チェーンソーには多くの種類があり、使い方によっておすすめのブランドや製品は変わります。この記事では、用途に合ったチェンソーの選び方や、おすすめのブランドについて説明します。
チェンソーと選び方
万人におすすめできるチェンソーはありません。それは時と場合により、おすすめのチェンソーも変わるからです。チェンソーの選び方として、具体的には次の4つの観点を軸にしてみるとよいでしょう。
- 動力で選ぶ
- やりたい作業で選ぶ
- ユーザーの熟練度で選ぶ
- メーカーで選ぶ
それぞれについて、以下で解説していきます。
動力で選ぶ
チェンソーは、エンジンを動力とする「エンジンチェンソー」、モーターを動力とする「電動チェンソー」に大別することができます。操作性やメンテナンス性の面で、それぞれ異なる特徴がありますので、まずはどちらを希望するか決めるようにしましょう。
エンジンチェンソー
エンジンを搭載したチェンソーを「エンジンチェンソー」とよびます。チェンソーには2サイクルエンジンが採用されているので、燃料として無鉛ガソリンおよびエンジンオイルを混合した混合燃料が使われます。燃料の入手であったり、メンテナンス(フィルターやエアインジェクションなど)が手間ではありますが、力強いエンジンから生み出される強力な切断力が最大の魅力です。
電動チェンソー
「電動チェンソー」とは、電気を動力源として動作するチェンソーのことを指します。電動チェンソーは、「充電式」(バッテリーチェンソー)と「電気式」(電気チェンソー)に細分化して整理されることがあります。電動チェンソーは、エンジン音がないため静かで、住宅街でも使いやすいという特長もあります。作動させるための始動方式も、ボタンを押すだけなので極めて簡単です。
充電式
リチウムイオンバッテリー(電池)などのバッテリーを動力源とするコードレスチェンソーです。長所として、コードレスなのでどこでも使えて便利ということがあります。短所としては、バッテリーを搭載するため重量が重くなり、本体サイズも電気式と比べて大きくなりがちということがあります。
電気式
電源コードによって電気を供給するチェンソーです。のこぎりの代わりなど家庭での普段使いはもちろん、農業や園芸の場面でも活躍します。庭木の枝打ち、生垣の手入れ、雑木の伐採、果樹の剪定、あるいは薪や木材の切断といった大工作業など幅広い用途が想定されます。
エンジンチェンソーと電動チェンソーを比較
「エンジンチェンソー」と「電動チェンソー」には、それぞれ長所と短所があります。どちらか一方が優れているということはなく、一長一短というところになるので、使用場面や用途に応じて選ぶ必要があります。現在は、技術の進歩も著しく必ずしも当てはまらないこともありますが、代表的な特徴は以下の通りです。
エンジンチェンソー | 電動チェンソー | |
---|---|---|
動力 | エンジン | モーター |
動力源 | 燃料 (無鉛ガソリンおよびエンジンオイル) | 電気 (バッテリー) |
始動 | リコイルスタートロープを引いて点火 | スイッチを押すだけなので、再始動も楽 |
取り回し | 山林や畑等どこでも使える (燃料切れ後にも、給油すればすぐに使える) | 電源がある場所でのみ使える (バッテリー切れ後には、充電が必要) |
メンテナンス | 燃料で汚れやすく手間 | 手間が少ない |
排気ガス | 排気ガスが出る | 排気ガスが出ない |
騒音 | 大きめ | 小さめ |
振動 | 大きめ | 小さめ |
切断力 | パワフル | 切れ味で劣る傾向 |
やりたい作業で選ぶ
やりたい作業からチェンソーを選ぶことも考えられます。チェンソーは、想定される作業に応じて、持ち手であるハンドルや本体の形状が異なっています。チェンソーで想定される代表的な作業と、その作業に適したおすすめのチェンソーは以下の通りです。
薪割りや薪作り
