10万円以上で購入した農業用の建物やビニールハウスなどの設備、トラクターなどの機械等は固定資産として減価償却費を計算する必要があります。ここでは農業によく使われる道具やビニールハウスなどの償却年数は何年になるのか、わかりやすく説明します。
減価償却費と耐用年数について
まずは減価償却(げんかしょうきゃく)と耐用年数について説明します。
たとえば新品のトラクターを100万円で購入したとしましょう。しかしこの金額全部を今年の収益からマイナスすることはできません。なぜなら、このトラクターは今年だけでなく来年も再来年もつかっていくものだからです。
そのためこのトラクターは資産として管理し、この資産を使える期間で、按分して経費にしましょうというのが減価償却という考え方です。といっても使える期間なんて、途中で壊れるかもしれないしわかりませんよね。そこで国で使える期間をきめています。これが税務上の耐用年数です。税務上の耐用年数は、国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表で確認することができます。
減価償却の対象資産となるのは、時間の経過とともに価値が下がるもので、土地や借地権などは対象外です。
ビニールハウスの耐用年数は?
ではビニールハウスの耐用年数は何年でしょうか。国税庁の耐用年数表にはビニールハウスという名前での資産名では記載がないので、構造的に考える必要があります。
構築物か器具及び備品か
ビニールハウスにも種類があるので、一律に何年とはいえません。まずはそのビニールハウスが「構築物」なのか「器具及び備品」なのかによります。
構築物とは、建物以外の土地の上に定着する建造物、工作物のことで例えば塀や、橋、看板などを指します。構築物に該当するビニールハウスは、基礎工事をしっかりおこない、地面にしっかり固定して移動や解体などが用意にできないものです。
一般的なビニールハウスは、土にパイプをさして固定しているものが多く、容易に解体や設置ができるようになっているものが多いですが、このようなタイプのものは「器具及び備品」になります。
骨格部分の材質は何か
ビニールハウスには鉄骨や、プラスチックパイプが使われることが多いですが、骨格の部分の材質が何かによっても償却年数が変わるので、骨格の部分が何かも確認する必要があります。
構造物の場合のビニールハウスは、金属製であれば耐用年数14年、木造であれば耐用年数5年、金属でも木造でもない場合はその他のものとなり、耐用年数は8年となります。
器具及び備品のビニールハウスは、金属製であれば耐用年数10年、金属以外であれば耐用年数5年となります。
ビニールハウス耐用年数一覧
上記のことをまとめると下記のとおりとなります。
種類 | 構造又は用途 | 骨格が金属製 | 骨格が木造 | 骨格の材質が 金属・木材以外 |
---|---|---|---|---|
構築物 | 農業用 | 14年 | 5年 | 8年 |
器具及び備品 | 11前掲のもの以外のもの | 10年 | 5年 | 5年 |
主な農業用機械の耐用年数
トラクターや耕運機などの農業用の機械の償却年数は、以前は細かく分かれていましたが、2008年(平成20年)の税制改正により、耐用年数は農業用機械は一律7年に変更されています。
その他農業用資産の耐用年数
建物
農業用の倉庫や作業場などの建物の償却年数は下記のとおりです。構造によって耐用年数が変わります。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造・合成樹脂造 | 農業用倉庫、作業場 | 15年 |
木骨モルタル造 | 農業用倉庫、作業場 | 14年 |
れんが造・石造・ブ ロック造 | 農業用倉庫、作業場 | 34年 |
簡易建物 | 掘立造、仮設 | 7年 |
構築物
構築物は、ビニールハウスの他には農業用の井戸、用水路、貯水そう、かんがい用配管、暗きょなどがあります。構造や用途により耐用年数が違います。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
コンクリート造、れんが造、石造、ブロック造 | 果樹棚又はホップ棚 | 14年 |
コンクリート造、れんが造、 石造、ブロック造 | 用水路、かんがい用配管、農用井戸、貯水そう、あぜ等 | 17年 |
主として金属造のもの | 農用井戸、かん水用、散水用配管等 | 14年 |
主として木造のもの | 果樹棚又はホップ棚、斜降索 道設備、稲架等 | 5年 |
土管を主としたもの | 暗きょ、農用井戸、かんがい用配管等 | 10年 |
上記以外のもの | 薬剤散布用又はかんがい用塩 化ビニール配管等 | 8年 |
中古資産の償却について
上記の法定耐用年数は新品で購入した場合です。高額な農機具は中古で買うこともあるかと思います。中古品でも、取得で購入した場合の取得価格の半額以上の場合は新品と同じ耐用年数になります。
それ以外の場合は、耐用年数は「使用可能な年数を見積もった年数を見積もること」となっていますが、それが困難な場合、簡便法として下記の方法で耐用年数が求められます。
計算式は、法定耐用年数-(経過年数×0.8)=耐用年数
耐用年数より経過年数が過ぎいる場合には、耐用年数×0.2になります。1年未満は切り捨て、計算結果が2年に満たない場合は2年になります。
一括償却資産について
10万円以上20万円以下の資産は、上記の法定耐用年数に関わらず、購入した年から3年間で均等に償却する一括償却資産として管理することができます。
法定耐用年数より短く設定されているので、早く経費として認められる、償却資産税の対象外となる、管理が簡単なるなどのメリットもあります。青色申告を行っている個人事業主や中小企業は、30万円未満の資産を全額経費にする「少額減価償却資産の特例」もあり、青色申告を行っている場合には、どちらかを選ぶことができます。
少額減価償却資産の特例について
少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている個人事業主、従業員500人以下の中小企業であれば、30万円未満の資産を取得した場合、全額経費に計上することができる制度です。(限度額 取得価格の合計300万円まで)
経費が通常より多く計上することにより、課税所得額が減るため資産を取得した年の税金を安くすることができます。ただし一括償却資産と違うのは、償却資産税の対象となるので償却資産を多く持っている場合は課税対象となることがありますので、その点も考慮してどちらかを選ぶとよいでしょう。
減価償却の計算について
資産を購入した場合には、資産の管理台帳や減価償却の計算などが必要になっていきます。市販のソフト以外にも、市町村役場などでも計算できるシートなども容易されているので、そちらを活用しましょう。
減価償却の基本やおすすめのソフトについては下記で説明していますのでこちらも参考にしてください。
税制や耐用年数などは変更します。新しい資産を購入した時や悩んだ時には
税務署や税理士などに確認してから申告しましょう。