チェンソーは、農作業はもちろんのこと、園芸やガーデニング用途、DIYや木工などのホビー用途に至るまで幅広い場面で使用されます。よく知られた農機具あるいは工具ではありますが、使用にあたってはチェンソーオイルが必要なことはあまり知られていないかもしれません。
この記事では、チェンソーオイルについて解説します。
チェンソーオイルとは?
チェンソーの使用にあたっては、継続的にオイルを使う必要があります。このオイルには2種類あり、「チェーンオイル」と「エンジンオイル」を指しています。「チェンソーオイル」という言葉が用いられることもありますが、その場合は「エンジンオイル」ではなく、「チェーンオイル」のことを指すのが普通です。
チェーンオイル
チェンソーは、刃(ソーチェン)がガイドバーの溝を高速回転することで、切断あるいは切削能力を発揮する仕組みになっています。この時、仕組みとして必ず摩擦が発生します。チェーンオイルは、この摩擦を低減させる潤滑油として使用します。
チェーンオイルを使用しないと、摩擦により熱が発生して焼き付きが起きてしまうとともに、刃(ソーチェン)とガイドバーがあっという間に摩耗してしまいます。そのため、チェーンオイルはチェンソーを使う場合に必須といえます。
多くのチェンソーでは、本体のチェーンオイル吐出口からガイドバーへとチェーンオイルが供給されます(現行モデルでは自動給油がほとんどですが、手動給油のものもあります)。この時に重要になってくるのが、チェーンオイルの粘度と配合成分です。粘度と配合成分が適当なものでないと、刃(ソーチェン)やガイドバーを十分に保護できず寿命が短くなったり、チェンソー本体や部品の修理が必要になったりすることが知られています(切り屑の詰まりや振動異常を感じた際には、目立てのタイミングを待たずに速やかに手入れおよび清掃をするようにしましょう)。
エンジンオイル
一般に、エンジンオイルは多くの役割をもちます。潤滑、清浄、衝撃吸収、密封、冷却、防錆などです。そのため、エンジンオイル無しでエンジンを作動させると、ピストンがスムーズに動かないといったことが起こり、あっという間に故障してしまいます。したがって、エンジン回転数が高いチェンソーにおいては、エンジンオイルは特に重要な資材といえます。
チェンソーをはじめとする農業機械では、使用するエンジンオイルが取扱説明書に記載されていますので、指定のものを使うようにしましょう。なお、エンジンオイルには、2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用および4サイクルエンジン(4ストロークエンジン)用があります。チェンソーでは軽量小型の2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)が採用されているため、ごく一部の例外を除いて使用するのは2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用のエンジンオイルであり、ガソリンと混ぜて混合燃料を作製します。
2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用のエンジンオイルは、JASO規格(日本自動車技術会規格)によりグレード分けされています。評価項目は、潤滑性、清浄性、排気性などです。グレード分けは3段階で、最も高性能のFD級、次いでFC級、そしてFB級となっています。FD級のエンジンオイルはスモークレスであったり、煤が付着しなかったりと性能面で優れています。
エンジンオイルはチェンソー専用というわけではないので、刈払機、草刈機、芝刈機、小型発電機、耕うん機、エンジンポンプ、ブロワ、ヘッジトリマーといった他の農機具とも共用できます。
チェーンオイルはエンジンオイルやサラダ油で代替できる?
チェーンオイルには専用商品を用いることが望ましいです。チェーンオイルの代替としてエンジンオイルを用いる方法を案内しているチェンソーメーカーもありますが、やはり専用商品に勝るものはありません。できるだけ専用商品を用いるようにしましょう。
他方、チェーンオイルの代替としてサラダ油を用いる方法も広く知られています。しかし、こちらもエンジンオイルを用いる方法と同様におすすめできません。サラダ油を用いたまま保管すると、刃(ソーチェン)が固まることがあったり、動物や虫を引き寄せることもあるようです。したがって、サラダ油を用いるとしても、チェーンオイルが手元にない緊急の場合、燻製用の切り屑や薪をつくるといった食用の場合などに限ることが推奨されます。
電動チェンソーでもオイルは使う?
