雑草対策、除草に「塩」は有効?
植物の生理上、確かに塩分濃度が高くなると枯れるので、塩を撒くことで、雑草駆除、除草の効果はあります。また、塩は非常に土壌に残留、蓄積するので、雑草が新しく生えてくることも防ぐ、防草の効果もあります。
しかしながら、塩は土の中で分解されないため、半永久的に効果が持続します。このため、未来にわたって植木や花などはもちろん、野菜や穀物などの作物が塩害で一切育たたくなってしまうのです。また、土壌はつながっています。雨が降り、土壌の塩が流れ出て塩水となり、隣の土壌にも多大な塩害をもたらす危険性があります。
また、海水が流れ込んで周辺の鉄筋コンクリート構造物に影響が出るのと同様、鉄筋コンクリートに塩化ナトリウムの影響で剥離したり、劣化したりと塩害による被害が起こります。建物だけでなく、下水道などの地中の水道管などの配管、電信柱など、様々なインフラにも当然悪影響を及ぼします。
よく、墓地用に、清める意味も込めて、「除草塩」という商品があります。しかしながら墓地の近くには、農耕地があることも多いでしょう。塩を使うことで、降雨で隣の農家の方に被害をもたらしてしまうことがあるのです。また、お墓以外の庭や空き地でも同様です。近くの農耕地や水田、菜園、隣の庭の植物に塩害をもたらしてしまいます。このため、除草に食塩、天日塩、岩塩など、塩を使うことはくれぐれも避けてください。
雑草対策、除草に「お湯」は有効?
熱湯をかけると、植物全般を枯らすのに効果があると言われますが、それは事実です。やり方は単純で、枯らしたい植物に熱いお湯、熱湯を根元や茎に直接かければいいのです。
確かに、熱湯を浴びた植物はその箇所が焼け、その後枯れます。しかしながら、地下茎や根までは浸透しないため、地上部の雑草にしか効果が出ません。また、非常に重要なのは、土壌はたくさんの生きている微生物によって成り立っているということです。土壌に熱湯をかけることで、地中の細菌、微生物に深刻な悪影響が出てしまいます。土壌内の環境が壊れてしまうのです。ですので、特に耕す予定の農耕地にお湯をかけるのは危険です。また物理的にも熱湯を雑草にたくさんかけることは難しく、お湯を沸かして重いやかんを持ってかけるという行動は、費用対効果も合わないかと思います。
このため、雑草対策、除草のために、雑草に熱湯をかけることはお勧めできません。
除草剤、草刈りによる雑草駆除がおすすめ
以上から、塩や湯で除草するのではなく、除草には、適切な除草剤を使用することや草刈りによる除草をおすすめします。こちらの方が遥かに土壌に与える影響は少なく済むのです。
除草剤とは?
除草剤とは、植物を枯らす効果を持つ薬剤の総称です。その種類は、液体だったり、固形の細粒、粒状だったり、またどんな効果で植物を枯らすのか、効きめの持続力もまちまちです。
ここではまず、除草剤の種類と特性に合わせた効果的な使い方、そして具体的に販売されている除草剤がどれに該当するのか、解説します。
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」 特徴と見分け方
まず、除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長、生育している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、ある程度草刈りする必要があり、その後での散布が必要になってきます。
「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。実際に除草剤を手にとっても、明確に「土壌処理剤」なのか「茎葉処理剤」なのかわからないケースがありますが、そんな時は、「土壌散布」と書かれているものは、「土壌処理剤」、「茎葉散布」と書かれているものは「茎葉処理剤」と判定してもらって間違いありません。
「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」 使う時期は違うの?
「土壌処理剤」を使用する時期は、雑草が発生する前や、まだ生え揃っていない耕耘後、または播種(定植)前後になります。既に大きくなってしまった雑草や、塊根、塊茎から出ている雑草を枯らすことは期待できません。
対して、「茎葉処理剤」は、雑草が発生して育っている時期に使用します。
葉や茎にしっかりかかると効果が出るため、あまりにも雑草が繁茂していると、全てにしっかり除草剤がかからず、残ってしまうこともあります。このため、どちらしても、雑草が茂る前に対策することが重要です。それぞれ使用する時期が異なるので、上手く使い分けることが重要です。
主な葉茎処理剤一覧
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | ネコソギロングシャワーV8 | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | グリホエース | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
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概要 | ||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | レインボー薬品(株) | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | ハート(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサートイソプロピルアミン塩 + MCPA | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ○ | ○ |
葉茎処理剤は主に液体の除草剤であり、商品によっては、原液を希釈して薄めて使用する必要があるものと、希釈せずにそのままシャワーヘッド(ジョウロヘッド)等が付属し、噴霧器などを使わずとも、すぐに使用できる液剤があります。
主な土壌処理剤一覧
商品名 | カダン除草王 | ネコソギパワー粒剤 (ネコソギトップW) | ネコソギエースV(粒状) | クサノンEX粒剤 |
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概要 | ||||
販売元 | フマキラー(株) | レインボー薬品(株) | レインボー薬品(株) | 住友化学園芸(株) |
