この記事では、有機栽培、特別栽培の肥料として使用されたり、食味を良くするために使用されるアミノ酸肥料について、その効果や特徴、上手な使い方、プロ農家・園芸愛好家向けのおすすめ商品について解説します。
アミノ酸肥料とは
肥料の要素に関するおさらいができたところで、アミノ酸肥料の特徴とその効果、有機アミノ酸というものはどういうものかについて説明します。
そもそもアミノ酸とは?
アミノ酸とは、広義にはアミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)をともに持つ化合物です。有機物質であり、約500種類が見つかっています。グリシンやグルタミン酸という名前を聞いたことがあるかもしれませんが、これらもアミノ酸の一種です。
タンパク質は、アミノ酸が結合されたものです。22種類のアミノ酸は、タンパク質の構成要素となっていて、動植物の種類によって構成要素が異なります。タンパク質はそのままでは植物に吸収されませんが、タンパク質が分解されアミノ酸となることで、葉や根から吸収できるようになります。
アミノ酸は、動物にも植物にも必要不可欠な成分なのですね。
アミノ酸肥料とは
「アミノ酸肥料」は、動物性や植物性由来のタンパク質を加工して、農作物の肥料として使用できるようにした資材のことを指します。動植物由来のため、化成肥料などの化学肥料ではなく、有機肥料として扱われます。
本来、植物は光合成によって体内でアミノ酸を合成しています。しかし、天候不良などによって光合成ができないような状況が長く続くと元気がなくなってきます。
そのようなときに、アミノ酸肥料を施用することで、植物が環境ストレスに置かれた状況でも生育をサポートし、品質向上や収量アップが期待できます。アミノ酸肥料を施すことによって、植物体にアミノ酸を直接吸収させられるので、タンパク質の合成を効率的に行えるようになり、植物の状態がよくなります。
作物にアミノ酸を与えることによって、作物の品質が向上したり収量(収穫量)が増加したりするため、アミノ酸肥料を適切に施すことは、栽培をする上で重要であると言っても過言ではありません。
アミノ酸肥料の成分とその効果
アミノ酸肥料は窒素(チッソ)成分を主体としています。有機物を原料とするため、窒素成分だけではなく、リン酸・カリウムを少なからず含んでいることが多いです。また、窒素・リン酸・カリウムの三要素のバランスを取るために、他の資材と配合された肥料も販売されています。
一般的に「有機アミノ酸肥料」「アミノ酸肥料」「アミノ酸液肥」などとして販売されているものは、ほぼ全て低分子のペプチドやアミノ酸までタンパク質を分解して肥料として加工しているものです。すでに分解されている肥料であるため、根痛みを起こしにくく安心して使用できます。
通常、植物は無機態窒素(硝酸態窒素やアンモニア態窒素)を根などから吸収し、光合成を行うことによって再度アミノ酸を植物体内で生み出しています。土壌中のアミノ酸もすべて、無機態窒素に変化されてから吸収されていると考えられていました。
しかし近年では、植物が直接アミノ酸を吸収できることがわかりました。アミノ酸を直接吸収することで、植物体内で他のアミノ酸や有機酸に変化し、タンパク質として合成されて植物体内で蓄積されることによって、以下のような効果が現れると考えられています。
- トマトやイチゴなどの果菜類や葉菜類の作物の甘み(糖度)、食味が向上する。
- 日照不足や低温に強い作物を栽培することができる。植物が強く育つ健全に生長することによって、収量の増加や品質の向上に繋がります。
- 農作物の色つやが向上する。
アミノ酸は、日照不足や低温、長雨など栽培における気象条件が悪いときにも吸収されやすいため、園芸やガーデニング、家庭菜園だけではなく、プロ農家にも人気の資材となっています。
肥料の分類や単肥について、気になる方は下の記事ものぞいてみてください。


アミノ酸肥料の上手な使い方
先述したとおり、アミノ酸肥料は窒素(チッソ)を主体とした肥料です。その肥料の配合によっても変わりますが、基本的には元肥としても追肥としても使用することができます。元肥や追肥としてそのまま使用できるアミノ酸肥料には、アミノ酸のほかにリン酸、カリウム、マグネシウムなどの微量要素を含んでいることが多いです。
また、日照不足や長雨、低温など気象条件が悪いとき、なり疲れなどが発生したときに、アミノ酸肥料の液肥を潅水と一緒に施肥したり、葉面散布することで、植物に活力が生まれます。植物に活力がなくなって弱り始めたときに、葉面散布をしてみると効果が現れやすいです。葉面散布ができないアミノ酸肥料もあるので注意してください。
