3月下旬頃からリンゴは発芽が始まると同時に病害虫の防除に備えましょう。ここではりんごの防除暦と、病害虫予防に使える農薬や散布時期について説明します。
リンゴの防除暦とは
防除暦とは各地域で栽培する作物に対し、病害虫の防除方法が記載された暦です。発生しやすい病害虫やそれに合った農薬種類や散布時期、希釈倍率、散布回数などが記載されています。栽培が多い地域はJAなどで配布していることもあります。
防除暦がない地域や、手に入れにくい場合などは、農家webの「かんたん栽培記録」から、作物と地域を選択するれば独自の防除暦をみることができます。
リンゴに発生しやすい病害虫と防除方法
ではリンゴの防除情報をみてみましょう。下記は「かんたん栽培記録」で検索した福島県のりんごの防除暦です。


リンゴに発生しやすい病害虫
リンゴに発生しやすい病気は、5月から「黒星病」、6月から「炭疽病」「輪紋病」、7月からは「褐斑病」が発生しやすくなります。
リンゴに発生しやすい害虫は、5月から「シンクイムシ」、6月から「リンゴワタムシ」「ハマキムシ類」「カメムシ類」、7月からは「ナミハダニ」が発生しやすくなります。
リンゴの防除の方法
リンゴの防除は、定期的な農薬散布が基本です。それぞれの農薬の効果が切れる前に定期的に散布しましょう。同一農薬や作用性の同じ農薬を続けて使うことは避け、RACコードを参考に作用の違う農薬を散布することで、害虫の抵抗性や病気の耐性がつくことを避けます。
また3月~4月の農薬散布前に粗皮削りを徹底することで、越冬害虫の駆除や農薬散布の効果を上げることができます。
リンゴの病害虫に使える農薬・散布時期
リンゴ栽培で発生する病気防除に適用がある農薬
生育初期は黒星病の防除に重点を置きます。黒星病が前年に発生している場合には越冬し落葉に潜伏している可能性があります。農薬散布の前に、越冬落葉の除去を行いましょう。予防のために農薬を定期的に散布する他、発生した葉や果実はすみやかに摘みとります。
リンゴに適用のある農薬は、抗菌範囲が広くさまざまな病気の予防に効果があります。
散布時期 | 対象病害虫 | 農薬名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期間 | 使用回数 | 使用方法 | FRACコード | 備考 |
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生育初期~収穫期 | 黒星病 うどんこ病 黒点病 褐斑病 腐らん病 モニリア病(実腐れ) 輪紋病 すす点病 すす斑病 | トップジンM水和剤 | 1000〜2000倍 1000〜2000倍 1000〜2000倍 1000〜2000倍 1000〜2000倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 6回以内 | 散布 | 1 | 抗菌範囲が広く,複数病害の同時防除が可能なため,総合防除剤として活躍する農薬です。 連用により耐性菌が出現しやすい薬剤の一つであり、 これまでに灰色かび病,黒星病,灰星病などで耐性菌が発生しており、地域によっては効果が薄い可能性があります。 |
生育初期~収穫期 | 斑点落葉病 黒星病 輪紋病 すす点病 すす斑病 炭疽病 褐斑病 | アリエッティC水和剤 | 800倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | M4,P7 | ユニークな作用性で耐性菌の出現の心配がほとんどありません。 治療効果もありますが、予防的な使用によってすぐれた効果を発揮します。発病前~発病初期に充分な薬量を、予防散布主体とした連続散布で効果を発揮します。 |
生育初期~収穫期 | 黒星病 黒点病 斑点落葉病 輪紋病 褐斑病 すす点病 すす斑病 炭疽病 | オーソサイド水和剤80 | 600〜1000倍 800〜1200倍 600〜800倍 600〜800倍 600〜800倍 600〜800倍 600〜800倍 800倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 6回以内 | 散布 | M4 | 抗菌範囲は広いですが、残効性と浸透移行性はありませんので散布のときは、葉裏まで薬液がかかるよう丁寧に散布しましょう。 展着剤の加用も効果的です。 りんごの斑点落葉病に対して、後期の多発時では効果が劣ることがあるので、初期の防除を主体ととし、黒点病、黒星病などとの同時防除に使用するのが有効です。 |
