白い線で絵を描いたような食害痕を残すので、「エカキムシ」とも呼ばれる、柑橘でよく出るミカンハモグリガ。ここではミカンハモグリガとはどういう虫なのか、その特性と、駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。
そもそも、ミカンハモグリガはどういう害虫?
ミカンハモグリガとは?
ミカンハモグリガは、チョウ目コハモグリガ科(学名:Phyllocnistis citrella)に属する昆虫です。
幼虫は半透明で大きさは2〜3mmです。
成虫はクリーム色に黒い模様の入った翅を持った小さい蛾で、体長は2〜3mmほどになります。
幼虫は葉の内部に潜り込んでトンネルを掘るように食い進みます。食害された部分は、表面のクチクラ層だけが残るため白いスジ状の食害痕になります。
生長した幼虫は、葉縁を折り曲げるようにして蛹になる場所を作り、蛹になります。蛹の色は、黄色や褐色です。
どうしてミカンハモグリガは害虫なのか?
ミカンハモグリガの幼虫は、葉の内部を食べて、「エカキムシ」と呼ばれるような食害痕を残してしまいます。食害痕がある葉は変形し、早期落葉の原因になるほか、樹そのものの樹勢を弱らせ、生育が抑制されてしまいます。
また、食害を受けた葉は、生長するに従って裂けて傷になってしまいます。かいよう病は傷口から侵入するため、かいよう病を引き起こしやすくなってしまうのも非常に問題と言えるでしょう。
ミカンハモグリガに効く農薬
ミカンハモグリガには、下記のように、多くの適用農薬があります。
ミカンハモグリガに効く代表的な農薬
有機リン系
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサンやカルホスがあります。
ネオニコチノイド系 スタークル、モスピランなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
アニキ
アニキ乳剤の最大の特徴は、新規系統の殺虫剤のため、既存の殺虫剤に抵抗性がある害虫に効く可能性が高いこと、また高い即効性(速効性)があること、訪花昆虫・天敵等の有用昆虫に対する悪影響が少ないため、IPM(総合的害虫管理)に非常に適した薬剤であることです。
ミカンハモグリガに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、に効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はミカンハモグリガだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシ、アオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
ミカンハモグリガに対する、効果的な農薬の使い方
ミカンハモグリガは、新梢を食害するので、新梢を中心に農薬を散布するのが効果的です。新梢の発生時期を統一すると、農薬散布を一斉にすますことができます。
IPMで抵抗性の発達を防ぐ
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
まとめ
植える苗や、播種(は種)、定植して生育している苗木、葉菜類、果樹の葉に食害をもたらすハモグリバエ。ハモグリバエは、トマトハモグリバエ、ナモグリバエ、ネギハモグリバエ、ナスハモグリバエ、マメハモグリバエ、アシグロハモグリバエなど、多くの種類がいます。
農作物の限らず、マリーゴールドや様々な花木、観葉植物の葉、茎にも被害が出ています。本記事が、適切に退治、防除を行うためのハモグリバエ対策の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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