ブロッコリーは、キャベツの仲間で、栄養価も高くサラダだけでなくさまざまな料理に使われます。ミニブロッコリーや茎ブロッコリーであれば、水耕栽培でも栽培が可能です。
ここでは、苗から始めるブロッコリーの水耕栽培について、栽培キットの作り方や、植えつけから収穫までの育て方についてわかりやすく説明します。
ブロッコリーの水耕栽培について
ブロッコリーの基礎知識
ブロッコリーは、キャベツの仲間で、開花前の発達した花蕾(からい)と茎の部分を食します。原産地が地中海沿岸のブロッコリーは冷涼な気候を好み、高温多湿が苦手です。寒冷地では、春に種をまいて夏に収穫する、春まき栽培。その他では、夏に種まき、植えつけをして冬に収穫する夏まき栽培が一般的です。
一般的なブロッコリーの他にも茎ブロッコリーと呼ばれるものもあります。一般的なブロッコリーは中心部分の花蕾を食べますが、茎ブロッコリーは最初に中心部の頂花雷を収穫したあと、下の枝からわき芽のように出てくる側花蕾と茎を食します。花茎が長くアスパラガスのような食感が人気です。
栄養価が高い緑黄色野菜で、様々な料理に使えます。種まきから育てても収穫まで2~3か月程度。暑さに影響を受けやすいブロッコリーは、通常のブロッコリーより暑さに強い茎ブロッコリーの方が栽培は容易です。また育苗のときに失敗することが多いので、初心者の人は苗から始めるとよいでしょう。
作物名 | ブロッコリー |
---|---|
科目 | アブラナ科アブラナ属 |
原産地 | 地中海沿岸 |
発芽適温(地温) | 25℃前後 |
生育適温 | 15℃~25℃ |
育てやすさ | 普通 |
品種
ブロッコリーは播種から収穫までの期間により極早生、早生、中早生、中生、中晩生の品種があり、作型(栽培期間)に合わせた品種を選ぶことが大切です。栽培期間が短い(早生)品種ほど比較的高温で花芽が分化し、早く収穫までの期間が長くなります。
ここでは、水耕栽培で育てやすい品種についていくつか紹介します。
品種名 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
スティックセニョール | 茎ブロッコリーの代表種。 種まきから90日ほどで収穫が可能です。 1株で20cmくらいの長い側花蕾が15本程度収穫できます。 | |
スリム | 茎ブロッコリー。播種時期がながい 種まきから90日ほどで収穫が可能。 柔らかく、甘みも強い。 | |
ミニッコリー | 草姿、花蕾ともにコンパクトなミニブロッコリー 植え付けから65日で収穫できる | |
シャスター | 温度に比較的鈍感な極早生種 耐暑性があるので、春~夏でも栽培が可能 | |
緑嶺(りよくれい) | 植え付け後、75日ほどで収穫できる中早生種 季節を問わずに形よくつくれる。 家庭菜園の定番品種 |
栽培時期
ブロッコリーは、春まき栽培と夏まき栽培がありますが、家庭菜園では夏に植えつけして、冬に収穫する夏まき栽培が育てやすいのでおすすめです。下記は露地栽培での栽培期間の目安です。
地域 | 播種(種まき)時期 | 定植時期 | 収穫 |
---|---|---|---|
冷涼地 高冷地 | 3月~4月中旬(春まき栽培) 6月~7月(夏まき栽培) | 4月中旬~5月(春まき栽培) 7月~8月(夏まき栽培) | 6月~7月(春まき栽培) 9月中旬~11月(夏まき栽培) |
中間地 | 2月~3月上旬(春まき栽培) 7月中旬~8月(夏まき栽培) | 3月中旬~4月中旬(春まき栽培) 8月~9月(夏まき栽培) | 5月中旬~6月中旬(春まき栽培) 10月~12月(夏まき栽培) |
暖地 | 1月下旬~2月中旬(春まき栽培) 9月下旬~10月(夏まき栽培) | 3月中旬~4月上旬(春まき栽培) 8月下旬~10月(夏まき栽培) | 4月~6月(春まき栽培) 10月下旬~1月(夏まき栽培) |
ブロッコリーの水耕栽培のポイント
