ソラマメ(そら豆、空豆)は、英名でBroad beanやFava beanと呼ばれる一年草または越年草のマメ科の作物です。エダマメ(枝豆)やスナップエンドウなど、他のマメ科の作物に比べて、粒の大きさが大きいことが特徴です。
ソラマメは、豊富なタンパク質のほか、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCが多く含まれており、疲労回復や風邪の予防への効果が期待できます。また、カリウムやマグネシウム、リンなどのミネラルも豊富に含まれており、特に鉄分が多く含まれています。 塩茹でしたものをそのまま食べるだけではなく、かき揚げや和え物、豆ご飯などにも使えて、初夏の訪れを教えてくれる野菜となっています。
この記事では、ソラマメの基礎知識や栽培の方法の基本、重要事項、注意点などについて解説します。記事が長いため、目次を見て必要な部分から読み進めてください。
ソラマメの基礎知識
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格 (円/1粒) | 苗の価格 (円/1苗) | 収穫までの日数 (目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度 (pH) | 連作障害 | 発芽適温(地温) | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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ソラマメ | マメ科 | 地中海沿岸、西南アジア | ★★★☆☆ | 10円〜80円程度 | 200円〜400円程度 | 播種後、約160日〜180前後 | 全国 | 秋まき、春まき (気候によって収穫時期は前後) | 露地栽培 プランター・鉢植え栽培 | 6.0〜6.5 | あり(3年〜4年) | 18〜20℃ | 15〜20℃ | 日なた | 30klx程度 |
ソラマメは、マメ科ソラマメ属の一年草または越年草の植物です。原産地は地中海沿岸、または西南アジアと推測されています(ソラマメ – Wikipedia)。酸性土壌に弱いため、土作りをする際には土壌酸度を適正にしてあげる必要があります。
ソラマメ栽培のポイント
- 生育適温は15℃〜20℃前後で、やや冷涼な気候を好みます。ただし、幼苗期(苗ができ始めの頃)は寒さに強く、5℃以上あれば生育します。また、0℃を下回りマイナス5℃程度になっても寒害は受けづらいです。
- 春先に伸長を始めたときに霜害を受けやすいので注意しましょう。また、さやが着果した後に0℃近くの低温に当たると、落果(さやが落ちてしまう)するか、生育障害を受けますので、栽培時期は十分に考慮しましょう。
- 圃場への播種(直まき)や定植は、晩霜の危険が去ったあとに行いましょう。
- 大さやの品種(大粒種)は、発芽率が悪いので、多めに播種をして育苗し、良い苗を選んで植え付けると良いでしょう。苗を購入することもおすすめです。
- 種が大きいため、発芽には多くの水と酸素が必要となります。種は深くまかず、ソラマメの頭部が見えるくらいまくと良いでしょう。このとき、おはぐろ(種のヘソ部分)は、斜め下に向けます。
- ウイルス病にかかりやすいため、ウイルスを媒介する病害虫(アブラムシなど)の防除はこまめに行いましょう。
- 茎葉は上に上に伸びてきますが、そのまま放置すると倒伏しやすくなるので、草丈70cm程度で切り詰めましょう(剪葉)。収量には影響しませんので、しっかりと実施することが重要です。
- ソラマメは連作を嫌います。一度栽培をしたら、同じ場所で3〜4年は栽培を避けましょう。連作をするとセンチュウによる病害が発生しやすくなります。土壌消毒などの方法によって連作を可能にすることができますが、連作障害の一番の対策は連作をしないことです。
ソラマメ栽培のスケジュール
発芽適温 | 生育適温 |
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18〜20℃ | 15〜20℃ |
各地域ごとに合わせて考えたソラマメ栽培スケジュールです。前提として、外気温が発芽適温、生育適温に近い気温になる栽培スケジュールを選択して、栽培をしてください。直まきでも発芽、栽培することができますし、発芽率を上げて良い苗を植え付けたい場合には、セルトレーやポットで育苗することもできます。