生育初期~収穫期 | 斑点落葉病 黒星病 輪紋病 褐斑病 すす点病 すす斑病 黒点病 | ベルクートフロアブル | 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 6回以内(但し、開花期以降散布は3回以内) | 散布 | M7 | 各種薬剤耐性菌に対しても高い効果があります。 りんごの落花直後から落花後25日ごろまではさび果を生じるおそれがあるので、かからないように注意が必要です。 |
リンゴ栽培で発生する害虫防除に適用がある農薬
散布時期 | 対象病害虫 | 農薬名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期間 | 使用回数 | 使用方法 | RACコード | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
害虫発生初期~ | シンクイムシ類 キンモンホソガ ハマキムシ類 アブラムシ類 ギンモンハモグリガ カメムシ類 | 日曹スカウトフロアブル | 2000倍 2000倍 2000倍 1500〜2000倍 1500〜2000倍 1500〜2000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 5回以内 | 散布 | 3A | スカウトは、接触作用により,すぐれた速効性,残効性で、極めて少ない薬量で害虫発生初期の防除がより効果的に行えます。 また、ピレスロイド系なので、有機リン系、カーバメート系に抵抗性を持った害虫にも効果が期待できます。 |
害虫発生初期~ | リンゴハナゾウムシ リンゴフユシャク リンゴワタムシ | 協友ダイアジノン水和剤34 | 1000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫30日前まで | 4回以内 | 散布 | 1B | 広範囲の害虫に有効な有機リン系の殺虫剤で、 植物体内への浸達性に優れています。 落花20日後頃までの散布は、薬害を生じるおそれがあるので避けること |
害虫発生初期~ | モモシンクイガ ハマキムシ類 クワコナカイガラムシ アブラムシ類 リンゴスムシ ギンモンハモグリガ カメムシ類 | 住化スミチオン水和剤40 | 800〜1200倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | 1B | 有機リン系殺虫剤で、浸透性があります。 害虫に対して接触効果、食毒効果があります。 |
害虫発生初期~ | ナミハダニ リンゴハダニ キンモンホソガ ギンモンハモグリガ ハマキムシ類 ヨモギエダシャク | カスケード乳剤 | 2000倍 2000倍 2000〜4000倍 2000〜4000倍 2000〜6000倍 4000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫14日前まで | 2回以内 | 散布 | 15 | 昆虫成長制御剤 (IGR剤) 、遅効性だが、残効性にすぐれています。 開花直前、開花直後の散布が効果的です。 |
害虫発生初期~ | シンクイムシ類 キンモンホソガ アブラムシ類 ハマキムシ類 カメムシ類 ナミハダニ リンゴハダニ ギンモンハモグリガ | ロディー水和剤 | 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000〜1500倍 1000倍 1000倍 1000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | 3A | 合成ピレストロイド系殺虫剤のため、速効性があります。 殺虫スペクトラムが広く、収穫前日まで使えます。 ハマキムシ類には、発芽10日頃、6月~7月頃の散布が効果的 |
上記以外にもリンゴに適用がある農薬は多くあります。圃場に合った剤形や発生している害虫に合わせて使いやすい農薬を使いましょう。下記からほぼすべての農薬を検索することができます。
農業アプリを活用しましょう
今まで農業日誌や栽培記録、ノートやパソコンで管理していたという人には、農業に役立つアプリを活用しませんか。農家webの「かんたん栽培日誌」アプリはスマホから作物と地域を入力するだけで、防除暦、栽培カレンダーが自動表示。実際の栽培記録はタップ一つで登録可能。自社の「農薬検索データベース」「かんたん農薬希釈計算アプリ」と連動しているので、散布したい農薬をいれればラベルをみなくとも希釈計算も可能で、散布回数もカウントしてくれます。
また地方自治体から発表される予察情報も反映しているので、農家の防除に役立つアプリです。ダウンロードも不要で、ID登録だけですべての機能が無料で使えるアプリです。ぜひ一度使ってみてください。