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野菜の水耕栽培

パプリカ水耕栽培 栽培キットの作り方から収穫までの育て方 

野菜の水耕栽培

色鮮やかなパプリカは、ピーマンと形は似ていますが苦味が少なく、甘くてフルーティーでピーマンの苦手な子供でも食べやすい野菜です。ピーマンの栽培より栽培期間は長いですが、水耕栽培でも栽培することができます。

ここでは、パプリカの水耕栽培について、タネや苗から始める手順から収穫までの栽培方法を、初心者の人にもわかりやすく説明します。

パプリカの水耕栽培について

パプリカの基礎知識

パプリカは、ピーマンと同じナス科トウガラシ属の植物で甘トウガラシの一種です。緑色のピーマンは未熟果で収穫しますが、完熟させると黄色やオレンジ、赤色へと変わりこれがカラーピーマンと呼ばれます。日本ではカラーピーマンの中で、大型で肉厚な品質のものを「パプリカ」と呼んでいます。

ピーマンは、病気や害虫に強いので初心者の人でも作りやすい野菜です。ピーマンは開花後15日~20日で収穫できますが、パプリカは完熟させる必要があるので開花から50日~60日程度かかります。実に栄養をたくさん送る必要があるため、収穫量もピーマンに比べるとかなり少なくなります。

タネから育てると、育苗の期間が2ヵ月程度かかるので、初心者の人は市販の苗から始めるのがおすすめです。寒さを嫌うので、遅霜の心配がなくなってから栽培を始めましょう。

作物名パプリカ
科目ナス科トウガラシ属
原産地熱帯アメリカ
発芽適温(地温)30℃〜33℃
生育適温25℃~30℃
育てやすさ普通

品種

パプリカは色によって栄養素や味が少し異なります。甘みは、オレンジ色、赤色、黄色の順に甘いといわれます。栄養素は赤色は唐辛子と同様にカプサイシンが多く、黄色は肌の老化を防止するルテインが多く含まれます。オレンジ色は、赤と黄色の両方の栄養素を含みます。

ここでは、水耕栽培で育てやすい小型種をいくつか紹介します。早生種で小型であれば、株が疲れないので多収が見込め、栽培も容易です。

品種名概要特徴
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レッド・ゴールド・オレンジがありミックス種が人気
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果重30g~60g程度のミニパプリカ
開花後45~50日で収穫が可能な極早生種
レッド・イエロー・オレンジの品種があります。
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紫→オレンジ→赤にかわり、どの色でもおいしく、
赤色になるほど甘みが増えます。

栽培時期

パプリカの栽培時期は、暖かくなってきた春にタネまきや植え付けをし、初夏から秋まで長く収穫することができます。下記は露地の土耕栽培の栽培時期の目安です。寒さが苦手なので暖かくなってきてから栽培を開始しましょう。

地域播種(タネまき)時期植え付け時期収穫時期
寒冷地4月~5月中旬6月~7月中旬8月~10月上旬
中間地3月下旬~4月5月~6月7月~10月
暖地3月~4月4月下旬~6月6月下旬~10月

パプリカの水耕栽培のポイント

水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。

水耕栽培は、サニーレタスやベビーリーフなどの葉物野菜やハーブなどは特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。パプリカは簡易的なペットボトル栽培も可能ですが、あまり実が大きく成長しない、もしくは収穫量がすくなくなります。

実もの野菜を作る場合には、容量の大きな容器を使い、野菜の生長に必要な酸素を根に直接送れるエアポンプを使った栽培がおすすめ。用具は少し必要になりますが、エアポンプを使うと成長が早くなり、多くの収穫量が見込めます。

またパプリカの育苗は播種(種まき)時期と発芽温度が合わないため保温して育てる必要があります。育苗も2か月ほどかかり、実もの野菜は苗の良しあしで収穫の量や質が大きく変わるので、市販の苗から始めるとよいでしょう

パプリカの水耕栽培の手順

種まきから始める場合

パプリカをタネから始める場合は、発芽温度が高いため保温できる環境がある場合に限ります。育苗期間は2ヵ月以上かかるります。水耕栽培の種まきは土の変わりの培地として、スポンジ等を使う方法もありますが、バーミキュライトで栽培したほうが、発芽が安定します。

タネまきから育苗までは、ピーマンの種まきの記事がありますのでこちらを参考にしてください

栽培容器を作る

まずは、パプリカの水耕栽培用の栽培容器を作りましょう。本格的な栽培キットなどもありますが、ここでは発泡スチロールの箱で自作する方法を説明します。

用意するもの

  • 発砲スチロールの箱(蓋つき)
  • スポンジ(キッチンスポンジでOK、シリコンスポンジ不可)
  • エアポンプ(なくても栽培は可能)
  • カッター、キリ、定規、マジックなど