関東の秋まき栽培(一般地・育苗栽培)の場合は、10月頃にセルトレーやポットに播種をして育苗し、11月頃に圃場に植え付けます。直まきの場合は、10月下旬または11月上旬に播種をします。
その他の地域(北海道、九州など)では、上記の発芽適温、生育適温に適合している期間を選んで、播種、栽培をすれば問題はありません。
もちろん、春まき栽培も可能ですよ。一般地・温暖地が栽培しやすいのは、涼しくなってくる頃に播種する秋まき栽培です。寒冷地は春まき栽培がおすすめですよ。
ソラマメ栽培の流れ・栽培方法
ソラマメ栽培の流れは、下記のようになります(関東の秋まき栽培の目安)。下記は、播種をして収穫まで栽培する流れとなっています。先述したように、地域によって気候などが変わりますので、そのときに合った栽培スケジュールを立てて、同じような流れで栽培してください。
- 植え付けの1ヶ月程度前から
- 10月頃
- 11月上旬頃(本葉が2〜3枚展開した頃)
- 11月〜翌4月上旬頃
- 翌5月頃
ソラマメ栽培の土作り・畝立て
美味しいソラマメを収穫するためには土作りが重要です。土作りは石灰質肥料を馴染ませるため、1ヶ月程度前から行いましょう。ソラマメは、基本的には耕土(作土)が深く、排水性と保水性のある土壌を好みます。土壌の物理性が悪く乾きやすい痩せた畑には、完熟堆肥をしっかりと入れて改善してあげる必要があります。
また、ソラマメは土壌酸度(土壌pH)が低い酸性土壌では根粒菌の着生が悪くなり、生長も悪くなりますので、適正な土壌酸度に矯正してあげることが必要です。
直まきの場合も、種まきの前に同様のスケジュールで土作りをしましょう。
- 植え付けの1ヶ月前石灰質肥料の散布、耕うん
植え付け(定植)予定の1ヶ月ほど前に、苦土石灰や炭酸カルシウム(炭酸石灰)などをまいて、耕しましょう。
- 植え付けの2週間前
植え付けの1ヶ月ほど前に石灰質肥料を散布する!
植え付けの1ヶ月ほど前に石灰質肥料を散布しましょう。主に下記の石灰質肥料を使用します。
- 苦土石灰
- 炭酸カルシウム(炭酸石灰)
一般的に、カルシウム(石灰)とマグネシウム(苦土)を補給し、酸性土壌を矯正するために苦土石灰を施用することが多いです。炭酸カルシウムは、マグネシウム(苦土)が含まれていませんので、硫酸苦土などのマグネシウムが含まれている資材と合わせると効果的です。
どちらの資材も土壌を酸性からアルカリ性寄りに矯正してしまうので、使用する際には土壌酸度(pH)にも気を使ってください。ソラマメの適正土壌酸度は、「ソラマメの基礎知識」を参考にしてください。
下記に石灰質肥料の施用目安量を記載しますので参考にしてください。
肥料 | 施用目安量(1平方メートル当たり) |
---|---|
苦土石灰 | 150g |
植え付けの2週間前には堆肥・元肥を散布する!
植え付けの2週間前には堆肥と元肥をしましょう。主に下記の肥料を使用します。
下記にそれぞれの施用目安量の例を記載しますので参考にしてください。また、散布したあとはよく耕して馴染ませましょう。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(1平方メートル当たり) |
---|---|
堆肥 | 2kg程度 |
緩効性化成肥料 | 30g程度 |
土作りが終わったら畝立て
土作りが終わったら畝立てをしましょう。1畝1条(1列)の場合の畝の大きさ、形状は下記を参考にしてください。
畝幅 | 畝間 | 畝高 | 条間(列間) | 株間 |
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80〜100cm | 100cm | 10〜15cm | – | 30cm程度 |
また、畝立てが終わったら、シルバーもしくは黒色のポリフィルムでマルチ張り(マルチング)をしましょう。マルチ張りをすると、地温・土壌水分が保ちやすくなります。また、雑草の防止、病害虫の防除にも効果的です。
黒色ではなく、反射性の強い銀色のマルチ(シルバーマルチ)を使うとアブラムシの飛来防止に役立ちますよ!また、アルミ蒸着テープを張り巡らせるのもおすすめです。
ソラマメ栽培、プランター・鉢植えの場合は?