薪割りや薪作りといった切断にパワーが必要な作業には、後方に持ち手が付いたリアハンドルのチェンソー(リアハンドルソー)を選ぶのが妥当です。リアハンドルでは、握る位置(グリップ)が前方と後方になり間隔が広くとれるので、安定した作業に向く仕様になっています。
ガイドバーの長さが30cm(300mmもしくは12インチ)以上、エンジン排気量が30ml(30cc)以上くらいからが中型モデルの目安です。硬い樹木の伐木、丸太や角材の切断などには、大型モデルが適しています。最強クラスのチェンソーとなると、ガイドバーの長さが45cm(450mmもしくは18インチ)、エンジン排気量は100ml(100cc)を超えるものもあります。
枝打ちや剪定
枝打ちや剪定といった軽快な取り回しが求められる作業には、トップハンドルの小型チェンソー(トップハンドルソー)が便利です。ガイドバーの長さが30cm(300mmもしくは12インチ)以下、エンジン排気量が30ml(30cc)以下くらいのものが小型チェンソーとよばれる目安です。重量は3kg以下くらいであれば、チェンソーとしては軽量といえます。
なお、小型チェンソーについては、「こがるシリーズ」が世界最小最軽量を謳う製品として有名です。世界最小最軽量のエンジンチェンソーながら摩擦抵抗を感じさせない切れ味で、さらにオートチェーンブレーキ付きでキックバック時にはチェーンの回転が止まる安全機能が採用されています。
高枝切り
高所にある高枝を切る方法として、木登りもしくは脚立を使って小型チェンソーを用いる方法があります。しかし、非常に危険なので、プロの林業従事者や造園業従事者以外は避けるべきです。こうした場合に便利な「高枝チェンソー」があります。高枝チェンソーは、高い位置にある枝を切るために柄が長く設計されているチェンソーです。そのため、「高枝切りチェンソー」、「ポールチェンソー」、「ガーデンポールソー」などとよばれることもあります。
なお、マキタ(makita)では、先端のアタッチメントを交換することで、高枝チェンソーのほか、刈払機、ヘッジトリマー、カルチベータ、パワーブラシ、パワースイープ、ブロワとしても使用できる便利な製品を展開しています(枝払いのほか、草刈り、生垣の刈り込み、芝生の切り込み、耕うん、汚れの除去、掃き取り、落葉の吹き集めなどにも利用できます)。
ユーザーの熟練度で選ぶ
チェンソーを使う人、すなわちユーザーの熟練度から製品を選ぶ方法もあります。ここでは、熟練度の例として「林業者用」、「プロ用」、「家庭用」、「初心者用」に分類して紹介します。
林業者用
林業者用のチェンソーでは、性能および機能ともに最高クラスのものが選ばれます。性能に関しては、馬力やkWで表される出力が大きく、さらに粘り強いエンジンが搭載されています。胸高直径70cmを超える大径木であっても、ストレスなくカットできる抜群の切れ味をもちます。大木の伐採や間伐にはリアハンドルチェンソーが使われますが、枝払いなどの作業ではトップハンドルチェンソーが使われます。スチール(STIHL)、ハスクバーナ(Husqvarna)などの海外ブランドの愛用者も多いですが、ゼノア(ZENOAH)、共立(KIORITZ)、シングウ(SHINGU)などの国内ブランドも人気です。
プロ用
林業者に加えて造園業者や農業者などのプロが使用するチェンソーでは、高性能なことはもちろん、耐久性や幅広い作業をこなせる万能さが求められます。「林業者用」のチェンソーを展開する各ブランドに加えて、丸山(MARUYAMA)、新ダイワ(shindaiwa)、ハイガー(HAIGE)など農業機械を扱うブランドのチェンソーも人気があります。
家庭用
家庭用のチェンソーでは、使い勝手のよさと手頃な価格で入手しやすいことが求められます。エンジンチェンソーよりも使い勝手やメンテナンスの面で楽な電動チェンソーも検討してみるとよいでしょう。庭の低木の処理も鋸(ノコギリ)では大変ですが、チェンソーであれば楽々こなします。マキタ(makita)、リョービ(RYOBI)、ハイコーキ(HiKOKI)、エコー(ECHO)など電動工具やガーデン機器ブランドのチェンソーもおすすめです。
