中古で農機具や軽トラなどを買った場合の耐用年数は、短くすることができます。ここでは中古資産となる対象の資産や、耐用年数の計算方法について詳しく説明します。
減価償却と耐用年数について
まずは減価償却(げんかしょうきゃく)と耐用年数について説明します。
たとえば新品のトラクターを100万円で購入したとしましょう。しかしこの金額全部を今年の収益からマイナスすることはできません。なぜなら、このトラクターは今年だけでなく来年も再来年もつかっていくものだからです。
そのためこのトラクターは資産として管理し、この資産を使える期間で、按分して経費にしましょうというのが減価償却という考え方です。といっても使える期間なんて、途中で壊れるかもしれないしわかりませんよね。そこで国で使える期間をきめています。これが税務上の耐用年数です。税務上の耐用年数は、国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表で確認することができます。
しかしこれは新品で購入した場合の耐用年数で、中古資産の場合は使用期間が短くなる可能性もあるため、実際に使える期間を見積することで耐用年数を短くすることもできます。
中古資産の耐用年数について
中古の農業用機器や軽トラなどの資産を購入した場合、一定の条件を満たせば法定耐用年数を使わず、自分で見積もりした使用年数での耐用年数で償却することが認められています。
ここからはその対象となる資産や試算方法について説明します。
対象となる資産
- 使用期間が1年を超える1台10万円以上の建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの中古で購入した資産
- 取得した資産の価格が、同じ製品を新品で購入する場合の価格の半額以下であること
購入価格が1台10万円以上20万円未満の資産の場合は、購入した年から3年間で均等に償却する一括償却資産として管理することもできます。また青色申告を行っている個人事業主や中小企業は、30万円未満の資産を全額経費にする「少額減価償却資産の特例」をつかうこともできます。
中古資産の耐用年数
中古資産の耐用年数は、以下の方法から自分で選ぶことができます。
- 法定耐用年数
- 使用期間の見積もりによって算出した耐用年数
- 簡便法によって算定した耐用年数
中古資産の耐用年数の計算方法
中古資産は使用期間の見積もりによって算出した耐用年数で償却できるとされていますが、使用期間を見積もるのは難しいので、法定耐用年数を使わない場合は簡便法で求めるのが一般的です。簡便法は、その中古資産の法定耐用年数と経過年数を使って求めます。
経過年数について
経過年数とはその資産が製造されてから、その中古資産を取得した時までに経過した年月ことです。新品で購入するときにはその資産の製造年月日は使いませんが、どれだけの期間使ったかは客観的に証明するのが難しいので製造年月や、軽トラなどは初年登録(検査)年月を使って求めます。
機械などの製造年月は側面や裏側に記載されていることもありますが、メーカーによっては記号等に置き換えられていることもあります。型番などがわかれば購入したメーカーのサイトで製造年月を記載しているところも多いので、そちらを使って製造年月を調べましょう。
トラクターは、後輪のホイールに年式が書かれている場合があるのでそちらでも確認できます。製造年月日がわかったら経過年数を求めましょう
耐用年数の求め方
経過年数がわかったら、簡便法をつかって耐用年数を求めます。まずは法定耐用年数を調べましょう。農業用機械は7年、軽トラは4年です。法定耐用年数より経過年数が大きいか小さいかで計算方法がかかわります。
経過年数の条件 | 簡易法の計算式 |
---|---|
法定耐用年月より経過年月のほうが大きい場合 | 中古資産の耐用年数=法定耐用年数×0.2 |
法定耐用年月より経過年月が少ない場合 | 中古資産の耐用年数=法定耐用年数-(経過年数×0.8) |
いずれの場合も1年未満は切り捨て、計算期間が2年に満たない場合は2年が耐用年数となります。
計算シュミレーション
計算方法がわかったところで、中古のトラクターを1台 50万円で購入した場合を想定して計算シュミレーションしてみましょう。
新品で購入した場合の価格を調べる
まずは、その中古資産を新品で購入した場合の価格を調べましょう。新品の金額が100万円以下であれば、法定耐用年数を使って償却します。100万円をこえる場合は、経過年数の計算をします。
簡易法で耐用年数を計算する
中古で買ったトラクターの製造年月を調べましょう。トラクターの法定耐用年数は7年です。購入した日が2024年12月の場合、製造年月が2017年12月以降であれば法定耐用年数を超えているといえます。
経過年数が法定耐用年数を超えている場合
例1:購入日 2024年12月 製造年月 2015年4月の場合 経過年数は 2015年4月ー2024年12月=9年8カ月
法定耐用年数が7年のため経過年数が法定耐用年数を超えているので、法定耐用年数×0.2を使います
法定耐用年数(7年)×0.2=1年4ヵ月 計算結果が2年に満たないので中古トラクターの耐用年数は2年です
法定耐用年月より経過年月が少ない場合
例2:購入日 2024年12月 製造年月 2020年2月の場合 経過年数は 2024年12月-2020年2月=4年10ヵ月
法定耐用年数を超えていないので、法定耐用年数-(経過年数×0.8)を使って計算します。
法定耐用年数(7年)ー(経過年数4年10ヵ月×0.8)=法定耐用年数(84ヵ月)-経過年数(46.4ヵ月)=3年1ヵ月
計算結果の1年未満は切り捨てするためこの中古トラクターの耐用年数は3年です。
簡易法を使って耐用年数を短くするメリット
中古資産は、簡易法で計算すると、耐用年数が法定耐用年数より短くなります。中古資産は法定耐用年数でも償却することができるますが、耐用年数が短くなるとどんなメリットがあるのでしょうか。
減価償却は短い年数で償却しても、長い年月で償却しても所得が変わらなければ、支払う税金のトータル金額は一緒なので節税効果があるわけではありません。
耐用年数を短縮するメリットは、短縮した期間は、所得税が少なくなり、その税金分が現金として手元に残るので、資金繰り(キャッシュフロー)が良くなります。また償却資産税の評価額が早く償却することで評価額が下がるので、節税や免税になることもあります。
たとえば上の例2の中古のトラクターであれば、7年で償却するものを3年で償却することになるので、1年あたりの償却額が増える、経費が増えることになるので購入してから3年間は所得が少なくなるので税金は少なくなります。しかし4年目以降は経費とならないため、所得から控除できないため所得が多くなり税金が上がります。
ただし、所得が少ない場合は所得より経費が大きくなり赤字になると白色申告では赤字分は繰越できないため、節税効果が得られないので、資金繰りや今後の利益の予測も考えて中古資産の耐用年数を使うか検討しましょう。
20万円以下で使える一括償却資産、青色申告者が使える少額資産の減価償却の特例、償却資産については下記で詳しく書かれているのでこちらも参考にしてください。
税法や法の解釈などは、変わる可能性があります。
実際に申告する際には、国税庁のHP等で確認し不明な点は最寄りの税務署や税理士に相談して申告しましょう。