有機栽培や特別栽培にもアミノ酸肥料は使うことができます。有機JAS認定を受けるためには有機JAS認定のアミノ酸肥料を使用する必要がありますので、ご注意ください。
基本的な使用方法は、以下のとおりです。
- 液状のアミノ酸肥料は、希釈して潅水と同時に施肥をすることができます。潅水と施肥をセットに行えるので、労力を少なくできます。
- 固形のアミノ酸肥料は、元肥や追肥として施肥することができます。元肥の場合は土に混ぜ込むか、溝施肥をすると良いでしょう。
アミノ酸肥料にはさまざまな種類があるので一概にこのやり方が良いというものはありません。その肥料のラベルやパンフレットを良く読んで、効果的な使用方法を確認しましょう。
- 葉面散布に最も良い時間帯は早朝です。湿度が高く、葉の細胞が水で満たされた完全な膨圧状態にあるときが最適です。涼しくなった夕方でも良いでしょう。
- 日中の暑い時間帯は散布を避けましょう。温度が高い時の吸収率は非常に低く、ストレスにさらされ薬害の原因となります。
- よく晴れた日の日中帯も避けましょう。散布した溶液が高濃度となり、葉焼けなどの原因となります。
- 土壌水分が十分であるときに葉面散布をすることが効果的です。可能であれば、散布する前日に水を撒くこともおすすめです。
- 雨や水撒きの直前、風が強い日に葉面散布をするのは避けましょう。
- 養分吸収は、葉の表面よりも裏面のほうが盛んに行われますので、裏面を重点的に散布してください。
- 二重散布や農薬との混合などは基本的にやめましょう。農薬との混合は専門的な知識が必要です。
アミノ酸肥料の作り方
一般的には市販されているアミノ酸肥料のようなものを作ることは困難です。ただし、ぼかし肥料もアミノ酸肥料の一種と呼べると思いますので、独自でアミノ酸系の肥料を作りたいということであれば、有機質を発酵させてぼかし肥料を作ると良いでしょう。
堆肥や米ぬかなどの有機物の窒素(チッソ)はそのままでは植物に吸収されません。微生物により分解されることで有機態窒素となり、最終的に無機態窒素になることで植物に吸収されます。ぼかし肥料は、有機物に糖蜜やEM菌などを投与し、微生物による分解を促す(発酵)ことで、植物に吸収されやすくしたものです。ぼかし肥料には、微生物による分解の過程でアミノ酸も多く含まれていますので、市販されているアミノ酸肥料に近い効果が得られると思います。
ぼかし肥料の特徴や作り方については、下記の記事にまとめていますのでぜひ参考にしてください。生ゴミもぼかし肥料にすることができますよ。
アミノ酸肥料のおすすめ商品・人気商品
アミノ酸肥料のおすすめ、人気の商品を紹介します。園芸・家庭菜園だけはなくプロ農家にもおすすめできる肥料です。アミノ酸肥料はさまざまなメーカーが開発して販売しているので、その肥料の性質など調べて、ご自身で選んでみるのも楽しいと思います。
家庭菜園・園芸向けのアミノ酸肥料
バイオール化学研究所「バイオール液」
バイオール液はプロの要求を満たすコラーゲン・ゼラチンから抽出された純粋の動物質アミノ酸と、11種類の植物必須成分を含む、豊かなアミノ酸肥料です。小容量のものもあるため、プロだけではなく家庭菜園や園芸にも使いやすいです。
ハイポネックス「いろいろな野菜用粒状肥料 有機(アミノ酸)入り野菜専用肥料」
ハイポネックスから販売されているアミノ酸入りの肥料です。有機と化成(肥効機関の異なる4種類)の組合せで、すぐに効き始め安定した効果が約1〜2ヶ月間持続します。アミノ酸も含まれているので、根張りがよくなったり品質が向上します。元肥・追肥どちらでも使用することができるので、家庭菜園やプランター栽培などでも気軽に使用することができる肥料です。
万田発酵「万田アミノアルファプラス」
万田酵素は皆さん聞き覚えのある商品名だと思いますが、「万田アミノアルファプラス」はその万田酵素を開発する過程で培ったノウハウを活かして製造されたものになります。果実類、根菜類、穀類、海藻類など数十種類の植物性原材料を使用したアミノ酸の液体肥料で、生育の促進、増収(収量の増加)・品質向上(糖度、旨味など)に繋がるそうです。
ヨーキ産業「木酢アンプル」
