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アボカド

読めば流れがわかる!アボカドの基礎知識と栽培方法の基本

アボカドの実を半分に割った様子 アボカド

アボカドは、1万年以上前からアメリカ大陸を中心に食用とされてきた熱帯果樹です。アボカドの果実は「森のバター」と呼ばれ、果肉には油分が多く含まれていることで知られています(果肉の油分の多さと濃厚さから「森のトロ」と呼ばれたりもします)。また、油分だけではなくビタミンEやその他多くのミネラルが含有されており、美容にも良いとされています。

アボカドの日本国内の消費量は2000年前後から増え始め、食卓でもよく使用されるようになってきました。しかし、その大半は輸入物であり、未熟果実のまま収穫され追熟されたものなど、当たり外れが多くあります。

実は、アボカドは家庭菜園、プロ農家の栽培としても注目の作物です。上記のとおり、輸入物が大半を占めるため、国内産の完熟果実は付加価値があります。樹に付けたまま熟すものと、収穫したあとに追熟するものでは、味や栄養価が全く異なります。家庭菜園では露地栽培(庭やベランダを含む)や水耕栽培(水栽培)、プロ農家では露地栽培やハウス栽培が可能です。

この記事では、アボカドの基礎知識や栽培の方法の基本、重要事項、注意点などについて解説します。記事が長いため、目次を見て必要な部分から読み進めてください。

アボカドの基本知識

作物名科目原産地育てやすさ種の価格
(円/1粒)
苗の価格
(円/1苗)
収穫までの日数
(目安)
栽培できる地域作型栽培方法土壌酸度
(pH)
連作障害発芽適温生育適温日当たり光飽和点
アボカドクスノキ科中央アメリカ
メキシコ
★★★☆☆4000円〜20000円程度開花後、5ヶ月〜6ヶ月後全国(但し、氷点下は避ける)露地栽培
プランター・鉢植え栽培
施設栽培
水耕栽培
4.5〜5.515〜25℃15〜33℃日なた

アボカドは、クスノキ科ワニナシ属の常緑高木およびその果実のことを指します。中央アメリカ、メキシコ地方が原産とされており、日本では2000年頃から輸入量が爆発的に増えて、食卓にも並ぶようになりました。日本国内では、栽培作物としてはまだマイナーな果樹でありますが、そのポテンシャルは他の作物よりも大きいと考えます。

アボカドの樹高は品種系統によって異なります。グアテマラ系や西インド諸島系の品種で実生の場合、樹高30メートルほどになることもあります。一般的に栽培で使用される品種は開張型のものが多く、樹高もそこまで高くならないように制御することができます。

アボカド栽培のポイント

  • 若木(幼木)は、耐寒性が弱く、特に気温に注意して栽培することが必要です。基本的に一年を通して圃場、庭、ベランダなど戸外で栽培することが可能です。寒い地域や時期は、防寒資材で樹全体を守ってあげたりすることが必要です。ベランダ栽培の場合は、冬季のみ室内にしまうことも有効でしょう。
  • 比較的寒さに弱いため、強い北風が吹き付ける場所には植えないようにしましょう。また、霜にも注意が必要です。
  • 耐寒性が強い品種を台木として使用すると、成木になったときにある程度の耐寒性(-5℃程度)を備えることができます。但し、接ぎ木をしない場合やスーパーで輸入のアボカドとして販売されているハスという品種の場合は、耐寒性が弱いため氷点下になった時点で枯れてしまう可能性が増します。
  • マンゴーなどの果樹と同様で風害にも弱いです。防風対策も検討しましょう。
  • 収穫した果実に含まれている種をそのまま使用して発芽、栽培することができます。
  • 比較的栽培しやすいため、大きめの鉢植えやプランターなど家庭菜園として育てることもできます。但し、果実をつけるほど大きな成木にしたい場合には、地植えしなければ難しいでしょう。
  • 本圃や鉢植えの土壌は、酸性で水はけがよい土壌が良いでしょう。
  • アボカドは水耕栽培で育てることもできます。しかし現実的に、果実を収穫するまで樹形を大きくすることは不可能なため、ある程度の大きさになったところで土に植え替えることが必要となります。
  • 品種によって、受精適期が異なります。大きく2つのタイプに分けることができ、「Aタイプ」「Bタイプ」と分類します。Aタイプ、Bタイプを混合して圃場に植えることで着果率が上がると言われています。
  • 結果率(実がなって、収穫まで大きくなる確率)が極端に低い果樹です。
  • 隔年結果が起こりやすい果樹です。収穫できる年とできない年がハッキリと分かれやすいです。
  • アボカドの果実は樹上にある限り肥大し、食味も良くなります。収穫適期を守るととても品質の高い果実が収穫できます。
  • アボカドは収穫後、追熟が必要な果実です。
  • アボカドはマイナー作物ですが、基本的な管理方法はカンキツ類(柑橘類)の果樹と同様と捉えて良いでしょう。その中で、一部アボカド栽培に適した管理方法もあるので、本記事にて紹介します。

