青色申告には、届出をすることによって現金主義の特例が使えますが、現金主義とはどのような制度なのでしょうか。ここでは個人事業主の農家が使える現金主義について説明します。
現金主義とは
現金主義とは、収入や経費を実際に現金が動いたタイミングで記帳する会計方法です。現預金が動いたときに記帳するだけなのでわかりやすく、簡易的に会計処理が行えます。
一般的に確定申告で農業所得を計算する場合には、白色申告でも青色申告でも収入は収穫基準、必要経費は発生主義で計上する必要があります。
収穫基準とは、農作物を収穫した時点で収入を計上する必要があり、実際に入金や販売をしていなくとも収益として計上する必要があります。現金主義であれば、実際に入金があった日に収入として計上することができます。
発生主義とは、物を買った時やサービス等を受けた時点で費用を計上する必要があります。例えば、農機具が壊れて12月に修理をしたが支払いは翌年の1月10日にした場合。発生主義では修理が完了した時点で必要経費として計上する必要があります。しかし現金主義では支払いをした日1月10日必要経費として計上することになります。
現金主義による所得計算の特例を受けられる条件
現金主義での確定申告ができる人は、下記の2つすべてを満たしている必要があります。
- 小規模事業者(その年の前々年分の所得+専従者給与が300万円以下)であること
- その年の3月15日まで(その年に農業を始めた人は事業開始から2か月以内)に、「所得税の青色申告承認申請書(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続書」を提出している人
現金主義のメリット
現金主義のメリットは、とにかく会計処理が簡単なこと
- 現預金が動いた日に収入・費用を計上すればよいので会計処理が簡単
- 農産物や肥料・農薬等の棚卸しが不要
現金主義のデメリット
現金主義のメリットは主に4つ。特別控除額が少ないことや、家計簿的な簡易的な処理となるため、実際の農作物にかかるもうけがいくらになるのかわかりにくくなることがあげられます。また青色申告者のメリットといわれる収入保険は現金主義の青色申告者は棚卸しをしないため、加入することができません。
- 青色申告特別控除が10万円
- 収入保険に加入できない
- 収益と費用の計上のタイミングずれるため、本来の経営状況と異なることがある
- 貸倒金が必要経費として計上できない
まとめ
現金主義での確定申告は、会計の知識がなくとも簡単に申告が可能で、青色申告の10万円の特別控除を受けることができます。
確定申告するだけなら、確かに簡単な方法ですが、期間損益が正しくできないので経営判断の資料としては使えません。収益と経費の期間を一致させることで、事業の「もうけ」がわかるので、収支の期間を合わせる一般的な収益基準、発生主義での計上も検討してみてください。

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