プランターや鉢植の野菜、花卉などの観葉植物に対して気軽に使えるアミノ酸入りの木酢液です。通常、木酢液は窒素、リン酸、カリウムなどの要素やアミノ酸など成分がほぼ含まれていませんが、木酢アンプルは有機質100%でアミノ酸も含み、窒素、リン酸が多く含まれています。また、アンプルタイプで土壌に挿すだけで済み、果菜類や観葉植物、花卉など幅広く使用できるため、家庭菜園や園芸にも使いやすい肥料です。
ハイポネックス「リキダス」
リキダスは、コリン・フルボ酸・アミノ酸を独自配合した植物用活力液です。肥料ではありませんが、アミノ酸入り肥料と同様、根の張りを良くしたり、なり疲れを回復させたりする効果があります。液状タイプのものはそのまま使えるストレートタイプと希釈して使用する原液タイプがあります。便利で使いやすいアンプルタイプのものありますので、家庭菜園や園芸におすすめです。また、カルシウム(石灰)も含まれているため、トマトなどに多い尻腐れやイチゴ、レタスのチップバーンにも効果があります。
プロ農家向けのアミノ酸肥料
誠和「ペンタキープ」
誠和のペンタキープシリーズは、植物の光合成を高める「5-アミノレブリン酸」を世界で初めて配合した液状肥料です。「5-アミノレブリン酸」は、植物や動物の体内にある大切なアミノ酸で、植物体内ではクロロフィル(葉緑素)の前駆体となる物質で、これを与えることにより植物の光合成の能力が高まります。
生科研「アミノ酸肥料 ジャンプ」
水溶性のアミノ酸・核酸エキスです。中嶋農法で有名な生科研のアミノ酸肥料であり、天然の魚由来の良質なアミノ酸を使用した速効性の肥料となっています。粒状の肥料と液体の肥料、どちらのタイプもありますので、使用用途によって使い分けることもできます。プロ農家によく選ばれている肥料です。
タキイ種苗「有機アミノ酸肥料1号、2号、3号」
タキイ種苗から販売されている有機アミノ酸肥料です。シリーズとして3種類あり、マグネシウムが多く含まれたもの、果菜類向けのもの、葉・根菜類、露地向けのものと、使用用途に最適な配合の肥料となっています。
タキイ種苗「アミノ酸入り有機液肥 育ちくん」
タキイ種苗から販売されているアミノ酸肥入り有機液肥です。効きすぎや徒長の心配が少なく安心して使えます。育苗(セル育苗)に最適な肥料です。
- 育苗(セル育苗)での追肥に最適な有機液肥です。
- ハウス栽培や軟弱野菜などの追肥に最適です。
- 日照不足や長雨など、気象条件が悪いときのダメージから早期回復できます。
- 花きや鉢物の追肥にも最適です。
サンビオティック「糖力アップ」
サンビオティックブランドから販売されているアミノ酸入り有機液肥です。植物の生育促進させるアミノ酸やミネラルを豊富に含んでいます。原料には、イワシやサバなどの「魚エキス」と、ミネラル類を豊富に含む「天然黒糖」「海藻エキス」などを使用しています。定植のときや生長期に使用することができます。
特に栄養生長期(植物が大きくなるとき)に使うと効果がります。葉もの野菜であれば、植え付け後から収穫までの間2~3回使用します。果菜類は、1番果の収穫が始まる頃から、使用していくと成り疲れなどが少なく、長期どりが可能となります。また、果樹や根菜類に対しても使えますので、栄養生長時期に施用すると良い結果に繋がります。
片倉コープアグリ「トミー液肥」
糖蜜発酵副産液を使用し、各種アミノ酸、核酸、ビタミンなどに富み、作物の安定生産と食味向上に貢献します。有機の特長を活かしながら、かん水施肥や養液土耕など、液肥としていろいろな場面で使用することができる肥料です。
アミノ酸入り肥料はこの他にもたくさんある!
アミノ酸肥料は、上記で紹介したほかにもたくさんの種類、商品があります。活力剤などにもアミノ酸が含まれている場合もありますし、有機液肥にも含まれていることが多いです。ご自身が育てている植物や栽培作物に合ったものを探してみましょう。
アミノ酸肥料の購入方法、価格
アミノ酸肥料はさまざまなメーカーが独自で開発・販売しています。店頭に並ぶものもあればインターネットでしか購入ができない商品もあります。ホームセンターなどでも取り扱いされている場合がありますが、店舗に陳列されておらず取り寄せ、もしくは別店舗に探しに行かなければならない場合もあります。
インターネット通販で購入されることもおすすめです。「少し高いかな?」と思われるかもしれませんが、インターネットで購入した場合も、そこまで大きな価格の差はありません。インターネット通販を使用することで店舗に出向く時間が削減されたり、肥料を運ぶ時間も減るので私は積極的に利用しています。また、いろいろな商品をみることができ、ゆっくりと比較できるなど、店舗での購入にはない楽しみも増えます。