この記事では、ブルーベリーの肥料を与える時期・与え方、施肥の注意点などを、簡単に詳しく解説します。
ブルーベリーに肥料を与える最適な時期・タイミング
ブルーベリーは「春肥(元肥)」、「芽出し肥(追肥)」、「お礼肥(追肥)」の年3回を基準とするとよいでしょう。
春肥(元肥)とは、葉芽の芽生え(新芽)前の春に肥料を施すことで、一般的に3月が適期です。
芽出し肥(追肥)は、春肥が吸収され土中の養分が不足したタイミング、具体的には5月上旬~中旬が適期です。追肥は5月にまとめてやる他、6月、7月、8月に分けて施肥する方もいます。分けて肥料をやるときには、過剰にならないように施肥量を調整しましょう。
お礼肥(追肥)とは、果実の収穫が済んだ後に肥料を施すことで、一般的には8~10月頃が目安になります。
基本的な考え方としては、元肥には有機肥料、追肥には固形化成肥料を施すと良いでしょう。もちろん、樹の状態や生長度合いによって必要な施肥量は変わってきますので、その場の状況判断が必要です。
時期(目安) | 施肥の名称 |
---|---|
3月頃 | 春肥(元肥) |
5月上旬〜中旬頃 | 芽出し肥(追肥) |
8月〜10月頃 | お礼肥(追肥) |
具体的な施肥の年間スケジュールと与え方
それではブルーベリーの肥料はいつどのように与えればよいのでしょうか。関東地方以西を基準とした毎月の管理について、説明していきます。
- 1月・2月休眠期
冬はブルーベリーの休眠期です。肥料は与えません。
- 3月
- 4月生育期
3月に、鉢植え・庭植えともしっかり元肥を施してあるので不要です。
- 5月生育期
新しい枝や、果実のために肥料を施します。5月中旬にハイブッシュ系の早性品種に緩効性肥料を鉢植えは置き肥し、株元にドーナツ状にまいた後、用土を少し耕して混ぜ合わせます。
- 6月〜7月生育期
晩生品種のラビット系は5月下旬から6月上旬に追肥します。鉢植えは緩効性肥料は置き肥し、庭植えは株元にドーナツ状にまいた後、用土を少し耕して混ぜ合わせます。
- 8月~10月生育期
収穫が終わった木からお礼肥として、追肥をしましょう。鉢植え・庭植えともに緩効性肥料を施します。
- 10月・11月
12月休眠期収穫後のお礼肥が終わったら、肥料は次の3月まで与えません。この時期に肥料を与えると、成長した新しい枝(新梢)が冬に凍ってしまう可能性があります。
寒冷地では11月が植え替え、庭への植え付けの適期です。この時には元肥は施しません。
施肥の注意点:肥料をあげすぎて肥料焼け?
肥料は、多ければ多いほどよいというわけではありません。土中肥料の濃度が高くなりすぎると、根が吸水できなくなり、植物に障害が発生したり枯れてしまったりすることがあります。これが「肥料焼け」です。
成長が楽しみで、ついつい肥料を多くあげたくなってしまうかもしれませんが、一般に肥料をあげすぎると、かえって植物が弱ることがあり、樹や枝葉に障害が生じることもあります。肥料は過多にならないよう注意しなくてはいけません。また、苗(苗木)は成木に比べ弱いので、特に苗(苗木)の段階では施肥量を減らす工夫が必要です。
施肥の注意点:ブルーベリーの実付きが悪いのは肥料のせい?
