ルッコラは、葉や花にゴマに似た香りがあり、ピリッとした辛みが特徴の食用のハーブです。よくサラダやピザのトッピングとして使用されています。ルッコラは、英名でArugula(アルギュラ)やRoquette(ロケット)と呼ばれます。ルッコラの品種名や種の品名には「ロケット」と書かれていることもあります。
ハーブ類の野菜は、家庭でもよく使われる食材だと思います。一般的に料理の香り付けや保存料、薬味、防虫、薬草としての効果だけではなく、香りで人々に癒やしの効果を与えてくれます。また、ハーブは、環境の適用範囲が広く、比較的栽培がしやすい作物のため、プランターや鉢植え、水耕栽培、庭への地植えなど、家庭菜園としても楽しむことができます。
この記事では、ルッコラの基礎知識や栽培の方法の基本、重要事項、注意点などについて解説します。記事が長いため、目次を見て必要な部分から読み進めてください。
ルッコラの基本知識

作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格 (円/1粒) | 苗の価格 (円/1苗) | 収穫までの日数 (目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度 (pH) | 連作障害 | 発芽適温(地温) | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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ルッコラ | アブラナ科 | 地中海沿岸地方 | ★★★★★ | 0.3円〜1円程度 | 100円〜300円程度 | 播種後、30日(夏)〜60日(冬) | 全国 | 初夏どり栽培 夏どり栽培 秋どり栽培 冬どり栽培 | 露地栽培 プランター・鉢植え栽培 施設栽培 水耕栽培 | 6.0〜7.0 | あり(1〜2年) | 15〜20℃ | 15〜20℃ | 日なた | 10〜20klx |
ルッコラは、アブラナ科キバナスズシロ属の耐寒性1年生植物です。原産地は地中海沿岸地方とされており、日本ではイタリア料理とともに普及したとされています。
ルッコラ栽培のポイント
- 種子の発芽率が比較的高く、直まきでも育てやすいことが特徴です。
- 育てやすくプランターなどでの家庭菜園向きです。また、家庭菜園では葉を摘み取って収穫し、株を残すことで長く収穫を楽しむことができます。
- 耐寒性がかなり高く、冬季でも寒冷紗を用いてトンネル掛けするなど簡易的な対策で育てることが可能です。
- 高温と強い太陽光には弱いので、夏季は遮光ネットなどでトンネル掛けをすると綺麗な葉が収穫できます。
- 葉、葉柄は折れやすいので中が必要です。風が強い場所は、防風ネットを設置すると安心です。
- 多湿に弱いので、梅雨などの雨季に栽培する場合は雨よけを設置すると良いでしょう。
- 一年中、生育適温に合う季節であれば栽培することが可能です。暖地の場合、初心者は春まき(初夏どり)栽培、秋まき(秋どり)栽培がおすすめです。
- 草丈が低く、光飽和点も比較的低いため、日当たりの良いベランダなどでも手軽に栽培することができます。
ルッコラ栽培のスケジュール

発芽適温 | 生育適温 |
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15〜20℃ | 15〜20℃ |
各季節ごとに合わせて考えたルッコラの栽培スケジュールです。前提として、外気温が発芽適温、生育適温に近い気温になる栽培スケジュールを選択して、栽培をしてください。