有効成分 | カルブチレート | アミカルバゾン ブロマシル | ヘキサジノン DBN、DCMU | ターバシル フルミオキサジン |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
非選択性か選択性か
非選択性と選択性の違い
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
光合成を阻害して枯らすもの
植物は、生長するために光合成を行い、空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)と水に光のエネルギーを加えて炭水化物を生成し、酸素を放出する機能を有していますが、その中の光が関与する明反応の部分を阻害して、枯らす作用のタイプです。代表的な薬剤として、トリアジン系(CAT、シメトリンなど)、酸アミド系(ジフルフェニカンなど)、尿素系(DCMUなど)、ダイアジン系(ベタゾンなど)、ダイアゾール系がこれに当たります。
植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの
植物の生長に必要なオーキシンというホルモンの類を施用して、主に広葉の雑草の生長のリズムを撹乱(かく乱)し、整体機能を衰退させることで枯らしてしまうタイプです。代表的な薬剤として、フェノキシ系(2,4PA , MCPなど)がこれに当たります。
植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすもの
植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して、枯らしてしまうタイプです。代表的な薬剤として、スルホニルウレア系(ベンスルフロンメチル、イマゾフルフロン、ピラゾスルフロンメチルなど多数)、除草剤として最も使われている非選択性接触型のアミノ酸系(グリホサート、グルホシネート、ビアラホスなど)がこれに当たります。
具体的に市販されている除草剤がどのタイプの除草剤に該当するのか、それに合わせて購入したい方は、是非下記コンテンツをご参照ください。
除草剤の使い方
除草剤と言っても、葉茎処理剤や土壌処理剤があり、使う時期や形状も液体から粒状、その中でも細粒、微粒まで様々です。下記では、除草剤の形状毎のの散布方法や撒き方、また散布時の服装の話、そして除草剤のタイプ毎の散布時期について詳細説明していますのでご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤というと、近年のグリホサート系除草剤にまつわる様々な話など、非常に危険なイメージをもたれている方も多いでしょう。下記では、除草剤の安全性について、そもそも除草剤は安全なのか、またガーデニング・庭での庭木や果樹、畑での植えた苗や作物に散布しないようにするなど除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、そしてグリホサートの毒性、薬害、安全性で議論になっている論点を詳細に解説していますので、除草剤の安全性について興味がある方は是非ご一読ください。
芝生や田んぼで、選択性除草剤を使う場合
下記では、芝生を枯らさずに使える除草剤の詳細な特徴をはじめ、芝生に生える雑草対策に限らず、エアレーションや目土といった、芝のメンテナンス、手入れについても詳細に解説していますので、是非ご覧になってください。
下記では、田んぼに適した選択性除草剤のそれぞれの詳細な特徴をはじめ、田んぼに除草剤を撒く時期や散布する時の注意点についても解説していますので、是非ご覧になってください。
草刈り機(刈払機)による除草
雑草が生長し、繁茂している場合は、除草剤を使用しても効果が出にくくなります。このような場合は、一度草刈りを行い、その後、除草剤を散布するのが効果的です。
どのような草刈り機(刈払機)、道具を選んだ方がいいのかは、下記を参考にしてみてください。
防草シート(除草シート)による除草
雑草や草を生えないようにするため、土面に設置する防草シート。繁茂した雑草をシートで覆って押さえ、太陽光の熱で枯らしてしまう除草シートもありますが、一般的には、雑草を抑え、生えないようにするシートを、防草シートや除草シートと呼んでいます。防草シートは除草に大変役立つツールです。
防草シートの種類と機能
防草シート(除草シート)は、日光を遮る(遮光)ことで、植物に光合成を行えないように抑制します。日光を遮断された植物は炭水化物を生成できなくなり、生長しなくなります。しかし、防草シートの種類によって遮光率や耐用年数、透水性(雨水で水たまりが出来やすいかどうか)も違ってきますし、使い方によって経年劣化の速度も変化します。
下記では、防草シートの機能やおすすめの防草シートをはじめとして、防草シートを敷き詰めて隙間をゼロにし効果を最大にする養生テープ、ピンなどの資材もご紹介しています。是非ご一読ください。
防草シート砂利、バークチップ、人工芝と組み合わせてパワーアップ!
市販されている防草シートは、最大手のプランテックス(旧名称 ザバーン)はじめ、全ての防草シートは、むき出しで使用していると、紫外線で徐々に劣化していきます。
これを防ぐために、防草シートを下地にして、玉砂利や砕石、バークチップ・ウッドチップや人工芝を敷いて紫外線をカットすると。高機能な防草シートだと、半永久的に雑草の繁茂を防ぐことができます。
また、防草砂という、雑草が地面から生えてくるのを防ぐために作られた砂もあります。様々な種類があり、用土や砂などの天然素材に、雑草の種子の発芽抑制や成長の阻害に効果があるホウ酸カルシウムを混ぜた、固まらない防草砂や、砂にセメントを混ぜて、固まることで物理的に下から雑草を生えてこないようにする「固まる防草砂」というものもあります。
下記に、防草シートと合わせたい、砂利やチップ、人工芝、また、花壇の周りや通路に使いやすい、「固まる防草砂」というセメントを混ぜたコンクリートに近い砂の施工方法なども詳しく解説していますので、参照してみてください。
また、防草シートを敷くときは、できるだけ雑草を取り除き、地面に雑草がない状態にする必要があります。既に雑草が繁茂している場合は、必ず草取りや草刈り、草むしりを行って、地面を雑草がない状態にしてください。
まとめ
農家webには、スギナやドクダミ、ヤブガラシ、カタバミ、チガヤ、クログワイなどの繁殖しやすい難雑草の対策記事や、庭作りのための記事もたくさんあるので、ぜひ活用してみてください。