アワノメイガといえば、トウモロコシに最も甚大な食害を与える害虫で有名です。ここではアワノメイガはいつ頃に発生して被害を与えるのか、また防除するにはいつが効果的なのかについて詳しく解説していきます。
アワノメイガが発生する時期
アワノメイガの発生回数,発生時期は地域によって異なってきます。
北海道では年1回発生で,成虫は主に、7月中旬~8月中旬に出現します。東北,関東,北陸地方では年2回発生で,成虫は5月下旬~6月下旬,8月上旬~9月上旬に出現します。そして、それよりも西の地方では年3回も発生し,5月上~下旬,7月中下旬,8月下旬~9月上旬に出現します。
アワノメイガが作物に被害をもたらすのは、成虫ではなく主に幼虫です。
アワノメイガの幼虫は葉裏を食害し、茎の中に侵入します。また、雄穂を糸で穂をつなぎ合わせ、その中に潜んで食害します。そして雌花が咲いて、農作物の果実が実ると、果実、実も食害し、収穫に大打撃を与えます。その後、茎内部で蛹になります。アワノメイガはイネ科植物が大好物で、トウモロコシ(スイートコーンなど)、サトウキビ、ソルゴーなどのイネ科作物でよく見られます。
いつ防除するのが効果的か
このように、アワノメイガの幼虫をいかに防除するかが大事です。アワノメイガの成長サイクルは、幼虫から蛹を経て成虫になるまでで、約1カ月程度です。蛹から羽化した成虫は、生きている間に二~三回産卵します。
つまり、ざっくり考えると、成虫の時期から1ヶ月前の卵、幼虫の時期に防除するのが効果的だと言えます。
具体的には、北海道では6月中旬~7月中旬に、東北,関東,北陸地方では4月下旬~5月下旬,7月上旬~8月上旬に、それよりも西の地方では4月上~下旬,6月中下旬,7月下旬~8月上旬が防除する時期としては効果的と言えます。
アワノメイガに効く農薬
アワノメイガはトウモロコシ(スイートコーンなど)では非常に有名な害虫のため、下記のように、多くの適用農薬があります。
アワノメイガに効く代表的な農薬
有機リン系 エルサン、オルトラン、スミチオンなど
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオンがあり、どちらもアワノメイガに効く農薬です。スミチオンについては下記をご参考ください。
パダン
パダンは、カルタップ塩酸塩を有効成分とした殺虫剤で、アワノメイガはもちろん、稲のコブノメイガ、ニカメイチュウ、イネツトムシ、茶のチャノホソガなどのような作物の茎葉を食害する害虫に特にすぐれた効果を示します。
また、有機リン系とは異なるRACコードで、害虫の抵抗性、耐性が見られる場合や、ローテーション散布に利用しやすい農薬であるといえます。
パダンは遅効性なので、パダンをベースとしつつ、目視で、雄穂が折れている、雌穂を包む葉に穴が開いているなど、発生がすでに検知される場合は、即効性(速攻性)があるスミチオンをピンポイントで散布する、という使い方で成果を出されている方もいます。
アワノメイガに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、アワノメイガに効く代表的な農薬は以下のようになります。
この他、デナポン(IRACコード:1A)もアワノメイガの防除に非常にポピュラーな農薬です。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はアワノメイガだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
生物農薬
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
アワノメイガ対策に使えるおすすめの生物農薬は、微生物殺虫剤、BT殺虫剤があります。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させるために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
雄穂を切って、間引く
雄穂が出ると、アワノメイガの幼虫はその穂の中に入ってきます。このため、雄穂がなければ幼虫が侵入することはないとの考えから、雄穂を切り取ってしまうという方法です。
切るタイミングですが、受粉が終わってから雄穂全体を切ると、雄穂を切った時に幼虫がその下に潜り込んでしまう可能性もあるため、雄穂が見えてきたらすぐに切る方がより防除に良いとし、実践されている方もいます。その場合、受粉のために残す雄穂の数の目安としては、雄穂を3分の1以上残しておくことで、受粉自体には大きくは影響がないとされています。(トウモロコシはものすごい量の花粉を出すので、もっと雄花がなくても受精には影響ないという説もあります)
コンパニオンプランツと栽培する
コンパニオンプランツとは、近くで栽培することでお互いの作物に良い影響を与え、共栄しあう複数の植物の組み合わせ、またそれに該当する植物のことを言います。
トウモロコシとマメ科の植物はコンパニオンプランツとして有名で、とうもろこしの周りにマメ科(例えばインゲンやエダマメ(枝豆))の植物を植えると、アワノメイガは寄り付きにくくなる効果があります。
その他
この他、防除方法としては、イースト菌の発酵液を畑の中に置くことでアワノメイガの被害が減るという説があります。明確な理由は解明されていませんが、この方法で成果を出されている農家の方は存在しています。
やり方は、500mlのペットボトルを用意し、150mlほどのぬるま湯をベースに、イースト菌、ハチミツを希釈倍率20倍で投入し、混ぜます。
そのペットボトルを目安5m2に1本づつ、出穂間近の圃場に置く、という簡単な方法です。
そもそも、アワノメイガはどういう害虫?
アワノメイガについて詳しく知りたい方は、下記をご参考ください。
似た害虫として、アワヨトウ(粟夜盗蛾)などの蛾がいます。