チェンソー替刃を探している中で、20LGX、22BPX、25AP、75LPX、80TXL、91VXL、95TXLなどの表記を見かけたことがあるかもしれません。これらは、オレゴンのチェンソー替刃の品番を表しており、形状であったり、長さであったりがわかるようになっています。
この記事では、オレゴンのチェンソー替刃について解説します。
オレゴン(OREGON)とは?
オレゴン(OREGON)は、アメリカ合衆国オレゴン州に本社を置くブラント・インターナショナル(Blount International, Inc.)が展開する製品ブランドです。世界100か国以上で製品が販売されており、日本ではブラント・ジャパン株式会社が販売を統括しています。
製品として、林業、造園業、農業、土木建設業などで使用される屋外作業機器が展開されています。具体的には、チェンソー、ハーベスター、ハーベスターバー、ハーベスターチェーン、グラインダー、チップソー、刈払機、草刈機、芝刈機、ブロワー、ヘッジトリマーおよびそれらの部品やアクセサリーなどがあります。丸ヤスリや砥石などのメンテナンス工具も充実しています。
とりわけチェンソー用品は有名で、ソーチェーン(替刃)、ガイドバー、スプロケットは、ほとんどの主要なチェンソーメーカーに適用できます。
オレゴンのチェンソー替刃
オレゴンのチェンソー替刃、つまりソーチェーンは世界No.1ブランドとされています。実際に、日本の主要なチェンソーメーカーほぼ全てで採用されています(マキタ、リョービ、共立、新ダイワ、丸山、ハイコーキ、タナカ、ハイガー、ゼノア、シングウなど)。海外チェンソーメーカーであるスチールとハスクバーナでは、純正のソーチェーンが採用されていますが、オレゴンのソーチェーンとも互換性があります。
ソーチェーンの構造
ソーチェーンは、カッター、ドライブリンク、タイストラップが繰り返し連結された構造になっています。そして、それぞれの部品を連結させる役目の突起が、リベットです。これら部品の種類を変えたり、並び方や頻度を変えたりすることで、ソーチェーンに異なる特性をもたせています(たとえば、竹切りやカービングでは、フルカッターとよばれるカッター数を2倍にしたソーチェーンが用いられます)。異なる特性をもたせたソーチェーンは、用途が異なるため各々別製品となり、品番も異なります。
カッター
カッターには木材を削ると同時に、前のカッターが削った木屑を排出する役目があります。右カッターの次は左カッターというぐあいに、左右対称に同一間隔で取り付けられています。刃先には、硬い金属として知られるクロムがメッキ加工されています。これにより、鋭い切れ味と耐久性が長く維持され、目立ての回数を減らすことができるようになっています。
ドライブリンク
エンジンの駆動力が伝達されることにより回転する歯車が、スプロケットです。ドライブリンクは、このスプロケットとかみ合うことで、ソーチェーンを回転させる役割をもっています。また、ドライブリンクの足は、ガイドバーの溝の中を通るので、ソーチェーンとガイドバーの全体にチェンオイルを潤滑させる役割もあります。
タイストラップ(サイドリンク)
タイストラップ(サイドリンク)は、カッターとドライブリンクであったり、ドライブリンク同士であったりをつなぐ役割をもっています。リベットが付いているタイプと付いていないタイプがあります。
リベット
リベットは、カッター、ドライブリンク、タイストラップを連結させるための突起です。カッターかタイストラップにリベットが付いており、ドライブリンクの穴を貫き、反対側にあるタイストラップと固定されます。これにより、カッター、ドライブリンク、タイストラップの各部品が連結されています。
オレゴンソーチェーンの品番にはルールがある
オレゴンのソーチェーンの品番は、表し方にルールがあります。つまり品番を見れば、ソーチェーンの形状であったり、長さであったりがわかるようになっています。
具体的には品番は、たとえば「25AP068E」のように表記されており、分解すると○●△▲のような成り立ちになっています。それぞれには、次のように数字かアルファベットが記載されています。
○:2桁の数字
●:1~3字のアルファベット
△:2~3桁の数字
▲:EもしくはEJもしくはECのいずれか
○に相当する2桁の数字は、ソーチェーンのサイズ(ピッチとゲージ)を表しています。●に相当する1~3字のアルファベットは、カッターのタイプと特性を表しています。△に相当する2~3桁の数字は、ソーチェーンの長さ(ドライブリンクの数)を表しています。▲に相当するEもしくはEJもしくはECのいずれかは、販売時の梱包の種類を表しています。それぞれについて、詳しくは以下の通りです。
ソーチェーンのサイズ(ピッチとゲージ)
たとえば品番「25AP068E」を○●△▲と見立てたとき、○に相当する2桁の数字は、ソーチェーンのサイズ(ピッチとゲージ)を表す番号です。ドライブリンクにも刻印されているこの番号は、次の表のように、ピッチとゲージの組み合わせを表します。
ドライブリンク刻印番号 | 11 | 16 | 18 | 20 | 21 | 22 | 25 | 26 | 27 | 58 | 59 | 68 | 72 | 73 | 75 | 90 | 91 | 95 |
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ピッチ | 3/4″ | .404″ | .404″ | .325″ | .325″ | .325″ | 1/4″ | .404″ | .404″ | .404″ | .404″ | .404″ | 3/8″ | 3/8″ | 3/8″ | 3/8″ | 3/8″ | .325″ |
ゲージ | .122″ 3.1mm | .063″ 1.6mm | .080″ 2.0mm | .050″ 1.3mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .050″ 1.3mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .063″ 1.6mm | .050″ 1.3mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .043″ 1.1mm | .050″ 1.3mm | .050″ 1.3mm |
カッターのタイプと特性
たとえば品番「25AP068E」を○●△▲と見立てたとき、●に相当する1~3字のアルファベットは、カッターのタイプと特性を表しています。特性には、たとえばローキックバックや自動目立てなどがあります。各アルファベットがもつ意味は、次の表の通りです。
ソーチェーンタイプ | A | AX | AP | BC | BPX | CJ | CJX | CK | CKX | CL | CLX | CP | DP | F | H | HX | HJX | J | JGX | JPX | JX | L | LGX | LPX | LX | M | R | RA | RD | PS | PX | S | SG | SL | VG | VPX | VX | VXL |