アボカドの品種

アボカドには、さまざまな品種があります。実はすべて合わせると1000種類以上の品種があるとされています。アボカドを品種で分ける際には、主に3つの観点で大別することができます(他にも品種特性の違いはたくさんあります)。

  1. 系統(メキシコ系・グアテマラ系・西インド諸島系)
  2. 開花型(Aタイプ・Bタイプ)
  3. 樹形(開張・直立)

アボカドの主な品種と特性について、日本で育てやすい品種をピックアップして紹介します。

品種名系統開花型樹形備考
ベーコンメキシコ系×グアテマラ系Bタイプ直立耐寒性が強い、食味が良い
フェルテメキシコ系×グアテマラ系Bタイプ開張食味が良い
ズタノメキシコ系×グアテマラ系Bタイプ直立耐寒性が強い
ハスグアテマラ系Aタイプ開張耐寒性が弱い
ピンカートングアテマラ系Aタイプ開張耐寒性が弱い
トパトパメキシコ系Aタイプ直立主に台木に使われる
メキシコーラメキシコ系Aタイプ開張主に台木に使われる
デュークメキシコ系Aタイプ開張主に台木に使われる
プエブロメキシコ系Aタイプ開張主に台木に使われる

栽培するにあたっては、AタイプとBタイプの品種を混植させることが着果率の大きな向上に繋がります。果実を収穫したいという方は、Aタイプ、Bタイプの両方の品種を同じ圃場(庭)に植えてみてください。着果率をより向上させるにはミツバチを放飼したりします。

「Aタイプ」と「Bタイプ」何が違うの?

簡単に言うと、「オスとメスになる時間帯」が違います。アボカドは、雌雄異熟性であり、両性花でありながら,雌しべ (雌ずい) と雄しべ (雄ずい) の成熟期がずれるようにできています。簡単に言うと、性転換を交互に繰り返しているイメージです。そのため、一種類の品種だと皆がオス、皆がメスと時間帯によって偏ってしまうので、受粉が難しくなります(自家受粉ができない)。

Aタイプ、Bタイプ、それぞれどのようなスケジュールになっているかを下の表に示します。開花期は、下記のスケジュールを繰り返しているのです。そのため、AタイプとBタイプの品種を混植させることが着果、結実の成功確率の向上に大きく繋がるのです。

開花型1日目午前1日目午後2日目午前2日目午後
Aタイプメスオスメスオス
Bタイプオスメスオスメス

アボカド栽培のスケジュール

発芽適温生育適温
15〜25℃15〜33℃
アボカドの発芽適温と生育適温

本州の温暖地域の露地栽培を想定した栽培スケジュールです。前提として、外気温が発芽適温、生育適温に当てはまるような地域が良いでしょう。

本州の温暖地域の場合は、6月もしくは10月頃に播種・芽出し(種から発芽させる)作業をすると良いでしょう。10月の場合は、冬季に向かっていく時期なので温度管理には十分に気をつけましょう。ご家庭での水耕栽培や露地栽培においては、発芽適温に合った環境・季節であれば、いつでも発芽・育苗することができます。発芽したあとは、植え付け適期になるまでポットなどで苗を育てます。

収穫期は年一回で、露地栽培の場合は冬季になります。収穫した果実は、室温に近い環境で追熟させる必要があります。

ハウスなどの施設栽培においても同様の考え方となりますが、温湿度管理や潅水作業など細かな部分は異なります。アボカドの植生をよく調査、理解して栽培することが重要です。