関東(東京)の場合は、春に播種(種まき)をする初夏どり栽培、晩夏〜秋に播種(種まき)をする秋どり栽培がおすすめです。初夏どりの場合は3月下旬〜4月頃、秋どりの場合は9月〜10月手前頃の涼しくなり始めたときに種まきをすると良いでしょう。苗を購入して植え付ける(定植する)場合も同様の考え方です。
その他の地域(北海道、九州など)、栽培方法(ハウス栽培、水耕栽培)についても上記の発芽適温、生育適温に適合している期間を選んで、播種、栽培をすれば問題はありません。比較的寒い時期に栽培する場合は、保温のため寒冷紗でトンネルを作って栽培することをおすすめします。
ルッコラ栽培の流れ・栽培方法
ルッコラ栽培の流れは、下記のようになります(関東の露地・初夏どり栽培の目安)。下記は、播種をして収穫まで栽培する流れとなっています。先述したように、地域によって気候などが変わりますので、そのときに合った栽培スケジュールを立てて、同じような流れで栽培してください。
- 種まきの
2週間前 - 3月下旬〜4月頃
- 4月頃から
間引き1回目:本葉3枚のとき
間引き2回目:本葉5枚のとき - 4月〜6月頃
- 5月〜6月頃
ルッコラ栽培の土作り・畝立て
健全なルッコラを栽培し、美味しい葉を収穫するためには土作りが重要です。土作りは、遅くとも植え付けの2週間には行いましょう。ルッコラは、比較的土壌を選ばない植物ですが、強い酸性土壌の場合には、石灰質肥料を散布して土壌酸度をアルカリ性側に矯正してあげます。
種まきの方法は、条まきと溝まきがありますが、種まきの方法によって適した畝の立て方、元肥の施し方が異なります。下記にそれぞれの場合の元肥の施肥方法について記載しますので、参考にしてください。
畝立て・元肥の施肥方法(条まきの場合)
条まきの場合、軽く畝を立ててあげます。畝の大きさなどは下記を参考に、育てやすい形にアレンジしてください。元肥は、畝立てをしたあとに施します。
畝幅 | 畝間 | 畝高 | 条間(列間) | 株間 |
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80cm | 50cm | 5〜10cm | 15cm程度 | 8cm(間引き後) |
植え付けの2週間前には、堆肥と元肥を全面散布しましょう。ルッコラ栽培の土作りは、主に下記の肥料を使用します。
下記にそれぞれの施用目安量の例を記載しますので参考にしてください。また、散布したあとはレーキなどで軽く耕して馴染ませましょう。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(1平方メートル当たり) |
---|---|
堆肥 | 1kg程度 |
油かす | 100g程度 |
畝立て元肥の施肥方法(溝まきの場合)
溝まきの場合、畝を立てずに溝を軽く掘って、そこに種をまきます。溝を掘ったときに元肥を施します。そのため、植え付けの2週間前には溝を掘って、元肥を施しておく必要があります。
溝の大きさの目安を以下に記載しますので、参考にしてください。
溝の幅 | 溝と溝との間 | 溝の高さ | 条間(列間) | 株間 |
---|---|---|---|---|
15cm | 60cm | 6〜7cm | 15cm程度 | 8cm(間引き後) |
溝を掘ったあとの施肥は、条まきの場合と同様に、主に下記の肥料を使用します。
- 堆肥
- 有機肥料(油かすなど)
下記にそれぞれの施用目安量の例を記載しますので参考にしてください。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(1平方メートル当たり) |
---|---|
堆肥 | 500g程度 |
油かす | 40g程度 |
施肥をしたあとは、4cm〜5cm程度土をかけて、鍬などを使って溝の部分を平らにしましょう(鎮圧)。
プランター・鉢植えの場合は?
