アスパラガスの栽培では、何年も同じ場所で栽培を続けるため雑草の防除は大切です。この記事ではアスパラガス栽培に適用のある除草剤を、散布時期ごとにおすすめの除草剤や効果的な使い方について説明します。
アスパラガス栽培の除草剤について
アスパラガスに適用がある除草剤は、栽培前から生育中にも使えるものがあります。時期や雑草の種類にあった除草剤をつかうことが大切です。定植前に雑草が生えている場合には、事前に根までからすことができるグリホサート系の茎葉処理剤でしっかり除草してから定植しましょう。
体系的に防除するのであれば定植前後の雑草発生前に「土壌処理剤」で雑草の発生を抑制し、その後に発生した雑草に対して、「茎葉処理剤」を散布します。
アスパラガス栽培の除草剤の使い方
アスパラガスは同じ場所で約10年ほど栽培が続きます。多年草の雑草がすでに圃場に生えている場所では、事前にしっかりと根まで枯らすグリホサート系茎葉処理剤の除草剤を撒いて、雑草を除草しておきましょう。
栽培1年目
栽培1年目は、アスパラガスは稚苗の時期は、苗床播種直後に散布できる除草剤もありますが、除草剤の影響を受けやすいので畝では、除草剤を控えてマルチ栽培をし、マルチ穴に生えた雑草は手取りで除草するのがよいでしょう。畝間では、土壌処理剤と茎葉処理剤を使いしっかりと除草することで、畝に雑草が繁殖するのを防ぎます。また防草シートを活用することで毎年除草剤を撒く手間を省くこともできます。
- 耕起前までに、多年草の雑草が生えている場合はグリホサート系の除草剤をつかって雑草を除草する
- 畝は、除草剤は使わずマルチ栽培をする
- 通路は、雑草が防草シートを敷くか、土壌処理剤を散布し雑草の発生を防ぐ
- 3から40日程度たつと、土壌処理剤の効果がうすれるため違う成分の土壌処理剤を散布する
- マルチ栽培、土壌処理剤をまいても雑草が生えてきた場合は、畝は手取り除草、通路は茎葉処理剤を使い除草する
- 地上部が枯れて刈り取りが終わったら、雑草が生えている場合は翌年に向けて茎葉処理剤をまいておくとよいでしょう
栽培2年目以降
栽培2年目以降はマルチが使いにくいアスパラ栽培では、萌芽前に土壌処理剤をつかってできるだけ雑草を防除し、生えてきた雑草には茎葉処理剤を使用して除草します。生育中に株間に散布で出来る土壌処理剤もあるので、土壌処理剤の効果が切れたころに、もう一度土壌処理剤をまくことも可能です。
アスパラガスを畝の株間には、「接触型の茎葉処理剤」を使います。茎葉処理剤には、作物にかかっても作物は枯れず、雑草の実を枯らすことのできる「選択制の除草剤」があります。非選択性の除草剤は、アスパラガスにかかると、アスパラガスも枯れてしまうので散布には十分注意が必要です。
- 雑草発生前、萌芽前~萌芽始期に土壌処理剤を全面散布して雑草の発生を防ぐ
- 1から40日程度たつと、3から40日程度たつと、土壌処理剤の効果がうすれるため、再度土壌処理剤を散布する(1年に2回散布できない土壌処理剤もあるため、その時は違う成分の土壌処理剤を散布する
- 土壌処理剤をまいても雑草が生えてきた場合は、茎葉処理剤を使い除草する
- 収穫打ち切り後に、雑草が生えている場合には翌年に向けて茎葉処理剤をまいておくとよいでしょう。
アスパラガス栽培におすすめの除草剤
植え付け前
グリホサート系茎葉処理剤
アスパラガスを育てる畑に、すでに雑草が生えている場合は耕起前に根元まで枯らす、グリホサート系の茎葉処理剤を使って、雑草を枯らしておきましょう。
グリホサート は、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全 な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。グリホサートは、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎、根っこも含めて全体を枯らし、根絶する効果があるため、根を残したい田んぼの畔や傾斜地には向きません。
グリホサート系の除草剤は多くありますが、畑には必ず「農耕地用除草剤」を使用しましょう。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
苗床播種直後
クロロIPC乳剤
有効成分 IPC(化管法 1種) 45.8% HRACコード23
クロロIPC乳剤は、アスパラガスの苗床、定植畑に使える除草剤で、苗床では播種直後、定植畑では培土後雑草発生前(但し、収穫30日前まで)に土壌に全面散布してつかうことができる土壌処理剤です。
非ホルモン型移行性除草剤で、スズメノテッポウやスズメノカタビラ等のイネ科雑草、ハコベ、ノミノフスマ、タネツケバナ、ミチヤナギ、タデ類等に効果があります。気温が20℃以下の時期に効果がでるので冬から春の畑に使われます。
萌芽前
ロロックス
有効成分 リニュロン 50.0% HRACコード5
ロロックスは、さまざまな野菜に使える土壌処理剤です。特にヤエムグラ、スベリヒユ、ノミノフスマ、ハコベなど一年生の広葉雑草に効果を発揮します。アスパラガスには萌芽前、萌芽始期に土壌全面散布できるほか、雑草茎葉兼土壌処理として生育期の株間にも使える除草剤です。1年間に2回散布することが可能なので、萌芽前から萌芽始期に1度散布し、雑草が大きくなる前にもう一度散布することが可能です。
センコル水和剤
有効成分 メトリブジン 50.0% HRACコード5
センコル水和剤は、メトリブジンを有効成分とする水和剤で、アスパラガスの栽培によく使われる除草剤です。土壌処理剤だけでなく、雑草の発生前~4,5葉期まで茎葉散布することもできます。萌芽前〜萌芽始期又は収穫打ち切り後のどちらか1回使うことができます。