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アボカド栽培の流れ・栽培方法

アボカド栽培の流れは、下記のようになります(本州の露地栽培の目安)。下記は、種から発芽させて、収穫できるようになるまで栽培する流れとなっています。種から発芽させた苗は幼木となり、比較的早い段階で花を咲かせ始めますが、成木となる4〜5年目までは実をつけることが難しいでしょう(接ぎ木苗ではない場合はそれ以上にかかります)。長い目で栽培することが重要です。苗木として、1〜2年目の幼木も販売されているので、家庭菜園規模の場合は、苗を購入してもよいかもしれません。

先述したように、地域によって気候などが変わりますので、そのときに合った栽培スケジュールを立てて、同じような流れで栽培してください。

栽培の流れ

アボカド栽培の播種・発芽・育苗

播種

アボカドは、比較的種から発芽させやすいためプロ農家に限らず、家庭菜園においても種から栽培することができます。種から栽培する場合は、発芽適温に合った季節や場所を選びましょう。温暖地の場合は、6月頃か10月頃が良いと思います。

本格的に栽培をしたい方は、接ぎ木(接木)に使用する台木となる実生樹を播種から育てます。実生樹は、台木に適している品種の種をまいて、発芽、育苗していきます。台木に適している品種の種は、アボカドの栽培農家などから譲り受けるのがおすすめです。

下記の手順に従って、種から発芽させてみましょう。

  1. 発芽率を上げるため、種の頂部を2mm、底部を2mm程度薄く削ります。
  2. 削った種は、腐敗防止のため日陰で傷口をよく乾燥させます。乾燥させすぎると種が傷んでしまい、かえって発芽率が悪くなりますから、傷口が乾けばそれ以上に乾燥させなくて大丈夫です。
  3. 発芽・育苗するためのポットを準備します。深さがあるポットを用意しましょう。ポットでなくても、鉢植えやペットボトル、牛乳パックなどでも可能です。いろいろ工夫してみてください。培土は、水はけの良い土が良いです。ポットの底部には大粒のパーライトを敷き詰め排水性を高め、その上に培土(培養土2:パーライト1:バーク堆肥1など)を入れましょう。
  4. 播種します。培土を入れ、準備したポットに種を少し押し込み、その上から鹿沼土をかぶせましょう。種が見えなくなる程度に鹿沼土をかぶせたら、播種は完了です。
スーパーで買ったアボカドの種から栽培できる?

結論から話しますと、栽培できます。スーパーで販売されている果実から、果肉部分を取り除き、種だけを取り出します。取り出した種は水でよく洗い、なるべく早く、上記と同じ要領でまいてみましょう。

但し、下記2つの観点からあまりおすすめはできません。実験としてやってみるくらいの心持ちであれば良いでしょう。

  1. スーパーで買ったアボカドは、冷蔵庫に入れられたりするなど適切な環境で保管されたとは限りません。発芽能力が下がっている可能性があります。
  2. スーパーで購入するアボカドの多くは輸入物であり、輸入物の多くはハスという品種となります。ハスは、耐寒性が弱いため、日本の気候で育てることは難しい品種です。

発芽・育苗

播種したアボカドは、寒さに当たらないように適切に気温を管理しましょう。寒い時期には、電熱線や農電園芸マットなどを地面に敷いて上からトンネル被覆をすると良いでしょう。発芽するまでにかかる時間はまちまちですが、適切な温度管理ができれば約2〜4週間程度で発芽してくるでしょう。

育苗は、1年程度と短い期間で済ませるようにしましょう。育苗中は下記のことに気をつけて管理しましょう。

  • 土壌が乾いたら、しっかりと水やりをしましょう。
  • 外に出すときは、日焼けを防ぐため直射日光を避けましょう。
  • 温度管理には、十分に気をつけましょう。特に寒い時期の凍害には要注意です。
  • 樹勢が弱くなってきたら油かす緩効性化成肥料(N-P-K:10-10-10など)を土の表面に軽く散布しましょう。
ペットボトルなど水耕栽培(水栽培)でも発芽させることができる!

