この記事では、硝安(硝酸アンモニア)の基本と特徴、効果的な使い方、注意点について、詳しく解説します。
硝安(硝酸アンモニア)とは
硝酸アンモニア(硝安、NH4NO3)は、硝酸性窒素とアンモニア性窒素を同量含む窒素肥料です。水に非常によく溶ける性質を持っています。硝酸アンモニアの公定規格は、主成分としてアンモニア性窒素16%以上、硝酸性窒素16%以上と定められています。実際に販売されている硝酸アンモニアは、窒素全体で32%〜34%程度の窒素を含有しています。
日本の露地栽培の元肥として使われる窒素肥料の多くは硫安、尿素などで、硝酸アンモニアはあまり使われません。硝酸アンモニアは、その半分が硝酸性窒素であり、雨などが降るとすぐに流亡してしまうためです。
高い吸湿性と潮解性があるため、空気に触れると湿気を吸い、硬い塊になります。そのため、市販の硝酸アンモニア肥料は、予め固結防止剤を添加し造粒され、白い粒状で販売されているものもあります。
また、不純物として有機物があると爆発性が高まります。摩擦や衝撃によって爆発する危険性も高いです。
硝酸アンモニアの肥料倉庫が爆発する事故がアメリカや欧州では多くあります(硝酸アンモニウムの爆発事故 – 総合安全工学研究所)。
硝酸アンモニアの特徴
硝酸アンモニアには、以下の特徴があります。
- 水溶性で溶解性が高く、土壌施用後によく溶け出し作物に吸収されます。速効性の窒素肥料です。
- アンモニア態窒素と硝酸態窒素を同量含んでいます。アンモニア態窒素は土壌によく吸着されますが、硝酸態窒素は吸着されず、水分とともに流亡しやすいです。
- 畑作物の場合、硝酸態窒素はそのまま作物に吸収され、アンモニア態窒素は硝化することで硝酸態窒素に変化し作物に吸収されます。そのため、追肥として使われることが多いです。
- 硝安が溶解された後のアンモニアイオン、硝酸イオンは、土壌内の他の物質と結合して難溶化することがなく、ほかの窒素肥料よりも土壌ECと浸透圧が上昇するスピードが早いです。そのため、一度に多量施肥すると、初期生長に悪影響が出たり、肥料やけが発生したりする可能性があります。
- 残留成分がないため、化学的にも生理的にも中性です。土壌を酸性化させることがなく、硫安や延安などのようにアルカリ資材でのpH(酸度)調整の必要がありません。
- 速効性ではありますが、半分がカリウムイオンが土壌によく吸着されるため、流亡は少ないです。
- 水に溶けやすいため、主に養液栽培、養液土耕栽培によく施用されます。
硝酸アンモニアの使い方
硝酸アンモニアは、主に畑作物に施用されます。水に溶けやすいため、主に水耕栽培、養液栽培や養液土耕栽培で施用されることが多いです。また、硫酸根など副成分が残留しないので、施設栽培(ハウス栽培)でも安心して施用できます。
ハウスなどの施設栽培、養液栽培、養液土耕栽培などでは、追肥として利用されることが多いです。他の化学成分との反応も起こらないため、養液栽培の培養液の一部として使うことができます。但し、その危険性と高価格であることから、単肥として施用されることは稀です。化成肥料の原料として使われ、他の成分と混合した養液栽培肥料として販売されていることもあります。
露地栽培においても、使用するのであれば追肥、もしくは栽培期間の短く窒素を消費しやすい作物(葉菜類など)への元肥として施用されることが多いです。
硝酸アンモニアの主な注意点
硝酸アンモニアの主な注意点を以下にまとめました。
- 輸送や保管など取り扱いには注意が必要です。
- 肥料やけする可能性があるため、施用する場合は濃度や頻度に注意が必要です。
硝酸アンモニアの購入場所
家庭菜園等で使用する肥料は、ホームセンター、インターネットなどで購入可能です(但し、購入するハードルはかなり高いです)。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。プロ農家の方は、JAや資材店等に相談すると良いでしょう。