有機肥料として庭や畑によく使われる鶏ふんは人参の肥料として使えるのでしょうか。ここでは、鶏ふんの特性も踏まえ、人参の肥料としての使い方などわかりやすく説明します。
人参栽培に鶏ふん肥料は使える?
では人参栽培に鶏糞は使えるのでしょうか。結論としては「人参の肥料として鶏糞肥料は使える」といえます。しかし鶏糞は肥料分も多く、カリウムも多く含まれていることから、肥料やけや病気の発生などにつながるため、使い方には十分な注意が必要です。
鶏糞肥料は石灰分(カルシウム)も多く含んでおり、その特性上、土壌酸度(pH)がアルカリ性に傾きやすくなります。人参は土壌pHは、5.5~6.5で弱酸性を好みます。土づくりには鶏糞の特徴を考慮して酸度調整が必要になります。
また人参は、未熟有機物を大量に施肥すると、また根や発芽不良、苗立枯れ病などを発生しやすくなりますので、十分に腐熟させてから植えつけすることが重要です。
鶏糞だけで肥料は足りるのか
人参は品種や、育てる場所によって施肥量は異なりますが、1㎡あたり、窒素(N)=15g・リン酸(P)=20g・カリ(K)=15g程度が目安です。土壌が肥えている場合は、窒素量は3割ほど減らします。
人参の肥料は元肥を施し、葉が4~5枚になり最終の間引きが終わってから1度追肥します。元肥で施肥量の8割施し、追肥で残りの2割を施します。
商品によって成分量にかなり差がありますが、リン酸が多く含まれているのもが多いのでリン酸を基準に施肥量きめるとよいでしょう。
また畑などではリン酸などは土壌に残っていることも多くあります。農家では土壌調査をして施肥量を決めますが、特に窒素が過多になると障害がでやすくなります。
鶏糞は肥料分が多く含まれているため、鶏糞を元肥、追肥両方で使うこともできますが、家庭菜園などでは元肥に鶏糞を使った場合は、追肥で化成肥料などを使って調整するとよいでしょう。
鶏糞肥料の使い方
人参の肥料として使うには、元肥で使いましょう。よい人参をつくるには土づくりが大切です。堆肥はできれば前作までに施しておくほうが安心です。元肥は全面施肥が一般的ですが、未熟な堆肥や有機肥料によって起きやすい、「また根」を防ぐため、溝施肥で行うこともあります。
元肥① 全面施肥
元肥の方法で、畑全体にまんべんなく肥料を与えることを全面施肥(全層施肥)といいます。多くの野菜に使われる元肥の方法で、肥料が緩やかに長く効く施し方です。肥料に鶏糞を使う前には、種まきの1か月前までに、寒い時には発酵が遅くなるため春まき、冬まきは2か月前までに行いましょう。
- 栽培するスペース(畝)を決め、深さ30~40㎝ほどに深く耕し、土や石などを取り除きます。
- 完熟堆肥1㎡あたり1kgを畝全体にまきます
- さらに発酵鶏糞を畝全体に撒いて、クワでよく混ぜ平らにします。
- よく分解するよう、種まきまでに2回~3回ほど土を耕しておきます。
- 畝幅60cm~70㎝の平畝を作ります。
- 1カ月ほどたったら、種まきをします
元肥② 溝施肥
元肥の方法で、畝の中央に溝を掘って肥料を埋め込んで与えることを溝施肥といいます。初期生育がよくなり、また根などのリスクを軽減します。
- 栽培するスペース(畝)を決め、深さ30~40㎝ほどに深く耕し、土や石などを取り除きます。
- 畝の中央に深さ20~30㎝、15㎝ほどの溝を掘る。
- 溝に、堆肥と鶏糞をいれ土を戻しよく、混ぜ込みます。
- 1カ月ほどたったら、種まきをします。溝から15㎝ほど離したところに種をまきます。
鶏糞とは
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
発酵鶏糞の袋にはだいたい「堆肥」と記載されていることが多いですが、有機物なので土壌改良効果は多少ありますが、繊維分が少ないため土をふかふかにする効果は薄く、肥料として考えた方がよいでしょう。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞肥料には色々な製品がありますが、大まかには以下の通り「乾燥鶏糞」、「醗酵鶏糞」、「炭化鶏糞」のように分類することができます。状況に応じて、適したものを利用するようにしましょう。
乾燥鶏糞
乾燥させた鶏糞です。醗酵(発酵)処理や炭化処理をしていないため、肥効が相対的にゆっくりであることが特徴です。また、安価であることも特徴のひとつです。未発酵の状態のため、発酵させて臭いがしなくなってから植えつけや種まきをします。しっかり土の中に混ぜておくことで分解が進んで、作物に肥料分が吸収されるようになります。相対的に臭いは強めですので、住宅街では要注意です。
醗酵鶏糞(鶏糞堆肥)
醗酵(発酵)処理をした鶏糞です。完熟していない鶏糞を散布すると、分解にともなってアンモニアガスが発生し、植物の生育障害を引き起こすことがあります。醗酵(発酵)処理済みの鶏糞では、植物の生育障害を引き起こす可能性を小さくできるほか、臭いも大幅に緩和されている特徴があります。ただし発酵鶏糞のとして販売されても、腐熟が不十分なこともありますので、土にしっかり混ぜましょう。
炭化鶏糞
鶏糞を高温処理し、炭化させたものが炭化鶏糞です。したがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。一般に、高温処理された炭化鶏糞では、窒素成分が失われています。しかし、創和リサイクルが販売する「炭化けいふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=2.5-8.4-4.9となっているため、便利に利用できます。
その他 人参におすすめの肥料
有機肥料
人参に鶏糞が使えることは説明しましたが、その他にも有機肥料として油かすや、米ぬかなどを材料にしたぼかし肥料などが使えます。米ぬかなどををつかってぼかし肥料を作ることもできます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。
追肥には、速効性のあるNK化成など窒素とカリのみを含む肥料でもよいでしょう。また人参専用の肥料や野菜の肥料も多く販売されています。施肥量なども書いてありますので、初心者の人にも安心して使うことができます。
人参におすすめの肥料はこちらで詳しく説明しています。