい植物です。
オリヅルランの一番の特徴は、ランナー(匍匐茎)と呼ばれる細い茎が伸びその先に子株をつけます。その姿が折り鶴のように見えることから、折鶴蘭と名づけられました。英語では英名はスパイダープラント(Spider plant)と呼ばれています。
学名 | Chlorophytum |
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属名 | キジカクシ科オリヅルラン属 |
原産地 | 南アフリカ |
樹高 | 5㎝~30㎝以上 |
耐寒性等 | 耐寒性 普通 耐暑性 強い |
花言葉 | 「子孫繁栄」「集う祝福」「祝賀」 |
水栽培を始める時期
水栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。オリヅルランの生育期は4月~11月。水栽培を始めるのは、この時期であればいつでも行えます。できれば株分けの時期で、生育旺盛な5月~9月が適期です。
オリヅルランの苗の準備
オリヅルランの開花時期は春から夏で、花茎をのばして花が咲きます。この花茎がランナーとなり先端に子株をつけます。子株は根が出たら株が繁りすぎるので剪定して親株から切り離します。オリヅルランはこの子株から増やすことができます。ランナーが付かない品種は株分けで増やします。
子株を使う場合
水栽培で増やしたい子株は、ある程度大きく成長しているものを選びましょう。目安は葉が8枚~10枚ほどついていること。この株から白い根が生えている場合もあります。ランナーは根元から切っても子株の部分だけ切り取ってどちらでも問題ありません。
株分けした苗を使う場合
オリヅルランの中には、ランナーを出さない品種「シャムオリヅルラン」もあります。また株が十分生長しないとランナーはでてきません。そんな場合でも株分けをして増やして水栽培を始めることができます。
株分けの手順
- 株分けする鉢植えのオリヅルランは、事前にしばらく水やりをせず乾いた土の状態で始めます。
- 鉢からオリヅルランを取り出し、根から3分の一程度土をほぐして落とします。
- 清潔なハサミで株を切り分けます。
- 水栽培に使う子株は、土をすべて落とし根を水でよく洗い土を落とします。園芸用のシャワーノズルなどがあればより根元の土を落とすことができます。
- 傷んだ根や、長すぎる根は清潔なハサミで切ります。
オリヅルランの子株の挿し芽(水栽培)
準備するもの
- オリヅルランの子株
- 透明な器(空き瓶やグラス・ペットボトルなどでもOK)
- メネデール(発根促進剤なくても可・あると発根の成功率が上がります)
手順
- 容器に水(水道水)を入れます。メネデールを使う場合は100倍に希釈した水を使います。
- オリヅルランの子株を入れます。
- 発芽するまで2~3日に1回に水は変えましょう。
- 2週間程度は明るい日陰で室内で管理しましょう。
- 根が十分に発根したら、ハイドロカルチャーや水栽培(水耕栽培)で育てましょう。
発根促進剤について
生命力の強いオリヅルランは、生育期であれば水だけでも発根しますが、発根を早くしたり太く丈夫で元気な根を促進させるために、発根促進剤も有効です。植物活力素 メネデールは、発根だけでなく肥料でも農薬でもないので、発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます。水替えのときに発根するまで入れると効果的です。水替えの都度でなくとも、1週間に一度でも入れてあげる、また希釈率を200倍にしても効果はあります。
オリヅルランの水栽培の手順
準備するもの
- 水挿しで発根したオリヅルランの苗 or 株分けして土を洗い流したオリヅルランの苗
- 容器(透明なガラスのほうが根の成長も見え水量も調整しやすい)
- 根腐れ防止剤(ミリオンA・ゼオライトなど)
手順
- 器の底に根腐れ防止剤をいれます。鉢底が隠れる程度OK
- 苗を入れます。
- 器に水道水を入れます。この時の水位は根が全部浸からない程度。3分の2が水に浸かっているぐらいがよいでしょう。せめて3㎝程度は空気に当ててください
- 水替えは1週間に一度程度行います。根腐れ防止剤を使わない場合は2~3日に一度は替えます。
ハイドロカルチャーへの植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
オリヅルランは、ランナーを伸ばした子株を垂らした姿が魅力のため、ハンギングにして飾りたいという人にはハイドロカルチャーもおすすめです。
準備するもの
- 水挿しで発根したオリヅルランの苗 or 株分けして土を洗い流したオリヅルランの苗
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- オリヅルランの苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の6分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
ハイドロカルチャーに使う培土について
ハイドロカルチャーで使う土の代わりの用土(培土)は、ハイドロボールが有名ですがヤシの実からできたベラボンもおすすめです。ベラボンは水を含むと1.5倍に膨張して乾くと収縮します。それにより鉢の中に酸素が多く取り込まれ、根の張りがよくなります。
ただし使い方は、ハイドロボールとは異なるので注意が必要です。植え替えるときには根腐れ防止剤は不要です。根はしっかり固める必要があります。ひっくり返しても落ちないぐらい、きっちり押し固めます。水やりは2回に分けて、たっぷり与えます。鉢が完全に乾いてから水やりをしましょう。
