近年では、水稲や畑作において「農業用ドローン(産業用マルチローター)」の活用が拡がってきています。防除の作業時間を退縮できたり、急傾斜地など人が入りにくい場所でも防除できたりするなど、省力化や効率化に繋がっています。
農業用ドローンは導入するときには、①農業用ドローンの購入・レンタル②農業用ドローンを扱うための訓練・技能認定取得③メンテナンス・保険の加入が必要です。相応の費用がかかるので、補助金などを活用して導入しましょう。
この記事では、「農業用ドローン」の免許取得費用に活用できる補助金を紹介します。
※この記事は2023年11月時点の情報です。補助金の内容等の変更や公募が終了している可能性もあるため、必ず各公募の公式ページをご確認ください。
農業用ドローンに免許はない
まずはじめに、農業用ドローンには自動車運転免許のような免許制度はありません。そのため、免許取得は必要がありません。
しかし、購入する農業用ドローンの機種によっては、認定された教習施設で教習を受けたあと技能認定(資格)を受ける必要があります。
使用する機種 | 農林水産航空協会認定の農業用ドローン | DJI・クボタ製の農業用ドローン | 左記以外のドローン |
---|---|---|---|
機種の認定取得 | 有り | 有り | 無し |
年次定期点検 | 年1回の義務 | 年1回の義務 | 推奨 |
教習所受講と技能認定 | 必須・機種ごとに定められた指定教習施設において受講 | 必須・AGRAS農業ドローン協議会認定の教習施設において受講 | 無し |
機体購入のタイミング | 教習受講、技能認定証交付後 | 教習受講、資格証交付後 | 無し |
補助金・助成金 | 対象が多い | 対象が多い | 対象が少ない |
資格がなくても農業用ドローンを飛行・使用することはできますが、実際には空中散布用ドローンを使用する場合、飛行許可申請を経て国土交通大臣の許可承認が必要となり、その際に飛行経験を記載、申告しなくてはいけません。また、農薬散布にはドリフトや薬害などのリスクが伴うため、しっかりとそのリスクを認識しながら散布しなければなりません。
したがって、現実的にはドローンスクールで飛行経験を積むことが必要と考えられます。
今後は免許制に移行される可能性もあります。農林水産航空協会、AGRAS農業ドローン協議会の資格を取っておくことで、損することはないでしょう。
農業用ドローン資格取得費用に活用できそうな補助金
農業用ドローン資格取得費用に活用できそうな補助金は、国が公募しているものと各地方自治体が独自で公募しているものがあります。
国の交付金・補助金
人材開発支援助成金(人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コース)
「人材開発支援助成金(人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コース)」とは、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進するため、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合や、人材開発制度を導入し労働者に対して適用した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する返済不要の制度です。
「人材開発支援助成金」はドローン資格取得を進める場合、基本的にはいずれかのコースには当てはまるため、多くの場合に活用できる助成金です。そのため資格取得の助成金を検討している場合には、チェックしておきましょう。
但し、特定の条件を満たす法人に限り申請が可能となりますので、その点にも注意が必要です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金です。
もちろん、農業者であっても補助金申請をすることが可能です。
ドローン関連の費用としては、ドローンの機体購入やソフトウェア購入、スクール受講料などに活用できると考えられます。
各地方自治体が独自に公募している補助金
各地方自治体において、独自に公募している補助金もあります。具体例としては下記のものがあります。あなたが営農される地域でも公募されている可能性があるので、よくチェックしましょう。
岩手県盛岡市 スマート農業導入促進事業
農作業の効率化と生産性の向上を目指す農業者を支援するため、農業用ドローン本体の購入経費及び農業用ドローンのオペレーター講習の受講料と、遠隔操作等草刈機本体の取得にかかる経費に対して補助を行います。
農業用ドローンのオペレーター講習の受講経費に対して、講習受講料の税抜き経費の2分の1以内の額(1人当たり15万円を上限)が補助されます。
長崎県雲仙市 ドローン資格取得支援事業
ドローン操作資格取得の受講料及び認定証交付料にかかる経費に対して、補助を行います。
ドローン操作資格取得の受講料及び認定証交付料の1/2以内(補助金限度額150千円以内)が補助されます。
農業用ドローン購入費用に活用できる補助金
農業用ドローンの導入に補助金を活用する事例は多くあります。具体的な補助金としては、「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)」「産地生産基盤パワーアップ事業
下の記事に詳しくまとめていますので、ご覧ください。
農業用ドローンの導入・利用にかかる費用
費用の内訳は、ドローン機体の購入費用、操縦を学ぶためのドローンスクール受講料、メンテナンス費用、保険料に大別できます。
大事なことは、ドローンを利用する場合にかかる費用と、ドローンを利用しない場合にかかる費用を比較して判断することです。たとえば、ドローンを農薬散布に利用することを考えている場合では、無人ヘリコプターを利用する場合や、手作業による農薬散布の場合などと比較して判断する必要があります。
特に、手作業による農薬散布と比較すると、ドローンを利用した場合は40倍以上の効率ともいわれており、早ければ2年で元をとれる試算もあります。
ドローン機体の購入費用
主な農業用ドローンとして、農薬などを散布する「空中散布用ドローン」、農地や作物の状態をデータ化および可視化する「センシング用ドローン」があります。空中散布用ドローンの方が大型になるため、金額は高くなります。
空中散布用ドローン
農薬・肥料・種子の散布に用いるドローンです。価格はメーカーや仕様によって大きく異なりますが、100万円から300万円くらいが目安です。
センシング用ドローン
機体に搭載されたカメラにより、農地や作物の状態をデータ化および可視化するドローンです。価格はメーカーや仕様によって大きく異なりますが、50万円から100万円くらいが目安です。
ドローンスクール受講料
ドローンの操縦が初めての場合は、ドローンスクールで知識や技術を学ぶ必要があります。また、空中散布用ドローンを使用する場合には、飛行許可申請を経て国土交通大臣の許可承認が必要となり、その際に飛行経験を記載しなくてはいけません。
したがって、現実的にはドローンスクールで飛行経験を積むことが必要と考えられます。ドローンスクールの数は増加傾向にありますが、空中散布用ドローンの操縦を目的としたコースを受講する場合、相場は20万円〜30万円ほどのようです。
メンテナンス費用
ドローン機体の整備点検の費用です。必須ではない場合もありますが、相場としては年1回で数万円くらいのようです。
保険料
必須ではない場合もありますが、賠償保険や機体保険に入っておくと安心です。金額は補償内容によって異なりますが、相場としては数千円から数万円程度です。
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