ルッコラを栽培するプランターのサイズは、少し眺めのものが適しています。そのほうが種を条まきすることができ、間引き、栽培がしやすいです。深さは20cm程度のものが良いでしょう。小さなプランター、鉢でも栽培することができますが、その場合は、ばらまきが適しています。
ルッコラをプランターや鉢で栽培する場合には、野菜栽培向けの培養土(用土)を使うことをおすすめします。庭の土などの普通の土は排水性が悪いため、プランター、鉢植え栽培には向いていません。また、野菜栽培向けの培養土には、あらかじめ肥料成分が含まれているものもあるため、そのまま植え付けすることが可能です。
鉢やプランターには、鉢底ネットを敷いてその上に鉢底石を入れ、根鉢を崩さないで植えていきます。
肥料が含まれていない培養土の場合は、下記の施用量を参考にプランターや鉢の大きさに合わせて計算して土作りをしてみてください。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(培土10L当たり) |
---|---|
緩効性化成肥料 | 10g程度 |
一から用土を作ってみたいという方は、赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1の比率で混ぜ合わせて用土を作ると良いでしょう。
ルッコラの播種(種まき)
ルッコラの種まきの方法は、条まきと溝まきがあります。
条まきの場合
条まきの場合、軽く立てた畝に15cm間隔で1cm程度の溝を作ります。種は、溝を作ったところに1cm〜1.5cm程度の間隔でまいていきます。まき終わったら、0.5cm〜1cm 程度軽く覆土してあげましょう。ルッコラの種は、好光性種子のため土壌深くに埋めてしまうと、発芽しない可能性がありますのでご注意ください。
種まきが終わったら、水やりをしましょう。水は土が十分に濡れるほどあげてください。ただし、勢いが強すぎると、せっかくまいた種が流されてしまうので、ジョウロなどで優しくやりましょう。
溝まきの場合
溝まきの場合、元肥を施して土で少し埋め戻した状態から種まきを始めます。種は、2〜3cm程度の間隔で、ばらまきしていきます。まき終わったら、0.5cm〜1cm 程度軽く覆土してあげましょう。ルッコラの種は、好光性種子のため土壌深くに埋めてしまうと、発芽しない可能性がありますのでご注意ください。
種まきが終わったら、水やりをしましょう。水は土が十分に濡れるほどあげてください。ただし、勢いが強すぎると、せっかくまいた種が流されてしまうので、ジョウロなどで優しくやりましょう。
プランター・鉢植えの場合
プランター、鉢を使った栽培の場合も上記と同じような形で種まきをします。
プランターの場合
プランターの場合は、条まきが良いでしょう。上記の条まきのやり方を参考にしてください。プランターの場合は、条間10cm程度で2条でやるとちょうど良いかもしれません。
鉢植えの場合
鉢植えの場合は、ばらまきが良いでしょう。種を1〜2cm 間隔でばらまきます。まき終わったら、0.5cm〜1cm程度軽く覆土してあげましょう。種が飛ばないように鍬などで軽く鎮圧してあげてください。
種まきが終わったら、水やりをしましょう。水は土が十分に濡れるほどあげてください。ただし、勢いが強すぎると、せっかくまいた種が流されてしまうので、ジョウロなどで優しくやりましょう。
ルッコラの間引き
ルッコラが発芽して生長を始めるタイミングで間引きをしていきましょう。間引きは、作物を大きく育てるために必要なだけではなく、病害虫の予防や健全な生長のために必要な作業となります。
ルッコラの間引きのタイミングは、2回あります。
間引き1回目:本葉3枚のとき
本葉3枚のときに、1回目の間引きを実施します。株間5cm程度になるように間引きをしましょう。もちろん、発芽が悪くてスペースが空いてしまっているところについては、間引きは必要ありません。
間引き2回目:本葉5枚のとき
本葉5枚のときに、2回目の間引きを実施します。株間8cm程度になるように間引きをしましょう。もちろん、生長が悪くてスペースが空いてしまっているところについては、間引きは必要ありません。
ルッコラ栽培の管理作業(手入れ作業)
ルッコラ栽培の管理作業(手入れ作業)には、主に4つの作業があります。
- 水やり
- 追肥(施肥)・土寄せ
- 摘蕾
- 除草・病害虫管理
水やり
水やりは季節問わず、土が乾いているようであれば、実施してください。このとき、植物に直接与えるというよりは、土壌をしっかりと濡らすことを意識してください。
追肥(施肥)・土寄せ
主に1回、本葉が3〜4枚(2回目の間引きタイミングの前くらい)の頃に追肥を施すと良いでしょう。実際、ハーブや葉物野菜は元肥だけでも生長することができますが、生育を助けるためにも追肥を施してあげましょう。生長が良すぎる場合や土壌に多くの養分が残っている場合には、追肥の必要はありません。
条まきの場合
条まきの場合は、列と列の間(条間、列間)に散布して、軽く土と混ぜて上げましょう。下記に、肥料の施用目安量を記載しますので参考にしてください。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(1列当たり) |
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緩効性化成肥料 | 6g程度 |
溝まきの場合
溝まきの場合は、列と列の間(条間、列間)に散布して、鍬などで軽く土と混ぜて上げましょう。下記に、肥料の施用目安量を記載しますので参考にしてください。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(長さ1m当たり) |
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緩効性化成肥料 | 25g程度 |
プランター・鉢植えの場合は?
