ハダニは大量発生しやすく、幅広い農作物に食害をもたらす害虫です。ここではハダニを駆除、防除するためのおすすめの農薬をご紹介します。
おすすめの農薬をピックアップ
ハダニは生育サイクルが早く、抵抗性を持ちやすく、そもそも薬剤に耐性を持つものもいます。以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用、また生物的防除も有効です。さまざまな防除を組み合わせた、IPM(総合的害虫管理)をおすすめします。
ミルベメクチン コロマイト
コロマイトは、カンザワハダニ,ナミハダニ,ミカンハダニ,リンゴハダニなどのハダニ類や,チャノホコリダニ,ミカンサビダニ,チャノホソガに対する防除効果も高く、『ハダニ類の成虫,若虫,幼虫,卵』のどの発育ステージに対しても高い活性を示し,速効的、また既存剤に対する薬剤抵抗性のあるダニにも有効です。
さらに、有効成分であるミルベメクチンは微生物が生産する天然物なので、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」において、農薬にカウントされません。
エトキサゾール(IGR) バロック
新しいタイプの化合物で、ダニ類の成長を阻害します。ハダニ類に対して卓効を示し、 ミカンハダニ、リンゴハダニ、ナミハダニ、カンザワハダニなど各種ハダニ類に優れた殺卵・ 殺幼若虫作用が期待できます。また、天敵昆虫や花粉交配用昆虫に対する影響が少ないのも特長といえます。
β- ケトニトリル誘導体 スターマイト、ダニサラバ
抵抗性ハダニに効果が高く、卵から成虫までの全ステージに安定した効果を発揮するタイプの農薬です。低温時でも安定した効果を発揮し、且つ耐雨性に優れています。
メタジアミド系 グレーシア
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。
ハダニには生物農薬(生物的防除)もおすすめ
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
ハダニには、カブリダニやハナカメムシといった有効な天敵が存在します。生物農薬をうまく活用することがハダニ防除には重要です。
商品名 | スパイカルEX | スパイデックス | チリガブリ | ミヤコバンカー (システムミヤコくん) | スワルスキー | ボタニガードES |
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有効成分の種類 | ミヤコカブリダニ | チリカブリダニ | チリカブリダニ | ミヤコカブリダニ | スワルスキーカブリダニ | ボーベリア バシアーナ GHA株 分生子 |
作物名 | 野菜類 果樹類 花き類・観葉植物(施設栽培) 茶 | 野菜類(施設栽培) 豆類(種実)(施設栽培) いも類(施設栽培) 果樹類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 果樹類(施設栽培) りんご(露地栽培) 日本なし(露地栽培) おうとう(露地栽培) 野菜類 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類(露地栽培) 野菜類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類 |
適用病害虫名 | ハダニ類 カンザワ ハダニ | ハダニ類 | ハダニ類 | ハダニ類 | アザミウマ類 チャノホコリダニ コナジラミ類 ミカンハダニ | アブラムシ類 アザミウマ類 コナジラミ類 ハダニ類 コナガ アオムシ など |
スワルスキーカブリダニを有効成分とする商品でスワマイトというものもあります。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
特に、梨(ナシ)園などの果樹園では、下草をある程度残して、土着天敵と呼ばれる自然の天敵を生息させることも、ハダニの防除には非常に重要です。(ジェネラリストカブリダニ(ニセラーゴカブリダニ)、スペシャリストカブリダニ(ミヤコカブリダニ)など)下草は天敵を温存し供給する場所になります。株元を地面が見えるほど刈り込むのは避けましょう。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
農薬散布時のポイント
散布効果を上げるために、スポット散布、葉裏にしっかり付着させる
ハダニははじめ局所的に発生するので、早期発見してスポット散布ができると無駄な散布を減らすことができます。また、葉裏に生息するため、葉裏に丁寧に薬剤が付着するように散布することが大事です。
農薬の必要以上の散布は、ハダニの土着天敵であるハナカメムシなども殺してしまい、かえってハダニの増殖を促してしまうので、注意しましょう。
マシン油乳剤を有効活用しよう
ハダニは生長サイクルが早く、抵抗性を持ちやすい害虫です。このため、薬害抵抗性発達の恐れがないマシン油乳剤は非常に有効なハダニ対策の農薬と言えます。
有効な薬剤のローテーション散布を前提として、積極的なマシン油乳剤の使用をおすすめします。
そもそも、ハダニはどういう害虫?
ハダニとは?
ハダニはダニの仲間で、クモの仲間、ハダニ上科に属します。体長は0.3~0.8mmと非常に小さく、吐糸管から糸を出すため、英名は「Spider mite」と呼ばれています。ハダニの種類は非常に多く、主なものでは、ミカンハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニなどがいます。農業上でよく問題になるハダニは赤いアカダニ(ミカンハダニ、カンザワハダニ、リンゴハダニなど)を指すことが多いです。(チャノホコリダニは乳白色です)
高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはハダニが繁殖する格好の場所と言えます。ハダニは卵期間2~3日、幼虫~若虫期間6~7日で成虫になる、蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすい害虫です。
どうしてハダニは害虫なのか?
ハダニは直接植物の葉、果実の汁を吸うこと(吸汁)で、小さな白班が点々とできてしまいます。吸汁が増えると植物の株、葉茎の伸長が悪くなり、最悪、落葉したり、枯れてしまいます(枯死)。
1箇所に大量発生するとハダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
抵抗性ハダニの対処法
抵抗性ハダニとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のハダニが、世代を重ねて集団化したものです。
ハダニは発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫といえます。
殺虫剤を散布しても、翌日集団でハダニが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。
ハダニの防除は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、下記の生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。
ハダニの耕種的防除
一にも二にも早期発見
ハダニは発見から増殖までが非常に短いので、何よりも早期発見し、早め早めに防除することが大事です。しかし、小さいため、高齢化してくると見えていたはずのハダニがだんだん見えにくくなってきます。
このため、葉裏をルーペや虫メガネで見る、面倒な場合は、販売されているハダニ捕獲器を利用するのも良いでしょう。天敵が少なく、ハダニしかいない場合は薬剤散布のタイミングです。このように定期的にモニタリングして早期防除に努めることが重要です。
周りの雑草をしっかり除草する
どの害虫対策にも言えることですが、圃場の周りに生長した雑草、草花があると、ハダニの大量発生を促進する危険性があります。しっかり除草するようにしましょう。しかし、果樹園で、地面が見えるほど刈り込むのは、土着天敵を減らしてしまうので、刈り高10cmほどを目安に雑草を刈るようにしましょう。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
作物別 ハダニに効く農薬
作物別の、ハダニの農薬の記事もあります。該当作物に特化した詳しい情報を知りたいときは、下記を参考にしてみてください。
まとめ
ハダニは大量発生しやすく、幅広い農作物に食害をもたらす害虫です。早期発見する仕組みを取り入れ、抵抗性を高めないために、マシン油を取り入れ、化学的農薬をローテーション散布、そして生物農薬を有効活用したIPM(総合的害虫管理)が重要です。本コンテンツが防除の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、退治できると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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