この記事では、アンモニア態窒素の概要と硝酸態窒素との違い、含まれる肥料の種類、作物への吸収過程について、詳しく解説します。
窒素の種類とアンモニア態窒素・硝酸態窒素の違い
まず、アンモニア態窒素と硝酸態窒素の違いについてよく理解しておきましょう。
窒素は窒素でも、形態などによって違いがあります。大まかに下記のように分類することができます。
- 有機態窒素
- タンパク態窒素
- ペプチド窒素
- アミノ糖など
- 無機態窒素
- アンモニア態窒素
- 硝酸態窒素
※主な成分のみ記載
尿素肥料に含まれる尿素態窒素もあります。尿素態窒素は、無機化合物から合成された有機化合物として非常に重要な化合物です。
それぞれ詳しく解説します。
アンモニア態窒素
アンモニア態窒素は、アンモニウムイオン(NH3+)の形で存在する窒素です。土壌中によく吸着され、移動することがなく、流亡する心配がほとんどありません。
作物によっては、アンモニア態窒素のまま吸収されることもありますが、大体は土壌微生物によって硝酸態窒素に転換(硝化)され、作物に吸収されることになります。
アンモニア態窒素はその土壌の吸着性から、長期的に表面施用すると塩類集積(土壌中の塩分が高い状態)が起こってしまいます。また、土壌がアルカリ性であったり、アルカリ資材と肥料を混合施用すると、アンモニアガスが発生する場合があり、トンネル栽培や施設栽培などでは作物に障害が発生するので注意が必要です(アンモニアガス障害)。
アンモニア態窒素を含む肥料には、以下のものがあります。
硝酸態窒素
硝酸態窒素は、硝酸イオン(NO3-)の形で存在する窒素です。土壌に吸着されることなく、水(溶液)の流れに沿って拡散します。従って、施用位置にも関わらず、土壌の下層まで浸透しやすく、流亡もしやすいです。
畑の作物は、大部分は硝酸態窒素の形で、窒素を吸収します。
硝酸態窒素を含む肥料には、以下のものがあります。
- 硝安(硝酸アンモニウム)
- 硝酸石灰
- 硝酸加里
- 硝酸ソーダ(チリ硝石)
アンモニア態窒素が含まれる肥料とは
アンモニア態窒素が含まれる肥料は、どのようなものなのでしょうか?見分け方と代表的な肥料を取り上げます。
アンモニア態窒素が含まれる肥料の見分け方
肥料を購入する時、一番簡単な見分け方は何でしょうか?
一番簡単で手軽に見分けることができる方法は、商品パッケージの裏側などにある「保証票」を確認することです。
普通肥料の場合は、保証成分量(主要な成分の含有量)や正味重量などを記載した保証票の添付が必要となりますので、必ず記載されています。
保証成分量に記載されている成分のうち、「アンモニア性窒素(A−N)」と記載されていれば、アンモニア態窒素が含まれた肥料と言えるでしょう。また、「窒素全量(T−N)」は、アンモニア態窒素と硝酸態窒素の合計を表しますので、窒素全量のみ表示されている肥料についてもアンモニア態窒素が含まれている可能性があります。
アンモニア態窒素が含まれる代表的な肥料
アンモニア態窒素が含まれる代表的な肥料とその保証成分量は以下のとおりです。
- 硫安(硫酸アンモニウム):全量アンモニア性窒素21%
- 塩安(塩化アンモニウム):全量アンモニア性窒素25%
- 硝安(硝酸アンモニウム):アンモニア性窒素16%、硝酸性窒素16%
- 燐安(リン酸アンモニウム):アンモニア性窒素12%
畑における窒素の分解、吸収過程
畑の場合は、有機質肥料(有機肥料)や尿素はアンモニア態窒素に分解されます。アンモニア態窒素は土壌中の亜硝化菌、硝化菌の働きによって速やかに硝酸態窒素になり、栽培作物に吸収されます(厳密には硝酸態窒素は硝酸塩という結晶であり、それが水に溶け出して硝酸イオンとなって吸収されます)。
アンモニア態窒素は、基本的にはそのままで土壌中に留まることはありませんが、施設栽培(ハウス栽培)においてはアンモニア態窒素を含んだ肥料を大量に使用すると蓄積し、亜硝酸ガスを発生させて作物に障害が起こる場合があります(アンモニアガス障害)。
水田における窒素の分解、吸収過程
水田の作物である水稲などは、先述したとおりアンモニア態窒素で窒素を吸収します。畑作物のように硝化菌による化学変化を必要することなく、窒素を吸収することができます。ただし、水田土壌中の酸化層には硝化菌がいますので、一部は硝酸態窒素となり窒素ガスとして大気中に放出されます。