耕運機には動力源として、ガソリン、軽油、ガス、電気を使うものがあります。そのうち、ガスを使うものを「ガス耕運機」などとよぶことがあります。ガスとして、鍋やバーベキューでも使われる家庭用ガスボンベ(カセットガス)を利用します。量販店やスーパーなどで手軽に入手できるのが魅力です。
この記事では、ガス耕運機について比較しながら紹介します。
ガス耕運機のメリットとデメリット
ガス耕運機のメリットには、次のようなものがあります。
- 燃料であるガスボンベ(カセットガス)の入手が手軽で、交換も簡単
- 燃料がガソリンである場合と比べて、オイルの腐食による気化器の詰まりや点火プラグの汚損が少なくメンテナンスが楽
- 電動耕運機と比べて、最大出力(馬力)が大きいためパワフルな耕運が可能で、さらに別売のアタッチメントを利用することで耕運だけでなく各種管理作業も可能
一方のデメリットには、次のようなものがあります。
- 製品の種類が少なく、細かなニーズに対応しにくい場合がある
- 燃料がガソリンである場合と比べて、広い面積を耕すことは困難
- 電動耕運機の電気代と比べて、ガスボンベ(カセットガス)の燃料代が高くつきがち
ガス耕運機一覧と性能比較
ガス耕運機の種類は、あまり多くありません。広く知られているメジャーな製品は、次の通りです。価格や性能を比較しながら、ご自身の状況に合ったものを選ぶとよいでしょう。
ホンダ
ホンダのガス耕運機は、業界初のガス耕運機であった三菱「エコ・ラテ」とほぼ時を同じくして発売され、今に至るまで根強い人気があります。ホンダ製品は、デザインや機能性が洗練されていて、分かりやすく使いやすいという特長があります。また、ガス耕運機を含むHondaパワープロダクツ(※1)には、「賠償責任保険(施設所有管理者特約)」が無償で付帯されるもの嬉しいポイントです(対人1億円、対物1,000万円と上限として、賠償金を補償するという内容です)。
(※1)Hondaパワープロダクツ:耕運機、除雪機、発電機、蓄電機、電動カート、刈払機、芝刈機、草刈機、ブロワ、水ポンプ、高圧洗浄機、動力噴霧機など
ピアンタ FV200(型式名FBCJ)
ピアンタ(Pianta)という名称は、イタリア語の「植物」から名付けられたそうです。車軸ロータータイプの耕運機で、重量も軽いので、手軽な使い勝手を求めている人にぴったりといえます(専用のキャリーボックスを利用すれば、耕運爪が自動車などを汚すことなく持ち運びできます)。畑の土質や状態によっても異なるとされていますが、ガスボンベ(カセットガス)1本で連続運転時間最長60分というのは、他製品と比べてもかなり長いです。握ると動き、放すと止まる安心安全なスロットルレバーを採用しています。
アタッチメントも充実しています。着脱もアジャスターピンにより、ピンを耕運機から外すことなくスムーズに行えます。畝立てや中耕培土に用いるパープル培土器、除草に用いるスパイラルローター(イエロースパイラルローター)、整地に用いるスーパー整地レーキ、保管に用いるボディーカバーなどがあります。
タイプ | 車軸ローター |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1055×485×990 |
重量(kg) | 20 |
最大出力(馬力) | 1.5 |
耕運幅(mm) | 350 |
連続運転時間(分) | 60 |
対応面積目安(坪) | ~30 |
希望小売価格(税込) | 109,780円 |
サ・ラ・ダCG FFV300(型式名FBDJ)
フロントロータリータイプの耕運機です。フロントロータリータイプは耕運爪が前方にあるので、足元を気にせず安心して作業を行うことができます。その他「ピアンタ FV200」と比べると、重量や耕運幅も増加しています。また、ARS(アクティブ・ロータリー・システム)という内爪で正転、外爪で逆転に土をかき回す独自の同軸・同時正逆転ロータリーが採用されています。したがって、かたい畑でもムラなくしっかり耕すことができます。
アタッチメントも充実しています。アタッチメントの取り付けにはヒッチセット(スマートヒッチ)が必要ですが、「ピアンタ FV200」に取り付け可能なものに加えて、マルチ作業器にも対応しています。ミニもしくは小型耕運機で、マルチ作業(マルチシート張り)ができる機種は珍しいです。
タイプ | フロントロータリー |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1465×465×1015 |
重量(kg) | 54 |
