木の剪定や伐採に際しては、チェンソーであったり、鋸(ノコギリ)であったりを利用します。そして、チェンソーのメンテナンスをするようになると、あまり聞きなれない専門用語にふれることも多くなります。
この記事では、チェンソーのデプスゲージについて解説します。
チェンソーのデプスゲージとは?
ソーチェーンは、カッター、ドライブリンク、タイストラップの連結が繰り返された構造になっています。そのカッターのうち、木材を削るうえで主要な役割を果たすのが、上刃とデプスゲージです。上刃とデプスゲージは対になっていますが、上刃がクサビのように木材に食い込む一方で、デプスゲージにはその食い込む深さを調節する働きがあります。この関係はカンナの刃と台じりにも例えられます。
上刃とデプスゲージとの高さの差をデプス(depth)といいます。このデプスを適切に保つことが、チェンソーの切れ味を保つことにつながります。デプスが小さすぎると木材への食い込みが弱くなり、切れ味が損なわれます。反対に、デプスが大きすぎると食い込みが強くなり、切削抵抗による振動の原因になります。ソーチェーンの種類、あるいは切断する木材の種類によっても異なりますが、一般に適切なデプスは0.65mm(0.025インチ)程度とされています。
なお、上刃とデプスゲージとの高さの差をデプスといいますが、デプスゲージを略してデプスとよぶこともあるので、文脈の中でどちらを指しているか判断するようにしましょう。
調整器「デプスゲージジョインター」の使い方
上刃とデプスゲージとの高さの差であるデプスを適切に保つことが、チェンソーの切れ味を保つことにつながります。チェンソーを使用したり、ソーチェーンを研磨したりすることでデプスは変化するので、その増減に応じて調整が必要です。
プロや名人であれば感覚でデプスを調整できるかもしれませんが、普通は調整器「デプスゲージジョインター」を利用します。デプスゲージジョインターの使い方は、以下の通りです。
カッターの上刃については丸ヤスリで研ぎ、デプスゲージについては平ヤスリで研ぐのが目立ての基本です。慣れてくれば簡単にできる作業ですが、鋭い刃物あるいは金物を扱っているという意識を忘れずに、手袋を装着するなどして安全に取り組むようにしましょう。
代表的な「デプスゲージジョインター」
主だったチェンソーメーカーでは、純正もしくは互換品のデプスゲージジョインターが製品として取り揃えられています。中には、デプスゲージジョインターとは異なる製品名となっているもの、その他の目立て道具とキットになっているものなどもあります。ここでは、代表的なデプスゲージジョインターを紹介します。
オレゴン(OREGON)
オレゴン(OREGON)は、アメリカ合衆国オレゴン州に本社を置くオレゴンツール(Oregon Tool. Inc.)が展開する製品ブランドです。世界100か国以上で製品が販売されており、日本ではオレゴンツールジャパン株式会社が販売を統括しています。
製品として、林業、造園業、農業、土木建設業などで使用される屋外作業機器が展開されています。具体的には、チェンソー、ハーベスター、ハーベスターバー、ハーベスターチェーン、グラインダー、チップソー、刈払機、草刈機、芝刈機、ブロワー、ヘッジトリマーおよびそれらの部品やアクセサリーなどがあります。丸ヤスリや砥石などのメンテナンス工具も充実しています。とりわけチェンソー用品は有名で、ソーチェーン(替刃)、ガイドバー、スプロケットは、ほとんどの主要なチェンソーメーカーに適用できます。
オレゴン(OREGON)は、純正のデプスゲージジョインターを用意しています。純正品でなくても全く問題ありませんが、こだわりたい人は入手するとよいでしょう。3種類のデプスゲージジョインターがあるので、オレゴンソーチェーンの品番(21BPX、21LPX、22BP、25AP、91VG、91VX、91VXLなど)に応じて選ぶようにしましょう。
ハスクバーナ(Husqvarna)
ハスクバーナ(Husqvarna)は、農林業機械や建設機械といった野外作業機の開発販売を行う世界的なメーカーです。同時に、「Husqvarna」のロゴマークでおなじみの製品ブランドでもあります。
日本においては、ハスクバーナ・ジャパン株式会社が事業展開を担ってきましたが、2007年に小松ゼノア株式会社と合併したことで「ハスクバーナ・ゼノア株式会社」が誕生、引き続きその役割を担っています。ハスクバーナ・ゼノアでは、それぞれの特長を活かし、ハスクバーナ(Husqvarna)とゼノア(ZENOAH)の2つのブランドを主として扱っています。特に、林業や造園業の分野において、チェンソー、ポールソー、ヘッジトリマ、ブロア、草刈機、刈払機、手押し式芝刈機、ロボット芝刈機、ガーデントラクター、ホビーエンジン、粉砕ポンプなどが信頼と実績のある製品として広く知られています。
ハスクバーナ(Husqvarna)は、純正のデプスゲージジョインターを用意しています。純正品でなくても全く問題ありませんが、こだわりたい人は入手するとよいでしょう。「.325″」、「3/8″」、「.404″」、「3/8″ミニ」の4種類があるので、ソーチェンのピッチに合わせて選ぶようにしましょう。また、それぞれのデプスゲージジョインターに「SOFT」と「HARD」の両面があるので、杉のような柔らかい材木を切断する場合、檜のような硬い材木を切断する場合で使い分けることができます。