プランター、鉢植え(ポット)の場合も上記のタイミングで施肥をすると良いでしょう。便利な錠剤タイプの肥料もあるので、手軽に施肥をすることができます。また、液体肥料の使用も検討してみてください。液体肥料の場合は、2週に1回ペースで施肥してあげると良いでしょう。
液体肥料については、下の記事に詳しい解説が載っていますので、参考にしてください。
摘蕾
ルッコラは、気温が高くなると花が咲きます(トウ立ちと呼びます)。花が咲いたままにしておくと、葉や茎が固くなり美味しくなくなってきます。そのため、気温が上がりすぎて花が咲きそうになったら、蕾や花芽を摘み取りましょう。摘み取るときには、園芸ハサミを使用すると便利です。
ちなみにルッコラは、花や蕾も食べることができます。
除草・病害虫管理
地植えの場合、放っておくと畝の周りに雑草が生い茂ってきます。雑草は、害虫生息の温床にもなるので、こまめに抜き取ることをおすすめします。小さい面積の場合は手や鎌で、広い面積の場合は背負式の草刈り機などで行うと良いでしょう。また、畝の通路に防草シートを敷くことや農耕地用の除草剤を使用することも有効です。
ルッコラの場合は、追肥のタイミングで中耕(畝間、列間を軽く耕す)して雑草も除去すると良いでしょう。また、害虫対策として、べた掛け資材または防虫ネットも有効です。防虫ネットは、夏の高温対策にも有効なのでぜひ活用しましょう。
病害虫と聞くと少し怖いですよね。しかし、病害虫に対して適切に処理することでまん延を防ぐこともできます。「ルッコラ栽培の生理障害・病害虫管理」に生理障害、病害虫の対処方法をまとめました。特に害虫による被害が多く、アブラムシ、アオムシ、ヨトウムシ、コナガなどによる食害が多いです。症状などと照らし合わせながら、適切な対処を行いましょう。
ルッコラの収穫
ルッコラは、播種後、30日(夏)〜60日(冬)で収穫することができます。収穫の目安は、葉の長さ(草丈)が15cm以上に伸びたときです。収穫は「株ごと引き抜く方法」と「葉を摘み取っていく方法」があります。株ごと引き抜く方法は、一度で収穫が終わってしまいますが、葉を摘み取っていく方法では長く収穫を楽しむことができます。
株ごと引き抜く方法
文字通り、土壌から株ごと引き抜きます。根も浅いので簡単に抜くことができます。株ごと引き抜く方法は、トウ立ちしやすい初夏どり栽培や夏どり栽培におすすめです。
葉を摘み取っていく方法
少しずつ葉を摘み取って長く収穫する方法です。株に対して外側の葉から収穫していきます。このとき、まだ生長が未熟な内側の葉を収穫したり、株を傷つけたりすることはやめましょう。こうすることで、新芽や脇芽が再度生長して、葉が再生してきます。
トウ立ちがしづらい時期の秋どり栽培、冬どり栽培におすすめです。
ルッコラ栽培の生理障害・病害虫管理
ルッコラを栽培していると、いろいろなトラブルが発生します。しかし、適切な対処方法を知っていれば慌てる必要はありません。代表的な生理障害と病害虫への対処方法を説明していますので、参考にしてください(準備中)。