エンジンが動力のエンジンチェンソーに対し、モーターが動力の電動チェンソーもあります。電動チェンソーは、電気で動くため家電機器のような使い心地で扱えます。そのため、忘れがちではありますが、チェーンオイルは必ず使わなくてはいけません。繰り返しになりますが、チェーンオイルを使用しないと、摩擦により熱が発生して焼き付きが起きてしまうとともに、刃(ソーチェン)とガイドバーがあっという間に摩耗してしまいます。チェーンオイルを使って、安全に作業するようにしましょう。
一方で、電動チェンソーはエンジンが搭載されていない仕様のため、エンジンオイルは必要ありません。電動チェンソーには、充電式チェンソー(バッテリーチェンソー)と電源コード式チェンソー(電気チェンソー)がありますが、いずれにおいてもエンジンオイルは必要ありません。
作業前にチェーンオイルが吐出されていることを確認
チェーンオイルは容器の口がノズル状になっていたり、ホースが付属されていたりします。それらを利用して、チェンソー本体のオイルタンクへと給油します。
給油後には、作業前にチェーンオイルが吐出されていることを確認しましょう。具体的には、チェンソーを始動させ、ガイドバーの先端を丸太や木材へと向けてチェンソーオイルが飛び散ることを確認します。
チェーンオイルを正しく給油しても、正しく刃(ソーチェン)とガイドバーに行き渡り、正しく飛ぶことがなければ、やはり焼き付くことになってしまいます。作業前の確認は怠らないようにしましょう。
チェーンオイルの種類
チェーンオイルの種類は、少なくありません。まずは、次のような分類があることを押さえておきましょう。
- 原料による分類
- 性質による分類
- 使用時期による分類
1つの商品について、各分類項目のいずれかに属しますので、各分類項目に注目しながら選ぶようにするとスムーズに理解が捗ります。金属の酸化を抑制する作用や耐腐食性をもたせた商品などもあるため、プロであれば場所や用途に応じて商品を使い分けることもありますが、普通は1種類あれば問題ありません。
原料による分類
チェーンオイルの原料は油ですが由来が異なり、「鉱物系」と「植物系」があります。
鉱物系
鉱物系チェーンオイルの原料は石油です。メリットとしては、価格が安いことに加え、高品質かつ保管中にも劣化しにくいことなどがあります。デメリットとしては、自然環境や土壌に優しいわけではないので、国や地域によっては使用が禁止されていることなどがあります。現在の主流は、この鉱物系です。
植物系
原料は植物由来の油です。メリットとしては、自然環境や土壌に優しいことがあります。デメリットとしては、管理が難しいため、丁寧に掃除しないと樹脂化してプライマリーポンプの故障などにつながることがあります。なお、多くの植物系チェーンオイルには、生分解性の性質もあります。
性質による分類
チェーンオイルそれぞれのもつ性質によって分類することもできます。
水溶性
水溶性とは、水に溶けやすい性質のことです。水溶性チェーンオイルでは、飛散により衣服に付着した場合でも、洗濯や洗浄すれば汚れが落ちることも期待できます。「ウォッシャブルタイプ」などと表記されていることもあります。
生分解性
生分解性とは、微生物によって分解される性質のことです。バイオと表現され、「バイオチェーンオイル」と表記されていることもあります。環境に優しいという安心感があるため、住宅地で庭木を剪定する際などにも積極的に利用されます。純粋な植物系チェーンオイルというものもありますが、鉱油と合成されているタイプもあります。
使用時期による分類
チェーンオイルの粘度あるいは粘着性は、温度によっても影響を受けます。そのため、夏もしくは冬の気温に適したチェーンオイルというものがそれぞれ存在します。
夏期用(夏季用)
高温環境での使用が想定されるため、粘度(ISO VG)が高くされています。
冬期用(冬季用)
低温環境での使用が想定されるため、粘度(ISO VG)が低くされています。
オールシーズン用
最近では技術革新が進み、夏期用と冬期用を兼ねるオールシーズン用も販売されています。価格が少し高めかもしれませんが、初心者やライトユーザーでも扱いやすいため特におすすめできます。
チェーンオイルのおすすめは?
有名チェンソーメーカーが開発販売している純正のチェーンオイルは、高性能で品質にも優れるため、安心して使えます。容量は小さいものでは200mL(ミリリットル)から大きいものでは18L(リットル)くらいまであり、容器はプラスチックボトルあるいは缶(一斗缶)のタイプなどがあります。ホームセンター、刃物や金物資材を扱う店舗、ショッピングサイトや通販などで購入することができます。
- マキタ(makita)
- リョービ(RYOBI)
- ハスクバーナ(Husqvarna)
- ゼノア(ZENOAH)
- やまびこ(YAMABIKO)
- オレゴン(OREGON)
- 丸山製作所(BIGM)
- エーゼット(AZ)
- 大澤ワックス(BOLL)
- トラスコ中山(TRUSCO)
まとめ
チェンソーの使用にあたっては、継続的にオイルを使う必要があります。このオイルには2種類あり、「チェーンオイル」と「エンジンオイル」を指しています。「チェンソーオイル」という言葉が用いられることもありますが、その場合は「エンジンオイル」ではなく、「チェーンオイル」のことを指すのが普通です。
チェンソーは、刃(ソーチェン)がガイドバーの溝を高速回転することで、切断あるいは切削能力を発揮する仕組みになっています。この時、仕組みとして必ず摩擦が発生します。チェーンオイルは、この摩擦を低減させる潤滑油として使用します。
もうひとつのオイルであるエンジンオイルは、チェンソー専用というわけではないので、刈払機、草刈機、小型発電機、エンジンポンプといった他の農機具とも共用できます。2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)用のエンジンオイルとガソリンと混ぜて混合燃料のかたちで使用します。
オイルとともに忘れてはいけないのが、チェンソーヤスリ(丸ヤスリおよび平ヤスリ)やデプスゲージ調整器などの目立て道具を利用した日々のメンテナンスです。また、作業の際には、チャップスなどの防護服、手袋(軍手)や安全メガネなどの保護具を着用するようにしましょう。