実は、アボカドはペットボトルなど水耕栽培(水栽培)でも発芽、育苗することが可能です。水耕栽培(水栽培)では、結実・収穫することは難しいですが、観葉植物としてアボカド栽培を楽しむことができます。観葉植物のパキラなどと同じような姿となります。

播種の仕方は、土耕の場合と同様ですが、培地を使わずに水だけで育てることができます。水耕栽培における発芽のさせ方を簡単にまとめます。

  1. 土耕の場合と同様に種を用意します。
  2. 種は、底部が水に使っていれば問題ありません。種に3方向から爪楊枝などを指し、ペットボトルやグラスなどにのせます。
  3. 水はこまめに交換してやりましょう。

アボカドの水耕栽培(水栽培)について、別の記事で詳しくまとめておりますので参考にしてください。

耐寒性を持たせ、果実を早く収穫したい場合は接ぎ木(接木)がおすすめ!

プロ農家の営農や家庭菜園を本格的にしたい方は、台木・穂木を使用して接ぎ木をすることをおすすめします。接ぎ木をすると以下のメリットがあります。

  1. 比較的耐寒性の強い苗を作ることができる。
  2. 比較的短期間(4〜5年目)に果実をつけることができます。

台木として使用する品種は耐寒性のあるものを選ぶと良いです。穂木はすでにあるアボカドの木から葉芽が多くある枝を花が咲く前の時期に採取して使用します。

苗木は購入もできる

ここまで種から発芽させて育苗する流れをご紹介しましたが、手軽に栽培を始めたい場合は苗木を購入することをおすすめします。種苗店やネット通販などで購入が可能です。中にはしっかりと接ぎ木苗を販売されている種苗店もありますので、その際には台木の耐寒性や穂木の品種などを聞いてみると良いでしょう。

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苗木は1年生〜2年生のものが多く、そのまま植え付けすることも可能です。樹勢が心配であれば、もう1年間ポットでそのまま生長させても良いでしょう。

アボカド栽培の土作り・植え付け

土作りのポイント

アボカドを栽培し、美味しい果実を収穫するためには本圃の土作りが重要です。アボカドは、比較的酸性の土壌を好みますを選ばない植物ですが、強い酸性土壌の場合には、石灰質肥料を散布して土壌酸度をアルカリ性側に矯正してあげます。土作りのポイントを下記にまとめます。

  • 土壌が深く、水はけ・水もちのよい土壌を好みます。重粘土の土壌や畑転換(もともと水田だった場所を畑にした)の場所では、水はけが悪い可能性が非常に高いので、畦を作るなどの排水対策が必要となります。また、有機物資材を積極的に使用し、土壌の物理性を改善してあげましょう。
  • 弱酸性(pH4.5〜5.5)の土壌を好みます。pHが高めの場合には硫黄粉末などを散布したりしますが、基本的には有機物資材(堆肥など)や固形肥料の散布で酸性側に傾くので、そこまでの対策は必要ないでしょう。逆にpHが低めの場合には、石灰質資材などを散布して矯正します。
  • 元肥は、植え付け時に施します。

4月〜5月頃に植え付けを予定している場合は、冬に土作りを済ませておきましょう。植え穴を用意して、そこに元肥を施しておきます。植え付けの間隔・植え穴については、以下の表を参考にしてください。品種や栽培方法によって、植え付けの方法も変わってくるので詳しくは種苗店などに問い合わせると教えてくれると思います。

株間植え穴の大きさ
3m〜5m80cm四方
アボカド植え付け時の株間と植え穴の大きさ

土作りの手順を簡単にまとめておきます。

  1. 植え穴を用意します(上記、表を参照)。
  2. 掘り出した土壌にバーク堆肥などをよく混ぜて埋め戻します。

元肥の施用量は、その土壌の栄養分や土壌酸度(pH)によって異なりますが、下記の表を基準にしてください。

肥料(全種類施用)施用目安量(一株当たり)
バーク堆肥20kg程度
苦土石灰5kg程度
リン3kg程度
アボカド植え付け時、元肥の目安

植え付けのやり方

植え付けは、霜が降りる心配がなくなる4月〜5月頃が良いでしょう。また、温暖な地域は10月〜11月頃でも植え付けが可能ですが、凍害の被害が出る可能性があるので、春に実施するのが無難です。

