有機栽培を行っている人には、有機栽培の肥料として鶏糞を肥料にするのはよく聞かれます。ここでは、白菜(ハクサイ)の肥料に鶏糞は有効なのか、また使い方の基本についてもわかりやすく説明します。
白菜(ハクサイ)栽培に鶏ふん肥料は有効か
結論としては、「白菜(ハクサイ)の肥料として鶏糞肥料は使える」といえます。
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。
肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
しかし白菜の施肥量は全体で10a当たり成分でおおよそ窒素28kg,リン酸20kg,カリ25kg(参照:埼玉県農作物施肥基準)が目安です。葉肥といわれる窒素を多く必要とします。このため窒素分を基準にして鶏糞を施肥すると、リン酸や石灰が過剰になりすぎるため、化成肥料と併用するのがおすすめです。また白菜の追肥には窒素分を補充するのが目的ですので、鶏糞は元肥で使うのがおすすめです。
鶏糞肥料の使い方
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
元肥の方法は、全面施肥と溝施肥があります。どちらでも可能ですが、白菜は栽培期間が長いため溝施肥で行われることが多いです。乾燥鶏糞なら植え付けの1か月前、発酵鶏糞であれば1週間前までに行います。鶏ふんの施肥量はリン酸を基準にして施肥量を決め、チッソの不足分は硫安や油粕を併用します。
- 栽培するスペース(畝)を決め、深く耕し幅60cmほどの畝を作ります。
- 畝の中央に深さ30cmほどの植え溝をつくり、1㎡あたり堆肥2~3kg、鶏ふん肥料300g~500g、硫安30g~50gを施し、高さ10㎝ほどの畝をたてます。
- マルチを張って種をまくもしくは苗を植え付けましょう。
堆肥について
健全な白菜を栽培し、収穫するためには土作りが重要です。堆肥をいれると土がふかふかになり、土の通気性、保水性、排水性、保肥力もあがります。また肥料は植物に大切な3要素(チッソ・リン・カリ)が含まれていますが、堆肥には、少量の3要素と吸収量は少ないですが、必要な微量要素が含まれています。
鶏糞も堆肥ですが、土をふかふかにする効果はあまりないので鶏糞は肥料として使い、土壌改良には、牛糞や馬糞、パーク堆肥などを使うとよいでしょう。
また土壌酸度の調整も必要です。白菜栽培に適した土壌酸度(pH)は、6.0〜6.5です。土壌が酸性に傾いていると根こぶ病にかかりやすいため、土の酸度が高いようなら、苦土石灰で調整します。苦土石灰は、堆肥や鶏糞と一緒にいれると堆肥や鶏糞に含まれるチッソが、アンモニアガスとして逃げてしまうので堆肥を入れる1週間前までに施しましょう。
追肥
種を直植えした場合は、本葉が2枚の頃に2本に、本葉が6枚~7枚の頃に間引いて1本にした後に追肥を施します。1株あたり化成肥料を7g程度をばらまいて、土と軽く混ぜて株に土寄せしておきます。その後は2週間おきに、1㎡あたり30g程度の化成肥料を畝の側方にまいて、表土を軽く耕す中耕をして土寄せを行います。結球が始まったら最後の追肥をしてその後は肥料は与えません。
苗を植え付けた場合は、植えつけ後2週間後から追肥を始めます。最初の追肥は、株元に1株あたり7g程度の化成肥料をまいて土寄せします。そその後は2週間おきに、1㎡あたり30g程度の化成肥料を畝の側方にまいて、表土を軽く耕す中耕をして土寄せを行います。結球が始まったら最後の追肥をしてその後は肥料は与えません。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞肥料には色々な製品がありますが、大まかには以下の通り「乾燥鶏糞」、「醗酵鶏糞」、「炭化鶏糞」のように分類することができます。状況に応じて、適したものを利用するようにしましょう。
乾燥鶏糞
乾燥させた鶏糞です。醗酵(発酵)処理や炭化処理をしていないため、肥効が相対的にゆっくりであることが特徴です。また、安価であることも特徴のひとつです。未発酵の状態のため、元肥として使いましょう。相対的に臭いは強めですので、住宅街では要注意です。
醗酵鶏糞
醗酵(発酵)処理をした鶏糞です。完熟していない鶏糞を散布すると、分解にともなってアンモニアガスが発生し、植物の生育障害を引き起こすことがあります。醗酵(発酵)処理済みの鶏糞では、植物の生育障害を引き起こす可能性を小さくできるほか、臭いも大幅に緩和されている特徴があります。
東商が販売する「醗酵鶏ふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=4.3-2.5-2.1となっています。そのほか、マグネシウムや微量要素である亜鉛なども含まれています。菜園、庭木、花壇、鉢、プランターなどで幅広く利用できます。粉状のほか、粒状あるいはペレット状(ペレットタイプ)もあります。
炭化鶏糞
鶏糞を高温処理し、炭化させたものが炭化鶏糞です。したがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。一般に、高温処理された炭化鶏糞では、チッソ成分をあまり含まないので、灰分として施すと良いでしょう。
その他 白菜におすすめの肥料
有機肥料
白菜には鶏糞が有効なことは説明しましたが、このほか米ぬか、油粕、ぼかし肥料などの有機肥料もつかうことができます。油粕は窒素分が多いので追肥にも使えます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。追肥にはチッソ肥料の硫安や尿素でもよいでしょう。また白菜専用の肥料も初心者の人にはおすすめです。
鶏ふん肥料について
鶏ふんは安価で、肥料成分が多いので農家でも注目の肥料です。しかし化成肥料とは異なり、肥料成分もそれぞれ異なり、すべての窒素がすぐ効くわけではありません。土壌や環境、地域によっても使い方は異なりますので、化成肥料や有機配合肥料などと組み合わせて、自分なりの使い方を見つけていきましょう。