ランのように大きな花を咲かせるクジャクサボテンや月下美人(ゲッカビジン)は、サボテン科エピフィルム属に属する多肉植物です。サボテンの仲間ですが、一般的なイメージにある大きな柱状の柱サボテン玉状の棘が特徴の玉サボテンなどのサボテンとは性質が異なります。
この記事ではクジャクサボテンと月下美人の違いや、花色や、開花時期など代表的な品種の特徴について、説明するとともに、クジャクサボテン・月下美人の育て方についてわかりやすく説明します。
クジャクサボテンと月下美人の違い
クジャクサボテンと月下美人は、森林性サボテンで、サボテン科のエピフィルム属に属しており、原産地では樹木に着生して育ちます。近縁種ですが、育て方も実は少し異なります。違いを抑えておきましょう。
まずは、花色です。月下美人は白色の花しか咲きません。外弁がピンクや黄色になる品種もありますが内弁は白色です。クジャクサボテンはそれに比べ、赤色・黄色・ピンク色・紫色・オレンジ色・白色と多種多彩で、交配も盛んに行われ毎年いろいろな品種が生まれています。
クジャクサボテンにも白の花があるので白色の花というだけで月下美人と決めつけることはできません。では次に開花時間です。クジャクサボテンも月下美人も夕方から夜開花します。最近は交配が進み、クジャクサボテンは昼に開花するものも増えているようですが、原種は夕方から夜に開花します。しかしクジャクサボテンはそこから日中も咲き続けますが、月下美人は朝にはしぼんでしまう、一夜花です。また、月下美人は強い香りも特徴で香水にも使われています。
違いは花だけでなく、新芽の形も異なります。生長した茎節は両方とも平たい茎節ですが、クジャクサボテンは最初は、柱サボテンのような細い毛柱状態で生長してやがて、平たい茎節へと変化します。月下美人は最初から平たい茎節が生長します。
クジャクサボテンと月下美人の仲間と品種
クジャクサボテンの品種
花期は5月から6月で、花色は白色・赤・ピンク色・オレンジ色・黄色など多彩。一色咲は少なく、複色が多いのが特徴です。また昼から夜に開花し、日中も咲き続けます。長いものは一週間程度咲く品種もあります 。
花の咲き方も、八重咲きや、トランペット吹き型などさまざまです。また交配が盛んで毎年多くの品種が生まれ、販売も品種別より色別などで販売されていることが多いです。
代表品種 港まつり・京花火・金色堂・紫勲・太陽・チバシンデレラ・ドラマ
月下美人の品種
花期は7月~11月ですが、連続的に開花するのではなく7月から3週間~4週間にぐらいに2回から3回ぐらいまとまって開花します。夕方から夜に開花し、朝にはしぼんでしまいます。
花は強い香りが特徴で、香りで開花を知らせるともいわれます。またクジャクサボテンより多肥・多水を好み、高温に強く低温に弱い。花だけでなく実は食用として人気があり、果実はピタカと呼ばれます。ドラゴンフルーツも、月下美人の仲間です。
代表品種 月下美人・歌麿呂美人・姫月下美人・満月美人・白眉孔雀・食用月下美人
紐クジャクの品種
クジャクサボテンとアポロフィルムの交配によってできた紐状のサボテン。この交配でなくとも見た目が紐状であれば園芸上、紐クジャクとよばれてることもあるようです。花は、クジャクサボテンと見分けがつきません。独特な見た目で、花だけでなくその茎節も観葉植物としての人気もあります。花期は3月~5月で、花色はクジャクサボテンと同様に豊富です。
代表品種 シルビア・スノーバード・スターファイヤー・金紐(アポロフィルムの原種)
イースターカクタス(星クジャク)
ハティオラ属の属するサボテン。和名が星クジャクサボテン。シャコバサボテンが、冬に咲くためクリスマスカクタスと呼ばれ、星クジャクサボテンは3月~5月に咲くためイースターカクタスと呼ばれ、見た目もシャコバサボテンにそっくりですが、どちらかといえばクジャクサボテンや月下美人に近い品種です。葉の断面が星や十字型菜ことが特徴です。
代表品種 ゲ氏孔雀(原種)・落下の舞(原種)・レッドスター・星クジャク
クジャクサボテン・月下美人の栽培で気をつけたいポイント
栽培環境・水やり
生育期の春から梅雨までは日当たりのよい、風通しのよい屋外で管理します。梅雨明けからは直射日光のあたらない半日陰で管理しましょう。場所を移せない場合などには寒冷紗などで遮光します。真夏の直射日光は葉焼けの原因にもなるので、気をつけましょう。
サボテンは元々メキシコなど日差しが強く温暖な地域に生息しているため、耐暑性はありますが、耐寒性は弱いです。霜の降りる冷え込む前には室内で管理してください。暖房が効きすぎた部屋ではなく、できれば玄関や廊下など、温度変化のない場所がよいでしょう。クジャクサボテンは5℃以下にならない場所で管理します。月下美人は寒さに弱いので8℃以下にならないようにしましょう。
