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施設栽培(ハウス栽培)

プロ農家向け!イチゴの水耕栽培に必要な栽培システム、栽培方法の解説

水耕栽培でイチゴが実っている様子 施設栽培(ハウス栽培)

苺(いちご)は、ビタミンCが豊富で、甘くて美味しいものも増えてきたことから、ご家庭の食卓にもよく並ぶようになった人気のフルーツです。また、生産者の目線で考えると、市場単価が他の作物と比較して高く、ブランド化もしやすい作物です。最近では、高設栽培や隔離栽培などが普及し、イチゴ栽培の取り組みを新たに始める農家も多くなってきています。

以前のイチゴ栽培では、「土作りが何よりも大事」とされてきましたが、先述したように高設栽培や隔離栽培、水耕栽培などが普及し、土作りが不要となってきて参入が昔よりもしやすくなったことは間違いないでしょう。

そこで今回は、土を使わずに栽培ができるイチゴの水耕栽培について、水耕栽培の基礎から営農向けのイチゴの水耕栽培システムまで幅広く解説します。網羅された記事になりますので、必要な箇所から読み進めてください。

イチゴ、およびイチゴの栽培の基礎知識については、下の記事にも記載しておりますので参考にしてください。

また、家庭菜園レベルで水耕栽培を検討されている方は、下の記事に水耕栽培システムの種類や自作の方法、注意点などをまとめていますので参考にしてください。

プロ農家がイチゴを栽培するための栽培方法の基本

プロ農家が新たにイチゴ栽培、生産に取り組む場合、初めに考えなければならないことはどのような栽培方法、システムを導入するかです。栽培方法によって、必要な資材や初期導入コスト、ランニング費用も異なってきます。また、栽培方法によっては規模拡大が難しかったり、コストがかかりすぎてしまうなどのデメリットが生じてしまう場合があります。

まずは、イチゴを栽培、生産する際の栽培方法、システムの概要について理解しましょう。

屋内か、屋外かの違い 露地栽培と施設栽培

まず、栽培環境の違いによって、栽培方法やシステムが異なってきます。イチゴは、もちろん露地栽培も施設栽培(ハウス栽培)でも栽培、生産することが可能です。プロ農家として安定した生産を目指す場合には、施設栽培(ハウス栽培)を選択することが現実的でしょう。下記にイチゴにおける露地栽培と施設栽培の違い、比較についてまとめましたので、参考にしてください。

項目露地栽培施設栽培(ハウス栽培)
初期費用安い高い
運営費用安い高い
生育制御しづらい露地よりはしやすい
長所・初期費用、運営費用が安く抑えられる・温湿度、CO2施用により、生育のコントロールがある程度可能
・加温、気温の維持ができるため、冬場(早ければ11月下旬ころから)収穫可能
・ミツバチ、マルハナバチの放飼により受粉の成功率を高められる
・温湿度を管理できるので、病害虫管理が比較的しやすい
短所・生育が自然環境に大きく左右される
・病害虫管理、予防がしづらい
・果実が汚れ、秀品率が下がるケースがある
・土壌の養分(肥料)が雨水などによって溶脱してしまう
・ハウス建設、環境制御装置の導入などで初期費用が高額になる可能性がある
・潅水(水やり)をほぼ毎日しなければ生長に悪影響を及ぼす
・肥培管理を適切に行わなければ塩類過剰(養分過剰)に陥る

施設栽培における栽培方法の種類

先述した観点から、農家として中規模〜大規模に栽培、生産したい場合には、ハウスによる施設栽培が望ましいことがおわかりいただけたと思います。それでは、施設栽培をするとして、どのような栽培方法の種類があるのでしょうか?栽培方法は、使用する培地や施肥の方法などによって大きく異なってきます。下記に施設栽培で導入される主な栽培方式をまとめましたので、参考にしてください。

普通土耕栽培と液肥栽培

まず、栽培方法は大きく2つに分けることができます。

普通土耕栽培とは、普通一般に行われている、土を使って栽培する方法です。あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ここでは液肥栽培との区別をはっきりとさせるため、普通土耕栽培と呼ぶことにします。

液肥栽培とは、施肥に液肥(液体肥料)を用いて栽培する方法です。こちらもあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ここでは普通土耕栽培と区別するため、液肥栽培と呼ぶことにします。

養液土耕栽培と養液栽培の種類

養液栽培とは、液肥栽培の一種で、植物の生長に必要な養水分を液体肥料(液肥)として与える栽培方法です。養液栽培は、培地の有無や培養液の供給方法などによって、複数の種類に分けることができます。

