アオムシ、ヨトウムシ両方に効くおすすめ農薬
ブロッコリーをはじめとして、アオムシ、ヨトウムシ両方とも発生する農作物は多くあります。できれば、一つの農薬で両方を駆除して、作業の効率化を図りたいところ。ここでは両方に効くおすすめ農薬を紹介します。
アファーム乳剤
アファームは、マクロイド系の新しいタイプの殺虫剤で、適用作物も60種類以上あり幅広く使え、速効性にも優れた殺虫剤です。 また有効成分のエマメクチン安息香酸塩は、自然由来のため安全性の高い薬剤です。大型チョウ目には特に速効性があり、新しいタイプの殺虫剤のため、既存の有機リン剤,カーバメート剤,合成ピレスロイド剤,BT剤,脱皮阻害剤などの殺虫剤の抵抗性害虫にも効果が期待できます。
ディアナSC
ディアナはマクロライド系の有効成分スピネトラムを含む新規殺虫剤で、チョウ目害虫、アザミウマ類、ハモグリバエ類、チュウゴクナシキジラミに卓効を示します。有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系など既存の殺虫剤に抵抗性を発達させた害虫に対しても効果が有るのが特徴です。
アディオン乳剤
アディオン乳剤は、性状が淡黄色澄明可乳化油状液体のピレスロイド系の定番の殺虫剤です。 果樹や野菜の広範囲の害虫防除に効果があります。速効性と残効性にすぐれた薬剤で、多くの作物に使用可能です。ピレスロイド系なので、特に抵抗性の発達に注意が必要です。異なる系統の殺虫剤をローテーションして使うようにしましょう。
グレーシア乳剤
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。 コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。 グレーシアは従来のネオニコチノイド系や有機リン系化合物などの殺虫剤では効きにくかった、つまり抵抗性を獲得している害虫に対しても高い殺虫効果を発揮します。 このため、既存の殺虫剤とのローテーション散布も可能です。
その他、ゼンターリ、オルトラン、トレボン、スミチオンなど、様々な農薬が使用可能です。詳しい情報や使える農薬一覧を知りたい方は、ぜひ「農薬検索データベース」のクイック検索を利用してみてください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、連用を避けてタイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させるために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
そもそも、アオムシはどういう害虫?
アオムシ(青虫)とは?
アオムシはチョウ目(鱗翅目)の幼虫のうち、長い毛で覆われておらず、緑色の幼虫を指す総称です。緑色でない幼虫を「芋虫(イモムシ)」と呼び、毛で覆われた幼虫を「毛虫(ケムシ)」と総称していますが、必ずしもチョウがアオムシで、ガ(蛾)がイモムシやケムシというわけでもありません。
アオムシはアジアなどに幅広く分布し、日本中で見ることができます。最も身近なアオムシはモンシロチョウやアゲハチョウの幼虫です。
モンシロチョウの幼虫は、体長は25mm~40mm(4cm)ほどまで大きくなります。春(4〜6月)から秋(9〜11月)にかけて寒冷地で2~3回、暖地で4~5回発生します。
成長サイクルは、卵から孵化した幼虫が蛹を経て成虫になるまでで、4回脱皮します。4回脱皮後の5齢幼虫は蛹になり、成虫になります。(冬に蛹になったものは越冬し春に羽化します)羽化した成虫は、産卵します。産卵のタイプはまちまちで、複数の卵を1箇所に産み付けるものもいれば、卵を一つずつ産み付けるものもいます。
どうしてアオムシは害虫なのか?
アオムシは、アブラナ科植物が大好きです。キャベツ、ブロッコリー、小松菜(コマツナ)、大根、カブ、ハクサイ、チンゲンサイ、ルッコラなどのアブラナ科野菜でよく見られます。
アオムシは主に葉を食害し、葉脈以外は全部食べてしまう勢いで食い尽くします。葉を大量に食べられた植物は光合成が出来にくくなり、成長が阻害され、結球が出来なくなってしまいます。結果、収穫量、良品率が減ってしまうのです。
そもそも、ヨトウムシはどういう害虫?
ヨトウムシとは?
ヨトウムシは主に、ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウの幼虫を指します。これらを合わせて、ヨトウムシ類とも呼ばれます。
この3種類の中でも、シロイチモジヨトウとハスモンヨトウはヨトウガに比べ、ピレスロイド系が効きにくいことが通説になっています。このため、発生している害虫がどれなのか把握することが重要です。
種類 | ヨトウガ | シロイチモジヨトウ | ハスモンヨトウ |
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成虫の大きさ(体長)・色 | 約20㎜(翅の開帳約45mm) 灰褐色〜黒褐色 | 約12㎜(翅の開帳約28mm) 灰褐色 | 約20㎜(翅の開帳約40mm) 灰褐色 |
幼虫の大きさ(体長)・色 | 〜約50㎜ 頭部:黒褐色→黄褐色 体色:淡緑→灰褐色 | 〜約30㎜ 体色:淡緑→褐色 | 〜約40㎜ 体色:淡緑→褐色、黒褐色 |
産卵 | 葉裏に数十〜数百の卵塊 側面に放射状の黒点 | 葉裏に数十〜数百の卵塊 色は黄白〜灰白色 | 数十〜数百の卵塊 色は黄土色 |
生長サイクル | 年2回発生 土中に蛹で越冬し、第一世代幼虫は4〜5月に羽化 第二世代幼虫は8〜10月に羽化 | 年5〜6回発生 卵から孵化〜成虫になるまで1ヶ月程度 | 年5〜6回発生 卵から孵化〜成虫になるまで40日程度 |
幼虫大量発生時期(目安) | 5月前後、10月前後の2回 | 8〜10月 | 8〜10月 |
ヨトウムシの類似害虫で、オオタバコガ、コナガがいますが、これらはヨトウムシにように50個以上の卵の卵塊を産まない点が異なります。
どうしてヨトウムシは害虫なのか?
ヨトウムシの幼虫は、雑食性で、かなり広範囲の作物を食害します。食害のレベルも非常に激しいもので、キャベツや白菜など菜類では、一晩で網の目になるほど食い荒らしてしまいます。
実は、ヨトウムシの対策については明治時代からも言い伝えられているほどで、害虫の中でも非常に歴史があると言えるでしょう。