雑草はたくさんの種類がありますが、大きく分けると、一年で枯れる「一年生雑草」、複数年生育する「多年生雑草」があり、それぞれ「イネ科雑草」「広葉雑草」に分類されます。ここでは代表的なイネ科雑草の詳細と、それぞれを駆除、防除するにはどんな方法があるのか、徹底解説していきたいと思います。
スズメノカタビラ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Poa annua L. |
別名 | – |
スズメノカタビラの特徴
スズメノカタビラはもともとヨーロッパ地方原産です。種子で繁殖する冬生一年草です。空き地や駐車場、また水田の畦畔や水田、畑地とあらゆるところに生息します。
スズメノカタビラの防除方法
基本的には、葉茎処理剤を使うか、畑地の場合は、耕起して取り除く方法で防除します。ある程度除草した後は、土壌処理剤を撒くことで出芽を防ぐことができます。
スズメノテッポウ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草(越年草) |
分布 | 日本全土 |
学名 | Alopecurus aequalis Sobol. var. amurensis (Kom.) Ohwi |
別名 | スズメノマクラ、ピッピグサ |
スズメノテッポウの特徴
スズメノテッポウは種子で繁殖する冬生一年草です。空き地や駐車場、また特に水田の畦畔や水田、畑地に多く見られます。
スズメノテッポウの防除方法
一度土壌に活着し、生育が進んでしまうと次年度以降大量に発生することになるので、早めの防除が大事になります。まだ出芽が見られない場合は、耕起によって防除し、ある程度出芽している場合は、出来れば非選択性の除草剤を散布し、駆除するようにしましょう。非選択性の除草剤が使えない場合は、イネ科雑草に効果がある選択性の除草剤を使うことになりますが、抵抗性を持っているスズメノテッポウもあるので、その場合は、色んな種類の除草剤を試す、また輪作や遅播きなど、栽培の時期をずらす事で防除していくことになります。
チガヤ
科 | イネ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Imperata cylindrica (L.) Raeusch. |
別名 | ツバナ、マカヤ |
チガヤの特徴
チガヤは高さ1m以上で密生するため、よく目に付く、種子と根茎で繁殖する夏生多年草です。空き地や草原、道ばた、畔畦によく見られます。
チガヤの防除方法
基本的には、畑地の場合は耕起を行い、土壌に定着しないようにします。一度定着してしまうとなかなか駆除することができません。定着し、生長してしまっている場合は、葉茎処理系の除草剤を使用し、地下茎を死滅させるように努めて下さい。また、寒い時期に頻繁に耕起すると、根茎の死滅に効果があるので有効です。
オヒシバ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 本州以南 |
学名 | Eleusine indica (L.) Gaertn. |
別名 | チカラグサ,チカラシバ |
オヒシバの特徴
オヒシバは道路の端や校庭、農道によく見られる、種子で繁殖する夏生一年草です。オオバコと同じく踏み付けに強く、平たい形をしています。出芽は5月の気温15°C以上で始まり、メヒシバよりも遅いのが特徴です。
オヒシバの防除方法
根の張りが強いため、生長したオヒシバを引っこ抜くのは大変です。出芽前に土壌処理剤を撒いて防除するのがおすすめです。生育する前は耕起するか、手で草取りするのが良いでしょう。また、イネ科雑草に有効な葉茎処理系の除草剤を使用するのも有効です。しっかり枯死させましょう。
メヒシバ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Digitaria ciliaris (Retz.) Koeler |
別名 | メシバ、スモウトリグサ、ハタカリ、ホトクイ |
メヒシバの特徴
メヒシバは道路の端や校庭、農道によく見られる、種子で繁殖する夏生一年草です。畑地や路上、空き地や畦畔、至る所で発生し、休耕地、不耕起栽培では特に多く発生します。
メヒシバの防除方法
出芽前に土壌処理剤を撒いて防除するのがおすすめです。生育する前は耕起するか、手で草取りするのが良いでしょう。また、イネ科雑草に有効な葉茎処理系の除草剤を使用するのも有効です。しっかり枯死させましょう。メヒシバの種子は農業機械などに付着しやすいため、メヒシバの除草、刈り取りなどに使用した機械や工具、器具、長靴は圃場の外に持ち出し、しっかりと落とすことが重要です。
ススキ
科 | イネ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Miscanthus sinensis Andersson |
別名 | オバナ |
ススキの特徴
日本の田園風景を代表する、種子と根茎で繁殖する細長い草丈の高い多年草です。花粉症の原因にもなる雑草で、道端、田んぼの畔畦、湿地によく見られ、群生します。
ススキの防除方法
基本的には非選択性の除草剤の使用が可能な場合は、グリホサートなどの非選択性除草剤を散布するのが地下部の根茎を枯らすので有効ですが、畑、圃場ではイネ科雑草に有効な選択性の除草剤を試していくことになります。また、ススキは耕起すると急激に群落が衰退するので、地表の基部を刈り取り、耕起による防除も有効です。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしても、スギナ、スベリヒユ、シロツメクサ、チドメグサ、セイタカアワダチソウ、ツユクサ、ツメクサ、オオイヌノフグリ、オオアレチノギク、トウダイグサ、コニシキソウ、ゴマノハグサ、ナデシコ、ハコベ、セイヨウタンポポ、カズノコグサ、カタバミ、ナズナなどの難雑草がしっかり枯れるので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
展着剤で除草剤の効果を高める
展着剤とは、界面活性剤や接着剤となるパラフィンや樹脂酸エステルを有効成分としたもので、薬剤の付着性や浸達性を高めたり、溶けにくい水和剤や乳剤などの混用性を高めて、農薬の効果のムラを減らす働きをしてくれます。
展着剤は、使う農薬に合わせて選ぶのが大切です。グリホサート系には、「サーファクタントWK、30」という除草剤に機能性展着剤(アジュバンド)などが使えます。
また展着剤ではないですが、肥料の尿素も、農薬に混ぜると農薬の効果を高めるといわれています。尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。
まとめ
イネ科雑草は、その他エノコログサ、イヌビエ、シバムギ、アキメヒシバ、カヤツリグサ、スズメノヒエ、ホトケノザ、シマスズメノヒエ、ジュズダマ、カモガヤ、カモジグサ、キンエノコロ、カゼクサ、セイバンモロコシと非常にたくさんあり、多年生から一年生まで、様々です。中には、非常に駆除、防除が難しい難雑草もあります。まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、生育したものに対しては、葉茎処理剤を散布する方法などで繰り返し枯らし、駆除をしていきましょう。しっかり防除することで、病害虫による病害の発生を防ぎ、殺虫剤の使用、農作業も減らすことができます。何よりも早め早めの対策が重要です。