最大出力(馬力) | 1.6 |
耕運幅(mm) | 450 |
連続運転時間(分) | 50 |
対応面積目安(坪) | ~100 |
希望小売価格(税込) | 209,000円 |
三菱
業界初のガス耕運機を発売したのが、三菱農機株式会社です。三菱農機株式会社は、2015年にインド自動車大手であるマヒンドラ&マヒンドラとの資本業務提携を経て、現在は三菱マヒンドラ農機株式会社に社名変更されています(ホームページなどの会社ロゴは、「三菱農業機械」となっています)。
エコ・ラテ(型式名EL20A)
車軸ロータータイプの耕運機です。大きさもコンパクトで、重量も軽いので、手軽な使い勝手を求めている人にぴったりといえます。電動耕運機と比べると、最大出力が1.9馬力でほとんどの電動耕運機のそれを上回っていることが特長です(空冷4サイクルOHVガスエンジンを搭載)。
また、アタッチメントの装着で各種管理作業ができることも特長といえます。別売のアタッチメントを装着することで、畝立て(ニューイエロー培土器などを使用)、除草(イエロースパイラルなどを使用)、整地(スーパー整地レーキなどを使用)などを行えます。
タイプ | 車軸ローター |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1125×480×1065 |
重量(kg) | 27 |
最大出力(馬力) | 1.9 |
耕運幅(mm) | 420 |
連続運転時間(分) | 30 |
対応面積目安(坪) | ~20 |
希望小売価格(税込) | 109,780円 |
エコ・ラテF(型式名ELF20)
フロントロータリータイプの耕運機です。フロントロータリータイプは耕運爪が前方にあるので、足元を気にせず安心して作業を行うことができます。その他「エコ・ラテ」と比べると、重量や耕運幅も増加しています。また、一軸正逆転爪という外側と内側の爪が逆に回転する仕組みが採用されています。したがって、かたい畑でもムラなくしっかり耕すことができます。もちろん各種管理作業も行えます(培土器などけん引タイプのアタッチメントの装着には、作業機ヒッチが必要となります)。
タイプ | フロントロータリー |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1370×550×1090 |
重量(kg) | 52~55 |
最大出力(馬力) | 1.9 |
耕運幅(mm) | 500 |
連続運転時間(分) | 30 |
対応面積目安(坪) | ~30 |
希望小売価格(税込) | 163,900円 |
エコ・ラテR(型式名ELR20)
リアロータリータイプの耕運機です。リアロータリータイプは耕運爪が後方にあるので、タイヤのけん引力を利用してパワフルに耕せるのが魅力です。「エコ・ラテF」と比べて、重量や最大出力も増加しているので、より本格的な耕運機ということができます。決して小さくない機体ですが、ワンタッチ移動尾輪が後方に搭載されているので、離れた畑への移動であっても心配いりません。数量限定カラーのサクラ仕様も販売されていたことがあります。
タイプ | リアロータリー |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1375×575×1090 |
重量(kg) | 60 |
最大出力(馬力) | 2.2 |
耕運幅(mm) | 500 |
連続運転時間(分) | 30 |
対応面積目安(坪) | ~30 |
希望小売価格(税込) | 163,900円 |
クボタ
クボタは言わずと知れた国内首位の農業機械メーカーです。クボタのガス耕運機は、実は三菱のガス耕運機のOEM製品です。したがって、外装(ボディのデザイン)こそ異なりますが、基本的に性能は同じです。もしも同性能モデルのどちらを購入するか迷う場合には、外装や価格のほか、アタッチメントの種類、各社のサポート体制などで選ぶとよいでしょう。
ニューミディ カチット(型式名TMC200)
ガソリンを燃料とする耕運機にも劣らない最大出力1.9馬力のパワーがあります。コンパクトサイズなので、ハンドルを折りたためば収納や自動車への運搬もラクラクです。エンジン始動はリコイルスターター(リコイルロープ)を引くだけ、発進はハンドル手元のクラッチレバーを握るだけと操作も簡単です。アタッチメントには、培土器のほか、培土車輪、草削りカゴロータ、回転ヒッチなどがあります。
タイプ | 車軸ローター |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1125×480×1065 |