作り方の手順

  1. スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
  2. 発砲スチロールのフタの部分の中央に、1で切ったスポンジより少し小さめの穴を空けます
  3. フタの下部の部分をカットし、そこにエアポンプの管を入れるようの穴を空けます。
  4. 容器に水をいれ、エアポンプをセットします。

苗の植え付け

市販の苗の選び方

  • 本葉8枚~10枚程度(一番花のつぼみがあるとより良い)
  • 葉がきれいで、病気などにかかっていないもの。
  • 茎の節と節の間が詰まっており、徒長(ひょろひょと間延び)していないもの
  • 全体的に、茎が太くがっちりしているもの
ピーマンの苗

準備するもの

  • スポンジ(5~6cm角にカットして、切込みをいれたもの)
  • 発砲スチロールのフタ
  • パプリカの苗
  • 割り箸など

苗の植え付け方の手順

  1. ポットから苗を取り出します
  2. バケツに水をいれ、バケツの中で根を傷つけないように土をできるだけ落とします
  3. 切込みをいれたスポンジに、株元から下の部分を挟みます
  4. 発砲スチロールのフタの中央の穴の部分に、スポンジごと苗をセットします。
  5. スポンジは、しっかり固定できるように、割り箸などで押し込みます。
  6. 水を入れた容器に、蓋をセットして育てます。水の水位は根が3分の1ほどつかる程度です。

水耕栽培の根が発根するまでは、肥料は入れず半日陰で管理します。白い根が発根してきたら肥料をいれた水で栽培を開始しましょう

手順

パプリカの水耕栽培の手順
  • 手順1

    栽培容器の準備

    発砲スチロールとスポンジでパプリカの栽培容器をつくります。

  • 手順2
    苗の植えつけ

    市販の苗や、育苗した苗を栽培容器に植え付けし、水耕栽培用の根がでるまで育てます。
    根がでたら、肥料をいれて日当たりの良い場所で管理します。

  • 手順3
    支柱立て

    植えつけ後すぐに支柱を1本たてておきましょう。
    ボックスの四隅に、90cm程度の支柱を固定します。
    ツルが伸びてきたら、支柱に誘引して紐で結びます。

  • 手順4
    整枝・わき芽かき

    一番果がつくころ、主枝と一番果のすぐ下の側枝を2本残して、それより下のわき芽をすべて切って、3本仕立てにします。

  • 手順5
    摘果・適花

    一番果は、株が小さいうちにつくため株が消耗しないように、ついたらすぐハサミで摘みとります。大きなパプリカを育てる場合は5番花ぐらいまで摘花し株の生長を優先させましょう。

  • 手順6
    収穫

    品種にもよりますが開花から50日~60日程度で収穫の時期を迎えます。
    つややかな色になったら収穫のタイミングです。
    ヘタの部分をハサミで切って収穫します。

パプリカの水耕栽培 育て方

パプリカの実がなっているところ

容器

水耕栽培に使う容器は、容量が大きいほど培養液(肥料を入れた水)を入れ替える手間も済みますが、場所などに合わせて容量を選びましょう。ミニタイプのパプリカなら3ℓ以上できれば5ℓ以上容量があるものがよいでしょう。

発砲スチロールは保温効果もあり高温を好むパプリカにはおすすめですが、それ以外でもタッパー、コンテナ、ごみ箱、バケツなどをつかっても栽培が可能です。バケツやプラスチックのゴミ箱などを使う場合には、蓋の部分を発砲スチロールでつくって上にかぶせて使うとよいでしょう。タッパーならフタの部分をくりぬいて使います。

発砲スチロールの箱は、小さなものは100均などでも手に入りますし、ホームセンターなどではいろいろなサイズのものがあります。また魚介類などをインターネットで購入すると、発砲スチロールにはいってくることもありますし、スーパーや魚屋さんでもらえることもあるので、聞いてみるのもよいでしょう。

発砲スチロールは専用のカッターがあると簡単にカットできます。100均などでも置いてあることがあります。

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栽培環境

パプリカは日当たりが良く、風通しの良い場所を好みます。寒さに弱いので、気温が低い日は室内に取り込む、苗が小さいうちは、ホットキャップや苗カバーなどの対策が必要です。また真夏の直射日光は、パプリカの実が日焼けして黒くなってしまうことがあります。半日陰に移動するか、遮光ネットなどをつかって直射日光を避けましょう。

昼間は、可能であれば25℃〜30℃前後で管理できると良いでしょう。夜間は、可能であれば、15℃〜20℃前後で管理できると良いでしょう。夜温(夜間の温度)が高すぎると徒長しやすくなります。逆に10℃以下になってくると生長が止まり、未受精果が増えるので注意が必要です。

わき芽かきは、日照と風通しを良くするため、都度行ってください。実の付きもよくします。

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水やり・水替え

水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。

水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。エアポンプを使っていない場合には1週間に1度水の交換をしましょう。高い位置から水を注ぐようにして入れると空気がはいりやすくなります。

