有機肥料として庭や畑によく使われる鶏ふんはネギの肥料として使えるのでしょうか。ここでは、ネギ栽培に鶏ふんはおすすめなのか、鶏ふんの特性も踏まえ使い方など、丁寧に解説します。
ネギに鶏ふん肥料は有効か
結論としては、「ネギの肥料として鶏糞肥料はおすすめ」といえます。
鶏糞にはネギに必要な肥料分が豊富に含まれており、元肥だけでなく追肥にもつかうことができます。価格も化成肥料より安価なことから経済的にもメリットがあり、有機栽培の農家にも使われています。
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。
肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
ネギ栽培での鶏ふん肥料の使い方
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
元肥は、ネギの苗の植えつけ時に行います。溝を掘り苗を並べます。溝の深さや幅などは下記の表を参考にしてください。浅く土をかぶせて踏みしめます。そこに鶏糞を撒いてさらにワラを敷きます。
溝の幅 | 溝の深さ | 溝と溝の間 | 条間(列間) | 株間(苗と苗の間隔) |
---|---|---|---|---|
20cm | 20cm〜30cm | 80〜90cm | 1溝に1列植え | 5〜15cm程度 |
土壌と肥料について
健全なネギを栽培し、収穫するためには土作りが重要です。土作りは、遅くとも植え付けの2週間以上前には行いましょう。土壌状態にもよりますが1㎡あたり、牛糞などの堆肥を1kg苦土石灰100g程度が目安です。ネギ栽培のための土作りについて、大事な点は以下のとおりです。
- 土壌酸度(pH)は、弱酸性(pH6.0〜6.5)になるように調整する。酸性側によっている場合は、アルカリ性資材(苦土石灰などのカルシウム資材など)で矯正する。
- 物理性が悪い土壌(粘土質の土壌や水はけの悪い土壌)では、栽培を避けるか、堆肥などの有機資材を多く使用して改善しましょう。
- ネギの根張りを良くするために、土壌にはしっかりと苦土(マグネシウム)を散布しましょう。苦土(マグネシウム)は、ネギの根張りを良くしてくれ、初期生育がよくなったり、早期に収穫することが可能となる効果があります。
追肥
栽培期間の長い、長ネギ(根深ネギ)の追肥は白い根の生長に合わせて、1か月に1度、発酵鶏糞をばらまき、土寄せをします。収穫まで3回ほど行います。
葉ネギも九条ネギなどは、収穫まで時間がかかるので長ネギと同様に、1か月に1度発酵鶏糞を施肥します。小ネギなど収穫まで短いものは元肥だけでも育ちます。大きくなったものから葉の部分だけ切り取って収穫し、追肥で発酵鶏糞を与えておくと、新芽がでて再度収穫することができます。発酵していても根に肥料がつくと肥料焼けをおこすこともあるので気をつけましょう。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞肥料には色々な製品がありますが、大まかには以下の通り「乾燥鶏糞」、「醗酵鶏糞」、「炭化鶏糞」のように分類することができます。状況に応じて、適したものを利用するようにしましょう。
乾燥鶏糞
乾燥させた鶏糞です。醗酵(発酵)処理や炭化処理をしていないため、肥効が相対的にゆっくりであることが特徴です。また、安価であることも特徴のひとつです。未発酵の状態のため、元肥として使いましょう。相対的に臭いは強めですので、住宅街では要注意です。
醗酵鶏糞
醗酵(発酵)処理をした鶏糞です。完熟していない鶏糞を散布すると、分解にともなってアンモニアガスが発生し、植物の生育障害を引き起こすことがあります。醗酵(発酵)処理済みの鶏糞では、植物の生育障害を引き起こす可能性を小さくできるほか、臭いも大幅に緩和されている特徴があります。
東商が販売する「醗酵鶏ふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=4.3-2.5-2.1となっています。そのほか、マグネシウムや微量要素である亜鉛なども含まれています。菜園、庭木、花壇、鉢、プランターなどで幅広く利用できます。用途としても、元肥、追肥、寒肥、お礼肥など幅広く利用できます。粉状のほか、粒状あるいはペレット状(ペレットタイプ)もあります。
炭化鶏糞
鶏糞を高温処理し、炭化させたものが炭化鶏糞です。したがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。一般に、高温処理された炭化鶏糞では、チッソ成分をあまり含まないので、灰分として施すと良いでしょう。
その他 ネギにおすすめの肥料
有機肥料
ネギには鶏糞が有効なことは説明しましたが、このほか米ぬか、油粕、ぼかし肥料などの有機肥料もつかうことができます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。追肥には、NK化成など窒素とカリのみを含む肥料でもよいでしょう。またネギ専用の肥料も多く販売されていますので、初心者の人にはおすすめです。