そもそも農地とは?
そもそも農地とは、どんな土地を指すのでしょうか?
ここで、農地とは、「耕作の目的に供される土地」のことで、農用地とも言い、日本では下記の分類に分けられています。
農用地区域
市町村が定める農業振興地域整備計画において指定されています。(農業振興地域の整備に関する法律)
甲種農地
甲種農地とは、第1種農地の条件を満たす農地であって、市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地等、特に良好な営農条件を備えている農地のことを言います。(以下、農地法施行令)
乙種農地
乙種農地とは、以下の3種類の農地のことを指します。
- 第1種農地
10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等、良好な営農条件を備えている農地 - 第2種農地
市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 - 第3種農地
市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地
市街化区域と市街化調整区域〔区域区分〕とは?
市街化調整区域とは、市街化を抑制する地域のことで、住宅や施設などを積極的に作って活性化を行わない地域のことを言います。
市街化区域とは、市街化を活性化する地域のことで、住宅街や商業施設などがある市街化された区域、またこれらを概ね10年以内で市街化を進める区域のことを言います。
例えば、東京都は、都心に近いところは殆どなく、八王子市、青梅市、あきる野市、町田市のような市町村には市街化調整区域が多く存在しています。
生産緑地とは?
生産緑地地区とは、市街化区域内において農地等を計画的に保全することにより、農林漁業との調整をとりつつ、良好な都市環境の形成を図ることを目的とした都市計画の制度です。
生産緑地に指定されると、税制面での優遇措置として、固定資産税及び都市計画税が宅地並み課税から農地課税に変わるほか、納税猶予を受けることができます。
一方で、所有者は生産緑地を農地として管理することが義務付けられ、公共施設等を設置する場合や、買取申出により行為制限が解除された場合などを除き、農用地以外での土地利用に制限がかかることになります。
では 農地を売りたいとき、農地売買は自由に出来るのでしょうか? また、要件はあるのでしょうか?
農地(農用地)は、自給率を高め、食料を生産する農業を守るための大切な基盤であり、営農活動を前提としています。
また、近年、耕作放棄地が増加しており、採草等がしっかり行われないと、周りの農家の方にも迷惑がかかります。このため、権利の移動や農地以外への転用については、農地法により制限され、自由に農地売買や賃貸借はできなくなっています。
具体的には、農地法第3条で、
「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない」
と制限されています。
具体的にはどんな制約要件なのでしょうか?
農地法第3条2項で、下記の場合は許可をすることが出来ないと定められています。
具体的には、
- 1号 効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められない場合
- 2号 農地所有適格法人以外の法人による権利取得の場合
- 3号 信託の引受により1号に掲げる権利が取得される場合
- 4号 耕作等の事業に必要な農作業のに常時従事すると認められない場合
- 5号 下限面積制限に抵触する場合
- 6号 農地等を転貸する場合
- 7号 地域における農地等の農業上の効率的·総合的利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
は、許可することが出来ないと定められています。
効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められない場合とは?
上記の許可要件で特にポイントとなるのは、1号になります。効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められるかどうかはどう判断されるのでしょうか?
これに対し、国の通知である、処理基準第三·三(二)によると、判断要素として「機械」「労働力」「技術」の三点を掲げています。
つまり、
- 耕作に必要な機械を、所有している、また今後確保する予定があるかどうか
- 農作業に必要な労働力を現在、また未来に確保する見通しがあるか
- 農作業に従事する者が技術を有しているかどうか
で判断されると言えます。
他の要件は?
また1号以外のポイントとなる要件としては、
- 2号 農地所有適格法人以外の法人による権利取得の場合
- 5号 下限面積制限に抵触する場合
- 7号 地域における農地等の農業上の効率的·総合的利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
になります。
2号では、農地所有適格法人以外の法人は、そもそも農地(農用地)を取得できないと規定するものです。
「農地所有適格法人とはどんな法人なのか」については、下記を参照ください。
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/nouchi_seido/pdf/nouchi_taihi.pdf
5号は、就農して耕作を行う農地面積の合計が、50アール(北海道では2ヘクタール)未満の場合は、許可を受けることができないとするものです。
これは、農地の少ない農家に小さな農地(農用地)を取得させ、就農・営農させることが、農地の効率的活用および農業生産力維持·増進の観点からみて問題があり、農業政策上好ましくない、と考えられるためです。できれば農用地を集積しての就農を国は促しています。
では、いざ、売りたい、賃貸したい場合は?
上記の制約条件、ハードルを貸し手がクリアしている場合、所有している農地を賃貸すること、また借りる側は貸借することが可能になります。
また、農地売却する側として、後継者不足ややむを得ない事情で、耕作放棄地や休耕地になるのを避けるべく、今まで営農していた農園を手放す必要に迫られることもあります。買い手が上記をクリアしている場合、農地売却することが可能になってきます。
この場合、その農地(農用地)の種類や、内容が重要になってきます。具体的には、市街化区域なのか、市街化調整区域なのか、市街化区域の場合、生産緑地なのかどうか、また市街化調整区域でも、農用地区域の場合、甲種農地なのか、乙種農地なのか、また地目は何か、立地はどうか、等々しっかり把握することが重要です。その農地が住宅街や駅に近く、土地の地目を農地から宅地に変更、いわゆる農地の転用の可能性がある場合は、農業委員会に問い合わせるのも良いかも知れません。
また、上記を把握された場合は、一度不動産業者に農地の査定や、契約、また登記について、書類、手続き等を相談することも考えられます。
農地買取業者はあるの?
2020年現在、民間でも、イエチカドットコム等、農地買取業者も複数存在しています。この場合、その農地をどのような目的で買取しようとしているのか、具体的には、太陽光発電事業のため、また資材置場や駐車場、更には、農用地を宅地等に転用する農転目的を前提としている場合、などなど様々な目的があるため、目的をしっかり把握した上で連絡するようにしてください。
また、市町村が行っている農地バンクに登録して、農地を必要としている方とマッチングしてもらう方法も有効です。是非、該当する市町村の役所や農業委員会に問い合わせしてみてください。
相続の場合は?
相続によって、農地・農園を受け継ぎ、登記した場合で、農地売却・賃貸借したいケースもあるかと思います。この場合は、下記に、相続したい場合と、相続したくない場合など、登記手続・農業委員会への届け出について詳しく記載しましたので、是非ご一読ください。
まとめ
このように、農地の売買·賃貸借には農業委員会の許可が必要になります。このため、まずは農地のある地元の農業委員会に問い合わせることが大切です。
また、農地に、農家として自分が住むための家を建てることは不可能ではありませんが、農地のまま無断で建ててしまうことは出来ません。農業委員会に農地転用の届出が、また、建築確認申請も必要になってきます。この場合も、まずは地元の農業委員会や役場の建築指導課へ相談すること、またその自治体の知事の方針やプランなども一読しておくことが大切です。