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
水耕栽培は、サニーレタスやベビーリーフなどの葉物野菜やルッコラや大葉などのハーブなどは特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。ブロッコリーは簡易的なペットボトル栽培も可能ですが、あまり実が大きく成長しない、もしくは収穫量がすくなくなります。
実もの野菜を作る場合には、容量の大きな容器を使い、野菜の生長に必要な酸素を根に直接送れるエアポンプを使った栽培がおすすめ。用具は少し必要になりますが、エアポンプを使うと成長が早くなり、多くの収穫量が見込めます。
またブロッコリーの育苗は播種(種まき)時期と発芽温度が合わないため保温して育てる必要があります。育苗は1ヵ月ほどかかります。実もの野菜は苗の良しあしで収穫の量や質が大きく変わるので、市販の苗から始めるとよいでしょう
ブロッコリーの水耕栽培の手順
栽培容器を作る
まずは、ブロッコリーの水耕栽培用の栽培容器を作りましょう。本格的な栽培キットなどもありますが、ここでは発泡スチロールの箱で自作する方法を説明します。培地にはスポンジを使います。
用意するもの
- 発砲スチロールの箱(蓋つき)
- スポンジ(キッチンスポンジでOK、シリコンスポンジ不可)
- エアポンプ(なくても栽培は可能)
- カッター、キリ、定規、マジックなど
作り方の手順
- スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
- 発砲スチロールのフタの部分の中央に、1で切ったスポンジより少し小さめの穴を空けます
- フタの下部の部分をカットし、そこにエアポンプの管を入れるようの穴を空けます。
- 容器に水をいれ、エアポンプをセットします。
苗の植え付け
市販の苗の選び方
- 本葉が4~5枚で、濃い緑色をしているもの
- 葉がきれいで、病気などにかかっていないもの。
- 茎の節と節の間が詰まっており、徒長(ひょろひょと間延び)していないもの
- 全体的に、茎が太くがっちりしているもの
準備するもの
- スポンジ(5~6cm角にカットして、切込みをいれたもの)
- 発砲スチロールのフタ
- ブロッコリーの苗
- 割り箸など
苗の植え付け方の手順
- ポットから苗を取り出します
- バケツに水をいれ、バケツの中で根を傷つけないように土をできるだけ落とします
- 切込みをいれたスポンジに、株元から下の部分を挟みます
- 発砲スチロールのフタの中央の穴の部分に、スポンジごと苗をセットします。
- スポンジは、しっかり固定できるように、割り箸などで押し込みます。
- 水を入れた容器に、蓋をセットして育てます。水の水位は根が3分の1ほどつかる程度です。
ブロッコリーの水耕栽培の手順
- 手順1栽培容器の準備
発砲スチロールとスポンジでブロッコリーの栽培容器をつくります。
- 手順2苗の植え付け
市販の苗や、育苗した苗を栽培容器に植え付けし、水耕栽培用の根がでるまで育てます。
根がでたら、肥料をいれて日当たりの良い場所で管理します。 - 手順3育苗
培養液(肥料を入れた水)が切れないように継ぎ足して育てます。3週間~1か月に1度は水を全部入れ替えましょう。
- 手順4収穫
ブロッコリーの場合は、花蕾の直径が10cm以上になったら収穫のタイミングです。蕾の開く前に収穫をしましょう。
茎ブロッコリーの場合は、頂花蕾の直径が2.5cm~3㎝になったら、摘心をかねて収穫します。これにより側花蕾の生長を促します。
側花蕾が15cm~20cmほどになったら収穫のタイミングです。蕾が開く前に茎を長くつけて、ハサミで切り取りましょう。
ブロッコリーの水耕栽培の育て方
容器
水耕栽培に使う容器は、容量が大きいほど培養液(肥料を入れた水)を入れ替える手間も済み、大きく育ちますが、場所などに合わせて容量を選びましょう。できれば5ℓ以上のものがおすすめです。