ツユクサ、ハコベ、シロザ、イヌタデ、ナギナタコウジュなど広葉雑草やヒエ、メヒシバなどイネ科雑草など多くの畑地一年生雑草に有効で、選択制にもすぐれるためアスパラガスへの薬害の心配がすくない除草剤です。年に1回しか使えないため、土壌処理剤を2回使う場合には萌芽前~萌芽始期に使い、生育期にはロロックスを使いましょう。
クレマート乳剤
有効成分 ブタミホス 50.0% HRACコード3
クレマート乳剤は、萌芽前に全面土壌散布して使う土壌処理剤で、特にメヒシバ、スズメノカタビラ等のイネ科雑草に高い効果を発揮し、さらにアブラナ科、ナデシコ科等の多くの広葉雑草にも効果があります。年に1回しか使えないため、土壌処理剤を2回使う場合には萌芽前~萌芽始期に使い、生育期にはロロックスを使いましょう。
植え付け後
ロロックス
有効成分 リニュロン 50.0% HRACコード5
ロロックスは、アスパラガスには萌芽前、萌芽始期に土壌全面散布できるほか、雑草茎葉兼土壌処理剤として生育期の株間にも使える除草剤です。1年間に2回散布することが可能なので、萌芽前から萌芽始期に1度散布し、雑草が大きくなる前にもう一度散布することが可能です。
アスパラガスの茎および葉に薬液がかかっても薬害は生じませんが、擬葉にかかると薬害を生じるおそれがあるので、地際近く(地表面より高さ30㎝を目安)に散布をし、擬葉にかからないように注意しましょう。
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草に使われる選択制の茎葉処理剤です。アスパラガスに直接かかっても影響がないため、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。アスパラガスには雑草生育期イネ科雑草3〜8葉期、収穫前日まで使うことができます。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤を使う必要があります。
グルホシネート系除草剤
アスパラガスには、イネ科以外の雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤はないので、それらの雑草が生えている場合は非選択性の除草剤を使いましょう。
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。アスパラガスには、雑草の生育期に収穫前日まで使うことができる他、収穫打切り後にも使えます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
プリグロックスL
有効成分 ジクワット 7.0% パラコート 5.0% HRACコード22
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の非選択性の接触型の茎葉処理剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
播種前又は植付前、萌芽前:雑草生育期(草丈20cm以下)、畦間処理(雑草生育期但し、収穫前日まで)使えます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
除草剤の使い方のポイント
除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。茎葉処理剤には、葉や茎にかけるだけで根まで枯れるものと、薬剤がかかった部分のみ枯れる接触型の除草剤があります。
土壌処理剤
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ45日~60日ほどです。
茎葉処理剤
定植時にマルチをしたり、土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかってもアスパラガスは枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。非選択性の除草剤は、アスパラガスに薬液がかからないように十分注意しましょう。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
農薬の希釈について
除草剤は水で希釈してつかうものがほとんどです。除草剤の希釈方法の記事や、便利な計算アプリもあります。
その他アスパラガスに適用がある除草剤・農薬
この他、アスパラガスに適用がある除草剤は、「農家web農薬検索サービス」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、さといもに使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。
アスパラガスの栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
アスパラガスをたくさん収穫するためには、雑草の防除は大切です。雑草は生えてからではコストや手間も多くかかります。事前に防除できるよう上手に除草剤を使いましょう。いつも使っている除草剤が効かなくなったら、圃場に生えている雑草の種類をよく観察し、体系の違う除草剤をつかってみるなどの見直しもしてみましょう。
栽培期間が長いアスパラガスは肥料の与え方も大切です。アスパラガスの肥料についての記事もありますので、そちらも参考にしてください。