ソラマメは、プランター・鉢植えでも栽培することができます。用意するプランター・鉢植えは高さ25cm以上のものを用意しましょう。底石を敷いて培養土を入れます。培養土については、一般的な野菜用の培養土で問題ありません。
最初の土作り以外の作業は基本的に露地栽培のときと同様です。ただし、露地栽培と違って雨に当たりづらいので水やり(潅水)はこまめにやる必要があります。
プランター栽培の詳しい方法については、こちらの記事を参考にしてください
ソラマメの播種(種まき)・育苗
ソラマメは、セルトレーやポットなどで育苗して本圃に植え付ける方法と本圃(実際に栽培する圃場)にそのまま播く直まきの方法があります。
セルトレーで育苗して植え付ける場合
セルトレーに播種をして育苗する方法を解説します。
セルトレーへの播種(種まき)は、植え付け予定日の15〜20日前くらいを目安にやりましょう。セルトレーは土の容量が多い72穴のものがおすすめです。
培土は、一般的な種まき用の培養土で問題ありません。
セルトレーにまくときは、1穴に1粒、種をまきましょう。培養土をセルトレーに充填したあと、種を押し込むようにしてまきます。ここで気になる点が2つあると思います。
- 植え付ける向き
- 植え付ける深さ
植え付ける向き
タネのおはぐろ(ヘソの部分)を斜め下に向けて、土に押し込みます。
植え付ける深さ
タネの頭部が見えるくらいの深さまで押し込みます。深まきすると、発芽率が悪くなりますので注意してください。
風などで土が動いたら、上から軽く土をかぶせてあげてください。種をまいたら、優しく水やりをしましょう。発芽するまで新聞紙や透明なポリフィルムをかけることで、保温・土壌の保水効果が高まり発芽率が良くなります。
播種後、5〜7日程度で発芽してきます。本葉が2〜3枚程度展開したら定植(植え付け)時期です。
ポットなどで育苗して植え付ける場合
ポットに播種をして育苗する方法を解説します。
ポットへの播種(種まき)もセルトレーと同様、植え付けの15〜20日前くらいを目安にやりましょう。ポットは一般的な3号(9cm)のポリ鉢などで構いません。培土は、種まき用の培養土で問題ありません。
ポットにまくときは、1鉢に2粒程度、種をまきましょう。種のまき方、管理の方法は、セルトレーのときと同様です。1鉢から2粒とも発芽した場合には、本葉が展開し始めたころに間引きして1つの苗にしてあげましょう。
播種後、4〜6日程度で発芽してきます。本葉が2〜3枚程度展開したら定植(植え付け)時期です。
直まきの場合
直まきの場合、畝に穴をあけて直接、種をまきます。穴の間隔は、上記で示した株間・条間の数値を参考にあけてください。直径5cm程度、深さ3cm程度の穴を掘り、種をまいていきます。マルチングしている場合は、マルチに穴を空けて掘りましょう。
1ヶ所につき、1〜2粒まきます。種をまいたら上から土を被せて種を隠し、軽く手で抑えてやります(覆土)。覆土が終わったら、優しく水やりをしましょう。
直まきの場合は、種子や発芽したての苗が鳥によって食べられたり、風で飛ばされる危険性があるので、不織布やワラなどのべた掛け資材で、畝全体もしくはマルチの穴が空いた部分を覆ってください。発芽してきたら、べた掛け資材を外して大丈夫でしょう。
発芽率をあげるためには?
発芽率を上げ、発芽のタイミングを揃える方法として、種を一昼夜、浸水させる方法があります。こうすることで、種の内部にしっかりと水分が染み込み、発芽のための条件が整いやすくなります。
ソラマメの植え付け
ソラマメの苗の植え付けは、11月上旬頃に行います。セルトレー・ポットで育苗した場合、15日〜20日程度で定植適期の苗が育ちます。
植え付けるときは、上記で示した株間・条間の数値を参考にマルチに穴をあけ、土を掘ってください。植え穴は苗に対して少し大きめでOKです。
ソラマメ栽培の管理作業(手入れ作業)
ソラマメ栽培の管理作業(手入れ作業)には、主に6つの作業があります。
- 水やり
- 芽かき(整枝)
- 追肥(施肥)・土寄せ・中耕
- 支柱立て・剪葉(倒伏防止対策)
- 除草・病害虫管理
水やり
乾燥が続く時期など、土壌が乾きやすい時期には適宜、潅水(水やり)を行ってください。ソラマメは、乾燥を嫌う植物なので、十分な土壌水分が必要です。乾きやすい土壌には、しっかりとマルチングをしましょう。ポリフィルムによるマルチングを嫌う方には、ワラなどの有機資材によるマルチングをおすすめします。
芽かき(整枝)
3月中旬頃になると、芽が複数育ち、枝(茎葉)がいくつも立つ状態となってきます。このころに、早く出てきた太くて良い枝を6本〜8本残して、ほかは枝元からハサミで切除するか、かき取るようにしましょう。
追肥(施肥)・土寄せ・中耕
生長が進むにつれて、株元の分岐部分が地上に現れ倒伏しやすくなってきます。そのため、土寄せをすることが必要です。ソラマメは、茎葉が伸びやすく倒伏しやすい作物のため、栽培期間中は2回〜3回程度、土寄せをしてあげます。
