落花生は初期の生育がゆっくりで草丈が低いことから、雑草が生えると生育に影響を及ぼすため特に初期の防除が大切です。ここでは、落花生栽培に適用のある除草剤の効果的な使い方や、除草・防草の方法についてわかりやすく説明します。
落花生(らっかせい)栽培に使われる除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。茎葉処理剤には、葉や茎にかけるだけで根まで枯れるものと、薬剤がかかった部分のみ枯れる接触型の除草剤があります。
落花生に適用がある除草剤は、栽培前から生育中にも使えるものがあります。時期や雑草の種類にあった除草剤をつかうことが大切です。
体系的に防除するのであれば定植前後の雑草発生前に「土壌処理剤」で雑草の発生を抑制し、その後に発生した雑草に対して、「茎葉処理剤」を散布します。
落花生栽培の除草剤の使い方
落花生の栽培では、特に播種から2か月間ほどの生育初期の防除が大切です。播種後に、「土壌処理剤」を散布して、雑草の発生を押さえましょう。その後は追肥と同時に中耕2回~3回除草を兼ねて行います。
生育中に株間などに多くの雑草が生えてしまったときには、茎葉処理剤をつかって除草することもできます。選択制の除草剤はイネ科にしか効果がないので、それ以外の雑草が生えている場合には、非選択性の除草剤をつかって除草しましょう。非選択性の除草剤は、作物にかかると薬害が生じますので注意して散布しましょう。
マルチ栽培は雑草の発生を抑制するのに効果的です。マルチは地温の確保する効果もあります。雑草を抑制するには黒マルチがおすすめ。除草剤と併用することもできます。開花時期にマルチを除去するので、その時期からは中耕除草や株元の手取り除草をすることで除草剤の使用を抑えることができます。
種類別の除草剤の使い方
落花生は、生育初期の防除が大切なので、雑草の多い畑の落花生栽培には土壌処理剤がよくつかわれます。
土壌処理剤
土壌処理剤は、粒状や乳剤などがありますが、土壌に直接散布します。土に吸収された薬剤は、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。作物の種は処理層より深く植えつけられるため、作物の生育は阻害せず雑草だけを枯死させます。その効果は除草剤にもよりますが45日~60日程度続きます。
茎葉処理剤
土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除することもできます。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかっても落花生は枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。非選択性の除草剤は、落花生に薬液がかからないように十分注意しましょう。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
落花生(らっかせい)栽培におすすめの除草剤
土壌処理剤
播種後すぐに散布する土壌処理剤について、落花生(らっかせい)に適用のある除草剤を紹介します。
クリアターン乳剤
有効成分 ベンチオカーブ 50.0% HRACコード15, ペンディメタリン 5.0% HRACコード3, リニュロン 7.5% HRACコード5
クリアターン乳剤は、ベンチオカーブ、ペンディメタリン、リニュロンという3つのそれぞれ異なる有効成分が、だいず、麦類、とうもろこし等の一年生雑草防除に有効に作用し、発芽した雑草を枯死させます。 残効期間が長く、長期間雑草の発生を抑えるのが特長です。落花生には、雑草発生前の、は種直後に全面土壌散布して使います。クリアターンには細粒剤もありますが、落花生に適用があるのは乳剤のみです。
ゲザガード50
有効成分 プロメトリン 50.0% HRACコード5
ゲザガード50は、非ホルモン型、吸収移行性の除草剤で特に畑地一年生雑草な土壌処理剤です。雑草の根部や茎葉部から吸収され植物の光合成および炭水化物の生成を阻害し、除草効果を示します。水和剤なので、水に希釈して使います。落花生には、は種直後に土壌散布して使います。
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤
有効成分 トリフルラリン44.5%(乳剤)、トリフルラリン2.5%(粒剤) HRACコード3
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤は、トリフルラリンを成分とするジニトロアニリン系の除草剤で、発芽時の雑草の成長分裂を阻害することで、雑草を抑える土壌処理剤です。ツユクサ科、カヤツリグサ科、キク科、アブラナ科を除く一年生雑草に効果を発揮します。特にイネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ、ノビエ、イヌビエ、スズメノテッポウなど)に優れた効果を発揮し、スベリヒユ、ハコベにも効きます。イネ科雑草に比べ広葉雑草に対してはやや効果が劣るので、イネ科一年生雑草の優占する圃場で使用するのが効果的です。
落花生には、は種直後に全面散布して使います。乳剤の他粒剤もあるので、粒剤は水を使わずそのまま土に散布できるので散布が簡単で、散布した箇所もわかりやすくなります。
ラッソー乳剤
有効成分 アラクロール 43.00% HRACコード15
