オクラは、野菜の中でも繊維質、ミネラル類(カロテン、カルシウム、リン、鉄、カリウムなど)、ビタミンA、B1、B2、Cが多く栄養価の高い野菜です。サラダなど生食だけはなく、煮物や天ぷら、和え物など和食の定番食材として浸透しています。
オクラは、高温性野菜かつ好光性であるため、特に夏場の作物として栽培されます。逆に寒さには弱いため、家庭菜園では夏野菜として栽培を楽しむことができる作物となります。
皆さんが想像されるオクラは、五角形のかたちをしているものかと思いますが、実は他にも様々な品種があります。たしかに市場に多く出回っている品種は五角形のものが多いですが、丸や八角のかたちのものもあります。また、色も黄色、緑、赤、白などさまざまです。
この記事では、オクラの基礎知識や栽培の方法の基本、重要事項、注意点などについて解説します。記事が長いため、目次を見て必要な部分から読み進めてください。
オクラの基礎知識
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格 (円/1粒) | 苗の価格 (円/1苗) | 収穫までの日数 (目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度 (pH) | 連作障害 | 発芽適温(地温) | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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オクラ | アオイ科 | アフリカ北東部 | ★★★★☆ | 0.7円〜5円程度 | 150円〜400円程度 | 開花後、約7日前後 | 全国 | 夏どり (気候によって収穫時期は前後) | 露地栽培 トンネル栽培 施設栽培 | 6.0〜6.5 | あり(2年〜3年) | 25〜30℃ | 20〜30℃ | 日なた | 50klx程度 |
オクラは、アオイ科トロロアオイ属の一年生植物です。原産地はアフリカ北東部(エチオピアなど)とされており、アフリカなどの熱帯気候では、多年草のものが多く何年も繰り返し果実を付けることができます。日本の場合は冬が越せないため、一年草となります。
オクラ栽培のポイント
- 高温、多日照の環境を好みます。光飽和点も十分に高いため、日当たりが良いところで栽培をしましょう。
- 耐寒性は弱く、10℃以下になると全く生育できなくなりますので栽培時期や気候、場所には注意しましょう。
- 比較的、土壌の乾燥にも強い作物ですが、乾燥しすぎると果実の肥大が悪くなりますので適宜潅水(水やり)をしましょう。土壌の多湿にも比較的耐える性質のため、土壌水分の管理が難しい露地栽培に向いている作物と言えます。
- 植え付け時は地温が上がり、霜が降りる心配がなくなった頃が良いでしょう。マルチングで地温を上昇させることも効果的です。
- 直まきの場合は、気温が15℃以上になってきた頃に播種(種まき)をすると良いでしょう。オクラは直根性(根がゴボウのようにまっすぐと伸びる)のため、直まきでの栽培に適しています。
- オクラの果実は、開花後7日前後で収穫するようにしましょう。収穫適期を過ぎると、繊維が発達してしまい食味や食感が悪くなります。
- 連作障害に注意しましょう。比較的連作に強い作物と言われていますが、何度も同じ土壌で育てるとネコブセンチュウや苗立枯病を引き起こし、途端に生長が悪くなります。また一度連作障害が発生してしまうと正常な土壌に戻すことは大変ですから、連作障害が起きないように輪作や土壌消毒をしっかりしましょう。
オクラ栽培のスケジュール
発芽適温 | 生育適温 |
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25〜30℃ | 20〜30℃ |
各地域ごとに合わせて考えたオクラ栽培スケジュールです。前提として、外気温が発芽適温、生育適温に近い気温になる栽培スケジュールを選択して、栽培をしてください。育苗をポットで実施する場合は、上記の直まきのスケジュールよりも早く苗を作ることができるため、収穫時期を前倒しすることができます。
関東の直まきの場合は、晩霜のおそれがなくなる5月頃に播種をして、7月下旬〜9月頃に収穫するイメージです。ポットを使用して苗を育苗する場合は、1ヶ月程度早めに播種・育苗をして、収穫時期も前倒しすることができます。
その他の地域(北海道、九州など)では、上記の発芽適温、生育適温に適合している期間を選んで、播種、栽培をすれば問題はありません。
オクラ栽培の流れ・栽培方法
オクラ栽培の流れは、下記のようになります(関東の露地栽培の目安)。下記は、播種をして収穫まで栽培する流れとなっています。先述したように、地域によって気候などが変わりますので、そのときに合った栽培スケジュールを立てて、同じような流れで栽培してください。
- 植え付け(播種)の2週間前
- 4月〜5月頃
- 本葉2枚、3枚展開した頃
- 5月〜6月頃
- 5月〜10月頃
- 6月〜10月頃
オクラ栽培の土作り・畝立て
美味しいオクラを収穫するためには土作りが重要です。土作りは肥料を馴染ませるため、2週間前には行いましょう。オクラは、弱酸性の土壌を好む植物です。土壌酸度があまりにも酸性側に傾いてしまうと、適正土壌酸度から外れてしまうため、石灰質肥料(苦土石灰など)による土壌酸度のアルカリ性側への矯正が必要となってきます。
直まきの場合も、種まきの前に同様のスケジュールで土作りをしましょう。
- 植え付けの2〜3週間前石灰質肥料の散布、耕うん
植え付け(定植)予定の2〜3週間前に苦土石灰や炭酸カルシウム(炭酸石灰)などをまいて、耕しましょう。
- 植え付けの1週間前
植え付けの2〜3週間前には石灰質肥料を散布する!