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カッターのタイプと特性 | マイクロチゼルカッター 25A:標準 27A:スキップ | マイクロチゼルカッター スキップ | 25AP:マイクロチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 72AP:セミチゼルカッター スキップ | チッパーカッター 標準(11BCのみ) | 低振動マイクロチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、スキップ | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、セミスキップ | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、セミスキップ | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、標準 | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、標準 | チッパーカッター バンパードライブリンク、標準 | セミチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | マイクロチゼル、フルカッタ― | ハーベスター 標準 | ハーベスター 標準、アサリが大きいタイプ | ハーベスター スキップ、アサリが大きいタイプ | チゼルカッター 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター バンパードライブリンク、スキップ | チゼルカッター 標準 | チゼルカッター 標準(.404″ 58L&59L) | チゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動チゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | チゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | マルチカット | 縦挽きチェーン、マイクロチゼルカッター | 縦挽きチェーン、マイクロチゼルカッター | 縦挽きチェーン、セミチゼルカッター 標準 | パワーシャープチェーン 山型デプスゲージ、ガイダンスドライブリンク 標準(自動目立て) | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパードライブリンク 標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準、アサリの狭いデザイン | チゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準 | 低振動マイクロチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパードライブリンク アサリの狭いデザイン | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動セミチゼルカッター ロングトッププレート、山型デプスゲージ 標準 |
ソーチェーンの長さ(ドライブリンクの数)
たとえば品番「25AP068E」を○●△▲と見立てたとき、△に相当する2~3桁の数字は、ソーチェーンの長さ(ドライブリンクの数)を表しています。
販売時の梱包の種類
たとえば品番「25AP068E」を○●△▲と見立てたとき、▲に相当するEもしくはEJもしくはECのいずれかは、販売時の梱包の種類を表しています。Eはループチェーンであることを意味、EJは小箱入りのチェーンであることを意味、ECはブリスターパック入りのチェーンであることを意味していますが、中身は同じです。
替刃を購入したいときは
チェンソーの扱いに習熟したプロ以外は、チェンソーメーカーが標準装備しているソーチェーンと同じものを替刃として交換するのが普通です。チェンソーメーカーでは、開発販売するチェンソー本体の性能を最も引き出せる、相性のよいソーチェーンを標準装備しています。
購入すべき替刃を特定する方法は、所有するチェンソーの型式がわからない場合、チェンソーの型式がわかる場合でそれぞれ異なります。
チェンソーの型式がわからない場合
現在使用しているソーチェーンの品番を特定します。まず、ガイドバーからソーチェーンを外し、ドライブリンクに刻印されている番号を確認します。これにより、ソーチェーンのサイズ(上記でいう○●に相当する部分)がわかります。次に、ドライブリンクの数をかぞえることによって、ソーチェーンの長さ(上記でいう△に相当する部分)を確認します。
これらの操作によって、ソーチェーンのサイズと長さ(上記でいう○●△に相当する部分)がわかるので、品番を特定することができます。なお、末尾のEもしくはEJもしくはEC(上記でいう▲に相当する部分)については、販売時の梱包の種類なので確認する必要はありません。
チェンソーの型式がわかる場合
チェンソーの型式がわかる場合は、オレゴンのソーチェーン適用表を照会することで簡単にソーチェーンの品番を特定することができます。有名メーカーのチェンソーはほとんど掲載されていますが、見つからないときには各メーカーのホームページや取扱説明書で確認することもできます。
まとめ
チェンソー替刃を探している中で、20LGX、22BPX、25AP、75LPX、80TXL、91VXL、95TXLなどの表記を見かけたことがあるかもしれません。これらは、オレゴンのチェンソー替刃の品番を表しており、形状であったり、長さであったりがわかるようになっています。
オレゴンのチェンソー替刃、つまりソーチェーンは世界No.1ブランドとされています。実際に、ハイコーキ(HiKOKI)などの日本の主要なメーカーやブランドでも採用されており、スチール(STIHL)などの海外メーカーの製品とも互換性があります。また、パワーシャープチェーンという、砥石を装着したバーマウントシャープナーに通すだけで研磨され、5秒で目立てができてしまう便利な製品(パワーシャープスターターキット)もあります。
オレゴンのチェンソー替刃は、プロショップはもちろん、ホームセンターや通販でも気軽に購入できます。ソーチェーンの品番がわかり入手さえできてしまえば、交換作業は簡単です。ぜひ挑戦してみるとよいでしょう。
チェンソーは鋸(のこぎり)などの刃物と同じように、DIY、園芸、樹木の剪定を行うことができますが、さらに山林の立木まで難なく伐採できてしまう農林業機械でもあります。また、災害現場などでは、金物資材を切断するために、強力な切削能力をもつレスキューチェンソーも使用されます。それだけに使い方を誤ると大変危険なので、使用にあたっては万全を期す必要があります。保護具なども利用しながら、使い方を守って安全に作業するようにしましょう。