ラッソー乳剤は、イネ科の一年生雑草(メヒシバ・イヌビエ・ハコベ・イヌビユなど)の抑制によく効く畑作用土壌処理除草剤です。落花生には、は種後出芽前に全面土壌散布して使います。雑草の発生前に散布しないと効果がありません。砂質土壌では薬害が生じる可能性があるので使用はできません。タデ科、アカザ科などの広葉雑草には効果が劣るため、イネ科雑草が生える場所におすすめです。
茎葉処理剤
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草に使われる選択制の茎葉処理剤です。落花生に直接かかっても影響がないため、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。落花生には雑草生育期イネ科雑草3〜5葉期、収穫前90日まで使うことができます。遅効性で完全に枯殺するまでに7~10日かかるので、誤ってまき直しなどしないように注意しましょう。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤を使う必要があります。
グルホシネート系除草剤
落花生には、イネ科以外の雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤はないので、それらの雑草が生えている場合は非選択性の除草剤を使いましょう。
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。らっかせいには、、雑草生育期は種前又は畦間処理に収穫前28日まで使えます。適用表の作物名にはらっかせいの記載はありませんが、豆類(種実)での適用が使えます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤がありまが、落花生にはバスタ液剤のみ使えます。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
らっかせい畑使用 | ○ | ✖ |
プリグロックスL
有効成分 ジクワット 7.0% パラコート 5.0% HRACコード22
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の非選択性の接触型の茎葉処理剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
は種前又は植付前、雑草生育期の畦間処理に収穫30日前まで使えます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
植え付け前
グリホサート系茎葉処理剤
多年生の難雑草が何年も生えている場所などでは、耕起前に使えるグリホサート系の除草剤を使って除草しましょう。
グリホサート は、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全 な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。グリホサートは、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎、根っこも含めて全体を枯らし、根絶する効果があるため、根を残したい田んぼの畔や傾斜地には向きません。
グリホサート系の除草剤は多くありますが、畑には必ず「農耕地用除草剤」を使用しましょう。らっかせいには使えないものが多くあります。サンダーボルト007はらっかせいにも使えます。サンダーボルト007は、らっかせいには耕起前又はは種7日前まで使うことができます。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。それは殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
農薬の希釈について
除草剤は水で希釈してつかうものがほとんどです。除草剤の希釈方法の記事や、便利な計算アプリもあります。
落花生に適用がある除草剤・農薬
この他、落花生に適用がある除草剤は、「農家web農薬検索サービス」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、落花生に使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。作物名は「らっかせい」の他、「豆類(種実)」に登録のある農薬が使えます。
落花生の栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
落花生栽培では、苗が大きくなるまでの生育初期の雑草の防除が大切です。マルチや除草剤をうまく使って、雑草を取り除きましょう。雑草は大きくなると、取り除くのが難しくなります。マルチを剥がしたときに雑草が生えている場合は、すぐに取り除きましょう。落花生が大きくなり畑を占領すれば、雑草が生えにくくなるのでそれまではこまめに除草を心がけましょう。
雑草は生えてからではコストや手間も多くかかります。事前に防除できるよう上手に除草剤を使いましょう。いつも使っている除草剤が効かなくなったら、圃場に生えている雑草の種類をよく観察し、体系の違う除草剤をつかってみるなどの見直しもしてみましょう。
農家webには、このほかにも畑・農地、水稲に使える除草剤や作物別の除草剤の使い方などの
記事も多くあります