植え付けの2〜3週間前には石灰質肥料を全面散布しましょう。主に下記の石灰質肥料を使用します。
- 苦土石灰
- 炭酸カルシウム(炭酸石灰)
一般的に、カルシウム(石灰)とマグネシウム(苦土)を補給し、酸性土壌を矯正するために苦土石灰を施用することが多いです。炭酸カルシウムは、マグネシウム(苦土)が含まれていませんので、硫酸苦土などのマグネシウムが含まれている資材と合わせると効果的です。
どちらの資材も土壌を酸性からアルカリ性寄りに矯正してしまうので、使用する際には土壌酸度(pH)にも気を使ってください。オクラの適正土壌酸度は、「オクラの基礎知識」を参考にしてください。
下記に石灰質肥料の施用目安量を記載しますので参考にしてください。
肥料 | 施用目安量(1平方メートル当たり) |
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苦土石灰 | 130g |
植え付けの1週間前には堆肥・元肥を散布する!
植え付けの1週間前には堆肥と元肥をしましょう。主に下記の肥料を使用します。
下記にそれぞれの施用目安量の例を記載しますので参考にしてください。また、散布したあとは軽くすき込んで馴染ませましょう。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(1平方メートル当たり) |
---|---|
堆肥 | 2kg程度 |
緩効性化成肥料 | 100g程度 |
油かす | 100g程度 |
土作りが終わったら畝立て
土作りが終わったら畝立てをしましょう。1畝2条(2列)の場合の畝の大きさ、形状は下記を参考にしてください。
畝幅 | 畝間 | 畝高 | 条間(列間) | 株間 |
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90cm | 60cm | 5〜15cm程度 | 60cm程度 | 50cm程度 |
また、畝立てが終わったら黒色のポリフィルムでマルチ張り(マルチング)をしましょう。マルチ張りをすると、地温・土壌水分が保ちやすくなります。また、病害虫の防除にも効果的です。
オクラ栽培、プランター・鉢植えの場合は?
