リンゴ園では、チャバネアオカメムシやクサギカメムシ、ネアオカメムシなどのカメムシ類の被害により、果実の商品価値を下げる要因となります。ここではリンゴのカメムシの防除について、説明します。
リンゴ栽培のカメムシの防除について
カメムシ類の防除は、大量発生してからの駆除は難しいので、早期に発見し効果のある農薬散布が基本です。
チャバネアオカメムシやクサギカメムシは開花期~1ヵ月ぐらいに多く飛来します。園内を見回り、木をゆすったり、葉裏や枝を観察して飛来していないか確認します。カメムシの発生は地域や圃場により異なるため、予察情報も確認しましょう。
農薬以外では防虫ネットや果樹への袋がけも効果的です。農薬と併用して使うとよいでしょう。
リンゴのカメムシによる被害の時期と影響

リンゴ栽培では、幼果期に吸汁されて変形した果実は、収穫時には目立たなくなることが多くなります。しかし果実が肥大する時期に被害を受けると、果実が変形する他、果肉も褐変します。
成熟期に被害を受けた場合には、果実の表面が窪む程度で影響がないように見えますが、果肉の果汁が抜けて白いスポンジ状になってしまうことがあります。
よって特に果実が肥大する頃から収穫までの防除が重要です。
リンゴ栽培でカメムシに適用のある農薬
リンゴ栽培でカメムシ類に適用がある農薬は「農薬検索データベース」から検索が可能です。農薬はIRACコードを確認し、同じコードは作用機能(農薬の効き方)が同じため、同一系統の薬剤の連用は避けローテーション散布を行いましょう。
カメムシの防除によくつかわれる農薬について3つ紹介します。カメムシ類は夜温が高くなると活動が活発になります。農薬の散布は早朝が効果的です。
住化スミチオン水和剤40
住化スミチオン水和剤40は、有機リン系殺虫剤(IRAC:1B)です。殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。果樹害虫にすぐれた効果を発揮し、リンゴにはカメムシ類の他モモシンクイガ、ハマキムシ類、クワコナカイガラムシ、アブラムシ類、リンゴスムシ、ギンモンハモグリガにも適用があります。
害虫に対して接触効果、食毒効果があり、植物に対して植物に浸達性があります。有機リン系の殺虫剤は効果が高いですが、 りんごの旭種及びその近縁種に薬害が出る可能性があるので注意しましょう。
適用害虫名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期限 | 使用回数 | IRAC |
---|---|---|---|---|---|
カメムシ類 | 800〜1000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫30日前まで | 3回以内 | 1B |
スタークル顆粒水溶剤
スタークル顆粒水溶剤は、性状が淡青緑色水溶性細粒の新規ネオニコチノイド系(フラニコチニル系)(IRAC:4A)の害虫防除剤です。食毒や接触毒性を持ち、経口毒性が強いため吸汁性害虫に効果が高く果樹のコナカイガラムシ、カメムシ類に高い効果を示します。リンゴにはカメムシ類の他、アブラムシ類、キンモンホソガ、シンクイムシ類、ギンモンハモグリガ、コナカイガラムシ類にも適用があります。
浸透移行性があるため、株元に生息する害虫に対しても有効で、残効性も長いため比較的長いので発生初期に散布すると効果が長く続きます。
適用害虫名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期限 | 使用回数 | IRAC |
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カメムシ類 | 2000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 4A |
ロディー水和剤
ロディ―水和剤は、合成ピレストロイド系殺虫剤(IRAC:3A)で、速効性があります。殺虫スペクトラムが広く、リンゴには、カメムシ類の他、シンクイムシ類、キンモンホソガ、アブラムシ類、ハマキムシ類、ナミハダニ、リンゴハダニ、ギンモンハモグリガにも適用があります。
接触作用による優れた殺虫力で、残効性にも優れています。浸透移行性やガス効果はないため、葉の裏側にもむらなく散布しましょう。
適用害虫名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期限 | 使用回数 | IRAC |
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カメムシ類 | 1000〜1500倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 3A |
そもそも、カメムシはどういう害虫?
カメムシとは?
カメムシは、カメムシ目のカメムシ亜目に属します。頭は先端が尖った三角形の形状、体は五角形に近しい形状が特徴です。非常にたくさんの種類があり、四角いミドリカメムシから細長いクモヘリカメムシなど、形は様々です。
日本では、カメムシを「クサムシ」「ヘコキムシ」「ヘッピリ」「クサンボ」「ジャコ」などと呼んでいる地方もあります。
カメムシの特徴として、敵の攻撃などを避けるため、腹面から悪臭の分泌液を飛ばします。この匂いが強烈なため、カメムシは忌み嫌われています。
ほとんどのカメムシは、落ち葉の中、樹上などで成虫で越冬し、春になって活動を開始します。その後夏になるにつけ、ヤシャブシ、ヒノキ、スギなどに移り、幼虫が増殖し、8月に新成虫が活動するようになります。大量発生した年は、ヒノキ、スギから果樹など他の木にやってくる数が増え、農作物に被害を及ぼします。
どうしてカメムシは害虫なのか?
カメムシの中で、茎葉、果実から汁を吸うタイプがいます。これらが吸汁すると、吸汁された果実は、形が萎縮、変形し、落果したり、最悪腐敗してしまい、果樹、葉菜類、花き問わず、多大な被害が出てしまいます。
カメムシの中でも、特に果樹に甚大な被害を与えるのは、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシです。そして、稲に被害をもたらすのは、アオクサカメ、クロカメムシ、ミナミアオカメムシなどです。

リンゴは他にも多くの病害虫の防除が必要です。
リンゴの防除暦の記事もあります
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