有機肥料として庭や畑によく使われる鶏ふんはほうれん草の肥料として使えるのでしょうか。ここでは、ほうれん草栽培に鶏ふんはおすすめなのか、鶏ふんの特性も踏まえ、使い方の基本についても説明します。
ほうれん草栽培に鶏ふん肥料は有効か
結論としては、「ほうれん草栽培の肥料として鶏糞肥料はおすすめ」といえます。
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。ほうれん草の栽培は元肥にゆっくり効果の出る緩効性肥料を使いますが、鶏糞などの有機肥料はゆっくりと効果が続きゆっくり成長させることでえぐみが少ないほうれん草ができるといわれます。
肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
また最近では肥料も高騰していますが、鶏糞は安価なことから農家でも注目されている肥料です。
ほうれん草栽培での鶏ふん肥料の使い方
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
元肥は種まきか苗の植え付け時に行います。乾燥鶏糞なら植え付けの1か月前、発酵鶏糞であれば1週間前までに行います。
- 牛糞などの堆肥を、1㎡あたり1kg程度をまいてよく施します。
- 堆肥を撒いてから1週間ほどたってから、苦土石灰を1㎡あたり100gと元肥として発酵鶏ふん300g~500g程度施肥し、土とよく混ぜて耕してから畝を立てます。
- 2から10日ほどたってから、種をまくか苗を植えつけます。
土壌と肥料について
よいほうれん草を作るには、土づくりが大切です。ほうれん草は、土壌が酸性に傾いていると生育が悪くなります。ほうれん草の適性な土壌酸度は、6.5〜7.0です。酸度計や酸度測定キットを使用して、土の酸度を測りましょう。一般的に野菜を栽培している畑などでは、土は酸性に傾くことが多いため、苦土石灰を使って酸度調整をします。アルカリ性に傾いている場合には、ピートモス(無調整)や、硫安を使って調整しましょう。
酸性に傾いているときは、堆肥と苦土石灰を使います。しかし堆肥と石灰を一緒にまくと堆肥に含まれている窒素がアンモニアとして逃げてしまうので、1週間ほどあけましょう。
鶏糞には、石灰(カルシウム)が多く含まれています。他の肥料と同量に石灰をまくと、アルカリ性に傾きすぎる可能性があるため注意しましょう。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞肥料には色々な製品がありますが、大まかには以下の通り「乾燥鶏糞」、「醗酵鶏糞」、「炭化鶏糞」のように分類することができます。状況に応じて、適したものを利用するようにしましょう。
乾燥鶏糞
乾燥させた鶏糞です。醗酵(発酵)処理や炭化処理をしていないため、肥効が相対的にゆっくりであることが特徴です。また、安価であることも特徴のひとつです。未発酵の状態のため、元肥として使いましょう。相対的に臭いは強めですので、住宅街では要注意です。
醗酵鶏糞
醗酵(発酵)処理をした鶏糞です。完熟していない鶏糞を散布すると、分解にともなってアンモニアガスが発生し、植物の生育障害を引き起こすことがあります。醗酵(発酵)処理済みの鶏糞では、植物の生育障害を引き起こす可能性を小さくできるほか、臭いも大幅に緩和されている特徴があります。
東商が販売する「醗酵鶏ふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=4.3-2.5-2.1となっています。そのほか、マグネシウムや微量要素である亜鉛なども含まれています。菜園、庭木、花壇、鉢、プランターなどで幅広く利用できます。用途としても、元肥、追肥、寒肥、お礼肥など幅広く利用できます。粉状のほか、粒状あるいはペレット状(ペレットタイプ)もあります。
炭化鶏糞
鶏糞を高温処理し、炭化させたものが炭化鶏糞です。したがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。一般に、高温処理された炭化鶏糞では、チッソ成分をあまり含まないので、灰分として施すと良いでしょう。
その他 ほうれん草におすすめの肥料
有機肥料
ほうれん草には鶏糞が有効なことは説明しましたが、このほか米ぬか、油粕、ぼかし肥料などの有機肥料もつかうことができます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。またほうれん草専用の肥料も多く販売されていますので、初心者の人にはおすすめです。
ほうれん草の肥料の過不足について
肥料は、与えれば与えるほどよく育つというわけではありません。特にほうれん草は、生育の後半に窒素が効きすぎると、シュウ酸や硝酸塩といった成分がふえ、えぐみや渋みがでて味に影響がでます。緑色が濃い場合は肥料が多すぎる可能性もあります。
またほうれん草は育てていると葉が黄色く変色したり、生長が遅い場合は肥料が不足している場合もあります。ただしほうれん草は、病気や害虫などによっても葉が黄色くなることもありますので、病害虫にかかっていないか確認してから、追肥をするとよいでしょう。