農業で収入を得た場合に確定申告は必要なのでしょうか。ここでは、農業で収入を得た人を対象に確定申告が必要な人や、確定申告をしなかった場合にどうなるかなどわかりやすく説明します。
確定申告が必要な人とは
農業を個人で営んでいる人は、基本的に「個人事業主」となります。兼業や副業で農業している場合も同様です。個人事業主は、事業所得(収入から経費を引いた金額)を得ている場合確定申告が必要です。
- 専業農家は1月1日から12月末までの農業を含むその他の所得が48万円以上の場合
- サラリーマンなど兼業や副業で農家を行っている人で、年末調整をほかの職場で行っている場合には、農業を含むその他の所得が20万円以上の場合
- 公的年金を受けている場合は、年間の年金が400万円以下の場合は確定申告は不要ですが、農業収入を含むその他の所得が20万円以上ある場合
確定申告しないとどうなる?
計算が面倒だから、大した金額じゃないしバレないと思って、確定申告しないとどうなるのでしょうか。
納税は国民の義務です。税務署や国税庁は、取引先の取引状況や税務調査、銀行口座の動きなどの他知人からの情報提供などで無申告者がいないか調査しています。今年バレなかったからといっても来年、再来年に無申告がバレたら、税務署は7年間遡って税金を徴収することができます。
申告すべき所得があるにもかかわらず確定申告をぜず税金を納付しないと、支払うはずだった税金の他に「延滞金」や「無申告加算税」が追加で徴収されます。また悪質と思われる場合には「重加算税」が課せられることもあります。
無申告加算税は本来払う税額×15%(50万円を超える部分には20%)、重加算税は本来支払う税額×40%を追加で支払う必要があります。しかも税金の延滞金の税率は高く(原則納期限から2か月は7.3%、2か月以降は14.7%)、何年も支払っていないとかなりの高額になります。無申告はかなりリスクが高いといえます。
税務署には、知らなかったは通用しません。もし申告が漏れてしまっているようであれば自主的に申告をすれば、追徴課税が少なくなる可能性もあります。延滞金だけでもばかになりません。忘れていたらすぐ申告しましょう。
また所得する必要がなくても収支報告書は記載して、領収書や納品書などの書類の保管も必要です。時間が経つと経費にできる領収書をなくしたり、記憶があいまいになってしまうこともあります。できるだけ毎月、最低でも3か月に1度は領収書等を整理し記帳しておくとよいでしょう。
また義務がなくとも税務申告することで、税金が戻ってきたり、国民健康保険や年金が安くなったりすることもあります。詳しくは下記の記事で説明していますので、気になる方はこちらも参考にしてください。
農業における事業所得とは?
事業所得についてもう少し詳しく説明しましょう。間違えやすいのが所得と収入です。収入とは農作物を売って得た金額などで、所得は収入から農作物を作るためにかかった費用(経費)を除いた金額です。
簡単にいうとキャベツを50万円でJAに売った金額が収入、肥料や苗などの購入代や畑の使用料などの経費が30万円かかっていれば、収入50万円-経費30万円=所得20万円となります。
ではここからは農業における収入と経費にはどんなものがあるのか説明します。
農業の収入について
農業の収入は、農作物の販売で得られる金額の他に、自分で消費した農作物や農業で得た補助金や助成金も対象です。
収入の区分 | 内容 |
---|---|
販売金額 | 農作物の販売金額 |
家事消費等 | 自分で消費した農作物や贈答した農作物、 雇った人への現物支給分 |
雑収入 | 補助金、助成金、農作業の受託収入、受取共済金、出荷奨励金など |
農業の経費について
白色申告、青色申告により経費にできる費用は多少異なりますが、収支内訳書(農業所得用)の区分で説明します。
経費の区分 | 内容 |
---|---|
雇人費 | 従業員(臨時含む)の給与等 |
小作料・賃借料 | 農地の賃料、農機具等のレンタル料等 |
減価償却費 | 10万円以上の農業用建物・車両・機械 の減価償却費(別途計算) |
貸倒金 | 販売価格が回収できなくなった場合の損失分 |
利子割引料 | 農業用に借りたお金の利息 |
租税公課 | 農業資産の固定資産税・自動車税 水利費、JAや農業組合の組合費 |
種苗費 | 種子、苗、種芋の購入代金 |
素畜費 | 子牛、子豚、ひななどの購入代金及び種付料 |
肥料費 | 肥料の購入代金 |
飼料費 | 畜産牛などに与える飼料代金 |
農具費 | 10万円未満の農機具の代金 |
農薬衛生費 | 農薬・除草剤等の購入代金、共同防除の負担金 |
諸材料費 | ビニール、むしろ、縄、針金などの農業用諸材料の代金 |
修繕費 | 農舎、ハウス、農機具、軽トラの修理・維持費用 |
動力光熱費 | 農機具や軽トラの燃料費、農業用に使った電気料、水道料、ガス代 |
作業用衣料費 | 農作業用の作業服、靴、手袋、カッパ等 |
農業共済掛金 | 農作物の共済掛金、 価格損失補てん金や補助金及び交付金を受けるための負担金 |
荷造運賃手数料 | 出荷の梱包費用、運賃、出荷組織(JAなど)に払う手数料 |
土地改良費 | 土地改良事業の費用や客土費用 |
雑費 | その他上記に当てはまらない農業に使った諸費用 |