ブルーベリーを栽培していると、実が全然つかないという状況に陥ることがあります。実付きが悪い=養分が足りていない、と思われがちですが、肥料のせいだけではありません。実付きが悪いときに考えられる主な原因を以下に簡単にまとめます。
- 土壌条件が悪い(pH 土壌酸度が高い)
- 土壌水分不足
- 自家不結実性の品種である(自らの樹だけでは結実しづらい)
- 肥培管理が悪い(硝酸態窒素を与えすぎている)
ブルーベリーにおすすめ、最適な肥料
ブルーベリーの原産地は北アメリカで、和名ではアメリカスノキともよばれています。もともと生育していた土壌の性質から、ブルーベリーは酸性の土を好みます。
pH(土壌酸度)で、4.3~5.5程度が好ましいとされています。中でもハイブッシュ系は、ラビットアイ系よりも少し適応範囲が狭く、pH4.3〜4.8程度を好みます。pH(土壌酸度)は植物を育てる上では重要な指標なのでぜひ気にしてみてください。
したがって、施肥後に酸性土壌になるような肥料を選ぶようにします。しかし、梅雨などの大量の雨で流れ出ることによりアルカリ性へと戻ってしまうこともあります。その場合には、ピートモスなどの資材を用いて、土壌酸度の改良および調整をします。
ブルーベリーを甘くする肥料
「甘いブルーベリーができる肥料」という商品が市販されています。
肥料にマグネシウム(苦土)が含まれていることが特長です。マグネシウムが葉緑素を増やし、光合成を活発にするため、沢山の糖が実に送られ甘くなります。
ブルーベリーの専用肥料
ブルーベリーの専用肥料も市販されています。施肥するだけで、同時に酸性土壌になるよう成分が調整、配合されています。初心者など栽培に自信のない方は、積極的に活用するとよいでしょう。特にハイポネックス錠剤肥料は人気の商品です。
\ブルーベリーのハイポネックス肥料の詳細/
また、ブルーベリーを甘くするには果実をできるだけ樹につけ完熟させることが重要ですが、その手助けをする肥料成分としてカルシウムも重要です。しかし、石灰や炭酸カルシウムなどの普通のカルシウム肥料は土壌酸度をアルカリ性に傾けてしまい、ブルーベリーには施用しづらいです。
そんなときに使えるカルシウム肥料が硫酸カルシウムです。「ブルーベリー用のカルシウム肥料」としても販売されている場合があるので探してみてください。
商品名 | ハイポネックス 錠剤肥料 ブルーベリー用 | 花ごころ ブルーベリーの肥料 | カルシウム肥料 ブルーベリーを丈夫に育てたい |
---|---|---|---|
概要 |
ハイポネックスや花ごころには、他の花木にも効果がある肥料が多く販売されています。
有機肥料
油かす
有機肥料として、油かす(油粕)肥料が利用されることが多いです。油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。春肥のタイミングで、施肥するようにしましょう。
堆肥や、家畜の糞をつかった厩肥(きゅうひ)は、アルカリ性を示すことがあるので使わないようにしましょう。
米ぬか
米ぬかを肥料として使用するときには、2つのやり方があります。
- 生の米ぬかをそのまま散布する
- 米ぬかをEMや発酵促進剤などの微生物によって発酵させて散布する(米ぬかぼかし肥料)
1月など休眠期の頃に、生の米ぬかをそのまま散布するというやり方をされている方もいます。但し、米ぬかの特性などをよく知った上で施肥をする必要があります。最悪、窒素飢餓(逆に肥料が不足する状況)や発酵熱による被害、カビなど腐敗の温床となることもあります。
米ぬかをそのまま土壌にすき込むとしても、元肥として使用するのが主流です。春〜夏の生育旺盛のときに米ぬかなどの分解に時間がかかる有機肥料(有機質肥料)を施すのは危険です。
生の米ぬかを使用する場合は、表面散布する方法のほうが良いでしょう。また、油分を除いた脱脂米糠を使用しても良いでしょう。
比較的、肥料の効きもわかりやすく、安心して使用できるのはぼかし肥料にしたものです。
米ぬかぼかし肥料とは、米ぬかを主原料としたぼかし肥料です。植物を育てるために必要な三大要素である窒素、リン酸、カリウム(加里)をバランス良く含ませるために、米ぬかの他に油かす、魚粉やカキ殻石灰などを配合し発酵させます。カキ殻石灰などを使用することでカルシウムやミネラル分やアミノ酸などを多く含み、野菜などの栽培においては食味や品質の向上にもつながります。
米ぬかは、リン酸が豊富に含まれている有機物資材で入手もしやすいため、ぼかし肥料の原材料としては人気のものとなります。
米ぬかぼかし肥料の成分比は原材料の配合によって異なりますが、米ぬかを主成分とした場合は窒素成分が少し抑えられたものが多いです(N-P-K=3-5-2など)。
米ぬかぼかし肥料を作る際の発酵のさせ方は、「好気性発酵」「嫌気性発酵」の2種類があります。
化学肥料(緩行性化成肥料・速効性化成肥料)
化学肥料には、緩行性化成肥料と速効性化成肥料がよく使われます。
自分でもブルーベリー専用の肥料をつくることができます。硫安(硫酸アンモニウム)-過リン酸石灰-硫酸カリウムを4-3-1の割合で配合し、混ぜ合わせます。
但し、樹の状態や気候を考慮した施肥が必要です。また、硝酸態窒素やアンモニア態窒素などの無機態窒素(チッソ)は速い効果すなわち速効性があり、よく効くものの「肥料焼け」の原因となるので、利用する場合には様子を見ながらよく観察して、少しずつ与える必要があります。