ホームセンターなどでも販売されています。オリヅルランにはベラボン・プレミアムがおすすめ。1リットルなら300円程度です。
またオリヅルランにはジェリーボールもおすすめです。商品によって名前はバブルジェリー、アクアジェル、プランツジェル、マジッククリスタルボール、ゼリーボール、プラントビーズ、ジェルポリマーなどとも呼ばれます。ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性ポリマーを素材とした、水で膨らむビーズです。
見た目も涼し気で、保水性もあるのでガラスの器などにいれるて飾るとインテリアにもなります。水やりは器の6分の1程度入れて、ジェルポリマーが乾燥して小さくなってきたらまた水を追加します。ただし小さなお子様がいる場合は誤飲に気をつけてください。
オリヅルランの水栽培での育て方
置き場所、日当たり
オリヅルランは耐陰性があるので、日当たりの悪い場所でも育つことができます。しかし長期間日陰に置くと、株が軟弱になったり、ヒョロヒョロと徒長することもあります。また斑入り品種は日に当てないと斑がぼやけてしまうこともあります。明るい日陰もしくは夏以外は、カーテン越しの光が当たる場所で管理しましょう。直射日光は葉焼けや、水栽培の場合は容器内の水温が高くなりすぎる危険があるため、避けましょう。
オリヅルランは品種にもよりますが葉が固い品種(ソトフオリヅルラン)のほうが耐寒性は強く、葉が柔らかい品種(ナカフヒロハオリヅルランなど)は耐寒性は少し弱いです。またシャムオリヅルランは耐寒性はさらに弱く冬に葉が枯れます。
室内で育てている場合は特に心配ないでしょう。ただし昼に日差しの当たる窓辺にそのまま置いておくと、夜は気温が下がり寒くなります。置き場は温度が5℃以下にならない場所で管理して冬越ししましょう。ベランダなど外で管理している場合は、霜に当てると葉が枯れるので注意しましょう。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、弱って枯れてしまう可能性もあります。特に夏場は注意が必要です。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。生育期である春から秋は、鉢の中が乾いてから2日~3日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の6分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから2~3日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。秋から休眠期の冬は成長が鈍化しますが、室内であれば成長しているので同様に水やりをしましょう。乾燥時には霧吹きで葉水を与えて湿度を与えてください。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、ハイドロボールを使う時は水位計があると安心です
肥料
オリヅルラン栽培は、肥料はそれほどなくとも育ちます。しかし水栽培は土から栄養が取れないため肥料を使うと生育が早くなったり、葉が大きくつややかに育ちます。水栽培の肥料は、液体肥料(液肥)を薄めて使います。春から秋まで月に2回ほど液体肥料を与えます。冬も暖かい場所で管理する場合で新芽がでているようなら同じように与えましょう。水の交換のときか、ハイドロカルチャーの場合は水やりのときに水代わりに規定量より薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水栽培やハイドロカルチャーに使える液肥は、ハイポネックスやハイポニカ液体肥料や水草用メネデールなどがあります。
水栽培(水耕栽培)のメリット
水耕栽培は、家庭菜園でも農家でも行われる栽培方法ですが、家庭で水耕栽培をするメリットはいくつもあります。
- 室内でも気軽に栽培できる
- 身近にある手軽なもので栽培ができる
- 土作りが不要である
- 無農薬・減農薬栽培がしやすい(害虫がつきにくい)
- 水やりの手間を少なくできる
- 小さなスペースでも栽培できる
- 植物の生長が早くなるとともに、質が安定しやすい
- 見た目をおしゃれにすることで、インテリアとして楽しむことができる
しかし水だけでは土に比べて養分が足りないため、植物を大きく育てることには不向きです。また日光が必要な植物にはLEDライトなど初期投資がかかることもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまでオリヅルランの水栽培(水耕栽培)について説明してきましたが、オリヅルランは丈夫で育てやすく、小さなものなら100均でも手に入る手軽な観葉植物です。NASAが発表した空気清浄機能の高いエコプラントにも選ばれていて、耐陰性もあるため水栽培におすすめです。
オリヅルランは子株がどんどん増えるので、水挿しで増やして他の観葉植物との寄せ植えとしても人気の植物です。
水栽培は、土や病気の心配も少なく手入れも簡単です。初心者の方でも思いついたら、水とペットボトル・空き瓶などの器があればすぐ始められる栽培方法です。ハーブなどは収穫も楽しめます。家の中にグリーンがあると癒されます。ぜひこの記事を参考にしてのオリヅルランの水栽培を始めて、おしゃれにお部屋に飾ってみてください。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。観葉植物だけでなく、多肉植物や花を楽しむ球根、野菜やハーブなどは収穫も楽しめます。
品種名から栽培方法を探すことができます。