初心者用
初心者用のチェンソーでは、操作が簡単で、安全性に優れるものが望ましいです。操作については、構造がシンプルであることに加えて、本体が軽いと手軽に扱うことができます。安全性については、跳ね返り防止ガード付きでキックバックの心配がない機種などもあります。ガーデニング製品を展開する、ブラックアンドデッカー(Black&Decker)、ボッシュ(BOSCH)、山善(YAMAZEN)、高儀(EARTH MAN)、工進(KOSHIN)などが売れ筋です。
メーカーで選ぶ
最初にメーカーを決めてしまい、その中から選ぶという方法もあります。すでに所有している農林業機械との整合性や互換性の面から、メーカーは決めているということもあるはずです。もしくは、デザインであったり、青や赤色のボディであったりがおしゃれだからという理由で選んでも全く問題ありません。
スチール(STIHL)
スチールは、販売台数世界No.1のチェンソーブランドでありメーカーです。林業、農業、造園業、建設業向けの機械を開発販売しています。チェンソーのほかにも、コンクリートカッター、カットオフソー、クリアリングソー、チップソー、刈払機、草刈機、ヘッジトリマー、ブロワー、スイーパー、高圧洗浄機、コンビツール、ハンドツール、携行缶、防護用品なども手掛けています。
スチールは、1926年にアンドレアス・シュティール(Andreas Stihl)によって、ドイツで設立されました(Stihlの発音は、ドイツ語ではシュティール、英語ではスティール、日本語ではスチールが近いとされています)。現在では全世界に30を超える販売子会社をもち、160か国で製品の販売を行うグローバル企業に成長しています。そのうちのひとつが株式会社スチールで、日本の現地法人に相当します。アジア初の販売子会社として設立され、栃木県に本社を構えています。
スチールチェンソーは、専門的な訓練を受けた販売店(農機具店など)でのみ販売されています。これは、製品の高品質で優れた機能性を発揮させるために、対面販売が必要とされているためです。したがって、ホームセンターやネット通販でスチールチェンソーを入手することはできません。こうしたことからもわかるように、スチールチェンソーはプロ志向の強い製品です。多くの他メーカーではオレゴン製(OREGON)のソーチェンが使われますが、スチールでは純正のものが使われることもプロ志向を裏付けています。少し敷居が高い印象もありますが、動画類(たとえばヤスリを使っての目立て方法)を充実させるなどユーザーとのコミュニケーションも重視しています。
ハスクバーナ(Husqvarna)
ハスクバーナは、農林業機械や建設機械といった野外作業機の開発販売を行う世界的なメーカーです。同時に、「Husqvarna」のロゴマークでおなじみの製品ブランドでもあります。もともとは、スウェーデン王室にマスケット銃を納める国営工場として1689年に設立されました。その後、ミシン、自転車、オートバイ、チェンソー、芝刈機などさまざまな機械の製造を行います。創業330年を超える当社ですが、時代とともに主力事業や会社としての佇まいを柔軟に変化させてきています。現在は、農林業機械や建設機械といった野外作業機を主力事業としており、世界60か国以上で事業を展開しています。
海外メーカーのチェンソーは、重量感がありパワフルな切れ味が自慢というイメージもあります。一方で、欧州は環境先進国でもあるので、燃費の向上や環境負荷低減にも努めています。ハスクバーナ製品では独自のX-TORQエンジンの採用により、排出ガスの量を世界最高水準まで低減させています。
ソーチェンも純正品があり、切れ味の持続性、確かな耐久性、目立てのしやすさなどが実現されています。その他、オレゴン製(OREGON)のソーチェンにも適合しますので、替刃を探す際には対応表を参照して選ぶようにしましょう。
ゼノア(ZENOAH)
