有機肥料として庭や畑によく使われる鶏ふんはスイカの肥料として使えるのでしょうか。ここでは、スイカ栽培に鶏ふんは使えるのか、鶏ふんの特性も踏まえ、丁寧に解説します。
スイカに鶏ふん肥料は使えるか
結論としては、「スイカの肥料として鶏糞肥料は使える」といえます。
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。
肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
鶏糞は、同じ家畜糞類の牛糞や豚糞と比較されることが多いです。家畜糞類は、特殊肥料のため成分含有量に幅がありますが、かつて農林水産省が実施した調査では以下の値が示されています。
家畜由来の肥料の種類 | N(窒素)% | P(リン酸)% | K(加里)% |
---|---|---|---|
牛糞 | 1.9 | 2.3 | 2.4 |
豚糞 | 3.0 | 5.8 | 2.6 |
鶏糞 | 3.2 | 6.5 | 3.5 |
製造・利用の現状とその成分的特徴, 2000より)
鶏糞の特徴は、下記のとおりです。
- 成分の特徴:鶏糞、牛糞ではP(リン酸)・K(加里)が、豚糞ではP(リン酸)が、比較的多く含まれています。また、牛糞や豚糞に比べて「窒素・りん酸・加里」などの肥料成分がバランス良く含まれていることが特徴です。
- 分解の速度:家畜糞類の分解速度としては、鶏糞が最も早く、牛糞と豚糞はそれより遅いです。速効性のある鶏糞は追肥に利用され、牛糞や豚糞(および馬糞)は元肥として利用されることが多いです。
- 購入のしやすさ:鶏糞は、堆肥や肥料としてホームセンターなどで安価に購入できる資材です。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞は、乾燥させた「乾燥鶏糞」、醗酵(発酵)させた「醗酵鶏糞」、焼却することで窒素の割合を減らした「炭化鶏糞」のように分類することができます。鶏の違いで、同じ鶏糞といっても、カルシウムなど含有量が大きく違う場合もあります。製品の説明を確認するようにしましょう。
土壌と肥料について
スイカに限らず、野菜づくりには土づくりが大切です。水はけと通気性がよく水持ちのよい土が野菜づくりには必須です。そのためには、堆肥を土に入れてよく耕して土を団粒構造にします。
堆肥とは、鳥や豚・牛などの家畜のふんや、わらや落ち葉などの有機物を堆積して発酵させたもので、腐葉土も堆肥です。堆肥で土づくりをしっかり行い、さらに元肥を施し足りない肥料分を補います。
鶏ふんは堆肥として使うこともあります。堆肥として鶏ふんを使った場合は、牛糞を使った場合の同量の化成肥料を元肥として施肥すると肥料の上げすぎになるので注意しましょう。
スイカへの鶏ふんの使い方
鶏ふんは、スイカの肥料として使うには元肥として使いましょう。スイカは、つる性のため生育初期に肥料が効きすぎるとツルや葉がのびすぎて花や実がつきにくくなる「つるボケ」をおこします。鶏糞は牛ふんと比べ窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。堆肥として使う場合は肥料の量には注意が必要です。
また鶏ふんは速効性が高いとはいえ、化成肥料には及びません。スイカは適期にしっかり窒素とカリ分を追肥することが大切なため、追肥には化成肥料がよいでしょう。
スイカの肥料時期と与え方
スイカは、植え付けから花が咲くまではあまり肥料は必要ありませんが、実がついてからは肥料を多く必要とするため追肥を行います。元肥は控えめに追肥はしっかり行います。
元肥は、土を幅40㎝ほど掘り起こして、底に堆肥と緩効性肥料を入れその上に掘り起こした土をいれておく、鞍築を植え付け15日前までに行っておきましょう。追肥は、実が鶏卵ほどの大きさになってから化成肥料をところどころにばらまきます。3週間後にもう一度同様に追肥しましょう。
その他 スイカにおすすめの肥料
有機肥料
スイカ農家は化成肥料を使うことが多いようですが、元肥として有機肥料もつかうことができます。油かすは光合成を促すことから実が甘くなるともいわれます。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
主に、窒素は葉や茎、リン酸は花や果実(実)、カリウムは根の生長をサポートします。
化成肥料
化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。追肥には、NK化成(16-0-16)など窒素とカリのみを含む肥料がよいでしょう。
スイカ専用の肥料も初心者の人にはおすすめです。
スイカの栽培に関する記事
スイカを育てていて、肥料を与えたにもかかわらず、育ちが悪かったり元気がなかった場合には肥料不足だったのかと不安になりますよね。スイカの肥料不足の症状や対処法などの記事もあるので参考にしてください。
スイカは地植えの他、小玉スイカであれば水耕栽培やプランターでも栽培が可能です。また病害虫が発生した場合は、農薬をつかって駆除する必要もあります。