チェンソーが、伐木、丸太切断、木材鋸断、薪割り、枝処理、庭木剪定、竹伐採、レスキューなどに幅広く利用される道具であることは誰もが知るところです(ハーベスターに取付けるハーベスターバーとハーベスターチェーンも、チェンソーと同じ機構です)。一方で、チェンソーのパーツについて知っている人となると、ずいぶん少なくなるのではないでしょうか。
この記事では、チェンソーのパーツであるガイドバーについて、種類や選び方を解説します。
チェンソーのガイドバーとは?
チェンソーのガイドバーとは、ソーチェーンとともに切削部を構成する金属製のプレートのことです。ガイドバーにある溝(レール)をソーチェーンが走って回転することで、チェンソーの刃として機能します。
ガイドバーには種類やタイプがあり、「スプロケットノーズバー」と「ハードノーズバー」に大別されます。
スプロケットノーズバー
ガイドバーの先端部にスプロケット(滑車ローラー)が組み込まれたタイプです。このスプロケット(滑車ローラー)が、ソーチェーンの回転を補助することでスムーズな動きが実現されます。3枚の金属板(鋼板や鉄板など)を張り合わせ、間にスプロケット(滑車ローラー)を組み込んだラミネート構造が採用されています。
リプレイサブルスプロケットノーズバーは、スプロケットノーズバーの1種です。壊れやすいスプロケット(滑車ローラー)部分が交換できるようになっているため、先端交換式スプロケットノーズバーともよばれます。
ハードノーズバー
ハードノーズバーは、スプロケット(滑車ローラー)のないシンプルなタイプのガイドバーです。スプロケット(滑車ローラー)による回転の補助がない分、摩擦が大きくなります。摩擦による磨耗を防ぐために、硬度の高い金属を素材として使用しています。
カービングバーは、ハードノーズバーの1種です。カービングバーは先端にかけて細くなっているため、繊細な作業に適しており、キックバックも起こりにくい特徴があります。カービングバーが装着されたチェンソーを特に「カービングチェンソー」とよぶことがあり、チェンソーアート(チェンソーカービング)を行う場合などに利用されます。
ガイドバーの選び方
スプロケットノーズとハードノーズには、それぞれ利点と欠点があります。剪定や薪割りといったライトな作業においては遜色ないかもしれませんが、林業もしくは造園業者のプロ作業、特に突っ込み切りをする際に、それぞれの違いが大きくあらわれます。
なお、交換用のガイドバーを選ぶ際には注意点があります。エンジンチェンソーにおいてはエンジン排気量、バッテリーチェンソー(充電式チェンソー)においてはモーター性能に応じて、適用できるガイドバーの長さ(インチ、cm、mm)の範囲が決まっています。したがって、事前に取扱説明書などを確認しておく必要があります。最も適したガイドバーの長さ(インチ、cm、mm)は、購入時に標準装備されているガイドバーの長さなので、特別な事情がない場合には同じ品番のものを注文するとよいでしょう。
各メーカーのガイドバー
代表的なチェンソーメーカーでは、それぞれ純正のガイドバーが存在します。一方で、純正品と互換性のあるガイドバーも広く利用されています。中でも、替刃とともにガイドバーを展開するオレゴン(OREGON)、スギハラ(SUGIHARA)、ツムラ(TSUMURA)、むとひろ(MUTOHIRO)などは、有名で人気があるブランドです。価格だけでなく品質も優れているので、おすすめできます。
スチール(STIHL)
スチール(STIHL)は、販売台数世界No.1のチェンソーブランドでありメーカーです。林業、農業、造園業、建設業向けの機械を開発販売しています。チェンソーのほかにも、コンクリートカッター、カットオフソー、クリアリングソー、チップソー、刈払機、草刈機、ヘッジトリマー、ブロワー、スイーパー、高圧洗浄機、コンビツール、ハンドツール、携行缶、防護用品なども手掛けています。スチールチェンソーは、専門的な訓練を受けた販売店(農機具店など)でのみ販売されていますが、ガイドバーなどの部品やアクセサリーはネット通販(ショッピングサイト)でも入手することができます。
ハスクバーナ(Husqvarna)
ハスクバーナは、農林業機械や建設機械といった野外作業機の開発販売を行う世界的なメーカーです。同時に、「Husqvarna」のロゴマークでおなじみの製品ブランドでもあります。もともとは、スウェーデン王室にマスケット銃を納める国営工場として1689年に設立されました。その後、ミシン、自転車、オートバイ、チェンソー、芝刈機などさまざまな機械の製造を行います。創業330年を超える当社ですが、時代とともに主力事業や会社としての佇まいを柔軟に変化させてきています。現在は、農林業機械や建設機械といった野外作業機を主力事業としており、世界60か国以上で事業を展開しています。
ゼノア(ZENOAH)
ゼノアは、「ZENOAH」のロゴマークでおなじみの製品ブランドです。未来に挑戦するという意味をもつ「ZE」と、旧約聖書のノアの方舟伝説の「Noah」からなる造語とされています。会社の沿革としては、1910年に創立された東京瓦斯工業株式会社が源流にあり、2020年には110周年を迎えています。創立当初はガス器具の製造が主な事業でしたが、戦時中には軍用航空機用エンジン、終戦後にはバイクエンジンなどを製造します。ゼノアの農林機器の中でも、チェンソーは重要な役割を果たした製品です。G35シリーズというチェンソーの爆発的ヒットが、現在までの農林機器事業の礎を築きました。プロソー、オールラウンドソーまで幅広く取り揃えており、樹木、雑木、材木、薪などあらゆる用途に対応します。
新ダイワ(shindaiwa)