養液土耕栽培とは、普通土耕栽培と同様に土を使用して栽培をしますが、植物に生長に必要な養水分を液体肥料(液肥)として与える栽培方法です。養液栽培には含めず、液肥栽培の一種として考えられることが多いです。

液体肥料による施肥は、潅水(水やり)と同時に施肥することが多く(潅水同時施肥技術)、液肥が混入された水を培養液と呼びます。

「養液土耕栽培」と「養液栽培」は、全くの別物となります。

  • 養液土耕栽培:土耕栽培を基本として、潅水と施肥の全部、もしくは一部を培養液の供給で代替する栽培方法
  • 養液栽培:培地を用いない、もしくは培地として土を用いない栽培方法

養液栽培は、培地を用いない水耕栽培、噴霧耕、培地を用いた固形培地耕があります。

  • 水耕栽培
    • 流動法
      • DFT:湛液水耕方式
      • NFT:薄膜水耕方式
    • 静置法
      • 保水シート耕(毛管水耕方式の一種)
      • パッシブ水耕(毛管水耕方式の一種)
    • 噴霧耕
  • 固形培地耕
    • ロックウール耕
    • ヤシ殻(ヤシガラ)耕
    • 砂耕
    • れき耕
    • ピートモス、バーグ など

イチゴの栽培方法の違い まとめ

さまざまな栽培方法を紹介してきましたが、いま一度、主流なイチゴの栽培方法を施設栽培に絞って、下記の表にまとめてみました(地上部の環境制御装置の有無などは加味していません)。どの栽培方法を選択するか、参考にしてください。

項目普通土耕栽培(慣行栽培)養液土耕栽培養液栽培
平地栽培/高設栽培平地栽培平地栽培高設栽培
初期費用水耕栽培より安く、普通土耕栽培より高い高い
運営費用普通土耕栽培と同じくらい。場合によっては減肥などができる。高い
労力土作りや施肥作業が必要である追肥として培養液を供給するので、労力を減らせる土作りや追肥という概念がなく、栽培期間中に培養液を切らさないようにしておけば良いため、労力を減らせる
長所・初期費用を抑えることができる・培養液の精密な制御により、収量と品質を向上させることができる
・培養液による栽培管理が可能となるため、普通土耕栽培に比べて栽培の再現性が高い
・潅水、施肥に費やしていた時間、労力を削減でき、管理作業など他の作業が充実する
・土壌を使用することで、根に対する緩衝能が高まり、培養液濃度が植物への影響が出にくい
・植物の根圏に対して、局所的に施肥ができるため、普通土耕栽培よりも肥料の無駄遣い(溶脱)が少ない。環境にも良い
・平地栽培となるため、地面に近いところでの作業となり、作業性が悪い
・培養液の精密な制御により、収量と品質を向上させることができる
・土壌微生物や有機物などの影響が少なく、普通土耕栽培に比べて栽培の再現性が高い
・水耕栽培の場合、土壌を使用しないため、根圏の環境を制御しやすい
・土壌伝染病や連作障害の発生など土耕特有の問題が起こりにくい(固形培地耕の場合、土壌消毒は必要)
・土壌がない場所や農業に適さない場所においても栽培が可能である
・太陽光型の施設栽培だけではなく、人工光型の施設栽培(ビルの一室など)も可能である
・高設栽培を実現でき、人間の腰から胸くらいの高さで作業ができるため、作業性が上がる
短所・養液栽培や養液土耕栽培のように潅水同時施肥ができないので、施肥や潅水作業が必要となり労力がかかる・培養液の供給装置などの導入による初期費用が発生する
・培養液の供給装置などのランニングコストが発生する
・水によく溶ける肥料や液体肥料を使用する必要があるが、これらは普通の肥料と比較して高い
・培養液の供給装置や培地システム(ベッド)などの導入による初期費用が発生する
・固形培地耕の場合、一作ごとなど定期的に培地を交換する必要がある
・培養液の供給装置などのランニングコストが発生する
・水によく溶ける肥料や液体肥料を使用する必要があるが、これらは普通の肥料と比較して高い
・綺麗な原水が必要である
・根に対する緩衝能が土耕栽培よりも低く、培養液濃度の管理が重要であり、少しでもミスをすると植物に多大な影響を与えてしまう
・培地や培養液に病原菌が含まれていると最悪の場合、圃場全体に影響が及んでしまう
・培養液が供給されなくなった場合、植物の枯死に繋がる