成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。                                                                                                                                                                                           

肥料

水耕栽培でパプリカを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。

水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。

家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。

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下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。

エアーポンプ

エアーポンプ(エアポンプ)は、必ずないと育たないというわけではありません。葉物野菜やミニトマト、ミニパプリカなどの小型な果実野菜なら、エアポンプがなくともある程度育ちます。しかし土壌栽培とことなり、水には酸素が少ないためエアーポンプを使うことで、酸素が多く根に供給され、生育が早くよく育ちます。

エアーポンプは、水耕栽培用のものもありますが熱帯魚用のものでもOK。使用する容器の大きさに合わせてものをつかいましょう。ベランダなどで育てる場合、電源がない場合もあります。そんなときには、太陽光発電ができるエアーポンプや充電が可能なエアーポンプなどもあるのでそちらがおすすめです。

またエアポンプは、水の逆流を防ぐため本体は栽培容器より高い位置に置きましょう。

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支柱立て

パプリカは草丈が高くなり、実がなり始めるとその重さに耐えられなくなり倒れます。栽培当初から支柱を立てて育てましょう。

水耕栽培の場合は、プランターなどと違い土に挿してプランターを支柱を立てることができません。容器にビニールひもなどで固定したり、緑のカーテンなどに使われる壁などに立てかけて使う支柱や、自立する支柱などを使うとよいでしょう。庭などで、置いてある場所が土であれば、土に直接挿すこともできます。

容器に固定する支柱は、パプリカは90cmほどのものを立てるとよいでしょう。親づるが伸びてきたら、支柱につるを誘引して紐で結びます。誘引は、つるの生長に合わせてこまめに誘引してください。

支柱を立てられる水耕栽培用キットも便利です。

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整枝・わき芽かき

パプリカの茎は、一番花の上で2本に分かれて、その後も花の咲くところで分岐しながら大きくなります。1番花のすぐ下とそのさらに下から出る側枝が勢いのあるものとなるので、それらを残し、ほかの側枝(わき芽)は摘み取ってしまいます。そのように2本の側枝を伸ばすことで、主枝と合わせて「3本仕立て」となります。

ピーマンの整枝のやり方を示した画像です。

摘果・摘花

パプリカは、株の小さなときに一番果がつきやすいため、一番果は摘み取ることで株の消耗を防ぎます。ミニパプリカであれば、一番果だけ摘果すればよいですが、通常のパプリカでは5番花~7番花程度まで、摘花して株を大きくしましょう。適花することでそのあとの収穫量が変わります。

収穫が進むと、7月下旬には実が着きづらくなったり、小さかったりする、いわゆる「なり疲れ」が多く発生します。真夏も暑さもその要因となってきます。

そのまま着果・肥大させていくと着果負担(果実が植物になることによる養分の消費)が激しくなり、株が一時的に弱る場合があります。そのようなときには、追肥をするとともに、摘果した方が長く安定的な栽培ができます。

摘花・摘果は、晴れた日に手で摘み取りましょう。花や小さな果実は手で簡単に取ることができます。

収穫

パプリカは、当初は緑色で完熟するにつれ色づいてきます。品種にもよりますが開花から50日~60日前後で収穫できます。色づいたものから順に収穫しましょう。ヘタの部分をハサミで切って収穫します。

未熟果の緑の状態のピーマンでも収穫できるので、すべて完熟させると株が疲れるので、緑色の状態の収穫を間に挟むと、多収穫が見込めます。

病害虫

パプリカは、栽培期間が長く、夏に収穫がつづくため病害虫には注意が必要です。

害虫はアブラムシカメムシアザミウマネキリムシなどの害虫が発生することがあります。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。幼苗期はアブラムシが付きやすいので、防虫ネットも有効です。

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病気は、うどんこ病、疫病、斑点病、灰色かび病などにかかることがあります。葉に斑点がでたり、茶色く枯れたりしてきたら病気を疑いましょう。対策は梅雨に高温多湿によるカビの被害が多いので、屋外で育てる場合は、梅雨は軒下で雨があたらないようにし、風通しがよく日当たりの良い場所で育てましょう。枯れ葉をとったり、枝葉を剪定して、株元が混まないようにするのも効果的です。

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まとめ

パプリカはハンガリー語でピーマンの意味で、ハンガリーなどではスパイスとして使われ、日本でもパプリカパウダーは料理の色どりにつかわれます。

パプリカは、ピーマンの苦味が苦手な人でも食べやすく、料理を彩ってくれる栄養価の高い夏野菜です。採れたてのパプリカをすぐに料理に使えるのが、手元で育てる水耕栽培のよいところです。

ミニパプリカであれば、栽培もピーマンとそれほど栽培の難易度は変わらず、育てやすいのでまずは、ミニパプリカから育てて、成功したら大きなパプリカに挑戦してみましょう!

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執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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