この記事では、代表的な石灰肥料・土壌改良資材である、炭カル(炭酸カルシウム)肥料の基本と特徴・効能、効果的な使い方、注意点について解説します。
炭酸カルシウム(炭カル)とは
炭酸カルシウム肥料とは、石灰質肥料の一つで石灰石を粉砕したものがよく使われます。省略して、炭カルとも称され、プロ農家から家庭菜園まで幅広く使われます。
炭酸カルシウムの公定規格は、アルカリ分50%以上と定められ、可溶性苦土(マグネシウム)5%、く溶性苦土3.5%以上を保証するものもあります。
炭酸カルシウムを施用する目的は、以下の2つがあります。
- カルシウム分を補給する(→カルシウムの重要性)
- 酸性の土壌酸度(pH)を中和して、窒素、リン酸の吸収を促進させる
安価で効き目も穏やか(緩効性)であるため、酸性土壌の改良、カルシウム分の補給等に一般的に利用されています。炭酸カルシウムは、水にはほとんど溶けませんが、根酸や微生物の有機酸によって徐々に溶かされて作物に吸収されます。
有機酸が炭酸カルシウムの分解時に中和されることで、有機物の分解が促進されるという副次的な効果もあります。
土壌中の中和反応は徐々に進み、特に粒径の大きい炭酸カルシウムほど、反応が穏やかで効き目が持続します。苦土が不足している圃場では、苦土炭酸カルシウム(炭酸苦土石灰)の施用が適しています。
石灰質肥料には、消石灰や生石灰もありますが、それらよりも矯正力及び効き目のスピードが遅いため、初心者でも安心して使うことができます。但し、炭酸カルシウムの酸性土壌の矯正力は、非常に緩効性であるため、急な土壌酸度の矯正には不向きとなります。
炭酸カルシウム肥料の特徴・効能
炭酸カルシウム肥料には、以下のような特徴があります。
- 炭酸カルシウムは水にはほとんど溶けず、根酸や微生物の有機酸によって溶け出して作物に吸収されます。反応が穏やかで効き目が持続します。
- 消石灰や生石灰のように速効性ではなく反応が緩やかであるため、土壌pHを急激に上昇させる心配がありません。
- 化学的中性肥料ですが、施用後、徐々に土壌酸度(pH)をアルカリ性にするため、生理的アルカリ性肥料となります。
- 炭酸カルシウムは、石灰岩、大理石、鍾乳石、方解石、霰石のほか、貝殻やサンゴの骨格、鶏卵の殻にも含まれているが、原料として使われる事が多いのは石灰石です。
- 最近では、機械散布(トラクターなど)に適した粒状のものがよく使われています。
- 反応性が乏しいので、施用後、他の化学肥料を施用しても問題が出ません。
炭酸カルシウム肥料の効果的な使い方
炭酸カルシウム肥料は、主に畑作物に施用されます。緩行性で作物への影響も少ないため、元肥(基肥)、追肥とちらの目的でも施用することができます。また、消石灰や生石灰のように急激な土壌酸度の矯正などが起こらないので、とても扱いやすい肥料です。
但し、効き目が徐々に現れてくることから、施用のタイミングは考慮する必要があります。また、一度散布すると、土壌酸度の矯正力が数年間は持続するので、むやみな多量施用、多頻度施用は避けるべきでしょう。
水稲栽培でも炭酸カルシウムが使用される場面があります。しかし、水稲栽培で重要なケイ酸を同時に補給できる「ケイ酸カルシウム」の施用も検討する必要があります。
炭酸カルシウム肥料の注意点
炭酸カルシウム肥料の主な注意点を以下にまとめました。
- 土壌酸度(pH)の調整材と使用する場合には、早めの施用を心がけてください。非常に緩効性のある肥料であるため、早め早めの施用が必要です。緊急を要する場合には、消石灰など速効性のある土壌酸度(pH)調整材の利用を検討してください。
- 土壌酸度(pH)の矯正力は、一度施用されると数年間持続されるため、むやみに多量、多頻度施用しないようにしましょう。
カルシウムの重要性
先述したとおり、カルシウムは植物にとって重要な中量要素(二次要素)の一つです。
カルシウム成分は栽培において、以下の働きがあります。
- ペクチンという多糖類と結合し、細胞膜を丈夫にして病害虫に対する抵抗力をつける働き
- 根の生育を促進する働き
- 植物体内でできる過剰な老廃物(有機酸)を中和する働き
- 土壌酸度(pH)の調整剤としての働き
カルシウムが不足(欠乏)すると、生長の盛んな新芽や根の生育が悪くなります。カルシウムは植物体内での移動がほとんどありませんので、新芽に症状があらわれやすいのが特徴です。
また、カルシウム欠乏症は単に土壌中のカルシウム成分が不足している場合だけでなく、土壌の酸性化、乾燥、窒素過多など養分バランス(塩基バランス)の崩れが原因の場合も多くあります。カルシウム成分を与えているにも関わらず、カルシウム欠乏が発生する場合には、土壌の水不足や養分バランス(塩基バランス)にも気を使ってみてください。
代表的なカルシウム欠乏症(石灰欠乏症)には、トマトのしり腐れ果、ハクサイの心腐れ・縁腐れ、レタス、イチゴのチップバーン、ネギ、ユリの葉先枯れ、サトイモの芽つぶれなどがあります。肥料のラベルなどには元素記号で「Ca」と表される事が多いです。
カルシウム過剰は、通常の栽培では起きにくいことですが、極端に過剰な状態が続くと土壌がアルカリ性となり、生育不良を引き起こします。特に、土壌酸度(pH)が高くなるとマンガン、亜鉛、鉄、ホウ素などの微量要素の吸収が阻害され、欠乏症状を引き起こします。
土壌を適正な環境に整え、適量を必要なときに与え続けることが重要となります。
炭酸カルシウム肥料の購入場所
家庭菜園等で使用する肥料は、ホームセンター、インターネットなどで購入可能です(但し、購入するハードルはかなり高いです)。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。プロ農家の方は、JAや資材店等に相談すると良いでしょう。