実はイチゴの水耕栽培は普及していない

ここまで、イチゴの栽培方法の種類について詳しく解説してきましたが、実は営農としての水耕栽培は普及していません。理由としては、下記のことが考えられますが、最も大きな理由は費用と培養液管理の難しさかと思われます。

  • 培養液の供給装置や培地システム(ベッド)などの導入による初期費用が発生する
  • 培養液の供給装置などのランニングコストが発生する
  • 水によく溶ける肥料や液体肥料を使用する必要があるが、これらは普通の肥料と比較して高い
  • 綺麗な原水が必要である
  • 根に対する緩衝能が土耕栽培よりも低く、培養液濃度の管理が重要であり、少しでもミスをすると植物に多大な影響を与えてしまう
  • 培地や培養液に病原菌が含まれていると最悪の場合、圃場全体に影響が及んでしまう
  • 培養液が供給されなくなった場合、植物の枯死に繋がる

ですが、水耕栽培はクリーンなイメージがあることから、観光農園やカフェ・レストランなどの屋内での栽培に使われている事例もあります。この記事でもイチゴも栽培できる水耕栽培システムを紹介しますので、興味のある方はご覧ください。

イチゴの最主流養液栽培 固形培地による高設栽培

近年、普及が進んでいる養液栽培の中でも最も主流の栽培方法をご紹介します。

イチゴの場合は、固形培地を用いた高設栽培が人気であり普及が進んでいます。上記分類では、固形培地耕に分類され、ヤシガラやピートモス、バーグ、ロックウールなどの固形培地を使用して栽培します。

「高設」の名の通り、地面付近での栽培ではなく、ベッドを人の胸ほどの高さまで上げてそこに培地を用意し栽培します。そうすることで作業性が上がるだけではなく、植物の生長にも良くなることがわかっています。また、近年ではイチゴの観光農園が人気で、高設栽培のほうがクリーンかつ、いちご狩りがしやすいという利点から高設栽培システムを導入する農家も多いです。

高設栽培については、下の記事にて詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

そもそも水耕栽培とは?

水耕栽培(Hydropinics)とは、養液栽培の一種で、固形培地を使用しないで栽培する手法のことを指します。水耕法、水栽培などとも呼ばれます。

イチゴの水耕栽培と聞くと、上記写真のような、いちごの観光農園を思い出す方も多いかもしれません。実は、上記写真のような栽培方法は、水耕栽培と呼ばず、高設栽培(養液栽培における固形培地耕の一種)と呼びます。

今一度、栽培方法の種類について整理しましょう。液体肥料(液肥)を使用した栽培方法を液肥栽培と呼びます。液肥栽培は、栽培に使用する培地や方法によって、下記のような分類に分けることができます。これも厳密に定義されたものではありませんので、あくまで参考程度に覚えておきましょう(シートも固形培地だという論者もいたり、いろいろあります)。

日本養液栽培研究会の記事も参考にしてください。考え方は、当記事と同様かと思います。

  • 養液栽培
    • 水耕栽培
      • 流動法
        • DFT:湛液水耕方式
        • NFT:薄膜水耕方式
      • 静置法
        • 保水シート耕(毛管水耕方式の一種)
        • パッシブ水耕(毛管水耕方式の一種)
      • 噴霧耕
    • 固形培地耕
      • ロックウール耕
      • ヤシ殻(ヤシガラ)耕
      • 砂耕
      • れき耕
      • ピートモス、バーグ など
  • 養液土耕栽培

液肥栽培は、大きく2種類のカテゴリーに分けることができます。培地として土を用いて液肥と潅水併用あるいは培養液で無機養分を供給する方法を「養液土耕栽培」、培地として土を用いずに作物の生育に必要な養水分を、水に肥料を溶かして養液(培養液)として与えて栽培する方法を「養液栽培」と呼びます。

ペットボトルでの栽培や水耕栽培システムにおいても、一部固形培地を使うことがありますが、これらは補助的な役割なので本記事では水耕栽培として取り上げます。

水耕栽培は、養液栽培の一種で培地に土などの固形物を用いず、養液(培養液)の供給のみによって栽培する方法です。植物は、養分、水分、場合によっては酸素を培養液から吸収することで生長します。

水耕栽培の長所、短所は以下のように考えられます。

  • 長所
    • 土耕栽培のような連作障害が起きない
    • 生育スピードが土耕栽培に比べて速く、再現性の高い栽培ができる
    • 定植、収穫等の作業も比較的綺麗で楽に行うことができる
  • 短所
    • 作物の生理ストレスへの緩衝作用が弱く、生理障害が起きやすい
    • 水伝染性の病害への緩衝作用が弱い
    • 土耕栽培よりも肥培管理(培養液管理)が重要であり、常に植物と培養液濃度に注視する必要がある