植え付けの手順は、以下のとおりです。

  1. 用意した植え穴にポットくらいの大きさの穴を掘ります。このとき深さは、ポットの上面が地上から20〜30cm くらい上にくるようにします。理由は、植え穴が沈み込むことを考慮するからです。
  2. ポットから苗木を取り出します。ポットの側面を軽く叩くと取り出しやすいです。根の部分は崩さないように注意しましょう。
  3. 植え付けます。植え付けしたあとは地上から50cmくらいの高さになるように土をかぶせましょう。
  4. 植え付け後は、支柱を用意して苗木をくくりつけましょう。また、わらなどの有機資材を敷くことで、土壌の乾燥を防ぐことができます(有機マルチ)。

アボカド栽培の管理作業(手入れ作業)

幼木の期間と成木の期間では、管理方法も少し異なってきますので、それぞれのステージに合わせた管理を心がけましょう。

植え付け後3年〜4年目まで

施肥

幼木のときには、肥料は控えめにします。アボカドの根は浅く、塩害に弱いため、一度に化成肥料を施すとダメージを受けてしまいます。4月、7月、10月など複数回に分けて、少量の固形化成肥料を施していきましょう。アボカドの必要窒素量の目安は、以下のとおりです。

ステージ必要窒素量(10a当たり)
1年生1kg程度
6年生20kg程度

水やり(潅水)

生育が旺盛な期間(生育期である3月頃〜9月頃)は、潅水が必要となってきます。土壌が乾燥し、水切れを起こすとアボカドに大きな影響が及びますので注意しましょう。水切れを起こすと最悪の場合、枯れてしまいます。特に7月〜9月頃は土壌が乾いていたら、たっぷりと潅水してあげましょう。ちなみに、鉢植えでずっと育てたり、施設栽培の場合には、一年を通して潅水する必要があります。

摘心(ピンチ)

アボカドは、摘心することによって樹形を作っていきます。品種によって「開張タイプ」「直立タイプ」とありますが、作業性が良い品種は「開張タイプ」のものです。どちらのタイプも樹形作りの考え方は同じで、新梢が伸び始めたら先端を摘心してやります。こうすることで、側枝(脇の枝)の生育が旺盛となり、樹形が横に広がってきます。

ちなみに、果樹の管理作業の基本である剪定はアボカドにとってはそこまで必要がありません。枯れ枝が出てきたときに、その枯れ枝のみを剪定して整理してあげるだけで十分です。剪定は、凍害を助長してしまうため真冬には行わないでください。春の花芽が生長してくる前にやるのがベストですが、できなかった場合には、花が咲き終わって夏芽が生長してくる直前でも大丈夫です。花芽が生長し始めてから剪定をするのは、結実の確率が下がるため避けましょう。

凍害対策(防寒対策)

アボカドは、霜が降りたり雪が葉に当たり続けてしまうと、葉が焼けてしまいます(霜害、凍害)。越冬時は必ず寒冷紗などの被覆資材で樹を覆い、気温の低下を防ぐなど、果樹に対する基本的な越冬対策(冬越し対策)を必ず行いましょう。特に幼木である4〜5年生は要注意です。

植え付け後5年目から

施肥

アボカド成木の施肥のタイミングは、1年で主に3回あります。

  1. 春肥(花肥):4月頃
  2. 実肥:7月頃
  3. 秋肥:10月頃
春肥(花肥)

アボカドは、春の気温の上昇とともに花芽が発芽して果房が生長します。このときに、栄養分が不足していると葉が黄色くなったりします。これは果房側に栄養分がまわり、葉や幹など樹自身の栄養が不足してくるためです。そのため、4月頃には必ず施肥をしましょう。

施す肥料は窒素、リン酸がよく含まれた化成肥料(N-P-K:10-10-10など)を選択し、5kg/10a ほど散布しましょう。

実肥

7月頃になると、果実の肥大期に入り、実が急に大きくなります。またそれと同時に、枝の先端から出た新梢が伸びてきます。急激に水分量と栄養分が必要な時期になるのです。

そのため、この時期は摘心作業を実施するのと同時に、液体肥料を施すことで栄養分の不足を補うことが重要です。液体肥料は、定期的に葉面散布をすることによって施すことで、生理落果を少なくすることができます。リン酸、加里(カリウム)がしっかりと含まれた液体肥料を散布しましょう。

