明るい日陰を好むアジアンタムは、室内で育てる水耕栽培(水栽培)でも育てやすい植物です。この記事では、アジアンタムを水耕栽培で育てたい方向けに、水耕栽培の始め方や、ハイドロカルチャーへの植え替え、育て方についてわかりやすく説明します。
アジアンタムの株分けから始める水耕栽培の手順
それでは、土で栽培しているアジアンタムの鉢植えを株分けして、水耕栽培に使うための手順を説明していきます。
水耕栽培を始める時期
シダ類は、種を持たず胞子で増えますが、アジアンタムのような園芸種は基本的に株分けで増やします。生育が旺盛なアジアンタムは、根詰まりをおこすため毎年植え替えが必要になります。大きく育った株を、株分けして水耕栽培を始めましょう。
株分けから水耕栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。生育期は5月~9月頃まで、この頃に植え替えや株分けは行います。真夏は株が弱るため避けた方がよいでしょう。できれば生育初期の5月から7月頃に行うのがおすすめです。
準備するもの
- アジアンタムの鉢植え
- ハサミ(ライターなどであぶって消毒しておく)
- 園芸用シャワーノズル
株分けの手順
- 植え替える鉢植えのアジアンタムは、事前にしばらく水やりをせず乾いた土の状態で始めます。
- 鉢からアジアンタムを取り出し、根から土をほぐして落とします。
- ハサミなどを使って、苗を2~4つにわけます。
- 枯れた葉や傷んだ葉は切り落とし、葉は全体の半分程度に間引きます。
- 水栽培に使う株は、根を水でよく洗い土を落とします。園芸用のシャワーノズルなどがあればより根元の土を落とすことができます。
- 傷んだ根や、長すぎる根は清潔なハサミで切ります。日陰で切った根を乾かしてから植えつけをすると、雑菌が入りにくくなります。
アジアンタムのハイドロカルチャーへの植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
準備するもの
- 土を洗い流したアジアンタムの苗
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- ハサミ
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろや、ピンセットなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- アジアンタムの苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 割り箸などを使って、根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の5分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
- 新しい芽や根がでるまでは、明るい日陰で管理しましょう。土で育った根は、うまく水を吸い上げられないことがあります。霧吹きなどで葉水を与え、葉が乾燥しないように保ちましょう。
アジアンタムのベラボンへの植え替え
アジアンタムは、水栽培では根が細かいため苗を支えることができないのでスポンジや、水苔、ベラボンなどを使って育てるとよいでしょう。ここではアジアンタムと相性のよいヤシガラ培土であるベラボンを使った方法を説明します。土の代わりの培土を使うという意味では、広い定義ではこちらもハイドロカルチャーともいえます。
ベラボンとは
ベラボンは、ヤシの実を特殊加工したチップで、観葉植物や多肉植物の栽培などに多く使われます。土と違い清潔で、軽量なことからハンギングバスケットなどにもよく使われます。ハイドロボールは土を良く落とす必要がありますが、ベラボンは土が付いたままでも、植え替えられるので、植え替えの失敗のないのも魅力です。
吸収性・保水性・排出性のよい培土で様々な観葉植物に使われますが、アジアンタムのように細い根でも、通気性がよいため根の張りがよくなるため、小さな観葉植物に向いています。不要になっても、可燃ごみとして捨てられるのも魅力。ホームセンターなどでも手軽に買うことができます。
用意するもの
- アジアンタムの苗(土を落とさずそのままの苗でも使えます)
- ベラボン
- 鉢や器(底に鉢穴があるものでも、ガラスの器など穴がないものでもどちらも可)
手順
- 鉢や器に半分ほどベラボンを入れます
- アジアンタムの苗を入れて、上からベラボンをいれます。
- 手でギュギュとベラボンを押し込み、隙間なく押し込みます
- たっぷりと水やりをします。
アジアンタムの水耕栽培での育て方
アジアンタムの特徴
植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると枯れずに育つのかわかってきます。
アジアンタムは、温帯から熱帯に自生するシダ植物です。種類は200種類以上あります。多湿を好み暑さには強いですが、寒さには弱いので一般的に日本で売られている園芸種は鉢植えで管理し、冬は室内で冬越しをします。
多年草で春から秋が生育期です。葉っぱに保水力がないため、乾燥するとチリチリと葉が縮れてしまいます。年間を通して葉水を行い乾燥しないように育てましょう。
学名 | Adiantum |