先述したとおり、水耕栽培にもいくつか種類があり、主に下記3種類の方法が家庭菜園・プロ農家問わず主流となっています。それぞれの特徴をまとめましたので、栽培方法を検討するときに参考にしてください。コストについてはピンキリのため、ここでは取り扱いません。

方式DFTNFT保水シート耕
培地の有無なしなしなし
根のある場所培養液中培養液中・空気中湿気中(透水シートなど)・空気中
養分の供給源培養液培養液培養液
水分の供給源培養液培養液培養液
酸素の供給源培養液空気中空気中
長所栽培中の濃度や組成の変化が緩やか。培養液の温度管理がしやすい、酸素欠乏症が起こりにくい酸素欠乏症が起こりにくい
短所作物によっては酸素欠乏症が起きやすい培養液の濃度・成分変化が起きやすい根圏に当たる培養液の濃度・成分変化が起きやすい
栽培作物の例ミツバ、レタス、キャベツなどの葉菜類
トマトキュウリ、イチゴなどの果菜類
コマツナ、ホウレンソウなどの葉菜類
トマトなどの果菜類
サラダナ、葉ネギなどの葉菜類
トマト、キュウリ、イチゴなどの果菜類

DFT(湛液水耕)

DFTは、Deep Flow Techniqueの頭文字で、日本語では湛液水耕法やDFT水耕と呼ばれます。栽培ベッド(培地)を水平に保ち、培養液を比較的大量に貯めたベッドに苗を浮かべ、培養液を循環させて栽培する方式です。

ベッドの培養液の量が多いことから、栽培中の培養液濃度や組成の変化が起こりづらくなっています。しかし、高温時には溶解酸素量(溶存酸素量とも呼ばれる、水中にどれだけの濃度の酸素が溶存しているかを指す指標)が不足してしまい、作物によっては酸素欠乏症が起きやすいものもあります。

NFT(薄膜水耕)

NFTは、Nutrient Film Techniqueの頭文字で、日本語では薄膜水耕法やNFT水耕と呼ばれます。栽培ベッド(培地)を緩やかに傾斜させ、培養液を少量ずつ流しながら栽培する方式です。

培養液を薄く(少なく)循環させることによって、空気中の酸素をより多く溶解させるとともに、液面上の植物の根が酸素を空気中からも取り込むことができ、水耕栽培で起きやすい「酸素欠乏」を防ぎやすい方式となっています。また、培養液の冷却や加温(温度管理)が低コストでできる一方、培養液の濃度や成分の変化が起こりやすいため、培養液管理が難しいとされています。

保水シート耕

毛管水耕法は、苗のパネルの下に遮根シート、吸水性・親水性のある不織布を敷き、培養液を吸わせて、そこから植物の根に培養液を供給する方法です。栽培ベットはDFTと同じように水平にして、不織布の一部が培養液に浸かるように設置します。

NFT水耕と同じように根が空気に触れていることから、酸素欠乏症が起きづらい栽培方式となっています。また、植物への水分供給量のコントロールが可能となり、作物の生育コントロールや食味の向上なども期待できます。

イチゴの水耕栽培 栽培の基礎知識

まずは、イチゴの植物としての特性や基本的な栽培知識をおさらいしましょう。下の記事にイチゴと栽培方法の基礎知識(家庭菜園の土耕栽培をベースにしています)をまとめていますので、参考にしてください。

水耕栽培においても、摘葉(葉の摘み取り)、ランナー取り、受粉作業、摘果(不要な果実の摘み取り)、病害虫管理なども同様の方法で問題ありません。また、ベランダなど屋外での栽培においては、病害虫にも注意しましょう。特に、ワタアブラムシやイチゴネアブラムシなどのアブラムシ類、チャノホコリダニハダニなどのハダニ類、アザミウマ類など、害虫には注意が必要です。

プロ農家向けイチゴの水耕栽培について

家庭菜園レベルの栽培では、ホームハイポニカやペットボトル栽培、発泡スチロールを使った栽培など独自の方法でもある程度うまく生長させることができます。しかし、しっかりと収益を上げ、安定した栽培、生産を実現するためには、相応のシステム、栽培方法の導入が必要となってきます。

また、営農のためには、育苗施設の確保や育苗時の給液管理ができる設備なども必要になってきます。水耕栽培システムの培養液制御装置に目が行きがちですが、地上部環境制御装置なども必要になってきますので、トータルで考えると初期投資が莫大となります。他にも考慮すべき点はありますので、それらを総合的に考えて水耕栽培システムを導入するか検討しましょう。