オクラは、プランター・鉢植えでも栽培することができます。オクラは直根性で土深くに根を張っていきますので、用意するプランター・鉢植えは高さ30cm以上のものを用意しましょう。底石を敷いて培養土を入れます。培養土については、一般的な野菜用の培養土で問題ありません。
最初の土作り以外の作業は基本的に露地栽培のときと同様です。ただし、露地栽培と違って雨に当たりづらいので水やり(潅水)はこまめにやる必要があります。
オクラの播種(種まき)・育苗
オクラは、ポットなどで育苗して本圃に植え付ける方法と本圃(実際に栽培する圃場)にそのまま播く直まきの方法があります。
ポットなどで育苗して植え付ける場合
苗を植え付けする場合は、まずポットに種まきをして苗を育てる必要があります。
ポットへの播種(種まき)は、植え付けの30〜40日前くらいを目安にやりましょう。ポットは一般的な3号(9cm)のポリ鉢などで構いません。培土は、種まき用の培養土で問題ありません。
ポットにまくときは、1鉢に4〜5粒程度、種をまきましょう。直径5cm程度、深さ1cm程度の穴を掘り種をまきます。種をまいたら上から土を被せて種を隠し、軽く手で抑えてやります(覆土)。オクラの種子は「嫌光性種子」と呼ばれ、発芽に光は必要としません。覆土が終わったら、たっぷりと水やりをしましょう。
発芽適温、育苗の適温にするためにはビニールトンネルや育苗ハウスを準備しましょう。発芽適温、生育適温が高めの植物ですので、温度を保ってあげることが発芽、育苗の成功に大きく関わってきます。
播種後、4〜5日程度で発芽してきます。本葉が出始めたら、間引き作業を行います(間引きについては次章を参照)。本葉5〜6枚程度になったら定植(植え付け)時期です。
直まきの場合
直まきの場合、マルチングした畝に穴をあけて直接、種をまきます。穴の間隔は、上記で示した株間・条間の数値を参考にあけてください。穴をあけた場所を2〜3cmほど掘り、そこに4〜5粒ほど種をまきます。種をまいたら上から土を被せて種を隠し、軽く手で抑えてやります(覆土)。覆土が終わったら、たっぷりと水やりをしましょう。
直まきの場合も用心のため、ビニールトンネルをかけておくことをおすすめします。気温が高く安定する時期になってきたら、ビニールトンネルに穴をあけたりサイドを開けたりするなど換気をするようにしてください。本葉5〜6枚程度になったら、ビニールトンネルをすべて外してしまって問題ないでしょう。
発芽率を上げるコツは?
オクラの発芽率を上げるコツは、播種する前に種子を一晩水に浸けておくことです。オクラの種子は、硬実種子と呼ばれ固く守られており、発芽しにくいという特徴があります。浸水させることで種子内部に水が含ませることができ、発芽がしやすくなるというわけです。他にも硬実種子はありますが、発芽しやすくするための工夫として「薬品で種皮を溶かす」「種皮の一部を傷つける」などの方法があります。
オクラの間引き
オクラの間引きのタイミングは2回あります。ポットで育苗する場合も直まきの場合も同様の考え方です。
間引き1回目:本葉2枚のとき
本葉が2枚になったときに、1鉢(1穴)当たり2本の苗が残るように間引きします。間引きするときは、根から引っこ抜いてしまって構いません。ただし、残す株にダメージが及ばないように抜いてあげましょう。抜くのが難しい場合は剪定バサミなどで切ってあげても良いでしょう。
間引き2回目:本葉3枚のとき
本葉が3枚になったときに、1鉢(1穴)当たり1本の苗が残るように間引きします。この頃になると根がしっかりと張ってきていますので、無理に引っこ抜くと残す株にダメージが及びます。そのため、2回目の間引きは剪定バサミなどで根元部分から切除してしまいましょう。
オクラの植え付け
オクラの苗の植え付けは、5月〜6月頃に行います。ポットで育苗した場合、30日〜40日程度で定植適期の苗が育ちます。
植え付けのタイミングを遅くすると徒長気味になってしまいますので注意しましょう。植え付けるときは、上記で示した株間・条間の数値を参考にマルチに穴をあけ、土を掘ってください。植え穴は苗に対して少し大きめでOKです
また、植え付けのときには1株に1つの支柱を立てたり、畝の四方に支柱を立てておきましょう。オクラは風などによって倒伏しやすい(倒れてしまいやすい)植物であるため、誘引できるようにしておきます。植え付け直後は草丈がそこまで伸びていませんから気にしなくても問題ありませんが、草丈が伸び果実を付け始めると姿勢が悪くなりやすいので、そのようなときに誘引してあげます。
オクラ栽培の管理作業(手入れ作業)
オクラ栽培の管理作業(手入れ作業)には、主に4つの作業があります。
- 追肥(施肥)・土寄せ・水やり
- 整枝・摘葉・誘引
- 除草・病害虫管理
追肥(施肥)・土寄せ・水やり