重量(kg) | 27 |
最大出力(馬力) | 1.9 |
耕運幅(mm) | 420 |
連続運転時間(分) | 30 |
対応面積目安(坪) | ~20 |
希望小売価格(税込) | 109,780円 |
NEW 菜ビ カチット(型式名FTR3500-C)
フロントロータリータイプの耕運機です。フロントロータリータイプは耕運爪が前方にあるので、足元を気にせず安心して作業を行うことができます。その他「ニューミディ カチット」と比べると、重量や耕運幅も増加しています。また、一軸正逆転爪という外側と内側の爪が逆に回転する仕組みが採用されています。したがって、かたい畑でもムラなくしっかり耕すことができます。変速レバーを「中立手押し」に切り替えると車輪が負荷なく回転するため、軽い力で楽に移動させることができます。「後進」の変速も標準装備されているので、畦際や狭い場所での取り回しもスムーズです。アタッチメントには、培土器のほか、ブルー溝浚機などがあります。
タイプ | フロントロータリー |
---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1370×550×1090 |
重量(kg) | 52 |
最大出力(馬力) | 1.9 |
耕運幅(mm) | 500 |
連続運転時間(分) | 30 |
対応面積目安(坪) | ~30 |
希望小売価格(税込) | 163,900円 |
性能比較
各ガス耕運機の性能を比較すると、次のようになります。
製品 | 三菱 EL20A | 三菱 ELF20 | 三菱 ELR20 | クボタ FTR3500 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
タイプ | 車軸ローター | フロントロータリー | 車軸ローター | フロントロータリー | リアロータリー | 車軸ローター | フロントロータリー |
全長×全幅×全高(mm) | 1055×485×990 | 1465×465×1015 | 1125×480×1065 | 1370×550×1090 | 1375×575×1090 | 1125×480×1065 | 1370×550×1090 |
重量(kg) | 20 | 54 | 27 | 52~55 | 60 | 27 | 52 |
最大出力(馬力) | 1.5 | 1.6 | 1.9 | 1.9 | 2.2 | 1.9 | 1.9 |
耕運幅(mm) | 350 | 450 | 420 | 500 | 500 | 420 | 500 |
連続運転時間(分) | 60 | 50 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
対応面積目安(坪) | ~30 | ~100 | ~20 | ~30 | ~30 | ~20 | ~30 |
希望小売価格(税込) | 109,780円 | 209,000円 | 109,780円 | 163,900円 | 163,900円 | 109,780円 | 163,900円 |
指定ガスボンベ(カセットガス)
燃料には、各社指定のガスボンベを使用するようにしてください。
ホンダ
ホンダのガス耕運機には、東邦金属工業のガスボンベ(カセットガス)を使用してください。東邦金属工業の「TOHOシャトル」が、ホンダのガスパワー製品の指定ボンベになっています。ガス耕運機のほかには、発電機EU9iGB(エネポ)などにも使用します。中身はLPG(液化ブタン)です。
三菱とクボタ
三菱とクボタのガス耕運機には、岩谷産業のガスボンベ(カセットガス)を使用してください。上述したように、両者はOEM製品の関係にあるので、同じ岩谷産業の「イワタニカセットガス」が指定されています。中身はLPG(液化ブタン)です。
まとめ
ガス耕運機の魅力は、手軽さと高性能の両方を兼ね備えている点だといえます。手軽さについては、燃料であるガスボンベ(カセットガス)の入手や機体メンテナンスが容易であることが挙げられます。高性能については、高出力(高馬力)によって強力に土を砕き耕せること、アタッチメントの装備によって多彩な管理作業ができることが挙げられます。また、燃料がガソリンの場合と比べて、排気ガスが少なく環境に優しい点も魅力といえます。
この記事で紹介した製品は、いずれもベストセラーといえる優れた製品ですので安心して使うことができます。あなたもガス耕運機と長靴を手に取って、畑へ出かけてみてはいかがでしょうか。