発砲スチロールは加工もしやすくブロッコリーにはおすすめですが、それ以外でもコンテナやごみ箱、バケツなどをつかっても栽培が可能です。バケツやプラスチックのゴミ箱などを使う場合には、蓋の部分を発砲スチロールでつくって上にかぶせて使うとよいでしょう。
発砲スチロールの箱は、小さなものは100均などでも手に入りますし、ホームセンターなどではいろいろなサイズのものがあります。また魚介類などをインターネットで購入すると、発砲スチロールにはいってくることもありますし、スーパーや魚屋さんでもらえることもあるので、聞いてみるのもよいでしょう。
発砲スチロールは専用のカッターがあると簡単にカットできます。100均などでも置いてあることがあります。
ペットボトルを使う場合は最低でも2ℓ以上、焼酎などが入っている4ℓのものであればよく育ちます。
栽培環境
ブロッコリーの生育適温は15℃~25℃と、比較的冷涼な気候を好み高温多湿を嫌います。日当たりのよい風通しの良い場所で管理しましょう。
栽培の時期によって、防寒・暑さ対策が必要になります。生育温度に近い温度になるよう調整しましょう。夏まき栽培では、植え付け時に気温が高くなるので昼間の植えつけはさけ、なるべく涼しい夕方に行いましょう。
水やり・水替え
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。
水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。エアポンプを使っていない場合には1週間に1度水の交換をしましょう。高い位置から水を注ぐようにして入れると空気がはいりやすくなります。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培でブロッコリーを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
エアーポンプ
エアーポンプ(エアポンプ)は、必ずないと育たないというわけではありません。葉物野菜やミニトマト、ミニピーマンなどの小型な果実野菜なら、エアポンプがなくともある程度育ちます。しかし土壌栽培とことなり、水には酸素が少ないためエアーポンプを使うことで、酸素が多く根に供給され、生育が早くよく育ちます。
エアーポンプは、水耕栽培用のものもありますが熱帯魚用のものでもOK。使用する容器の大きさに合わせてものをつかいましょう。ベランダなどで育てる場合、電源がない場合もあります。そんなときには、太陽光発電ができるエアーポンプや充電が可能なエアーポンプなどもあるのでそちらがおすすめです。
またエアポンプは、水の逆流を防ぐため本体は栽培容器より高い位置に置きましょう。
収穫
ブロッコリーの収穫は花蕾が10㎝ぐらいになったら、蕾がしまった状態で刈り取ります。遅れると食感が悪くなるので注意しましょう。追肥を続けると、わき芽につく蕾(側面蕾)が大きくなって、2週間ぐらい後に収穫できます。実の数は多いですが、大きくなりませんので花を咲かせないように注意しましょう。葉っぱも食べることができます。
茎ブロッコリーは、頂花蕾が2.5cm~3㎝になったら、収穫(摘心)して栽培を続けます。本格的な収穫は側花蕾が15cm~20cmほどになったころ。収穫時期は5日間ほどと短いので、花がつく前に早めに収穫しましょう。
まとめ
鮮度が落ちやすいブロッコリーは、自分で育てると本来の味を楽しめます。栽培時期と品種を間違えなければ、苗からであれば初心者の人でも育てることができます。
種から育てたい場合には、ブロッコリーのプランター栽培の記事に種から育てる育苗を説明していますので、そちらを参考にしてください。
またブロッコリーは、水耕栽培で育てられるブロッコリースプラウトも栄養があって人気です。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
水耕栽培のコンテンツを種類別から探せます