液体肥料の選び方、散布方法については、下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

秋肥

秋肥は、翌年の花をたくさん開花・結実させるために必要な施肥です。秋肥を施すことで、アボカドの樹に栄養を補給し、蓄積させておきます。秋肥は、10月頃に実施します。

施す肥料は窒素、リン酸がよく含まれた化成肥料(N-P-K:10-10-10など)を選択し、50kg/10a ほど散布しましょう。

水やり(潅水)

梅雨時期を過ぎる7月頃からは、潅水が必要となってきます。7月〜9月頃は、土壌が乾きやすく乾燥によるストレスを受けやすい時期となります。乾燥ストレスを受けると、果実の生理落果を誘発させたり、樹自体が弱ってしまいます。果樹は一度弱らせてしまうと回復させることが難しいため、慎重に管理していく必要があります。

潅水量は一概に言えませんが、土壌が乾いていれば、すぐにたっぷりの水をあげるようにしてください。また、敷わらなど有機マルチ資材によって土壌水分を保つことも効果的です。

ちなみに鉢植えでずっと育てたり、施設栽培の場合には、一年を通して潅水する必要があります。

摘心(ピンチ)

摘心、剪定の考え方は、幼木のときと同様です。真冬と花芽が生長しているときは絶対に避けましょう。剪定は、枯れ枝や古い枝を落としていくイメージで問題ありません。

収穫・追熟

大事に育ててきた果実は、11月頃から収穫することができます。収穫開始時期の目安は、肥大が止まったタイミングです。果実を販売するプロ農家は、開花後日数の確認や種皮の色の観察、油分測定などを実施して収穫のタイミングを見極めます。収穫は、年内に終えるようにしましょう。

収穫するときは果実の皮を傷つけないように、優しく袋で包み込み、しっかりと袋を持った状態で果梗部分(実を繋いでいる枝の部分)を収穫ハサミで切ります。

収穫した果実は、追熟するために貯蔵する必要があります。果実の成熟度によって、追熟にかかる日数は異なります数日から2週間程度で軟化して食べ頃になります。アボカドの追熟に適した気温は、20℃前後と言われています。

収穫後の管理・次作に向けた土作り

アボカドは収穫して終わりという作物ではないため、収穫後の管理も非常に重要です。

柿などの落葉果樹や柑橘類は、冬場に剪定することが多いですが、アボカドの場合は冬にわざわざ剪定をすることはしません。最悪の場合、樹を傷めてしまうリスクがあるからです。そのため、剪定は枯れ枝の除去くらいで十分です。

その他にやるべきこととして、防風ネットの設置など防寒、防風対策が必要となってきます。

また、冬場のうちに土作りをすることも重要です。アボカドも土壌で育つ作物ですから、やはり土壌環境を整えることは、甘く美味しい果実を収穫するためには必要です。具体的には、有機物資材を表土に敷き詰めることで、微生物の繁殖を促したり、養水分を維持したりすることができます。ひと手間がいいアボカドを長く栽培するためには必要なのです。

アボカド栽培の生理障害・病害虫管理

アボカドを栽培していると、いろいろなトラブルが発生します。しかし、適切な対処方法を知っていれば慌てる必要はありません。代表的な生理障害と病害虫への対処方法を説明していますので、参考にしてください(準備中)。

アボカドは特に、カメムシ類やカイガラムシなどによる葉や茎、果実の被害が多いです。カメムシ類は果実がまだ小さいときに果皮から吸汁し、果実自体を腐らせたり、陥没を発生させたりします。カイガラムシは葉の裏や茎の部分に生息し、じわじわとアボカドの樹を弱らせていきます。どちらも見つけ次第、すぐに対処しましょう。

主な害虫

  • カメムシ類
  • ハマキムシ
  • ハダニ
  • カイガラムシ
  • コウモリガ

主な病気

  • 衰弱症(フィトフトラ根腐れ病菌)
  • 紋羽病
  • ならたけ病
  • 炭そ病

主な生理障害

  • 代表的なものはなし

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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