スチール(STIHL)
スチール(STIHL)は、販売台数世界No.1のチェンソーブランドでありメーカーです。林業、農業、造園業、建設業向けの機械を開発販売しています。チェンソーのほかにも、コンクリートカッター、カットオフソー、クリアリングソー、チップソー、刈払機、草刈機、ヘッジトリマー、ブロワー、スイーパー、高圧洗浄機、コンビツール、ハンドツール、携行缶、防護用品なども手掛けています。
スチール(STIHL)の純正デプスゲージジョインターは、「ファイルゲージ」という製品名で用意されています。ソーチェンのピッチに合わせたものを選ぶようにしましょう。また、丸ヤスリ、平ヤスリ、ヤスリホルダー、ポーチとセットになったシャープニングキットもあります。
ハイコーキ(HiKOKI)
ハイコーキ(HiKOKI)は、工機ホールディングス株式会社が展開する製品ブランドです。工機ホールディングスはかつて日立工機株式会社という社名の日立グループの会社でしたが、2017年にグループを離脱し現在に至っています。この沿革にともない、日立(HITACHI)ブランドで展開されていた電動工具などの製品が、新たにハイコーキ(HiKOKI)ブランドに刷新されています。社名やブランド名の変遷はあっても、製品の開発販売や保証修理は、設立以来70年に渡って当社が担っています。穴あけ、締付け、研削、研磨、曲げ、切削、圧着などの専門作業において、抜群の実績と信頼があるメーカーといえるでしょう。
ハイコーキ(HiKOKI)は、純正のデプスゲージジョインターを用意しています。純正品でなくても全く問題ありませんが、こだわりたい人は入手するとよいでしょう。デプスゲージの調整以外にも、丸ヤスリの研ぎ角度ガイド、ガイドバーの溝清掃にも使えるので、1本で3役をこなします。
マキタ(makita)
マキタ(makita)は電動工具のトップメーカーです。有名なインパクトドライバーやインパクトレンチなどの電動工具だけでなく、耕運機、芝刈機、高圧洗浄機、送風機、発電機、噴霧器、墨出し器、電気カンナ、ポンプ、レーザー距離計といったさまざまな機器を開発販売しています。
マキタ(makita)のチェンソーもよく知られており、特に電動チェンソーは高性能に加えてラインナップが豊富で大変人気があります。木工や工作といった作業には、レシプロソーやバンドソーも用いられます。
マキタ(makita)のデプスゲージジョインターは、互換品で全く問題ありません。ただし、販売店がマキタ(makita)用として明記しているものであれば、より安心して使うことができます。必要に応じて入手するとよいでしょう。
リョービ(RYOBI)
リョービ株式会社は、世界トップクラスのダイカストメーカーです。他にも、電動工具、ガーデン機器、清掃機器などDIY機械で馴染みがあるという人も多いのではないでしょうか。
実は、電動工具、ガーデン機器、清掃機器などを手掛けていたパワーツール事業部門は、2018年に京セラグループの京セラインダストリアルツールズ株式会社へと事業譲渡されています。しかしながら、京セラインダストリアルツールズは、認知度の高いRYOBIブランドをそのまま継続して使用しているため、現在でもホームセンターなどでその製品を見かけることができます。
リョービ(RYOBI)のデプスゲージジョインターは、互換品で全く問題ありません。ただし、販売店がリョービ(RYOBI)用として明記しているものであれば、より安心して使うことができます。必要に応じて入手するとよいでしょう。
その他
その他のブランドとして、次のようなものもあります。
- 共立
- フジ鋼業
- 龍宝丸
まとめ
ソーチェーンは、カッター、ドライブリンク、タイストラップの連結が繰り返された構造になっています。そのカッターのうち、木材を削るうえで主要な役割を果たすのが、上刃とデプスゲージです。上刃とデプスゲージは対になっていますが、上刃がクサビのように木材に食い込む一方で、デプスゲージにはその食い込む深さを調節する働きがあります。この関係はカンナの刃と台じりにも例えられます。
上刃とデプスゲージとの高さの差をデプス(depth)といいます。このデプスを適切に保つことが、チェンソーの切れ味を保つことにつながります。デプスが小さすぎると木材への食い込みが弱くなり、切れ味が損なわれます。反対に、デプスが大きすぎると食い込みが強くなり、切削抵抗による振動の原因になります。ソーチェーンの種類、あるいは切断する木材の種類によっても異なりますが、一般に適切なデプスは0.65mm(0.025インチ)程度とされています。
プロや名人であれば感覚でデプスを調整できるかもしれませんが、普通は調整器「デプスゲージジョインター」を利用します。デプスゲージジョインターの使い方は、以下の通りです。
- クランプなどを利用してチェンソー本体を固定してセッティング
- ガイドバーおよびソーチェーンの真上にデプスゲージジョインターを被せる
- デプスゲージジョインターから突き出るデプスゲージを平ヤスリで削り落とす
カッターの上刃については丸ヤスリで研ぎ、デプスゲージについては平ヤスリで研ぐのが目立ての基本です。慣れてくれば簡単にできる作業ですが、鋭い刃物あるいは金物を扱っているという意識を忘れずに、手袋を装着するなどして安全に取り組むようにしましょう。