下記にイチゴ向けとして発売されている水耕栽培システムと培養液の管理について、まとめましたので参考にしてください。ただし、実際に導入する際には各メーカーの知見を伺うことは必須でしょう。

観光農園向けのイチゴ水耕栽培システム ガイアイチゴの森

ガイア イチゴの森は、施設栽培のパイオニアである渡辺パイプから発売されている観光農園に最適な立体多段式水耕栽培システムです。栽植本数が最大で23,000本/10a(土耕栽培の約3倍、1ヶ所に2株定植した場合)の栽培密度で、面積は土耕栽培の1/2とコンパクトにしながらも、収量は1.5倍(既存イチゴ栽培システムと比較)まで増やすことができます。

綺麗でクリーンな水耕栽培システムのため、観光農園に最適です。

水耕栽培用の液体肥料(液肥)について

水耕栽培においては、土耕栽培(プランターや庭植えなど土を使った栽培)とは、肥料のやり方が異なります。土耕栽培では、栽培を始める前に元肥を施して土作りをし、栽培途中に肥切れが起こらないように適宜、追肥を施します。

しかし、水耕栽培では、土を扱いませんので、元肥という考え方はなく、植物がある程度育ったら、追肥にあたる培養液を常に供給する必要があります。土耕栽培の元肥・追肥による肥培管理以上に、しっかりと培養液の濃度を管理することが必要です。

培養液は、水耕栽培用の液体肥料を使用して培養液の供給装置などから吸入させます。水耕栽培用の液体肥料には、ハイポニカやハイポネックス、OATハウス肥料が有名です。家庭菜園向けの内容となりますが、下記のページにて、水耕栽培用の肥料をまとめていますので参考にしてください。

イチゴは、肥料やけしやすい作物のため液体肥料の濃度には十分に気を使ってください。生長が悪いからといって、培養液濃度を上げることは望ましくありません。

EC値は、ハンディタイプのEC計もしくは配管に取り付けるタイプのECセンサーがあります。農家として安定した生産を実施する場合には、培養液の制御装置にECセンサー・pHセンサーが付属させて、コントロールする仕組みを導入することが必要ではないかと思います。

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イチゴ苗の準備の考え方

営農の場合は、ウイルスフリー苗を親株として子株を増やすか、子株を購入することが多いと思います(最近では種から育てられる品種「よつぼし」などもあります)。親株をポットやプランターなどに植えて、ランナーを伸ばして新しい苗を増やしていきます。新しい苗のことを「子株」と呼び、親株から近い順に「太郎苗(一番苗)」、「次郎苗(二番苗)」、「三郎苗(三番苗)」と呼んだりします。

ランナーを伸ばしてどんどん子株を増やし、ポットなどに植え付けして苗を増やしましょう。水耕栽培の場合、当初は本圃(水耕栽培システムのベッド)ではなく、別の場所で育苗する必要が出てくると思います。

【閑話休題】イチゴの「実」と「種」、「ランナー」

イチゴの「実(果実)」と「種(種子)」。皆さんは、正しく知っていますでしょうか?私たちが食べるイチゴのいわゆる果肉部分は「花托(もしくは花床)」と呼ばれる部位で、「実」ではありません。花の根元部分が生長して食用の果肉となるのです。

イチゴの表面のつぶつぶは、いかにも「種」に見えますが、これが「実」です。この「実」の中に「種」が入っているのです。

ランナーは、苗から出てくる「茎」で、その先には新芽が育ち、地面に新芽が根付くと新しい株となります(子株と呼ばれるものです)。地面を這うように伸びることから、「ほふく茎」「ほふく枝」とも呼ばれます。イチゴは、親株からランナーを伸ばして、子株を増やしていくことで次の栽培用の苗を確保します。

もちろん子株からもランナーは伸びますので、一つではなく連なって何株も増やすことができます。親株につながっている子株から順番に、「太郎苗」「次郎苗」「三郎苗」なんて呼んだりもします。基本は「次郎苗」や「三郎苗」を次の栽培に使用します。

イチゴの水耕栽培 家庭菜園向けについては?

今までご紹介してきた栽培システム、栽培方法はあくまでプロ農家向けのものです。家庭菜園向けには、もっとユニークで手軽に栽培できるキットがあったり、水耕栽培システムを自作したりすることもできます。家庭菜園向けには、別途記事を執筆しておりますので、参考にしてください。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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