新ダイワ(shindaiwa)は、株式会社やまびこのもつ製品ブランドのひとつです。小型屋外作業機械と一般産業用機械を展開するグローバルブランドと位置付けられています。新ダイワ(shindaiwa)ブランドの製品として、刈払機、草刈機、モア、動力噴霧機、耕運機などもあります。これらは農作業でも頻繁に用いるため馴染みがあり、チェンソーについても新ダイワブランドを愛用しているという農家も多いです。
共立(KIORITZ)
共立(KIORITZ)は、株式会社やまびこのもつ製品ブランドのひとつです。小型屋外作業機械と農業用管理機械を展開する国内ブランドと位置付けられています。もともとは株式会社共立が、共立(KIORITZ)ブランドとエコー(ECHO)ブランドを展開しており、それぞれ日本国内向けと海外向けとしてすみ分けていました。共立ブランドの製品として、刈払機、草刈機、モア、動力散布機、動力噴霧機、スピードスプレーヤなどもあります。これらは農作業でも頻繁に用いるため馴染みがあり、チェンソーについても共立ブランドを愛用しているという農家も多いです。
エコー(ECHO)
エコー(ECHO)は、株式会社やまびこのもつ製品ブランドのひとつです。小型屋外作業機械と農業用管理機械を展開するグローバルブランドと位置付けられています。もともとは株式会社共立が、共立(KIORITZ)ブランドとエコー(ECHO)ブランドを展開しており、それぞれ日本国内向けと海外向けとしてすみ分けていました。ただし現在では、エコーチェンソーは日本国内でも販売されており、ホームセンターなどで見かけることができます。そうした背景もあり、エコーチェンソーは一般用、共立チェンソーはプロ用と認識している人もいるようです。
マキタ(makita)
ボッシュなどと並ぶ電動工具のトップメーカーです。有名なインパクトドライバーやインパクトレンチなどの電動工具だけでなく、園芸機器分野での攻勢も強めています(ドルマーの買収も行いました)。具体的には、耕運機、芝刈機、高圧洗浄機、送風機、発電機、噴霧器、墨出し器、電気カンナ、ポンプ、レーザー距離計といったさまざまな機器を開発販売しています。マキタのチェンソーもよく知られており、特に電動チェンソーは高性能に加えてラインナップが豊富で大変人気があります。木工や工作といった作業には、レシプロソーやバンドソーも用いられます。
リョービ(RYOBI)
電動工具、ガーデン機器、清掃機器などを手掛けていたリョービ株式会社のパワーツール事業部門は、2018年に京セラグループの京セラインダストリアルツールズ株式会社へと事業譲渡されています。しかしながら、京セラインダストリアルツールズは、認知度の高いRYOBIブランドをそのまま継続して使用しているため、現在でもホームセンターなどでその製品を見かけることができます。
ハイコーキ(HiKOKI)
ハイコーキ(HiKOKI)は、工機ホールディングス株式会社が展開する製品ブランドです。工機ホールディングスはかつて日立工機株式会社という社名の日立グループの会社でしたが、2017年にグループを離脱し現在に至っています。この沿革にともない、日立(HITACHI)ブランドで展開されていた電動工具などの製品が、新たにハイコーキ(HiKOKI)ブランドに刷新されています。
タナカ(Tanaka)
会社組織としては、田中工業株式会社、タナカ工業株式会社、株式会社日工タナカエンジニアリングと変遷しています。特に大きなターニングポイントは、2007年に日立工機株式会社の出資により日工タナカエンジニアリングとなったことです。他方、日立工機グループにも再編があり、現在は工機ホールディングス株式会社およびその子会社に集約されています。パワーメイト(POWER MATE)というホームセンター向け商品も展開していました。
その他
その他の代表的なチェンソーメーカーには、以下などがあります。
まとめ
チェンソーのガイドバーとは、ソーチェーンとともに切削部を構成する金属製のプレートのことです。ガイドバーにある溝(レール)をソーチェーンが走って回転することで、チェンソーの刃として機能します。
ガイドバーには種類やタイプがあり、「スプロケットノーズバー」と「ハードノーズバー」に大別されます。スプロケットノーズバーとハードノーズバーには、それぞれ利点と欠点があります。剪定や薪割りといったライトな作業においては遜色ないかもしれませんが、林業もしくは造園業者のプロ作業、特に突っ込み切りをする際に、それぞれの違いが大きくあらわれます。
代表的なチェンソーメーカーでは、それぞれ純正のガイドバーが存在します。一方で、純正品と互換性のあるガイドバーも広く利用されています。中でも、替刃とともにガイドバーを展開するオレゴン(OREGON)、スギハラ(SUGIHARA)、ツムラ(TSUMURA)、むとひろ(MUTOHIRO)などは、有名で人気があるブランドです。価格だけでなく品質も優れているので、おすすめできます。
ガイドバーのメンテナンスと調整は、こまめに行うようにします。ガイドバーの溝(レール)にたまった木屑やオイルはこびりつくので、コンプレッサーではなかなか落とすことができません。鉄板片などを用いて取り除くようにします。
また、目立て(ヤスリやヤスリホルダーを用いてソーチェーンを研ぐこと)のタイミングに合わせて、ガイドバーを上下反転させるとよいでしょう。ガイドバーは上下対称になっているので、定期的に反転させることで磨耗が均一となり部品(パーツ)としての寿命が延びます。
本体やブレーキの損傷があると重大な事故につながる可能性がありますが、ガイドバーやクリーナーの清掃によって見落としを防ぐことができます。こまめにメンテナンスして、安全な作業を心がけましょう。