ゼノアは、「ZENOAH」のロゴマークでおなじみの製品ブランドです。未来に挑戦するという意味をもつ「ZE」と、旧約聖書のノアの方舟伝説の「Noah」からなる造語とされています。会社の沿革としては、1910年に創立された東京瓦斯工業株式会社が源流にあり、2020年には110周年を迎えています。創立当初はガス器具の製造が主な事業でしたが、戦時中には軍用航空機用エンジン、終戦後にはバイクエンジンなどを製造します。
1973年には社名をゼノア株式会社に改め、農業用エンジンや建設機械の分野に進出します。その後、1979年に小松部品株式会社と合併し、社名を小松ゼノア株式会社とします。2007年には、独立した農林機器事業部がハスクバーナ・ジャパン株式会社と合併し、現在の「ハスクバーナ・ゼノア株式会社」に至っています。ハスクバーナ・ゼノアでは、それぞれの特長を活かし、ハスクバーナ(Husqvarna)とゼノア(ZENOAH)の2つのブランドを主として農林機器の開発販売を行っています。
創立から110年にわたる長い歴史の中で培われた技術力が、ゼノア製品には凝縮されています。特に、2サイクルエンジンの技術は市場からも評価が高く、現在販売する製品においても幅広く取り入れられています。当社が開発したストラト・チャージド®エンジンは、カリフォルニア州の第2次排ガス規制(CARB)に世界で初めて対応した画期的な2サイクルエンジンとして知られています。
ゼノアの農林機器の中でも、チェンソーは重要な役割を果たした製品です。G35シリーズというチェンソーの爆発的ヒットが、現在までの農林機器事業の礎を築きました。プロソー、オールラウンドソーまで幅広く取り揃えており、樹木、雑木、材木、薪などあらゆる用途に対応します。
その他
その他のおすすめメーカーおよびブランドは、以下の通りです。なお、リョービ(RYOBI)は、京セラインダストリアルツールズ株式会社のブランドです。また、ハイコーキ(HiKOKI)は、工機ホールディングス株式会社(旧日立工機株式会社)のブランドです。
- マキタ(makita)
- リョービ(RYOBI)
- ハイコーキ(HiKOKI)
- 新ダイワ(shindaiwa)
- 共立(KIORITZ)
- エコー(ECHO)
- 丸山(MARUYAMA)
- シングウ(SHINGU)
- ハイガー(HAIGE)
- ブラックアンドデッカー(Black&Decker)
まとめ
チェンソーを実際に購入してよいか判断するためには、どのような観点で選ばれたかを明確に把握することが重要です。具体的には、「動力で選ぶ」、「やりたい作業で選ぶ」、「ユーザーの熟練度で選ぶ」、「メーカーで選ぶ」といった観点を軸にしてみるとよいでしょう。これらの観点から求めるチェンソーを絞り込むことで、自ずと最適なチェンソーが見つかるはずです。
それでもどのチェンソーを選んでよいか分からない場合には、できるだけ安価かつ小型のものをお試しとして購入してみるとよいでしょう。大は小を兼ねるという言葉がありますが、チェンソーについては、できるだけ小型のものを選ぶのが基本です。この背景には、可能な限り振動を小さく抑えることで疲労を小さくし、振動障害を防止する意図があります(長時間の作業は体感以上に疲れるので、避けなくてはいけません)。また、小型のチェンソーであれば万が一事故が起きた場合でも、怪我や被害が小さくて済むということもあります。想定される作業を鑑みて、必要な限度を超えないサイズのチェンソーを選ぶようにしましょう。
なお、竹を伐るには専用ソーチェン(替刃)がありますが、コンパクトで小回りの利くレシプロソーを使う方法もおすすめです。チェンソーは基本的に両手で使いますが、レシプロソーは片手で使うこともでき、孟宗竹などの竹であれば難なく切り倒すことができます。間隔の狭い竹林でも小回りが利き、持ち運びの面でも快適です。
チェンソーを入手した後には、防護服と保護具にも気を配り、安全な服装で作業に臨むようにしましょう。