追肥は、下記のタイミングで実施してください。オクラは、果実をどんどん付けていくので栄養不足にならないように定期的な追肥が必要です。水やりについては、主に乾燥しやすい夏場に水分を多く必要としますので、乾いていれば適宜潅水をしてあげてください。ポリフィルムや敷わらでマルチングをしておくと土壌水分を保ちやすくなります。
追肥1回目:植え付けの20日前後
マルチをめくって、畝の肩から通路にかけて肥料を散布します。施肥量は、下記を目安にしてください。肥料を施したら、まいた肥料が隠れる程度に通路側の土を寄せて畝を盛り上げます(土寄せ)。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(畝の長さ1m当たり) |
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化成肥料 | 15g程度 |
このとき、フィルムによるマルチを剥いでしまってもかまいません。また、敷わらなどの有機マルチ資材を株元に敷いてあげることも有効です。その圃場、気候で、どのやり方が合っているか、いろいろ試してみてください。
ちなみに私は病害虫の防除と土壌水分の維持の観点から、マルチングしたままにすることが多いです。
追肥2回目から:前回の施肥(追肥)から15日〜20日前後
1回目と同様のやり方で追肥します。施肥量は、下記を目安にしてください。土寄せも忘れずに行いましょう。
肥料(全種類施用) | 施用目安量(1株当たり) |
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化成肥料 | 15g程度 |
追肥の目安・樹勢の管理
追肥は、植物の樹勢(株の勢い、強さ)を見ながら施すのが最も効果的です。オクラの場合は、花が頂部(生長点)に近いところで咲いている場合は栄養不足、頂部から少し下の部分で咲いている場合は適正であると簡易的に判断できます。
栄養不足に陥っていそうであれば、果実を少し早めに収穫したり、追肥の間隔を狭めたりしてみましょう。
整枝・摘葉・誘引
オクラは、どんどん上に伸びて節が増えていきます。オクラは節の部分から花が咲きますので、節が増える毎に花・果実が増えるということになります。
このとき節からはもちろん葉も生長、形成されます。葉が多くなってくると、風通しが悪くなり病害虫に侵される原因となります。また、オクラの生長に必要な葉はすべてではありませんので不要になった葉から切除してきます(整枝・摘葉)。
整枝・摘葉するときは、収穫節から1〜2節の葉は残す
下葉は、全てを切除するのではなく「収穫節から1〜2節の葉は残す」ことを心がけてください。収穫節とは果実ができている節の中で、最も収穫に近い(株の下の方にある)果実がなっている節のことを指します。その節から下1〜2節程度は切除せずに残し、その下の枝・葉を切除しましょう。
草丈が伸びてきたら適宜、誘引を
草丈が伸びてくると、どうしても倒れやすくなってしまいます。そのため、植え付けのときに立てておいた支柱などを用いて倒伏を防止してあげます。誘引紐などを用いて、支柱と茎をくくりつけます。このとき、誘引紐を8の字状にしてくくりつけると株が安定します。下記はトマトの写真ですが、同様にやってみてください。
除草・病害虫管理
放っておくと畝の周りに雑草が生い茂ってきます。雑草は、害虫生息の温床にもなるので、こまめに抜き取ることをおすすめします。小さい面積の場合は手や鎌で、広い面積の場合は背負式の草刈り機などで行うと良いでしょう。また、畝の通路に防草シートを敷くことや農耕地用の除草剤を使用することも有効です。
オクラの場合は、追肥・土寄せのタイミングで畝間を耕して雑草も除去すると良いでしょう。
病害虫と聞くと少し怖いですよね。しかし、病害虫に対して適切に防除することでまん延を防ぐこともできます。オクラの場合は、特に害虫であるハスモンヨトウやアブラムシによる被害が多い作物です。防除対策としては殺虫剤(農薬)を散布したり、発見次第排除したりします。植え付けのときに施用できる殺虫剤もあります。
症状などと照らし合わせながら、適切な対処を行いましょう。「オクラ栽培の生理障害・病害虫管理」に生理障害、病害虫の対処方法をまとめました。
オクラの収穫
オクラは、開花後5日程度で収穫適期を迎えます。大きさにして5〜8cm程度の果実が一番美味しい頃合いでしょう。収穫するときには、根本から1cmくらいの果梗部分(果実が付いている枝の部分)を収穫ハサミなどで切りましょう。果梗部分は硬いので手でもぎ取ろうとすると株にダメージを与えたりもしますので、ハサミで切除するのが良いです。また、果実の根本で切除してしまうと鮮度が落ちやすくなってしまうので、果梗部分から切除しましょう。
オクラ栽培の生理障害・病害虫管理
オクラを栽培していると、いろいろなトラブルが発生します。しかし、適切な対処方法を知っていれば慌てる必要はありません。代表的な生理障害と病害虫への対処方法を説明していますので、参考にしてください(準備中)。