そのため、初心者の方は既に配合された果樹用の化成肥料、もしくはブルーベリー専用肥料を使用することをおすすめします。
なお、硝酸態窒素やアンモニア態窒素などの無機態窒素(チッソ)は速い効果すなわち速効性があり、よく効くものの「肥料焼け」の原因となるので、利用する場合には様子を見ながらよく観察して、少しずつ与えるようにしましょう。
特に、ブルーベリーは他の作物よりアンモニア態窒素を好んで吸収しますので、硝酸態窒素のみを与え続けている場合には生育が落ちると言われています。そのため、大規模に栽培されている方は、尿素肥料や硫安(硫酸アンモニウム)の施用も効果的です。
\尿素肥料についての詳細/
補足:ブルーベリーの育て方 概要
ブルーベリーは、野菜などと異なり永年性の樹木で、冬が明けるとたくさんの白い花を開花させ、受粉を経て夏(初夏)にはたくさんの紫色の果実を結実させます。実(ベリー)はその名の通り、生食で食べることはもちろん、ほのかに酸味のあるジャムなどにしても美味しいですよね。
庭木、ベランダでの鉢植え、プランターでの栽培もでき、とても手軽に栽培できる作物です。また、栽培の手間の少なさや養液栽培が普及してきたことからプロ農家でも栽培を始める人が増えています。
ノーザンハイブッシュやサザンハイブッシュといったハイブッシュの中には、季節に応じて紅葉する品種もあるので、観葉の目的でも十分に楽しむことができます(ブルーベリーの紅葉では、緑の葉がきれいな紅に染まります)。
病気や虫(害虫)にも強く、農薬をほとんど散布しないでもよく育つ丈夫さがあり、さらに剪定も難しくないので、比較的気軽に育てることができます。
育て方は、培地の違いにより、次の2つに大別することができます。
鉢や地植えでの栽培
ブルーベリーは果樹の中では樹高が低く、木も小さいため、鉢植えでも育てることができます。もちろん、畑や庭に地植えして育てることもできます。培地には、用土(鹿沼土、赤玉土、ピートモス)もしくは土が用いられます。
養液栽培
鉢や地植えでの栽培とは別に、養液栽培とよばれる方法でブルーベリーを栽培する場合があります。養液栽培とは、土ではない培地(ヤジガラ培地や発泡樹脂など)に植え付けた作物に対して、水と肥料を混ぜた液体(培養液)を与えることで栽培する方法です。
ブルーベリーの養液栽培の場合、いくつかのメーカーがパッケージとしてポットや培地など一式を販売していて、肥料も各メーカーの仕様に準拠して購入するというのが実情です。
苗の選び方
品種選び
日本で栽培されているブルーベリーは主に、寒冷地向きの「ノーザンハイブッシュ系」・暖地向きの「サザンハイブッシュ系」「ラビットアイ系」の3つの系統があります。
甘みがあって風味のよいとされている品種は、ノーザンハイブッシュ系ではアーリーブルー・ブルーレイ・スパルタンなどがあり、サザンハイブッシュ系ではオニール・シャープブルー・スターなどがあります。丈夫で初心者向けともいわれるラビットアイ系ではティフブルー、クライマックス、ホームベルなどの品種などがあります。
苗木の買い方
苗木は一年中購入できますが、できれば秋ごろから出回る苗で挿し木して、2年以上たっているものが初心者の方にはおすすめです。すぐに実をとることも可能ですが、苗木が弱り枯れてしまうこともあります。できれば5年以上たってから収穫するのがおすすめです。
またブルーベリーは、自家受粉もできますが他家受粉の方が、受粉しやすく実も大きくなる傾向があるためできれば、同じ系統の2品種を育てるのがおすすめです。
剪定
苗は挿し木から5年以上たったものに、結実させたほうがよいと上述しましたが、結実させない場合は冬に、枝先の花芽を切り取って着果させないようにて樹勢の強い木に育てましょう。
また剪定は、生長した株にも必要です。毎年冬に、衰弱したり傷んだ枝など不要な枝を間引いたり、勢いのないサッカー(地際から生える枝)も切り取りましょう。また細いシュート(実のつく枝)に、花芽が多くついているときは、花芽の数を減らすと大きな果実を収穫することができます。
用土について
ブルーベリーの栽培に最も大切なのは、土づくり。ブルーベリーは土壌が酸性でないと健全に育ちません。鉢植えだけでなく、庭植えでもきっちり土壌を整えましょう。
ブルーベリーには、未調整のピートモスを使います。市販のブルーベリーの土もピートモスをベースに作られています。自分で配合する場合は、酸度未調整のピートモス7・鹿沼土3で配合して、水を含ませてよく混ぜてから使いましょう。
庭植えの場合は、定期的にpHをはかって、6.0以下になるようにしましょう。pHが高い場合は硫黄粉末をよく混ぜて土壌改善をしましょう。定期的にピートモスなどを土に混ぜてもよいでしょう。
水やり
鉢植えの場合は、表土が乾いたら鉢底から水がでるまでたっぷり与えるが基本です。特に実のつく5月~7月は水切れに注意します。庭植えは乾燥が続いたときに与えればよいでしょう。ただし、ブルーベリーは根が細く乾燥に弱いので、庭植えは年間を通してバークチップなどでマルチングをして育てましょう。マルチングは雑草対策にも効果があります。
害虫
ブルーベリーは、他の果樹に比べて害虫の被害は少ないですが、アブラムシ、カイガラムシ、コガネムシなどが発生します。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。