クジャクサボテン・月下美人の水やりのポイントは、生育期と休眠期で水やりの方法を変えることです。サボテンは多肉の夏型なので、基本的には生育期春から秋は、表面の土が乾いたら水やりをします。この時の水やりはジョウロで根本に水を与える灌水で、底から水がくらい与えます。休眠期にはいる冬は、表面の土が乾いてから数日後に水を与え、乾かし気味に管理しましょう。
サボテンの水のやり方についての記事もありますので、水やりに興味のある方は読んでみてください。
用土
一般の草花や観葉植物では、鉢植えの場合は、赤玉土と鹿沼土を基本用土として、ピートモス、バーミキュライト、パーライトやココヤシチップといった改良用の土を基本用土にプラスして使います。
しかし、多肉植物は休眠を伴うものが多く、休眠中の多肉植物は、根もほとんど給水しないので、根腐れを防ぐために鉢土を完全に乾燥させる必要があります。
クジャクサボテン専用の培養土が販売されているので、そちらが便利です。シャコバサボテン専用の培養土でもいいでしょう。専用の培養土を使う場合も鉢底には鉢底石を敷きましょう。自分で配合する場合には、赤玉土5・腐葉土3・鹿沼土2や赤玉土5・腐葉土2・くん灰1・牛ふん2など水はけや通気性のよい土がよいでしょう。
肥料
砂漠などの栄養の少ない土でも育つサボテンですが、肥料をあげることで元気にすくすくと育ちます。
元肥は植え付けや植え替え時に行います。 植木鉢などで栽培する場合は、元肥をしっかりと施し、適期に追肥を行っていきます。
クジャクサボテンは、4月下旬から7月に緩効性肥料を置き肥し、規定量より薄めた液肥を月に1回から2回につぼみが小さいうちに追肥します。開花中は肥料は一切与えません。
月下美人は、クジャクサボテンより多肥を好むので4月~9月まで、緩効性肥料を置き肥し、10月には液肥を施します。
植えつけ、植え替え
クジャクサボテンや月下人は生長に合わせて、2年に一度植え替えをしましょう。時期は花後5月~7月に、一回り大きな鉢に移し替えます。
サボテンの植え替えについての記事もありますので興味がある方は読んでみてください。
剪定(切り戻し・摘心)
クジャクサボテンや月下美人の苗は、そのままにしておくと草丈(樹高)が大きくなりすぎることがあります。5月~7月頃に、葉先を摘心することで背丈を伸ばさないようにすることができます。
また5月~7月、または9月頃に室内に取り込む前に、枯れた茎や伸びた部分を整えて、切りそろえる切り戻しを行いましょう。茎節をハサミで切るか、若芽を手で切り取ります。切り取った茎節はさし木としてつかうこともできます。
ふやし方
クジャクサボテンはさし木でふやすことができます。5月から7月ぐらいの生育期に行うとよいでしょう。しおれていない元気な茎節を15㎝から30㎝ほどに切り取って、1週間ほど乾燥させます。さし床(赤玉土)に挿すと、1か月ほどで発芽するので、鉢上げして植え替えましょう。
月下美人もさし木で増やすことができます。時期は5月~9月に行います。間引きするように茎節の根元から切り取り、用土にそのまま挿します。クジャクサボテンのように乾燥は必要ありません。
病害虫
クジャクサボテンは、アブラムシ、カイガラムシ、ヨウトウムシなどの害虫が発生する恐れがあります。梅雨にはナメクジが発生する恐れもあります。それぞれの害虫によって葉っぱを食い荒らしたり、ウイルスを伝染させたりと活動も異なり、幼虫や成虫などによって対応は変わります。見つけたら早めに取り除いてあげましょう。殺虫殺菌剤なども有効です。
また湿気の多い場所に置いておくと、根腐れ病や茎枯れ病・茎腐れ病などにかかる恐れがあります。予防には、湿気の少ない風とおしの良い場所に置いてあげましょう。
まとめ
大輪の華やかな花を咲かせるクジャクサボテンや、夜に白い花をさかせる月下美人は、観葉植物として人気が高くたくさんの品種があります。
クジャクサボテンの花言葉は、「幸せをつかむ」「一途な恋」月下美人の花言葉は、一夜しか咲かないことから「はかない恋」「艶やかな美人」などがあり、プレゼントとしても素敵ですね。園芸店で苗を買う時には、品種を店員さんに聞いておきましょう。
サボテンは、枯れにくいので初心者の方でも簡単に育てることができます。多肉植物との寄せ植えなども最近は人気で、100円ショップやインテリアショップなどでも見かけることができます。
春にイースターカクタス、夏にクジャクサボテンや月下美人、冬にシャコバサボテンなどを育てれば一年中花を楽しむことができます。ぜひお気に入りの品種を見つけて上手に育てて、花を咲かせてみてください。