属名 | イノモトソウ科ホウライシダ属 |
原産地 | 温帯・熱帯・亜熱帯など |
樹高 | 5㎝~100cm |
耐寒性等 | 耐寒性 弱い 耐暑性 強い |
花言葉 | 「繊細」「無垢」「天真爛漫」など |
アジアンタムの種類
品種名 | 特徴 |
---|---|
ラディアナム・フラグランス | アジアンタム・ラディアナムの園芸種の一種。 葉が密につくのが特徴 |
ラディアナム・ミクロフィラム | アジアンタム・ラディアナムの園芸種の一種。 細かい葉が、こんもりとした姿が特徴的です。 |
ラディアナム・フリッツ・ルーシー | アジアンタム・ラディアナムの園芸種の一種。 ひとつひとつの葉が小さくやわらかな雰囲気。 |
アジアンタム・カウダツム(コーダツム) | 枝垂れのように生長するアジアンタム 吊り鉢やハンキングに人気の種類。 |
置き場所、日当たり
アジアンタムは、半日陰を好みます。直射日光に当てると葉焼けを起こすので気をつけましょう。耐陰性もありますが、あまり日が当たらないと、徒長したり葉が黄色くなっていまったりします。風通しのよい明るい日陰で育てましょう。
室内で管理する場合は、エアコンの風が株に当たるとすぐに弱ってしまいます。エアコンの風の当たらない場所で、まめに霧吹きなどで葉水を与えてあげましょう。冬は品種にもよりますが、それほど強くないので8℃以下にならない場所で管理しましょう。窓際でカーテン越しの光を当てていると夜は急激に温度が下がることがあるので注意しましょう。
水の量と交換時期
水耕栽培での水やりは、土の栽培とは異なります。ハイドロボールやベラボンでも方法は違います。アジアンタムは多湿を好み、水切れをおこすと葉がチリチリとしてしまうので、水やりには注意が必要です。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てるます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。生育期である春から夏は、鉢の中が乾いてから2日~3日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の5分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから2~3日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。秋から水やりの回数を減らし、休眠期の冬は、霧吹きで水を上げる葉水で行います。
アジアンタムは多湿を好みます。年間を通して、葉が乾燥しないように霧吹きなどで、葉水を与えてあげましょう。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、水位計があると安心です
ベラボンの水やり(鉢底に穴がある場合)
ベラボンは、水を吸収して膨らみ乾くと縮みます。これにより通気性・吸収性・排水性がよい状態が保てています。
水やりは、一度につき2回行います。1回目は、鉢の2倍ほどの水を、鉢全体に与えます。これにより中の空気を押し出します。2回目は1回目から5分後に、1回目と同様に与えます。
次回の水やりは、ベラボンの表面が乾いたら行います。
ベラボンの水やり(器に穴がない場合)
ベラボンは、どんな器にも使用できるのが魅力です。
鉢穴がないものは、まず器いっぱいに水を入れ、ベラボンに水を吸収させます。5分後に、器を傾けて吸収されなかった水を出します。ポタポタとなるまで水を出し切りましょう。
次回の水やりは、ベラボンの上部が2㎝ほど乾いてきたら水やりのタイミングです。
肥料
水耕栽培は土から栄養が取れないため、生育期には水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。水耕栽培の肥料は、液体肥料(液肥)を薄めたり、粉末状のものを水に溶かして使います。春から秋までは月に2度ほど肥料を与えます。水やりのときに水代わりに規定量に薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水耕栽培やハイドロカルチャーに使える液肥は、ハイポネックスやハイポニカ液体肥料や水草用メネデールなどがあります。活力剤は、元気がない時などにも使えます。
まとめ
アジアンタムは、水を好みます。しかしそのため水やりを多くやりすぎて根腐れを起こしてしまうなどのトラルブルも発生します。水耕栽培は、培土をつかうことで水やりの調整がしやすく毎日上げる必要もないので、水切れによる枯れも防ぐことができます。
ブリザートフラワーや、フェイクグリーンとしても人気のアジアンタム。葉が繊細なため枯らしてしまうこともありますが、根は生きていることが多く、刈り取っても新芽を出すことも多い生命力の高い植物です。ぜひ涼し気でかわいらしい葉をもつアジアンタムを育ててみてください。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。観葉植物だけでなく、多肉植物や花を楽しむ球根、野菜やハーブなどは収穫も楽しめます。
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