土寄せ・中耕
栽培期間中に2回〜3回、土寄せをしてあげましょう。タイミングの目安は「株元の分岐部分が地上に見えるようになってきたとき」です。土寄せの高さの目安は、株元の分岐部分が土で隠れる程度で十分です。クワなどで通路側の土をすくって株元にかけてあげましょう。
また、土寄せをする際に通路を耕す(中耕する)ことで除草や土壌への空気の供給につながるので、余裕があれば実施しましょう。
追肥(施肥)
追肥は、生長の様子をみて必要に応じて施しましょう。このとき、葉色(葉の色)を確認しましょう。葉色が薄く生長が遅い場合には追肥の必要性がありますが、葉色が適度に濃く生長が盛んな場合には追肥は必要ありません。
ソラマメは、空気中の窒素を自分の養分として吸収することができます。そのため、追肥をするとしても少量で様子を見ましょう。過繁茂(葉や枝が多くなりすぎて混む様子)にならないように注意が必要です。
追肥を行うときは、マルチをめくって畝の肩に肥料を散布します。施肥量は、下記を目安にソラマメの生長や土壌の肥沃度によって調整してください。肥料を施したら、まいた肥料が隠れる程度に肥料と土を混ぜ合わせるように軽く耕しましょう。マルチングをしている場合は、マルチをもとに戻します。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(畝の長さ1m当たり) |
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化成肥料 | 15g程度 |
ちなみに私は病害虫の防除と土壌水分の維持の観点から、マルチングしたままにすることが多いです。4月頃になり、地温が高すぎる状態が続くようであればマルチを剥がしてください。
支柱立て・剪葉(倒伏防止対策)
ソラマメは、茎葉が伸長しやすく放任するとどんどん上に伸びてきます。茎葉が伸びてくると、風などによる倒伏がしやすくなってきますので、倒伏防止のための対策が必要となります。対策の方法は、主に以下の2つです。
- 支柱立て
- 剪葉
支柱立て
風が吹いても倒伏しないように、支柱を立てて茎葉を支えます。手順は以下のとおりです。
- 支柱を畝の周りに立てていきます。このとき、間隔を空けすぎると支柱ごと倒れやすくなるので注意してください。
- 支柱と支柱を紐で結んで、畝の周囲を囲んでいきます。このとき、テープや紐など支えられるものであれば何でも構いません。銀色のアルミ蒸着テープを使うとアブラムシの飛来防止にもなります。
土寄せも倒伏防止対策になります。忘れずに行いましょう。
剪葉
枝が伸びすぎて、葉が茂るようになってきたら、枝を摘心し上部の葉を取り除きます(剪葉)。摘心する位置は、生長具合によって異なりますが、最初の着果部位から15〜20節程度、60〜70cmくらいの草丈になるようにすると良いでしょう。
除草・病害虫管理
放っておくと畝の周りに雑草が生い茂ってきます。雑草は、害虫生息の温床にもなるので、こまめに抜き取ることをおすすめします。小さい面積の場合は手や鎌で、広い面積の場合は背負式の草刈り機などで行うと良いでしょう。また、畝の通路に防草シートを敷くことや農耕地用の除草剤を使用することも有効です。
ソラマメの場合は、土寄せ・中耕で畝間を耕して雑草も除去すると良いでしょう。
病害虫と聞くと少し怖いですよね。しかし、病害虫に対して適切に防除することでまん延を防ぐこともできます。ソラマメの場合は、特に害虫であるアブラムシによる被害が多い作物です。防除対策としては、シルバーマルチを使ったり、殺虫剤(農薬)を散布したり、発見次第排除したりします。早め早めの対策が有効です。直まきする時、あるいは苗を定植する時に穴に浸透移行性の殺虫剤をまいておくのも有効です。
症状などと照らし合わせながら、適切な対処を行いましょう。「ソラマメ栽培の生理障害・病害虫管理」に生理障害、病害虫の対処方法をまとめました。
ソラマメの収穫
ソラマメは、播種後160日〜180日前後で収穫適期を迎えます。収穫適期の見極め方は、以下を参考にしてください。莢(サヤ)とマメの状態によって見極めることができます。
- サヤが下に垂れてくる(生育途中のときは、サヤが上を向いている)
- サヤの背筋が黒褐色になる
- サヤ全体の色が濃くなる
- サヤの産毛(うぶ毛)がなくなり、光沢が出始める
- マメの下の部分が黒褐色になってくる(おはぐろの状態)
収穫適期の幅は、5日〜1週間程度なので見逃さないように注意しましょう。ハサミで収穫適期となった莢(さや)から順に切り取って収穫しましょう。
ソラマメ栽培の生理障害・病害虫管理
ソラマメを栽培していると、いろいろなトラブルが発生します。しかし、適切な対処方法を知っていれば慌てる必要はありません。代表的な生理障害と病害虫への対処方法を説明していますので、参考にしてください(準備中)。